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平牧 仁&古賀 瑠の描くふたりの謎が観客をアッと驚かせる。舞台『Like A(ライカ)』room[003]、ただいま上演中!

平牧 仁&古賀 瑠の描くふたりの謎が観客をアッと驚かせる。舞台『Like A(ライカ)』room[003]、ただいま上演中!

8月7日(水)から新宿FACEにて上演中の舞台『Like A(ライカ)』room[003]。本作は、今年1月に上演された『Like A(ライカ)』room[002]の続編で、昨年の第1作から数えて3作品目となる。大ヒットを記録した舞台『Club SLAZY』シリーズで演出・脚本を手がけた三浦 香、脚本の伊勢直弘、振付の當間里美、音楽のAsu(BMI Inc.)という演劇界のヒットメイカーが再び集結した作品だ。
役者陣は、初演・前作の続投組、あるいは今作から参加するフレッシュな役者まで幅広く揃い、ハイタイドという街を巡るストーリーをミステリアスに描く。
そんな舞台のゲネプロと初日前挨拶が行われた。

※辻は一点しんにょう。

取材・文・撮影 / 竹下力


劇作家の問題意識がクリアに描かれた素晴らしい舞台

舞台『Like A(ライカ)』room[003] エンタメステーションレポート

世界を取り巻く問題に敏感な劇作家たちが作った舞台であれば、現代の“人間”への力強い警句に満ちた作品になるのではないか。そんなことをひしひしと感じるメッセージ性のある舞台だと思う。文化や政治・社会的価値がどこかテンプレ化してしまった我々の住む日本に、いともさりげなく、どこかクールにそれでいて凄まじいパンチ(新しい価値観)を顎に加えてくれる。
今作で重要なテーマは何かの“壁=世界”を超えることの大切さや難しさ、つまり“越境”の必要性であると感じる。人は成長し、何かを知れば知るほど、知らなくても済む余計な秘密を抱えて、それが自分を傷つける武器になってしまうという、“ライカ”に通底しているモチーフそのままに、今作は我々の未来の光景を描こうとした意欲作でもあるだろう。

舞台上手でFCの平牧 仁がピアノをさりげなく弾きながら、どこかの国のエアポートの商業施設にある小さなパン屋さんで、ペンギン(古賀 瑠)という子供が警備員のような格好をしたCAB180(前田 陸)にパンを売っているシーンから舞台は始まる。そして、パンを売るのはいいけれど、小さな酸素ボンベがおまけでついてくる。理由はわからないのだが、パンと酸素ボンベのセットはマストらしい。そこからペンギンは、CAB180と自分の名前について話し合う。ペンギンが自分の名前の由来について「上の世界からやってきて、あちらの世界へ行きたくてもいけないから付けられた」といった意味深なことを語る。すると場面は一気に変わり、舞台はいつものハイタイドの街にあるホテルペルマネント。レストランの片付け専門係であるBB(辻 凌志朗)とホテルの施設の点検係のインスペクター(SHUN)がいつものようにたわいもない話をしているのだが……。

舞台『Like A(ライカ)』room[003] エンタメステーションレポート

初演よりも前作、あるいは今作の方が、謎が謎を呼ぶ展開が舞台のテンションを高めているのが手に取るようにわかる。シーンごとに浮かび上がる秘密の答えが明らかになったかと思えば、また新しくて巨大な秘密がスピーディーに生まれていく。誰かが真実を隠蔽しようとすればするほど、別の人間によって違う秘密の答えが暴かれていく堂々巡り。しかも、舞台で描かれるのは限りなく“真実”に近い“事実”で、決して核心にはいたらない。観客の集中力を釘付けにして心をやきもきさせる“ライカ”らしい物語だが、本作はほんのりダークな色合いを見せていく。

登場人物たちの行動や話からわかってくるのは、ハイタイドという街は空中浮遊都市であるということだった。かなりの標高にそびえ立つ街らしく、そこでの酸素は薄く、彼らは地上の都市から酸素をもらい、代わりに日の光を地上に与えているらしい。その空中と地上を結ぶ中間地点にあるのが、ペンギンのいる“ロータイドエアポート”だったのだ。そしてハイタイドと地上都市は、自由に行き来できるわけではないこと、すなわち“越境”することは、どちら側の人間だろうと簡単に許されてはいないことが明らかになる。ストーリーは重層的でキャラクターの感情的な部分が多く描かれているから、叙情的な仕上がりで感情移入しやすいのも魅力だろう。

