LIVE SHUTTLE  vol. 361

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家入レオ 初の幕張メッセで魅せた、歌の力。圧巻のツアーファイナルを振り返る。

家入レオ 初の幕張メッセで魅せた、歌の力。圧巻のツアーファイナルを振り返る。

家入レオ7th Live Tour 2019 〜DUO〜
2019年7月27日 幕張メッセ国際展示場9.10ホール

前回の『TIME』ツアーから1年。わずか1年でここまで人は変われるものかと、正直なところちょっと怖くなった。それくらい今回の家入レオのライブは素晴らしかった。 言葉をなくすとはよく言ったもので、本当に驚いたり感動したりすると、言語を操る左脳は大きく揺れ動いた感情に追いついていけないようだ。この日のライブ終演直後、まさに左脳は完全に動きを止めていた。いや、動くこと自体を放棄していたと言ったほうが正確だ。そのとき出てくる言葉と言えば「すごい……。すごいものを見た……んだと思う……」だけだった。

7月27日、心配されていた台風の影響もなく定刻にスタートしたツアーファイナル公演は、強烈なビートのエレクトロサウンドとスタイリッシュな照明や映像で幕を開けた。そんななか、青いラメ素材のワンピースに身を包んだ家入レオが登場した瞬間、会場内の空気は一変。一瞬にして家入レオの色に空間が染め上げられ、心地よく一気に家入ミュージックの世界に引きずり込まれていく。

家入レオ エンタメステーションライブレポート

オープニングは、まずはニューアルバム『DUO』からの曲が披露される。大切な人に対して正直であればあるほど一人になっていくという不条理をも感じる「Prime Numbers」。続いて、ひとつの愛を両面から描いたとも言える「愛してないなら」と「もし君を許せたら」。“二つのPulse 重なり合う夜”をはじめ、最高の夜を予感させる歌詞が耳に残る「Neon Nights」。この4曲を聴いたところで、いともやすやすと歌の世界に染まっていく家入の姿に目を奪われた。まさに“歌に魅入られた人”といった佇まいで、自ら歌のなかに身を投じていく。けれども歌に飲み込まれるわけではなく、逆に歌を味方につけていく。そのあたりの存在感は、とてつもなかった。

それは次の、耳馴染みのあるドラマ主題歌「君がくれた夏」「Silly」「ずっと、ふたりで」の3曲でさらに際立つことになる。オリジナルとは違いエレキベースとボーカルで始まった「君がくれた夏」は、数年前に日比谷野外大音楽堂で聴いたときに感じた青い果実を思わす爽やかさが、とても遠い昔のことのように思い出された。「Silly」でもサウンドとボーカルで抑えた感情がスパークする様を見事に表現してみせ、「ずっと、ふたりで」は大きな気持ちを包容力のあるボーカルで歌い……、この3曲だけでもシンガーとしての存在感を否応なく見せつけられた。まだライブ全体の半分弱が終わったところであるにもかかわらず、すでに本編ラストのような充実感を感じた。

ここでファイナル公演のみのスペシャルゲストが迎えられる。ソングライターとしてだけでなく、シンガーとしても「声を取り替えっこしたいくらい」好きだという、前作アルバム『TIME』のときから楽曲提供をしている尾崎雄貴(BBHF)が登場し「Relax」を共演。この「Relax」、毎回、会場からのリクエストに応じてジャズ、ボサノバ、お祭り、ロック……というようにスタイルを変えて演奏していた曲。この日も「何バージョンがいいですかー?」と観客に問いかけ、「ロックが多いってことは盛り上がりたいってことですかね?」とガッツリとロックバージョンで演奏。尾崎雄貴のやや高めで甘いけれど男っぽい声とのデュオは、オリジナルのヒンヤリした雰囲気を一新。とても面白いコラボレーションとなった。

ここからの展開がまた素晴らしい。ピンクのポピー、背中にファスナーがついた黄色いクマのぬいぐるみ、遊園地、クマの手に握られたナイフといった、歌詞のキーワードからイメージされた絵が映像として見せられるなか歌われた「JIKU」は、ある意味、今回のライブのひとつのハイライトだったと思う。楽曲を提供した小谷美紗子によって容赦なく代弁された、揺るぎのない自分と向き合おうとする姿勢が、アルバムで聴いていたときの数倍力強く届いてきた。またそういう曲を、ときおり微笑みを浮かべて歌う家入レオが、怖いくらいきれいだった。

その「JIKU」のあとは歪んだエレキギターで始まる「Whenever」。かなりエッジの立ったエレキギターの音色に引けをとらず、バックビートを感じながら歌う声の存在がなんともかっこいい。次の「この世界で」は語りかけるように、伸びやかに、壮大に……と、曲のなかでいくつもの色の声が聴ける、ボーカルの力でどんどん曲が広がっていく様も印象的な1曲だ。

バンドがインストで繫いでいる間に衣装チェンジ。黒字に真紅の花があしらわれたワンピースに着替え、「Bicolor」をリズムに乗って実に軽く、だがクッキリと歌う。続いて明るく張りのある声でグイグイとオーディエンスを引っ張っていく「Spark」を歌ってからの3曲が、またしてものハイライト。

家入レオ エンタメステーションライブレポート

アルバム『DUO』で聴いたときより数段階進化していた「Overflow」と「ファンタジー」(『TIME』収録)は、“令和の歌姫”か“これからの女性ロッカー”かというくらいのど迫力ぶり。ボーカルもさることながら、歌に身体が追いついてこない!というように、なりふり構わず身体を揺らして歌う姿は、もはや圧巻。この2曲でさらなる高みに向けスイッチの入った家入レオは、ここで「Bless You」を持ってくる。

