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ふたつの『真 流行り神』が目指し、突きつけてきた底力

ふたつの『真 流行り神』が目指し、突きつけてきた底力

紹介するのは、『真 流行り神1・2パック』。同作の1作目と2作目が入ったとてもお得なソフトだ。筆者は『流行り神』シリーズを追いかけているプレイヤーだったので、『真 流行り神』1作目、2作目ともにそれぞれの発売日に遊んでいるが、もう一度両作品を最初からプレイしてみた。そうすると不思議なことに当時感じなかった発見があり、“つながり”を知っているからこそ感心できる部分が多く出てきた。
ホラーアドベンチャーゲームとしての新境地にチャレンジした1作目、そして1作目でプレイヤーからのフィードバックをもとに磨き上げられた2作目。両作品はもともと発売時期がずいぶんと空いていたため、頭では“つながっているもの”と理解していても、ぼんやりとした記憶を辿りながらプレイした部分も多かったのだろう。そのうえ、それぞれが独立した作品として遊べるよう設計されていたことで、どちらも「よかった」という風に別々で記憶に収まっていたように思う。本稿では、両作品の魅力と続けてプレイすることで沸き上がってきた感想をお届けする。

文 / 浅葉たいが


賛否分かれた1作目『真 流行り神』を振り返る

『真 流行り神』は、ホラーアドベンチャーである『流行り神 警視庁怪異事件ファイル』シリーズの人気を受けて開発された作品だ。『流行り神』シリーズでは奇妙な事件や事象に対して、“科学的な視点”か“オカルト的な視点”、どちらのスタンスで捜査を進めるかによって物語の展開が変わる。刑事を主人公にしつつも柔軟な視点で謎を追うというユニークな構成が、一粒で二度おいしいアドベンチャーゲームとして人気を博した。

真 流行り神1・2パック エンタメステーションゲームレビュー

▲『流行り神』シリーズの構造的なお約束を一部廃止し、新しいホラーを描こうとした『真 流行り神』。プレイヤーは特殊警ら課の巡査である主人公“北條紗希”の視点を通じて、さまざまな怪事件と向き合うことになる

『真 流行り神』には大きな変化が見られた。まず、科学orオカルト形式の分岐が取られておらず、大きな幹となる物語から途中の選択肢によって全く異なる物語へと分岐していく。そしてその分岐先の物語は登場人物たちの性格や立ち位置が大きく異なる並行世界、”パラレルワールド”のように扱われている。主人公の目を通して、いろいろな世界を眺めるという構造がこのゲームの大きな特徴ではあるのだが、登場人物への理解が追いつかないという声が当時はあったようだ。
一番の強みともいえる“ホラー”要素もずいぶんと変化した。本作のホラー表現は、グロテスクな表現を意表を突く形で打ち込んでくる。従来の『流行り神』シリーズは物語中にじめっとした心理・状況描写を持ち込むことで、恐怖を含んだ空気を作り出していた。プレイしている間、特に怖いことがなくても不思議な緊張感があったのだ。対して本作の場合は、対象年齢18歳以上のみというレーティングどおりの強烈なグラフィックがメインとなっている。筆者の個人的な印象だが、本作は海外映画などでよくあるパニックホラー的な怖さで、過去作はサイコスリラー寄りの怖さをウリにしているように感じる。

真 流行り神1・2パック エンタメステーションゲームレビュー

▲家庭用アドベンチャーゲームとしてはかなり攻めたイベントCGも。じわじわと来るタイプの恐怖ではないため、この恐怖表現も過去作からの大きな変化だった

システム面には新要素である“ライアーズアート”が加わった。これは主人公の得意とする心理戦をゲームシステムとして組み込んだもので、作中のキーマンに質問を投げかけたりアクションを見せることで、信頼を得たり動揺を引き出したりしつつ情報を得るというものだ。通常の選択肢と違い、相手によって自分の本心ではない“嘘”をつく必要もある。
アドベンチャーゲームでおなじみの攻略法である、テキストを読んでもっともらしい選択肢を選ぶだけではないのが魅力で、このシステムが導入されたことでよりゲーム的なプレイ感が強化されたのは確かだ。しかし、1作目におけるライアーズアートは、北條紗希がまだ経験の浅い刑事であることを踏まえてか、必ずしも正解を引き出せるシステムにはなっていない。ストーリーと合わせて楽しむシステムというのがここでのライアーズアートの位置づけだ。

