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ここまでリアル!? 『キングダムカム・デリバランス』15世紀でハードな人生を過ごす

ここまでリアル!? 『キングダムカム・デリバランス』15世紀でハードな人生を過ごす

DMM GAMESよりリリースされた『キングダムカム・デリバランス』。海外の大作RPGであることはなんとなく伝わるが、事前情報は少なく、詳細は不明のままだった。そんなヤキモキした日々を送るなか、ついに本作が発売された。本稿では実際にプレイした詳細と感想をお届けしたい。筆者が驚いたのは、「よくあるファンタジーだろう」との予想を裏切り、史実を元にした設定とストーリーで魔法やモンスターは登場しないとても硬派な仕様(唯一、錬金術がファンタジーと言える要素かな?)だったこと。ゲームシステムはざっくり言うと一人称視点のオープンワールドRPGで、会話や戦闘はもちろん、説得やスリなど多彩な行動を起こせることが特徴だ。筆者の想像以上にリアリティにこだわった作りを突きつける、史実を元にした世界設定とゲームシステム。この二大柱から紡ぎ出される本作ならではの魅力をPlayStation®4版を使用してお伝えしていく。

文 / 板東篤


神聖ローマ帝国時代のボヘミアを忠実に再現

最初に、本作の印象からちょっと語っていきたい。筆者は日本語版がリリースされるニュースが飛び込んでくるまで、恥ずかしながら本作を知らなかった。開発したWarhorse Studioは本作が処女作。つまり有名スタジオの新作ではなく、さらに本作自体も新規IPで、オマケに海外のみでのリリースとくれば、そりゃもうアンテナから外れるのも致しかたなし、という感じである。
じつは本作、海外では2018年2月にリリースされており、日本語版は海外から約1年半後の登場となる。しかし、先に述べたように日本での知名度は高くなかったため、知っていたがゆえの古いという印象はない。加えて、プログラムのバージョンもリリース時より大幅に上がっていて、目立つ不具合はそこまで見当たらないといっていいだろう。日本語版は音声もすべて日本語化されており、まさに今が旬の作品と言える。特にヘンリー役の水野駿太郎さんを筆頭に声優陣は皆熱演で、すでに海外版をプレイしている本作のファンも新たに日本語版でやり直す価値は十二分にあるといっていい仕上がりだ。

キングダムカム・デリバランス エンタメステーションゲームレビュー

▲イベントシーンはもちろん、人々の日常会話も日本語化。一部のセリフは人々の頭上に表示される

では、本作の内容に触れていこう。舞台は15世紀のボヘミア、現在ではチェコ中部から西部あたりを指す地域だ。希有な才覚を持つ皇帝チャールズ4世の統治のもと、ボヘミアは神聖ローマ帝国の中枢として繁栄していたが、チャールズ4世は崩御してしまう。そのあとを継いだのは、彼の息子であるベンツェスラウス4世。彼は父とは異なり享楽にふけり、幾多もの失敗を重ね、異母兄弟であるハンガリーのシギスムント王につけいるスキを与えてしまう。このように、政治的に不安定となった中世ヨーロッパでくり広げられる物語となる。
本作は史実を元にしているだけあり、ゲーム内で再現されるボヘミアもリアルを追求している。牧歌的な風景が立ち並ぶなか、甲冑に身を包んだ騎士が闊歩している。小綺麗な世界ではなく、家の近くに家畜の糞が溜められていたり、そこにハエが無数にたかっているなど、中世の不衛生な部分も再現されている。こうした細部の再現により、リアリティ溢れる中世ヨーロッパ感を存分に味わえることは本作の大きな魅力だ。やはり歴史に基づいた資料なり文化なりに精通していないと、こうした仕上がりにすることは難しい。日本のゲームだとなかなか味わえないテイストだろう。

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▲登場人物たちの思想はゲームに深く関わってくるため、ゲーム中におけるボヘミアの状況はしっかり把握しておきたい

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▲映像は当時の空気感を感じ取れるような美しさ。こんなのどかな風景とは裏腹に、物語はかなりドロドロした内容だ

