Interview

Chage 3年ぶりのオリジナルアルバム。原点ともいえる音楽へアプローチへの思いを訊く。

Chage 3年ぶりのオリジナルアルバム。原点ともいえる音楽へアプローチへの思いを訊く。

Chageの3年ぶりの新作『feedback』がリリースされる。3曲の新曲と3曲のカバー(うち2曲はメドレー仕立て)で構成され、「令和にあえて昭和をリスペクト!」というのもコンセプトだという。とはいえ単なるノスタルジーではない。Chageというアーティストの音の個人史であり、同時に新たな一歩を綴ったものなのだ。
取材当日、指定された部屋に入っていった。すると奥から「いらっしゃーい!」という、元気な声が響いてきた。

取材・文 / 小貫信昭


自分が子供の頃を過した昭和がね、さらに遠くになっていくとなると、あの時代が愛おしくなってきてね

オリジナルとカバーで構成しようと思ったのは、どんな理由からだったんですか?

Chage 年明け早々から全体の構想を練ってたんですが、結果として、1曲目の「Kitsch Kiss Yeah Yeah」から作っていくことになったんです。この曲は、自分の中でのUKというか、かつてマージービートと言われていたような古き良き時代を再現したいという気持ちでもあったんです。でも、その時点で既に、年号が変わるのは分かってたし、自分が子供の頃を過した昭和がね、さらに遠くになっていくとなると、あの時代が愛おしくなってきてね。で、ちょうどその時やっていた曲が古き良きUKの…、だったこともあって、そこから広がって、自分が子供の頃の昭和の時代、テレビのなかで見ていたGS(グループ・サウンズ)のお兄ちゃん達の音楽も、浮かんできたわけなんです。

時代の節目に巡った想いが全体のコンセプトに影響を及ぼしたわけですね。

Chage 「今回は、それらをやってみるのもいいんじゃないか?」。そこからからカバーへ繋がったんです。でも、そもそもGSというのは、“日本のビートルズを作ろう”ということでもあったわけだし。

マージー・ビートというのも、イギリスにおけるビートルズ以降の盛り上がりですしね。さて、カバーの話はのちほど伺うとして、さっきも少し話に出た、1曲目の「Kitsch Kiss Yeah Yeah」に戻りたいんですが…。

Chage 仮のタイトルは“帰ってきたゲッチャ”で、“♪ゲッチャゲッチャゲッチャ”って歌ってたら“チャゲチャゲチャゲ”になっちゃって、「くだらねー」なんていいつつ(笑)、再びデモ・テープを録り直したんです。で、これは毎回のことですが、「1曲くらいは松井五郎に詞を頼もう」というのがあって。でも五郎とは、ここ最近だと「たった一度の人生ならば」とか、真面目な硬派なものやってたし、「たまにはおふざけもやんない? アルバムの楽曲だし」ということで、デモを送って返ってきたのが、この歌詞だったんです。

ノリがいいですね。イライラ、クラクラ、ムラムラ、とかって言葉も並んでる(笑)。

Chage 僕がデモで歌ってた、英語でもない日本語でもない言葉の母音や子音からタイトルも生まれたし、歌詞もその仮歌が、仮歌のままストーリーとして成立しているんですよね。このあたりはさすが五郎だなぁ、と。

これも新曲ですが「Love Balance」の話も…。これはサイケデリックな感じですね。

Chage 作るキッカケは、「内側からくる混沌としたものから書きたい」ということだったけど、なかなか書けなくてね。でも、半音づつ音を変えていくという、そんな発想に気づいたら 「あ、これだ」、というね。でも「&C」にしろ「equal」にしろ、こういうタイプはもともと好きだったんですけどね。で、「詞を書かねば…」という時、「自分の内面からのものだから自分で書こう」と思いつつ、そこに“プロデューサーの自分”も現われて、「これは前野健太君に頼もう」、と、ぱっと彼が浮かんじゃったんです。そしたら正に、この曲にハマる詞を書いてくれた。もう、これほど上手くいくと冥利に尽きるというかね。そもそも「Love Balance」ってタイトルにも震えたし。でもなんか、さっきの松井五郎じゃないけど、僕がもともと入れていた日本語とも英語ともつかない仮歌に、“Love Balance”と聞えるところがあったみたいでね。

僕がMULTIMAXでやろうとしていたことにも共通するというかね

カバー曲のほうは、「たどりついたらいつも雨降り〜あの時君は若かった」と「好きさ 好きさ 好きさ〜悲しき願い」、さらに「二人だけ」ですが、それぞれどんな意図からなのでしょうか?