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▲ライアーズアートは、一見どれを選んでいいかわからないため最初は戸惑うはず。リトライする機能なども充実しているので、総当たりするつもりでプレイするのもいいだろう

こう書きだしただけでも、かなり思い切った変化を遂げていることがわかる。通常のシリーズ作品はお馴染みの要素を尊重し残すこともあるが、本作の場合は大胆に舵を切っている。筆者が最初にプレイしたとき、タイトルにある“真”ではなく“新”の方向を目指した作品であると受け止めたほどだ。ただ、今までと同じ『流行り神』ではないと考えて本作をプレイしていくと、ホラーとしては申し分ない出来栄えだと感じた。パラレルワールド的描写で実像がつかめない登場人物たちも、ホラーゲームの要件として重要な“違和感”の担い手で見事だ。しかしやはり、過去のシリーズ作品が築いてきたお約束や魅力とは違う方向を歩んだことで、発売後の感想やレビューは大きく割れてしまった。本作を楽しむコツがあるとしたら、過去作のことを忘れてプレイすることと言っても過言ではないだろう。プレーンな気持ちで楽しめばユーザーインターフェースなども秀逸で、日本一ソフトウェアが本作に注いだ情熱というべきものが随所から伝わってくるはずだ。実際、筆者の周囲を見回してみると、過去作のファンであったという人には本作に物足りなさを感じたという意見も多く見られた。対して、本作から『流行り神』ワールドに入ったという人は、満足したという意見が多かった。

新境地へのチャレンジを諦めなかった2作目『真 流行り神2』

2作目は、1作目に寄せられたユーザーからの“厳しい意見”をもとに開発された作品である。『流行り神』らしさともいえる、科学ルート、オカルトルートの分岐が復活し、物語も一話完結型のオムニバス形式となった。発生する奇妙な事件に対して科学的に捜査を進めるのか、オカルトとして捉えるかで、物語の流れが大きく変化する仕組みに戻ったというわけだ。両方のルートを遊んで初めて見えてくる真実もいくつかあるので、一粒で二度おいしい『流行り神』が帰ってきた。筆者は、シリーズものであっても新しいチャレンジを行った作品に惹かれる性質なので、発売まえに情報をチェックしているとき“不評だった部分を元に戻した作品”ということがとにかく気になって仕方なかった。せっかく試みた変化を捨ててしまうのか、と残念に思ったからだ。しかし、そんな懸念はプレイしてすぐに払拭された。第一話、第二話の時点でとてつもない底力を感じたのだ。

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▲1作目のようにパラレルワールド的な展開ではなく、登場人物の性格や立ち位置もがらりと変わることはないため、どちらのルートを選んでも登場人物への愛着は失われない

サスペンスとしてのクオリティが高く、結末を予想しつつプレイしていても真実は意外なところにあるパターンが多いことに驚かされた。1作目がグロテスクなホラー描写で攻めてくる作品だったのに対して、本作はじわじわと恐怖を広げていく細やかなテキスト描写もある。恐ろしい出来事が“なぜ”起きたのかという部分を深く掘り下げることで、豊かなドラマが描かれているのだ。本作の第二話“半分こ”という物語は、数あるホラーアドベンチャーのなかでも屈指の出来栄えだと思う。身体をまっぷたつに切断された遺体が連続して見つかり、その猟奇事件にはある姉妹の“半分こ”へのこだわりがリンクしていることが判明する。科学ルートとオカルトルートでクライマックスは異なるが、どちらもかなり衝撃的な展開となっている。筆者はサスペンスのノベルやドラマを好んで鑑賞するのだが、本作のように科学やオカルトをテーマに盛り込んだ作品も多い。そんな日常もあって、こういった作品ほど先の展開を予想して、「ほら当たってた」なんて言いながら楽しんだりするのだが、本作のほとんどの話が想像とは違う方向に飛躍していく。こうした感覚に陥らせてくれるサスペンスアドベンチャーはなかなか稀だ。物語に溢れた現代において、予想好きプレイヤーの予想を裏切るというのはなかなかできることではない。ついこの間、エンタメステーションでレビューを書いた『じんるいのみなさまへ』でも同じような感想を書いたが、日本一ソフトウェアのアドベンチャーゲームの多くは、意外な棘を隠し持っているのだ。

