Interview

Maison book girl  “彷徨う”という意味のタイトルから見える新作の世界とは? 初の全国ライブハウスツアーの感想とともに訊く。

Maison book girl  “彷徨う”という意味のタイトルから見える新作の世界とは? 初の全国ライブハウスツアーの感想とともに訊く。

音楽家のサクライケンタがトータルプロデュースを務める4人組グループ、Maison book girl(通称:ブクガ)がニューシングル「umbla」をリリースした。
昨年11月に発売されたメジャー2枚目のアルバム『yume』で第1章の幕を閉じ、今年4月にリリースされたメジャー5枚目のシングル「SOUP」で新章に突入。同作に収録されていたリード曲「鯨工場」で<僕らの朝は次の唄で明けてゆくの>と宣言し、2曲目「長い夜が明けて」では朝の到来を告げていたが、前作から約3ヶ月ぶりとなる新作ではどのようなストーリーが語られているのか。音盤とステージを通して展開されていく物語の続きとは。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 持田薫


地面は土っぽくて、周りには人はいないです。何にもないですね。土と木と、壊れた街が見えます(コショージ)

Maison book girl エンタメステーションインタビュー Maison book girl エンタメステーションインタビュー Maison book girl エンタメステーションインタビュー

6〜7月と2ヶ月に渡って開催された初の全国ライブハウスツアーの感想からお伺いできますか。

矢川 これまでに行ったことのないところに行ってて。曲は聴いてたけど、ライブに来るのは初めてという方が多くて。「私の地元に来てくれてありがとう」って言ってくれるので、今回、行けてよかったって思いながら回ってました。

井上 本当に「来てくれてありがとう!」ってめっちゃ言われます。そんなに待ち望んでくれてる方がいたんだなって思うと、行く甲斐もありますよねね。

和田 初めてのところが多いからかもしれないんですけど、以前よりも声を出して応援する人が少なくなっていて。東京のワンマンでやってるホール公演の雰囲気が広まり始めたのかなって思いました。私としてはやりやすいですし、お客さんの声援の量で盛り上がりが変わるよりも、ちゃんと自分たちが魅せたいものを作れていていいなと思ってます。

コショージ ただ、新曲を1フレーズずつとか、ちょっとずつ披露してきたんですけど、意外とあんまり感想はなくて。

井上 確かに。でも、特典会の時に「あれ、新曲?」とは言われたよ。だから、気になってる人はいると思う。

(笑)ブクガの場合は、リリース前だと掴みきれないところがあるんじゃ無いですかね。何か事件やハプニングはありましたか?

和田 福島公演の日に寝坊しました。でも、前日に福島に移動していたので、ホテルから徒歩で向かうだけで済みました。本当に良かったです。

井上 リハーサルがあるから昼集合だったんですけど、「今起きた」って。

コショージ 私も寝坊しました。私の場合は、新潟に行く当日だったんですけど、朝8時集合で、同じ事務所のクマリデパートと一緒の車で行くことになってて。結局、集合時間には間に合わず、違う車で向かったら、先に出た車を追い抜いてって。帳消しになってました。

矢川 私はその新潟でのライブで結構ミスしまって。フリもミスしたし、歌詞も間違ってしまって。歌詞を間違うとリズムも取れなくなるし。大迷惑をかけてしまって。

井上 すごかった。4曲に1回は間違えてたよね。

矢川 集中力が足りてないなって思って。なんなら今もまだ引きずってます……。

確かにまだ落ち込んでますね。

コショージ 私が詰めました(笑)。リハで結構間違ってて。「練習しなくて大丈夫?」って聞いたら、「もう大丈夫」って言うんですよ。でも、本番、めちゃめちゃミスってて。

矢川 新曲はリズムを間違えて歌詞を忘れるっていう失態を演じてしまいました。新曲以外も3曲くらい間違えて。

井上 初めて見る間違とかもしてて。ボロクソだった。心配になりました。大丈夫かなって。

矢川 終わりまで引きずり、今も引きずり……。

コショージ そんな落ち込む話を自分で言わなきゃいいのに。

矢川 いや、でも、ね、反省の気持ちが……。

では、皆さんは、何かに失敗して落ち込んだ時にどうやって回復していますか?

コショージ 最近、ヴォイトレとダンスレッスンをやってて。めっちゃ筋トレが厳しいんですよ。だから、チョコを食べてます。チョコ美味しい、だから、大丈夫ってなります。

和田 私は……お酒。あはははは。

井上 大人か!

和田 でも、最近、そんなに気分が落ち込む事ないので、寝たら元気になります。

井上 私も寝たら忘れます。昔からそうですね。

矢川 落ち込んだ時……記憶を失くす? いや、忘れてないかもしれない。

井上 でも、今回は練習したら解決するじゃん。やればいいだけじゃんって思っちゃう。

矢川 うん。そうだね。

和田 次だよ、次!

矢川 (小さい声で)はい、頑張ります……。

(笑)矢川さんにトラウマを与えた新曲の話に移りたいと思います。「闇色の朝」を最初に受け取った時はどう感じました?