Chage 「たどりついたらいつも雨降り」はモップスというバンドが歌ってたんだけど、当時、“なんなんだこのサウンドは”“なんなんだこのコトバは”と思ってクレジットみたら、吉田拓郎さんの作品でね。“うぉ〜”って思ったの覚えてます。このモップスというバンドは日本のサイケデリック・サウンドを目指していて、その後、僕がMULTIMAXでやろうとしていたことにも共通するというかね。

メドレーでほかの曲が続いていくんですね。

Chage そうなんです。「あのとき君は若かった」はスパイダースの曲です。この方達は確かな音楽性でありつつエンターテインメント性も豊かで、子供心にステキだな、楽しいなって思ってました。

もう、その光景を小学生のころに見たわけで、それ以来、ずっと焼き付いちゃったんです

もう1曲、メドレーがあります。

Chage 「好きさ 好きさ 好きさ」はカーナビーツですよ。若い方々はご存知ないかもしれませんが、ファンの女性たちが熱狂しすぎて失神し、倒れてしまうという…。もう、その光景を小学生のころに見たわけで、それ以来、ずっと焼き付いちゃったんです。でも今回、自分で歌ってみたら、曲作りや歌詞のコトバの置き方の素晴らしさとか、“なぜあんなに熱狂したのか?”ということを、改めて自分の手で、解剖することが出来たというか。

ふたつのメドレーに共通しますが、曲の繋ぎ方の妙もありますよね。

Chage 最初に話した「たどりついたら…」のほうは、ともかく西川進君にね、「歌詞の世界観も曲のキーも違うけど、メドレーにしてくっつけたいんだ!」と、そう言ったの。そしたらライブでそのままやれるようなものにしてくれてね。あと、このメドレーのコーラスは、その場に居た、みんなでやってます。そしたら「Chageさん、声、デカいですから…」って、俺だけ一番後ろのマイクから遠いところに行かされて、壁に向かって歌ってましたよ。

このアルバムの主役なのに(笑)。

Chage でも、キーも違うのに「あの時君は若かった」へと、何の脈略もなく繋がるという、それがこのメドレーの楽しいところです。逆に、「好きさ 好きさ 好きさ」と「悲しき願い」のほうは、見事に繋がって、まるで同じ一曲にも聞えるという…。

同じメドレーでも、仕上がり方が好対照というわけですね。

Chage そうなんです。スタジオに来てくれた若いプレイヤー達も、楽しそうに演奏してくれてましたよ。

ひとり気になったんですが…。TohmeiZukanていうキーボードが入ってますよね? このヒト、個性ある演奏をしますね。

Chage そうそう。もう、素晴らしくぶっ飛んだ、めちゃ上手い演奏してくれた女子なんですけどね。ただ、TohmeiZukanさんなのに、俺は間違って“透明人間、透明人間”て呼んでしまっててね。そしたら少し経ってから、“あ、あのぉ…、私、TohmeiZukanです”って。

この歌を知って、恋愛が出来るようになったくらいですから

Chageさん目上だし、名前を間違われても、なかなか言いだしづらかったんですね(笑)。あと、まさかChageさんが、あの伝説のグループ、キャロルのナンバーをカバーするとは!

Chage でしょ(笑)。なぜ僕がキャロルを歌うのか? と、誰もが思うかも知れないけど、俺のなかでは、とても自然な流れなんです。で、今回とりあげた「二人だけ」っていうのは、私の青春時代の、どストライクのラブ・ソングでね。この歌を知って、恋愛が出来るようになったくらいですから。

恋愛の指南書、みたいな…。

Chage この曲、ジョニー大倉さんが歌っていたんですけど、特に歌詞の“♪うっそじゃなぁ〜い”(ここで実際に歌ってみる)ってとことか、もうねぇ〜。

その後のChageさんのボーカル・スタイルにも影響を与えた、と。

Chage もちろんキャロルといえば矢沢永吉さんですよ。素晴らしいです。そしてジョニーさんも素晴らしい。で、歌詞はジョニーさんが書いてたんだけど、ヘンにコトバをヒネったりせず、ストレートに表現する美学というかさ。それをこの曲から学んだんですね。

「二人だけ」というキャロルの曲は、当時からよく歌ってたし・・・といっても、その後の「YAH YAH YAH」ほどの回数は歌ってないですけど(笑)

今回、サウンド・プロデュースとして西川進さんが4曲。力石理江さんが2曲担当してるのも特色ですね。西川さんのお名前は、既にこのコンタビューに登場してますが。お二人とも、Chageさんのライブではお馴染みの方々ですが、だからこそ、緻密な作業が出来たのでは?

