【80年代名鑑】明菜からYMOまで 80'sからの授かりもの  vol. 135

Column

アルフィーの「19 (nineteen)」を起点に80年代の「19歳」に逢いに行く

アルフィーの「19 (nineteen)」を起点に80年代の「19歳」に逢いに行く

こんなタイトルをつけたが、いきなり訂正。“80年代の19歳”と書いたけど、正確には、80年代にリリースした歌のなかで描かれた“19歳”、である。ちなみにこの年齢は、当たり前だが、ティーンエイジャーとしての最終年である。なので歌の中でもちょっと特別扱いされ、この年齢の主人公が出てくる歌が珍しくないのだろう。

それからだいぶ経ち、「18歳選挙権」が施行されたわけであり、現在の“19才事情”は、当時と少し違う。でもまぁ、80年代に既に施行されていたとしても(また、この頃は今よりストーリー性のある歌詞が多かったとしても)、“投票箱の向こうで目が合ったキミ”なんていう、投票当日ラブ・ソングみたいなのが生まれていた可能性というのは低そうだが…。

さっそく歌に。まずはアルフィーの「19 (nineteen)」。18歳の時の初めての恋(初恋、という淡いモノじゃなく、おそらくけっこうマジな最初の恋)に破れた主人公の、成長の物語だ。タイトルは「19 (nineteen)」だが、彼がその歳に、何を経験した、みたいなことは描かれていない。あくまでその歳を迎え、そこが分岐点となるらしいことだけを描いている。

クドい説明はない。その代わり、コトバじゃなく、伸びやかなギター・ロック・サウンドで後押ししている。そう。この場合、音楽のほうに語らせているのだ。英語詞も巧みに配され、洋楽っぽくも聴けて、でももちろん、要所では、意味ある日本語が届いてくる。

特に印象深いのは、最後のほうに出てくる[時代に間に合うはず]という表現だ。この場合の“時代”とは、“流行”とかってことじゃなく、さらに言えば、“年相応の振る舞い”みたいなことでもない。筆者が思うに、この“時代”というコトバは、“ちゃんと息をして、生きていると実感すること”そのものを表わす。この解釈をすると、歌のこの場面で、余計にグッとくる。

ちなみに「19 (nineteen)」といえば、岡村靖幸にも同名タイトルの80年代の作品がある。ただ、内容はガラリと違う。岡村チャンの歌の場合、19歳の女子に対して、相手の男性が語りかけるスタイルとなっている。

いや…。語りかけるどころか、彼女の内心を内視鏡で暴いてズバズバ物申す、みたいなリアリティに溢れているのだ。コドモで覆われていそうで既に突き出し、隠しようのないオトナな部分を、白日にさらすかのように…。

両者のアーティスト・イメージはぜんぜん違うので、あまり結びつかないかもしれないが、人間というものを裸ん坊にしてみせるあたり、岡村作品には中島みゆき的な要素も垣間見られる。

さて、白組がふたつ続いたところで、ここからバトンタッチ。次は紅組です(おい、いつから季節はずれの紅白になったんだ、この原稿?!)。プリンセス・プリンセスの登場である。プリプリで19歳といえば、すぐに思い出す歌がある。そう。「19 GROWING UP -ode to my buddy-」。

この歌、サビのところの突き抜け感がすごい。何度聴いても鮮度を失わない。

ところでオフィシャル・サイトには、この曲に関するこんな一文が…。「彼女たちのマニフェストでもある名曲「19 GROWING UP -ode to my buddy-」は、それまで男性マニア向け恋愛一辺倒ソングで塗りつぶされていたガールズロックの流れを根底からくつがえすほど輝いた」。“塗りつぶされていた”ウンヌンは、ちょっと言い過ぎな気もするが(笑)、僕も当時、巷に流れ始めたこの作品を聴いて、なんかどこか、今までと違うなぁと、感じたものだった。

この歌は女の子同士の“友情”の歌であり、英語の辞書によればサブ・タイトルの“my buddy”とは、普通の友達以上の“同志”って感じの相手を指すようだ。で、非常に興味深いのは、歌の冒頭の展開である。

雨あがりの駐車場を元気に歩き始めた二人だが、そこに去来するのは、これまでの様々な想いだ。そこに、[失くした恋]という重要な表現も出てくる。普通に受取れば、これは主人公の経験のようだ。しかし、既にこの歌の雰囲気から言うなら、それを両者が共有し、なので“痛み”も半分づつ、という様子なのだ。

当時としては、この感覚こそが新しかった。そして、このパートナーシップが力となり、ツー・コーラス目で新たなアクションを生む。[少しヤバイ計画]を実行するのだ。それはどんな計画だろう? 振った相手への腹いせ? いやいや。そう考えては、この歌の価値が萎んでしまう。

二人はここで、何かに目覚めるのだ。[少しヤバイ計画]とは、女性として、社会の中で、確固たる地位を築くために頑張ろう、かもしれない。いや、新たな恋を見つけるため、大胆に行動しちゃおう、なのかも…。最後まで聴くと、いくつになってもあの時の気持ちを忘れるな、というのが、この歌のメッセージであることが分かる。

紅組からもう1曲、渡辺美里の「19才の秘かな欲望」を取り上げよう。これは戸沢暢美が書いた詞だ。自分の体に収まり切らず、外に出たい、出たいよぉと疼き叫ぶような気分が、上手にコトバ化されている。

でも、この楽曲タイトルを今の感覚で眺めてみると、まだこの時代は、19才=オトナの管理下にある未成年、というイメージだったのだろうか? なにが言いたいのかというと、わざわざ“秘かな欲望”と、タイトルに書かれているからだ。

もちろんこの歌は、収録アルバム『Lovin’ You』がリリースされた時、実際に19才だった渡辺美里に向け“あつらえた”ものでもあったろう。そして、こっちに重点を置いて解釈すると、また違って響いてくる。

つまり、この頃の音楽シーンの情勢から言って、ティーンの女の子というのは好むと好まざるとに関わらず「アイドル」に思われた。しかし渡辺美里は「アーティスト」としてデビューする。まだ十代の女性アーティストは珍しく、そんな自分だけど、表現者としての欲望は一杯あるんだぞぉー、ということが、ちょっと表だって言えなかった雰囲気も合わさり“秘かな”になったというわけだ。

文 / 小貫信昭


岡村靖幸「19 (nineteen)」(アルバム『DATE』より)

PRINCESS PRINCESS「19 GROWING UP -ode to my buddy-」(アルバム『HERE WE ARE』より)

渡辺美里「19才の秘かな欲望」(アルバム『Lovin’ You』より)

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