和田 サビかっこいいって思いました。今まではAメロの7拍子の複雑さに対比するようにサビが4拍子でポップっていう曲が多かったんですけど、この曲はサビのリズムの方が複雑に感じて。お、これは、また新しいことをやってきたなと思いました。

コショージ めっちゃ難しいじゃんと思いましたね。これ、ブクガを知らない人が聞いて、いいって思えるのかなって。

井上 確かに難しいと思ったんですけど、間奏空けのBメロに入るところがカッコいいなと思いました。

矢川 私も難しいなと思ったんですけど、レコーディングをしてから改めて聴くと、リズムが面白かったり、Bメロの前に間奏がある所がブクガっぽいなって思いました。

間奏の部分、<蟲たちの電車>がきますよね。

井上 虫がめっちゃ来てますよね。最初は私も嫌でしたね。キモ! って思った。でも、『NARUTO』に油女シノっていう蟲使いがいるんですけど、私はずっと、シノだ!って思ってました。以上です!

(笑)歌詞はどう捉えました? 前作では長い夜が明ける予感がありました。

井上 朝はきたけど闇色でしたね。

コショージ うん。まだ夜っぽい朝ですね。時間的に明け方かな。そして、天気が悪いです。現場からは以上です!

井上 あはははは。スタジオにお返しされた。

強い意志を持ってますね。一人で生きるぞっていう感じでしょうか(井上)

Maison book girl井上 唯 エンタメステーションインタビュー Maison book girl井上 唯 エンタメステーションインタビュー Maison book girl井上 唯 エンタメステーションインタビュー

(笑)現場のコショージさん、周りに何か見えますか?

コショージ 地面は土っぽくて、周りには人はいないです。何にもないですね。土と木と、壊れた街が見えます。

和田 今までは、窓の中から見た景色とか、遠くを眺めてもせいぜい街だったりするんですけど、急に砂漠や海が出てきて。すごく壮大な俯瞰で見ている感じがしました。

コショージ そうだね。部屋からは出てますね。

井上 強い意志を持ってますね。一人で生きるぞっていう感じでしょうか。

矢川 私は、鯨工場から長い夜が明けて、バッとひらけた地点に立って歌ってる感じがしました。砂浜かな。海から出てきて。

え? 海から来たの? <青き小さな体>と言ってるけど。

矢川 海の底から上がってきて、遠くに光も見えて、これからっていう感じかな。

最後の<鮮やかに晴れた夜>っていう部分を今までにないくらい明るめの声を出してみたんですね(和田)

Maison book girl和田 輪 エンタメステーションインタビュー Maison book girl和田 輪 エンタメステーションインタビュー Maison book girl和田 輪 エンタメステーションインタビュー

では、レコーディングはどんなアプローチで臨みました? ライブでサビの4人のリズムが合うと気持ちよさそうだなって思いながら聞いてたんですが。

和田 レコーディングの時も「サビはリズム命」って言われてました。だから、すごくリズムを意識して録ってますね。あと、私は、最初に声出しを兼ねて、全部さらっと歌ってみてっていうのがあって。最後の<鮮やかに晴れた夜>っていう部分を今までにないくらい明るめの声を出してみたんですね。そしたら、レコーディングの本番で、「さっきのやつよかったから、それでやって」って言われて。あ、これからもいろいろと試してみようと思いました。

井上 サビは結構、力が入ってた気がします。強い気持ちで歌いました。

矢川 私は前回の「長い夜」が頑張って必死に歌う感じだったので、それよりはかっこよく、しゅっと歌おうかなっていう気持ちで臨みました。

コショージ サクライさんはいつも「こういう風に歌って」言わないんですけど、今回は「かっこよく、男前に」って言ってきて。男前とは ?って考えてみたんですけど、割と大げさにやろうと思って出てきたのが、カミヤサキ(元Bisのハンサム担当)で、それでやったら「やりすぎ」って言われたので、カミヤサキを消して、自分でやりました。

雨が上がって、ようやく晴れていくのかな?

和田 そうですね。私もそう思ってやってみたので、意思の疎通が取れていたようです。

最初のイントロがヒーリングミュージックみたいな感じだなって思ったので、歌いかたも寝ちゃいそうなイメージで歌いました(矢川)

Maison book girl矢川 葵 エンタメステーションインタビュー Maison book girl矢川 葵 エンタメステーションインタビュー Maison book girl矢川 葵 エンタメステーションインタビュー

2曲目「シルエット」はバラードになってます。

和田 1年以上前にサクライさんが「歌割りをどうしようか」って悩んでた時に、「唯ちゃんやコショージの声は個性的だから、和田とあおいちゃんのパートの比率が多くなっても、アクセントとしてポンと使うと、うまい具合に効いてくるんじゃないですか」って言ったことがあって。それから、そういう歌割りの曲が増えてきたんですけど、今回もまた、そうなってて。特にサビの入れ替わりの地点が、4人に声質が違うだけに目立つなと思って。すごい好きですね。

井上 この曲に合った歌い方はなんだろうなってやり方ができるようになったので、レコーディングの臨み方や歌いかたも昔とは違ってますね。難しかったんですけど、テンポがゆっくりな分、歌をよく聴いてもらえるといいなと思います。