舞台『Like A(ライカ)』room[003] エンタメステーションレポート

Asu(BMI Inc.)の音楽はいつも通りにかっこよくてクールかと思えば、情感的な歌も、シリーズを通して聴き慣れた歌も惚れ惚れするほど高級感があったし、當間里美の振付も斬新で楽しい。演出の三浦 香は、“あれ”と“これ”、“過去”と“現在”をリズミカルに、ダンスをしているように転換していくので観ていて心地いい。とにかく、“ライカ”は開演前からかっこいいし、会場の新宿FACEでは本作に合わせたイメージドリンクも販売されているし、Funky DLの「Don’t Even Try It」とかAPANI B-FLY EMCEEの「Strive」と煙たいヒップホップがかかっていたので、ちょっとしたクラブに遊びに行っている気分になる。

キャスト陣はみんな一癖も二癖もある連中ばかりで語り尽くせないけれど、初顔になるドクターの内海啓貴の怪演ぶりと、彼に飲み込まれて従順な配下になっていく街のリーダーのマーマレードボーイの鎌苅健太の演技がとにかく怖かった。会話のやりとりはユーモラスなのに、人間の暗部を覗き見た感じを覚えて背筋がゾッとする。BBの辻 凌志朗は、前作よりも真ん中を張っているという凛とした演技だったし、インスペクターのSHUNもキーパーの中谷優心もアッシャーの髙﨑俊吾もいつも通りに、誰かに振り回されて、秘密が明らかになるたびに困惑しながらも、へこたれずに生きていく様が人間らしくて、人情味のある芝居も感動的だった。

舞台『Like A(ライカ)』room[003] エンタメステーションレポート

本作のハイライトは、ペンギンの古賀 瑠とFCの平牧 仁だろう。彼らを追いかけていけばストーリーがより鮮明に見えてくるはずだ。古賀 瑠は以前、『おとぎ裁判』のレポートで「これからどんな“役者”になるのか、是非、“推し”として推奨したい。これからが楽しみな逸材である」と書いたけれど、間違いはなかったし、それは今作で大きな確信に変わった。

舞台『Like A(ライカ)』room[003] エンタメステーションレポート

役者の成長スピードは末恐ろしいもので、『おとぎ裁判』(2018)では女の子に見えた中性的な佇まいだったのに、いつの間にか思春期の男の子らしい、内面に少し自信がないけれど、歯向う相手には堂々と歯向かっていく、反抗期の真っ只中の男の子を演じ切っていた。そしてどうしても超えたい壁があるのに超えられない思春期特有のもどかしさが、ハンチング帽に紫色を基調とした水玉模様のオシャレな上着、おまけに袖の少し短い緑色のパンツというカラフルな服装によって際立って見えた。

舞台『Like A(ライカ)』room[003] エンタメステーションレポート

FCの平牧 仁は、第1作から少しづつ、狂気を身にまとっているというか、彼の過去を知るにつけ、少しずつ明らかになってくる暴力的な側面と、どこかあっけらかんとした、誰をも煙に巻いてしまう演技に落差があり見応えがあった。彼を観ていると抱える秘密が大きければ大きいほど人は苦しむものだと感じてしまうのに、秘密を抱えなければ人間は生きていけないことも同時に教えてくれる。そんな彼のミステリアスな秘密が、繊細なピアノの調べで美しく彩られていた。

この舞台の“越境”というテーマを深く掘り下げていけば、ペンギンのような“思春期”というフェーズにぶつかるはずだ。三浦 香と伊勢直弘は、現代の人々の多くが、無知ゆえの怒りや、自信のない行動で人を容易に傷つけ、何かの壁にぶち当たっても超えられずイライラしながら破壊的な行動をしようとしていることを自覚していて、それらの思いの丈を“ライカ”の住人に託して警鐘を鳴らしているのだと思う。ここにこんなにクールな人たちがいるのだから大丈夫、と。あらゆる苦難を乗り越えて自らの“出自=秘密”をひたすら白日の下に晒しながら己のアイデンティティをどうやって確立させていくのか……その答えは明示されないけれど、ふたりの劇作家の“世界”や“人間”に対する問題意識がクリアに描かれた、本当に素晴らしい舞台だった。