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▲第二話“半分こ”は冒頭から衝撃的なシーンが続く。しかし、ただグロいだけではないのが2作目の大きな魅力。物語は意外な結末を迎える

筆者の大好きな話、第四話“都庁の秘密”についても少し紹介しておこう。この話はタイトルのとおり、東京都庁舎を舞台にテロ計画と荒唐無稽な“都庁ロボ”が絡まり合う、ややコメディ色の強い物語だ。ホラーテイストの強い本作において、第四話は箸休め的に用意された話と考えられるが、プレイヤーを置き去りにしないギリギリのハイスピードで空想なのか現実なのかわからない物語が進んでいく。アドベンチャーゲームのシナリオというのは、プレイヤーの好みで良し悪しが分かれがちだが、まさにこの話は本作におけるトリックスター。筆者のようにこの物語が焼き付いて離れないプレイヤーもいれば、狐につままれたようにぽかんとしてしまうプレイヤーもいるだろう。

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▲「都庁ロボってなんだ!?」という方は、ぜひ第四話を遊んでほしい。北條紗希と言い争っているのは、2作目での相棒となる愛染刹那(あいぜん せな)。見た目から察する方も多いだろうが、強烈な個性を持つ人物だ

両作品を続けてプレイすることで見えてくるもの

今回、筆者はこの両作品を続けて遊ぶことで、その変化と進化をより一層味わうことができた。1作目は先に書いたように従来の『流行り神』シリーズとは異なる新しさを目指した作品で、2作目はシリーズに立ち返った部分が多い。こう書くと、2作目が最近のゲームのキーワードのように使われる“原点回帰”だけを目指した作品のように感じるかもしれないが、そんな単純なものではない。物語には過去作を乗り越えるほどの深みと新しさを持たせ、新主人公として抜擢された北條紗希という繊細なのに強くあろうとする人物の成長を描くことを諦めなかった。
1作目ではやや不甲斐なかった彼女が、2作目ではトラウマを抱えながらも成長した姿と、それでももがきながら懸命に真実を追求する様子が描かれる。1作目で起きる事件は理不尽そのものだが、その経験があったからこそ2作目の北條紗希に迫力があるのだ。もちろんこれは狙っていたものではなく、2作目が1作目を受け止めるように作られたからなのだが、これを実現するためには制作側の相当の苦心があったはずだ。

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▲一気に遊ぶことで、両作品の結びつきや変化がより鮮明にわかる