矢川 「夢」に続く安眠効果がすごい曲だなと思って。最初のイントロがヒーリングミュージックみたいな感じだなって思ったので、歌いかたも寝ちゃいそうなイメージで歌いました。

<朝>や<恋>という言葉が入ってますね。

井上 恋って珍しいですよね。でも、ジブリっぽくないですか。蛙がいるし。

コショージ それ、千と千尋じゃん。

井上 うん、私は『千と千尋の神隠し』みたいなイメージだった。神立ちの声も呼んでるし。

コショージ 確かに<淡い恋は、線路沿いで息をしてる>って言ってますけど、もしかしたら、すごく遠い記憶をそこに写しているのかもしれないですね。

誰もいない街を歩いてますもんね。

コショージ あと、ピンクっぽい要素があるんですよ。「闇色の朝」は濃いグレーとか、深い緑のイメージがあって。「シルエット」は白と淡いピンク、そして、透明というイメージがある。そのシルエットの色が映ってるっていう。ぼんやりしているようですけど、自分はそこにいるなっていう感じはしますね。確実に現場にはいますね、私は。そして、最後に“僕ら”が花束を流してます。以上、現場のコショージでした。

コショージさんありがとうございます(笑)。そして、ポエトリーリーディグ「告白」なんですが……。

コショージ 怖いのがいいなって思って。

あれ、めっちゃ怖い!

コショージ あはははは。食い気味でしたね。最近あんまり。実は前回の「まんげつのよるに」の世界と繋がってて。「音がうるさい」とか、「月」とか。前回の子がかわいそうになっちゃったので、かわいそうじゃないよっていうことで繋げてますね。

矢川 「シルエット」でいい感じになったのに、「告白」でまたドキドキさせて、不穏な感じで終わって。ああ、寝かせてくれないなって。

和田 決定的な単語を言っちゃいけないってなって、削った部分があったんですよ。残ったセリフの中でニュアンスを出さなくちゃいけなくて。言い切れないので、伝わるように読まなきゃなって思いながら読みました。

井上 ドラマ『ストロベリーナイト』がめっちゃ好きで。『ストロベリーナイト』みたいだねって言ったら、「そんな感じ」って言われて。だから、『ストロベリーナイト』を意識してやったんですけど、出来上がりは、『世にも奇妙な物語』でした。あはははは。

(笑)だって、足跡や水の音がいつの間にか木魚になってるし、殺される人も殺す人も登場人物が全員、自分で……。

井上 怖い話ですよ。無間地獄ですね。

「彷徨う」っていう意味があるらしくて。かつての世界から抜け出して、今、彷徨ってるんだなって感じですね(コショージ)

Maison book girlコショージメグミ エンタメステーションインタビュー Maison book girlコショージメグミ エンタメステーションインタビュー Maison book girlコショージメグミ エンタメステーションインタビュー

3曲揃って、タイトルが「umbla」となってます。

コショージ  「彷徨う」っていう意味があるらしくて。かつての世界から抜け出して、今、彷徨ってるんだなって感じですね。

和田 今回、リズムとか、結構、難しいことに挑戦してるなって感じてて。最初にコショージが言ったように、これが果たして、世間に通用するのかっていう不安はあるんですけど、これで好きになってくれた人は、今までの曲も好きになってもらえる人なのかって思っているので、出来るだけ多くの人の耳に届いて。ブクガを気に入ってくれる人を見つけられたらいいなと思います。

井上 「SOUP」とは違う印象だけど、ブクガっぽいなっていう1枚になったと思います。たくさん聴いて欲しいです。

矢川 CDを聴いて、ライブに来てください! もう二度と間違えないように練習して頑張るので、「闇色の朝」のパフォーマンスをぜひライブで見て欲しいです。

New single「umbla」/ LIVE HOUSE TOUR 2019 特設サイト
https://www.maisonbookgirl.com/umbla/

その他のMaison book girlの作品はこちらへ。

ライブ情報

イベント、ライブの情報はオフィシャルサイトで

Maison book girl

矢川葵、井上唯、和田輪、コショージメグミ、による4人組グループ。通称「ブクガ」。音楽家サクライケンタが楽曲から世界観の構築まで、トータルでプロデュースを行う。その独特且つ前衛的な音楽性、他には類を見ないパフォーマンスが話題となり2016年にメジャーデビュー。2018年よりポニーキャニオンに移籍し、「ビバラポップ」への出演や、イギリス・ブライトンでの国際音楽フェス「THE GREAT ESCAPE FESTIVAL2018」に日本代表として出演、「ピッコマ」のCMタイアップ獲得、NHK「シブヤノオト」での初歌唱パフォーマンス披露、など活動の幅を拡げる。2019年は3月より名古屋・大阪・福岡でワンマンライブを行なった後、4月3日にシングル「SOUP」をリリース。4月には自身最大規模となるワンマンライブ「Solitude HOTEL 7F」を昭和女子大学・人見記念講堂で開催し大成功を収めた。6月〜7月にかけ、自身初となるライブハウスツアーを全国9都市で開催した。

オフィシャルサイト
https://www.maisonbookgirl.com

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