鍛冶屋の息子が激動の時代に飲み込まれる

ここからは実際のプレイを追いつつ、本作がどんなゲームに仕上がっているのか伝えていこう。主人公は、スカリッツに住む腕利き鍛冶屋のひとり息子であるヘンリー。父親は城主であるラジク卿より剣の作成を依頼されており、その仕上げを手伝うよう頼まれる所から物語は幕を開ける。炭の購入や別の職人に頼んでいた剣の装飾を受け取るなど、いくつかの雑用をしなければならない。ただし、炭の購入代金は渡してもらえず、「クネシュという人物に借金があるから、それを回収して炭の代金に充てろ」という話だった。

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▲主人公のヘンリー。外観のカスタマイズはできないが、のちに浴場でヒゲや髪型を変更することはできる。最初に発生する母親との会話でどのような選択をしたかによって、話術や体力といったヘンリーの能力値が増える

ひとまずクネシュに会いに行くが、彼は「金がない」と借金を返してくれない。「最終的には父親が出てくることになるぞ」と脅しても、どこ吹く風だ。さて、どうやってクネシュから代金を回収するか。本作では多くの場合、このような問題を解決するための手段が複数用意されており、プレイヤーの好きな解決方法を選択できる。もっとも別の解法に気づかなかったり、選択した手段が実力不足で実行できないこともある。
今回のケースを例に挙げると、そもそもはクネシュにハンマーと斧、釘を納品したが、その代金が支払われていない、という話だ。なので、彼が金を出さないなら納品したアイテムを回収し、それを売りさばいて現金化すればいい。さて、クネシュは薪割りをしているようで、斧はすぐに発見できる。しかし、残りのハンマーと釘は見当たらない。クネシュの家屋を調べてみると鍵がかけられたチェストがあるので、ここにしまわれている可能性が高そうだ。だが、ヘンリーはカギを持っていないため、現状だと開けることは不可能。……という感じで、筆者はいきなり詰まってしまった。

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▲クネシュに借金の取り立てに向かうと、メチャクチャ喧嘩腰で拒否されてしまった。なんだこの野郎!

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▲会話イベントでは、話術、魅力、筋力を用いたアプローチで説得を行えることがある。相手との能力差で効果が決まるが、クネシュの能力値は“??”と表示されて不明

ひとまず情報収集をするため村を探索していると、酒場でベンツェスラウス王をバカにした発言をする人物、ドイッチュを発見。周囲に居合わせたヘンリーの知人たちはこれにご立腹で、なんとか一泡吹かせたいとイタズラする気マンマンのようだ。こちらとしては用事があるため余計な問題に首を突っ込みたくないのだが、手伝えば仲間もこちらの問題に手を貸してくれるという。この取引に乗った筆者は、仲間と共にドイッチュの家へ。家畜のフンを壁に投げつけて天罰とした。

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▲冒頭で残念な王と語ったベンツェスラウス4世だが、慕っている国民もいるようだ。こうした情勢を楽しむためにも、ボヘミアについては早めに理解しておきたい

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▲ドイッチュ(の家)へ天罰! フンで家を汚すことが体験できるゲームは、なかなかに珍しい

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▲そんな状況をドイッチュの息子に見つかって乱闘騒ぎに。本作のバトルシーンは、弱攻撃、強攻撃、キック、ガードを使い分けて戦う。攻撃は行う方向を5つから指定でき、相手の意表を突く方向から攻撃すると効果的という、結構複雑なシステム

続いてはクネシュの問題だ。仲間たちはそりゃもう血気盛んで、大勢でクネシュをボコボコに。するとさすがのクネシュも降参し、「もう好きなように持って行け」とカギをくれた。これでなんとかアイテムを回収でき、資金調達の目処が立ったわけだ。あとはお店に行って回収したアイテムを売り、炭の代金を交渉したりして購入完了。酒場でエールを買ったり、剣の装飾を受け取ったりと残りの雑用もこなして、お使いが完了だ。最初のクエストであるにもかかわらず、あまりに複雑でボリュームがあり、さらにクエストの解決手段も多数用意されていることに驚いてしまった。同時に、どっしりと腰をすえて遊ばないといけないタイプのRPGであることを確信した。これは非常にやり応えのある作品だ!