Chage たとえば「二人だけ」は、もうこの曲は、レコーディングも“二人だけ”でよかった。なので力石さんのピアノと僕の歌だけで、しかも一発録りというか、仮歌のつもりだったものが、そのまま採用されているんです。でも「二人だけ」というキャロルの曲は、当時からよく歌ってたし、いざ録音する時も、すでに“自分の歌”になっていたというかね。まぁ、“よく歌った”といっても、その後の「YAH YAH YAH」ほどの回数は歌ってないですけど(笑)。

他にもレコーディング中のエピソードは、いろいろありそうですね。そういえば、もうひとつのオリジナル曲、「Mimosa」に触れてませんでしたが…。

Chage 実はこの曲、仮タイトルが“ダネイホン”だったんですよ。レコーディングしてた頃、NHKの朝ドラはまだ『まんぷく』をやってまして、この曲のアレンジやってもらんた力石さんのこと、僕は“福子”と呼んでいた(笑)。

てことは、Chageさんが萬平さん?

Chage そうなんです(笑)。彼女からのメールは“萬平さん”宛になってた。で、この曲はジャズの世界観でもあって、でもアメリカとは違う、たとえばエイミー・ワインハウスとかのUKのジャズっぽさ、とかって力石さんに伝えたら…、いきなりピザでも食べたくなるようなディキシー・ランドのアレンジで戻ってきた(笑)。

ただ素直には返してこないヒトなんですね(笑)。

Chage でもディキシーといっても、よく聴くと「この音はイタリアあたりの…」、とか、ヨーロッパ的な感覚もあるアレンジでしたし、これが不思議と、こうしてアルバムに並べてみると、まったく全体から浮かないというかね。

Chageというのは、どうしてこんな男になってしまったのかという、それを知る糸口がこのアルバムというか

今回の作品は、これからのChageさんにとって、どんな意味を持つものになりそうですか?

Chage こういう作品が残せたことが、本当に嬉しいです。30代や40代で半分はカバーのアルバムを出したら、「なにやってんだ」って言われちゃうんだろうけど、なんか還暦すぎたらね…。去年、ファンの方々に赤い紙飛行機をばーっと飛ばして祝って頂いて(「WINDY ROAD」という楽曲の際、紙飛行機を飛ばすのが好例となっている)、その“お祝い返し”っていうのも込めている積もりなんですけど。Chageというのは、どうしてこんな男になってしまったのかという、それを知る糸口がこのアルバムというか。

8月31日の名古屋からツアーがスタートしますが、最後に抱負をお願いいたします。

Chage 今回のジャケットをご覧頂ければ分かると思うんですが、リッケンバッカーのギターを持ってるでしょ? ここまでやって、いざステージにレスポールやテレキャス持って出ていったら、そりゃおかしい(笑)。ジョン・レノンが愛したギターなんですけど。あと、まさに1曲目の「Kitsch Kiss Yeah Yeah」がそうなんだけど、名付けて“令和お座敷ロック”といいますか(笑)、大騒ぎしつつ、みなさんと楽しみたいです。もちろん、『feedback』というアルバムを軸にしてね。実はこのジャケット・デザインは、アルバム・タイトルにもひっかけてあるんです。僕はギター持って、ボックスというメーカーのアンプに腰掛けているんですか、ギターとアンプがこの距離で、もっとヴォリュームをあげたのなら、キィィィーンて共鳴して、フィードバックされた音が出るんですよ。

Chageさんのこれまでの、そしてこれからの音楽体験が、様々に共鳴し合い生まれたのが本作だということが、よく分かりました。ありがとうございました!

その他のChageの作品はこちらへ。

ライブ情報

Chage Live Tour 2019 feedback

8月31日(土) 名古屋 Zepp Nagoya
9月7日(土)  東京 Toyosu PIT
9月8日(日)  東京 Toyosu PIT
9月13日(金)  福岡 Zepp Fukuoka
9月15日(日)  大阪 Zepp Osaka Bayside
*詳細はオフィシャルサイトで

Chage

1958年生まれ。福岡県出身。シンガーソングライター。
1979年8月25日 、音楽デュオ「チャゲ飛鳥」として、第17回 ポピュラーソン グ・コンテストつま恋本選会で入賞したシングル「ひとり咲き」でデビュー。
1980年 リリースのシングル「万里の河」や 、1986年リリースのシングル「モーニングムーン」がヒットし、その後も「SAY YES」や、「YAH YAH YAH」は、 ダブルミリオンを記録している。
1984年に、石川優子とデュエットした「ふたりの愛ランド」をリリース。
1989年には、“自分の音楽のルーツを追求したい”という想いから、浅井ひろみ、村上啓介とともに、MULTI MAXを結成。シングル「SOME DAY」リリース。
1998年9月に初のソロシングル「トウキョータワー」、10月に初のソロアルバム『2nd』を 発売。現在も楽曲制作、ライブツアー、ディナーショーと精力的に活動する。
2018年には還暦、ソロ20周年を迎え、2019年はデビュー40周年のメモリアルイヤーとなる。

オフィシャルサイト
http://chage.jp