筆者はここ数年の日本一ソフトウェア作品を買い続けている。もともと同社の人気IPである『ディスガイア』と『流行り神』シリーズを遊んでいたのだが、『真 流行り神2』に関するいくつかのインタビューを読んでから、新規IPも追いかけ始めたのだ。それらのインタビューでは同社代表取締役の新川宗平氏が、1作目で受けた批判のこと、同時に1作目が好きと言ってくれているプレイヤーもいること、その両方を受け止めたうえでより多くの人に遊んでもらうために一部の好評だった要素を過去作に近づけることにした、と語られていた。そのうえで2作目ならではの見どころをはっきりと語り、なぜそうしたかという理由も明示していた。ただのPRインタビューではないということが、読んですぐに伝わってきた。2作目のシナリオライターのひとりが新川社長というのもあるのだろうが、どういうロジックのもとに2作目が作られたのかということがはっきり語られていた。アドベンチャーゲームはシナリオの内容や構造によって評価が大きく分かれる。そしてそれは究極的には“好み”の問題になるのだが、1作目で分かれた評価を分析し、新作へ活かすというスタンスに感銘を受けたのだ。筆者が2作目を好きな理由は、制作側が力を入れたと語る部分と自分が好きな部分で重なるところが多く、そこに“プレイヤーをじっと見つめたクリエイティブ”があったのだと確認できたからだ。その日から、日本一ソフトウェアと新川社長の作品が気になっている。こう書くと日本一ソフトウェアの回し者みたいだが、筆者が一方的にファンを自称しているだけだ。さらに正直に書くと、チャレンジスピリット溢れる日本一ソフトウェアの新規IPには、自分には合わないものもいくつかあった。

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▲用語集として機能するおまけ要素のひとつ“F.O.A.F.データベース”。用語の説明文もボリュームがあり、読み物として楽しめる(画面は2作目)

一度、名刺も持たずに、徳島県で行われた“マチ★アソビ”というイベントでファンのひとりとして新川社長と話させてもらったことがある。2作目が面白かったこと、続編があれば絶対に遊びたいことを伝えると、「3作目もぜひ作りたいですね」とにこやかに応じてくれたのがとても印象的だった。なぜか同社のマスコットキャラクターでもあるプリニーの帽子をかぶっていた。新川社長の等身大ポップなども置いてあって、日本一ソフトウェアのブースが渾沌としていたのも思い出深い。あれから随分経ち、続編の目はないかなと思っていた頃、Nintendo Switch™で1作目と2作目をパックにした作品が出ることを知って心が躍った。本作の反響によっては“次の展開”もあるかもしれない。

最後に余談になるが、2019年8月3日、4日は日本一ソフトウェアの所在地である岐阜県で全国エンタメ祭り“ぜんため”が開催される。実は2作目の舞台として登場するG県とは岐阜県をモチーフにしたもので、作中には実在の建造物やグルメなどが登場する。作品の舞台探訪をするにはまたとない機会なので、興味のある方は急いでプレイを終わらせて同イベントに行くのもいいだろう。ぜんためは、さまざまなゲームやアニメを軸とした大がかりなイベントで、商店街を会場として使うため不思議な居心地の良さもある。各企業のスタッフとの距離も近いので、話しかけられそうなチャンスがあれば、ゲームの感想を伝えてみてはいかがだろうか。

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▲ぜんための様子と前出のポップ。筆者は今年も行く予定。日本一ソフトウェアも出展予定だ。岐阜県は食べ物がとても美味しいので、グルメの旅も楽しめる


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※募集期間は終了致しました。

8月2日(金)~8月9日(金)消印有効

・応募は日本国内にお住まいの方に限らせていただきます。
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・賞品および当選の権利は当選者本人のものとし、第三者へ譲渡・転売することは一切禁止させていただきます。譲渡・転売が発覚した場合、当選を取り消し賞品をお返しいただく場合があります。

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・お客様からいただいた個人情報は、当キャンペーン当選者様へのお問い合わせのために利用いたします。なお、個人情報を当該業務の委託に必要な委託先に提供する場合や関係法令により求められた場合を除き、お客様の事前の承諾なく第三者に提供することはありません。上記をご承諾くださる方のみご応募ください。


フォトギャラリー
『真 流行り神1・2パック』ロゴ

■タイトル:真 流行り神1・2パック
■メーカー:日本一ソフトウェア
■対応ハード:Nintendo Switch™
■ジャンル:ホラーアドベンチャー
■対象年齢:18歳以上のみ
■発売日:発売中(2019年7月18日)
■価格:通常版、ダウンロード版 各4,980円+税


『真 流行り神1・2パック』オフィシャルサイト

©2019 Nippon Ichi Software, Inc.