今作はそれぞれのキャラクターの人間性が前面に出て、深いストーリーを描く

舞台『Like A(ライカ)』room[003] エンタメステーションレポート

このゲネプロの前に、辻 凌志朗、SHUN、中谷優心、髙﨑俊吾、内海啓貴、齋藤健心、古賀 瑠、前田 陸、橋本有一郎、今井 稜、平牧 仁、鎌苅健太が登壇し、フォトセッションの後、一言ずつ挨拶をした。

今井 稜 劇場まで足を運んでホテルペルマネントに宿泊してくださったお客様が楽しんでいただけるように、最後までもがきたいと思います。

橋本有一郎 初演から前作とベル 役として初日を迎えることができて嬉しいです。もちろん、room[003]からご覧になる方も楽しめるように自分の役割を全うして千秋楽まで突き進んでいきたいと思います。

舞台『Like A(ライカ)』room[003] エンタメステーションレポート

前田 陸 今作は歌やダンスだけでなく、お芝居も人間性も鍛えられた稽古で貴重な時間を過ごすことができたので、その勢いを本番にぶつけたいと思います。

古賀 瑠 稽古ですごい苦戦したので(笑)、そのぶん、お客様に楽しんでいただけるように頑張りたいと思います。

齋藤健心 room[002]から参戦して、新しいキャストも入ったので、カンパニー一同、この作品をたくさんの方に好きになっていただけるように頑張りたいと思います。

内海啓貴 今作が“ライカ”初参戦なので新しい風を吹かせようと稽古に臨みました。初演から歌が大好きな作品だったので、歌をお見せできたら嬉しいです。

鎌苅健太 シリーズものならではのどんどん新しい世界が広がっていく面白い脚本です。新メンバーも濃いメンバーが集まり、初演組や前作からのメンバーもいい刺激になっています。とにかく、素敵な振付けなので楽しみにしてください。

平牧 仁 初演やroom[002]でちりばめたことが、room[003]では、だまし絵を見ているようにカチッとはまっていく快感があるので、“ライカ”にとって転機になったと自負しています。たくさんのお客様に観ていただければ嬉しいです。

髙﨑俊吾 初演も同じ会場で懐かしく思いますが、新メンバーが入って新しい風が吹いて、新たな“ライカ”になって嬉しく思います。アッシャー 役としても新しい一面が出せる作品なのでそれも楽しみにしてください。

中谷優心 千秋楽まで楽しみ切りたいと思います。今作に出ないメンバーも観にくるだろうし、『出たかった』と言わせられる作品になったと思います。

SHUN room[002]から半年という短い期間でroom[003]を上演できることを嬉しく思います。room[002]からの熱量も感じていただけるように頑張ります。

辻 凌志朗 まず、3作品目を上演できることが嬉しいです。この会場で初演を迎えたことを思い出しながら、これから本番になると思うと緊張して、内臓が飛び出してきそうです(笑)。今作はそれぞれのキャラクターの人間性が前面に出て、深いストーリーを描くので、より深い謎解きができると思います。何度でも足を運んでいただければ嬉しいです。

舞台『Like A(ライカ)』room[003] エンタメステーションレポート

公演は、8月7日(水)から14日(水)まで新宿FACEにて上演される。また、今作のDVDと劇中歌のCDの発売が決定した(2020年2月26日(水)予定)。さらに、発売日までに、CLIE TOWNにてDVDとCDを同時に予約すると、「千秋楽公演全景定点映像DISK(非売品)」がもれなくついてくる。詳細は公式ホームページをチェックしよう。

CLIE-TOWN

舞台『Like A』room[003]

舞台『Like A』room[003]

2019年8月7日(水)~14日(水)新宿FACE

脚本・演出:三浦 香
脚本:伊勢直弘
振付:當間里美
音楽:Asu(BMI Inc.)
主催・制作:CLIE

出演
BB 役:辻 凌志朗
インスペクター 役:SHUN(Beat Buddy Boi)
キーパー 役:中谷優心
アッシャー 役:髙﨑俊吾
ドクター 役:内海啓貴
プチ 役:齋藤健心
ペンギン 役:古賀 瑠
CAB180(キャブワン) 役:前田 陸
べル 役:橋本有一郎
ポーター 役:今井 稜

FC 役:平牧 仁(シキドロップ)
マーマレードボーイ 役:鎌苅健太

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@clie_seisaku)

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