まず観る!アニメ1話無料  vol. 8

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『ガルパン』監督が描く野球アニメの金字塔! 『おおきく振りかぶって』第1話を無料で観る

『ガルパン』監督が描く野球アニメの金字塔! 『おおきく振りかぶって』第1話を無料で観る

各種配信サービスで「1話無料」となっているアニメ作品を視聴し、その感想や周辺知識を語っていく連載「まず観る!アニメ1話無料」。夏の高校野球シーズンということで、前回の『タッチ』に引き続き「野球アニメ」を取り上げます。

文 / エンタメステーション編集部


前回取り上げた『タッチ』は、「甲子園を目指す」ということが明確にゴールとして設定され(第1話の時点では明確ではなかったですが)、そこに至るまでのドラマが積み重ねられていくタイプの作品でした。
多くの野球アニメがそうした形式を持っていると思うのですが、今回取り上げるのはそこに至るまでの「過程」に重きを置き、練習における部員のやり取りを丁寧に描いた作品です。

『おおきく振りかぶって』

(バンダイチャンネルにて1話無料配信中)

OP主題歌「ドラマチック」(Base Ball Bear)のMV。

「おお振り」の愛称で知られる、2007年に第1期、2010年に第2期が放送されたテレビアニメ。原作は「月刊アフタヌーン」(講談社)で連載されている同名漫画作品です。

原作者のひぐちアサは女性で、この漫画を連載する前は繊細な心理描写を特徴とする人間ドラマを軸にした作品を中心に発表していました。
野球漫画の描き手としては異色の経歴が、「野球漫画」というジャンルそのものに大きな変革をもたらしたとされています。

アニメ版はこうした原作の特徴を最大限表現するため、キャラクターの「声」の表現に重きが置かれていると言っていいでしょう。

主人公の三橋は中学時代に創設者の孫であったことから「ひいき」でエースになったとされ、チームメイトから冷遇されていました。
そのトラウマから高校は越境して他県の学校に進学、野球部にも入るつもりはなかったのですが……というところで、他の部員たちと出会ってしまう。

この第1話が秀逸なのは、新設となった硬式野球部に1年生ばかりの入部希望者10人が集まり、そこでのグラウンドでのやり取りですべてを完結させているというところです。

三橋のトラウマを解消させるべく、やり手のキャッチャーである阿部がたきつけ、野球経験者のバッターに三打席勝負を持ちかける。高い制球力とクセのある球筋という特性を見抜いた好リードで見事打ち取り、自信を回復させます。
このトラウマ→出会い→自信の回復というプロセスが、他の部員の賑々しい感じも交えつつ丁寧に描かれているんですね。

監督は『ガールズ&パンツァー』『SHIROBAKO』などを手がけた水島 努。大人数の登場人物をひとつの画面に同居させながら、個々の個性を短い台詞で効果的に演出する手腕は本作でも観て取れます(時系列的には、むしろ本作における蓄積が『ガルパン』ほかにも影響を与えていると見るべきですが)。

キャラクターを演じるキャスト陣の演技も魅力的です。
三橋を演じるのは代永 翼。随一のハイトーンボイスを持ち、少年性の高い天真爛漫なキャラクターを演じることの多い彼ですが、三橋はトラウマを抱えた「ウジウジ」したタイプ。しかしピッチャーであるということに強いこだわりを持ち、(たとえ「ひいき」と言われようとも!)中学の三年間にわたってマウンドを譲らなかったという「性格の悪い」(作中で実際にそのように言われる)キャラクターでもあります。そう言われるだけのものがあるなということを、つっかえながらも秘めた意思の強さを感じさせる話し方で表現しています。
そして、その「性格が悪い」ということを口に出して言ってしまうのが、女房役となるキャッチャーの阿部。演じるのは中村悠一です。最近では『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風』におけるブローノ・ブチャラティの頼もしいリーダー役が印象に残りますが、阿部に関してはそのような「頼れる感」を醸し出しつつ、思ったことははっきりと言ってしまう、どこか粗暴な印象も与える声のトーンで演じています。しかし基本的にはチームメイトのことをよく見ており、「このチームは甲子園に行ける」という彼の断言によって第1話は締め括られます。
この二人はモノローグが多く、その内容はそれぞれ「主人公のトラウマ解消」という縦軸と、「良いチームを作り、甲子園を目指す」という横軸の展開を担っていると言えます。これによって、視聴者の物語に対する焦点が二重化されるわけですね。

第2話以降のポイントとしては、この二人以外の部員の個性がどのように描かれるかというところでしょうか。漫画では描かれなかった細かい仕草などにキャラクターの性格が垣間見えたりするのがアニメ化の良いところ。女性人気を獲得したという意味でも野球漫画/アニメの新しい領域を開拓した本作ですが、部員同士の「カップリング」的な関係性の深まりの描写などにも注目して見ていくと良いかもしれません。

OP主題歌はロックバンド・Base Ball Bearの「ドラマチック」。四つ打ちの軽快な楽曲で、どこか夏のギラつく陽射しも感じさせるギターのフレーズがたまらない1曲です。映像面ではサビに入る前の、<ほら、今 夏がスタート>という歌詞とともに雲ひとつない青空に高く打ち上がる白球が、なんとも言えない爽快感を視聴者に与えてくれます。
またこのOP映像は全編にわたって練習の風景だけで構成されているのも特徴的。第1期ということも関係しているのかもしれませんが、実際の高校球児にとっても圧倒的に長い時間を過ごすのは練習ですよね。
そんな映像についた楽曲のタイトルが「ドラマチック」というのが良いじゃないですか。日々の練習の一瞬一瞬が、後から振り返ればドラマチックなものなんだ! と。そんなことを思いながら、現在開催中の甲子園大会を観てみるのも良いかもしれませんね。

それではまた次回!

今回ご紹介した作品を「1話無料」で観るならこちら!

おおきく振りかぶって 第1話 【バンダイチャンネル】

https://www.b-ch.com/titles/2447/001

『おおきく振りかぶって』

【STAFF】
原作:ひぐちアサ「おおきく振りかぶって」
(講談社「月刊アフタヌーン」連載)
監督:水島 努
シリーズ構成:黒田洋介
キャラクターデザイン・総作画監督:吉田隆彦
アクション作画監督:谷口淳一郎
小物デザイン:鈴木卓也
色彩設計:佐藤美由紀
美術監督:渋谷幸弘
撮影監督:老平 英
編集:西山 茂
音楽:浜口史郎
音響監督:菊田浩巳
アニメーション制作:A-1 Pictures

【CAST】
三橋 廉:代永 翼
阿部隆也:中村悠一
花井 梓:谷山紀章
田島悠一郎:下野 紘
百枝まりあ:早水リサ
巣山尚治:保村 真
水谷文貴:角 研一郎
泉 孝介:福山 潤
西広辰太郎:木村良平
浜田良郎:私市 淳
梅原圭介:疋田高志
榛名元希:松風雅也

©ひぐちアサ・講談社/おお振り製作委員会

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おおきく振りかぶって

連載「まず観る!アニメ1話無料」
次回の更新は8月26日(月)予定です。

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