このような、少々ヤンチャはしながらも普通の生活を送っていたヘンリー。だがその平穏は、突如終わりを遂げる。謎の軍隊が村に攻め入ってきたのだ。一瞬にして地獄のような様相となる村、凶刃に倒れる両親。ヘンリーは城内に逃げ込むのに遅れてしまい、付近のタルムバークへ落ち延び、ついでに伝令役として警告をする役目を負う。

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▲突然、スカリッツに軍隊が襲撃。どの軍勢が、何のために襲ってきたのか。このときはまだ何もわからない

敵軍に追われつつ、命からがらタルムバークへ逃げのびたヘンリー。だが、今度は両親を埋葬するため、危険な地域に行かせまいとするタルムバーク領主陣からの脱出を画策したりと、まったくもって心休まる状況にはならない。
なんとかスカリッツにたどり着き、両親の遺体を埋葬しようというそのとき、ならず者たちに襲われてしまう。ボコボコにされたあげく、ラジク卿より依頼されていた剣も奪われてしまった。間一髪で騎士が助けに来てくれたがヘンリーは重傷で、荷馬車に乗せられて運ばれていく。なんて数奇な運命なんだヘンリー……と悲しくなっていた筆者は、次の瞬間に驚愕した。なんとスタッフ名が記載されたシーンが流れ始めたのだ。これは……?

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▲ラジク卿に剣を渡せずに所持していたため、ならず者に目をつけられてしまった。装備と能力の差は歴然で、どうにもならない相手だ

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▲このタイミングでまさかのオープニングシーン

ここまでのプレイ時間は、だいたい5時間ほど。先述のようにクエストによっては何度もやり直しをした部分もあるため、プレイ時間はちょっと長めだとは思うが、それでもここまでがチュートリアルであることは正直驚いた。なんてボリュームのゲームなのだ、と!
重傷から回復し、とある粉引き所で目覚めたヘンリーだが、本作はここからが本番といえる。これまでよりも移動できる範囲が広がり、時代の濁流に呑み込まれるヘンリーの人生を紡いでいけるワケだ。ただ、“好き勝手に”ということではない。ヘンリーの治療には大金が必要で、粉引き所の主人ペシェクはある程度肩代わりしてくれたが、まだ借金が残っているという。「重労働でも何でもしてお金と恩を返す!」と熱く燃えるヘンリーだが、ペシェクは突然、「ある悪党が指輪を付けたまま絞首台の近くに埋められてしまった」と語る。つまり、ヘンリーに死体を掘り返し、指輪を奪ってこいと持ちかけたのだ。自由になったと思ったらいきなり借金生活で、オマケに死体漁りとは! いつまでこのような世知辛い生活が続くのか、大きな戦いに身を投じて歴史に関わるのはいつになるのか。こんな最底辺の現状からは想像もつかないヘンリーの出世物語を、筆者は体験していきたいと思う。

クセの強さを楽しめるかどうか

最後に、本作の魅力を改めてまとめていきたい。いちばんの特徴は、リアリズムを重視していることだろう。冒頭で述べた世界設定はもちろん、ゲーム中でも現実のように行えることが多く、物語の選択肢も多岐に渡る。その行えること、つまり自由度の高さをわかりやすく再現したものがパラメーターの多さだ。昨今のRPGは、海外ゲームでも簡略化されることが多く、例えば『The Elder Scrolls』シリーズは5作目の『Skyrim』から、強さ、知力などの能力パラメーターが一切なくなったことが印象的だ。
本作ではこの流れにあえて逆行し、古き時代の海外RPGのセオリーを踏襲しているように思える。複雑さを増すほどに主人公の個性は細分化され、成長させる楽しさも増大していく。しかし、覚えることは多くなり、ゲームに慣れないうちはどうすればいいのか混乱してしまうことが多くなるだろう。ゲームに慣れるまでの時間も当然長くなり、プレイに集中するための消費カロリーを多く感じ疲れやすい。