実際、この3曲の繋がりは最高だった。かつて血の滲む傷を見つめるような痛みとともに歌われていた「Bless You」は、今やそれさえ静かに受け入れたかのよう。“愛なんていつも曖昧で もう 祈る価値ないよ”という歌詞も、より深みを増した。今は、価値がないから価値がある、と言われているようにさえ感じたほどだ。その意味で楽曲が発表された当時より、曲のメッセージが数倍広く深くなってると思った。それにしても、この曲を歌っているときの目力は、怯むほどの力があった。

「今歌った『Bless You』は17歳のときに作りました。これから歌う曲は24歳のときに作った曲です。10代でデビューしていろんな人に出会っていろんな素敵な音楽に会いました。その都度その都度自分がやりたいと思う音楽をやってきて。歌詞も変わって、メロディも変わって、いろんな声があって。でも大事なことは生まれてから死ぬまで、わたしの魂の形は絶対変わらないということです」と話してから歌われた本編ラストの曲は、予想どおりアルバム『DUO』でも最後に収録されていた「サザンカ」。

アルバムインタビュー時には「『サザンカ』のラストのピアノを聴きながら、やっとここまで来た、やっと自分の人生がここで一つ区切りがつくのかもって思ったら、もう涙が止まらなくて」と語っていたこの曲は、胸の奥にずっと抱えてきた問いへの答えだったのかもしれない。おそらく今の気持ちそのものだろう、曲の終わりの“いつも いつも 愛されていたと知ったから 歩いていくよ 今日も 歌っていくよ 明日も”をアカペラで歌い、そのあとアコースティックギターを手に満面の笑みでバンドメンバーと一緒に長いアウトロを演奏した。

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アンコールはツアーTシャツ&スキニージーンズ&ポニーテールで登場。「最後の曲を歌ってて、次の未来が見えた!」としながら、鍵盤ハーモニカの演奏も交えて「めがね」を披露。間髪入れずにデビュー曲「サブリナ」を花道に続くサブステージでオーディエンスと一体になって熱唱し、ラスト曲は「Bouquet」。歌に寄せる気持ちと、聴いてくれる人への想いがあふれるほどに詰め込まれたこの曲は、この場にもっともふさわしい1曲だった。そういう気持ちもあってラスト曲に選んだのだろうが、あふれる想いは、家入レオの涙をもあふれさせた。手の甲で涙を拭いながら歌う姿は、涙を見せることさえ禁じていただろう「サブリナ」を作った頃の自分への想いのようにも感じられた。

予定ではここでメンバー紹介をしてライブは終演、のはずだったのだが──。バンドメンバーを送り出したあと「最後にギターの弾き語りで1曲お届けしてもいいですか?」と、急遽1曲が追加で歌われた。「こんなに大きな会場で歌っているのに思い出したのが福岡の実家の自分の部屋だったんですよ。なんでだろうね(笑)。この曲が、今の事務所とレコード会社に持ち込まれて、デビューすることになった曲です」との言葉に続いて披露されたのは、第1作目のアルバム『LEO』に収録されている「Say Goodbye」だった。

デビュー7年、17歳だった少女は24歳になった。そして歌を聴かせる場としてはリスクもある幕張メッセという場所で、歌の力でオーディエンスの目と耳を釘付けにするアーティストへと成長した。曰く「ネクストステージ感がすごくある」と言った6枚目のアルバム『DUO』、それを携えたツアーも大きな実りをあげた今、家入レオはどんな“ネクストステージ”を見ているのだろう。それがどんなものになろうとも、抗いようもなく素晴らしいものになることだけは、すでに約束されている。

文 / 前原雅子 撮影 / 田中聖太郎

家入レオ 7th Live Tour 2019 ~DUO~
2019年7月27日 幕張メッセ国際展示場9.10ホール

セットリスト
01.Prime Numbers
02.愛してないなら
03.もし君を許せたら
04.Neon Nights
05.君がくれた夏
06.Silly
07.ずっと、ふたりで
08.Relax
09.JIKU
10.Whenever
11.この世界で
12.Bicolor
13.Spark
14.Overflow
15.ファンタジー
16.Bless You
17.サザンカ
ENCORE
01.めがね
02.サブリナ
03.Bouquet
04.Say Goodbye

家入レオ

福岡出身。13歳で音楽塾ヴォイスの門を叩き、青春期ならではの叫び・葛藤を爆発させた「サブリナ」を完成させた15の時、音楽の道で生きていくことを決意。翌年単身上京。都内の高校へ通いながら、2012年2月メジャー・デビューを果たし、1stアルバム「LEO」がオリコン2週連続2位を記録。
第54回日本レコード大賞最優秀新人賞他数多くの新人賞を受賞。翌1月より開催の初ワンマンツアーは全公演即日完売に。
翌2013年春高校を卒業。以降数多くのドラマ主題歌やCMソングなどを担当。
2017年2月にはデビュー5周年を記念し初のベストアルバム「5th Anniversary Best」を発売。4月には同じく初の日本武道館公演「5th Anniversary Live at 日本武道館」を開催し、チケットは即時完売・大成功に収める。
昨年8 月にリリースしたドラマ主題歌「もし君を許せたら」(月9 ドラマ「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」主題歌)がロングヒットを記録する中、12月には最新ライブ映像作品「TIME ~6th Live Tour~」を、今年1 月30 日には初の映画タイアップとなる「コードギアス 復活のルルーシュ」オープニング主題歌「この世界で」をリリース。2 月24 日には7 周年を記念しての” 家入レオ7th Anniversary Live at 大阪城ホール ~Premium Symphonic Night~” を開催。ニュー・アルバム「DUO」をひっさげた” 家入レオ7th Live Tour 2019 ~DUO~”(全20 公演)も無事終了した。

オフィシャルサイト
https://leo-ieiri.com

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