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▲筋力や俊敏さといった能力に加え、スリやロックピック、狩猟、読書などスキルも膨大。プレイヤーが思い描くヘンリーに成長させられる

難度の高さも少々気になった。クエストの解決手段が複数用意されているのは嬉しいが、最善と思われる手段を実行するのが序盤ではかなり難しく感じた。具体例を挙げると、ヘンリーがスカリッツの村から逃げるとき、知り合いの女性が襲われている現場を目撃する。このときヘンリーは装備を持っておらず、逆に敵は武装した兵士が5~6人と圧倒的不利な状況。無視すればすぐに先へ進めるのだが、どうにかして救出したい筆者は何度か戦闘を行ってみるも瞬殺の嵐。倒されるとゲームオーバーとなり、最後のセーブ地点からやり直しとなる。今回の場合だと、スカリッツの村から今まさに脱出しようとしている場面、襲われる女性のさらにまえに発生するシーンからやり直しとなる。こうしたトライ&エラーのなかで、敵に近づいて気を引くだけで救出した扱いになることは発見できたが、一度見つかると逃げることも難しい。結局、10回ぐらいやり直した。ダッシュで暴漢の横を通り過ぎ、急いでその奥にいる馬を奪い、すぐさま馬を全速力で走らせるという一切無駄がないルートを辿ることで、やっと成功させることができた。なんというか、レースゲームでスコアアタックをしているような気分に近かった。

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▲そもそも初回は追っ手に追いつかれ、ボコボコにされてゲームオーバーとなった。序盤はヘンリーが弱く、また装備もビックリするぐらい手に入らないので、戦闘は圧倒的に不利

セーブが自由に行えないシステムであることも無視できない。クエスト開始時やベッドで寝た場合などにオートセーブが行われるが、任意のタイミングでのセーブは、消耗品である“救生酒のシュナップス”が必要になる。
成功させるのが難しい選択肢、さらにセーブの手段が限られていてやり直しプレイが少々面倒という2点から、「選択で失敗してもやり直さず、すべてヘンリーの人生として受け止めて欲しい」という開発側の提案であることが伝わってきた。筆者はダンジョンにある宝箱は全部ゲットしたいし、貴重なアイテムはできるだけ入手し、それが消耗品だったらなるべく使いたくない。クエストだったら、最善の結果になる選択を行い続けていきたいという、やや完璧なプレイをしたいタイプだ。しかし本作では、こんな完璧プレイはたぶん不可能なほど難度が高いため、ある程度の失敗は受け入れるスタンスでプレイする必要があるだろう。
以上の事柄を総合的に見て、本作は濃い海外RPGファン向けの作品であると感じた。複雑な内容ほど腕が鳴る、そんなゲーマーはきっと満足できるだろう。物語は面白いし、できることは膨大。打てば響く完成度に仕上がっている。しかし、打つことが面倒に感じるライトゲーマーには、少々厳しいように感じた。次回はヘンリーの新たな冒険、さらにサイドクエストや犯罪行為など、ヘンリーが行えるより多くのことを紹介していきたい。

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キングダムカム・デリバランス

■タイトル:キングダムカム・デリバランス
■メーカー:DMM GAMES
■対応ハード:PlayStation®4、PC
■ジャンル:RPG
■対象年齢:18才以上
■発売日:発売中(2019年7月18日)
■価格:パッケージ版 8,180円+税、ダウンロード版 7,360円+税


『キングダムカム・デリバランス』オフィシャルサイト

Published by DMM GAMES, © 2019 and developed by Warhorse Studios s.r.o., Kingdom Come: Deliverance® is a trademark of Warhorse Studios s.r.o.
Co-published by Koch Media GmbH, Austria. Deep Silver is a division of Koch Media GmbH, Austria. Deep Silver and its respective logos are trademarks of Koch Media GmbH. Co-published in Japan by ZOO Corporation. All other trademarks, logos and copyrights are property of their respective owners. All rights reserved.