Interview

ASKAが「これから4度目を目指す」ということの真意。日本武道館公演、C&Aの韓国公演の映像商品化、さらにシングル発売にあたり

ASKAが「これから4度目を目指す」ということの真意。日本武道館公演、C&Aの韓国公演の映像商品化、さらにシングル発売にあたり

昨秋〈billboard classics〉にて5年ぶりに新たなスタートを切り、2月よりバンド・ツアー〈ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ-〉も敢行、6月には台湾・香港でアジア・ツアーも開催……と、精力的に音楽活動を続けているASKA。そのバンド・ツアーの追加公演で約7年ぶりに立った日本武道館のコンサートの模様を収めたDVD/Blu-rayが8月21日にリリースされる。また、CHAGE and ASKAが2000年に2万人を動員した、韓国で日本人アーティストとして初となる日本語歌唱による大規模コンサート〈韓日親善コンサート Aug.2000〉が映像商品化(8月25日に発売)される。
そこでASKAが近況も含めて、これらの作品に対する想いを語ってくれた。さらに、彼のブログにて先駆けて発表されたシングルについても!

取材・文 / 小貫信昭


僕がいるような世界は浮き沈みがあって、いったん沈むと、ほぼ再び浮かんではこられない……

前回のエンタメステーションの記事は〈ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ-〉日本武道館公演のレポートでしたので、その後のアジア・ツアーのことからお訊きします。〈ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -ASIA TOUR-〉は、6月9日の台湾・台大體育館、6月16日の香港・MacPherson Stadium という日程で、ともに現地の熱烈なファンに迎えられたそうですが……。

今回のアジア・ツアーは10年ぶりでした。観にきてくれた人たちの中では世代交代もあったみたいですけど、10年前に観てくれた人が今やライヴの現場で働き始めていて、現場で中心となって頑張っていたりとか、そんな嬉しい出逢いもありました。ありがたいことに、彼らは僕に対してリスペクトの気持ちも持ってくれていましたが、アジアの国だからこそ、つねに相手と同じ目線で接するのが大切なんですよ。どちらもお陰様で大成功でしたね。「次は今回の3倍のところでやりたい!」と現地のイベンターの人たちも言ってくれたし、そのうち、またスタジアム規模の会場でできたら嬉しいね。

CHAGE and ASKAで言えば、1994年の初のアジア・ツアーにおいて、香港・シンガポール・台湾と、どこも1万人規模の会場を満杯にしましたからね。

でもそれも、まずは1〜2年かけて自分たちのことを知ってもらおうと、向こうに何度も出掛けて仲間を増やした結果なんです。そもそも最初は、「アジアに出て行ってもビジネスにはならない」と揶揄されたことでもありましたから。ただ、僕が純粋にやりたかったのは、ビジネスというより、日本の音楽が“純粋に海外に広がること”が狙いだったんです。扉を開けることだった。あのときは実に幸運なことに、アジアのアーティストたちが僕らの歌をたくさんカバーし始めてくれて、向こうにおけるCHAGE and ASKAのブームみたいなものが沸々と沸き上がり始めていったので。

ところで、海外ですと、セットリストが若干違っていて、いわゆる代表曲が多めだったりして、国内のファンが注目(嫉妬)する部分もあるんですが。

それは、海外だから特別なことをやったわけじゃなく、その場所でステージを成功させるために必要なアイテムを揃えたら、そんなセットリストになった、というだけのことなんです。だって、たとえばポール・マッカートニーがワールド・ツアーをやって、「イエスタデイ」や「ヘイ・ジュード」、「007 死ぬのは奴らだ」を歌わないわけにはいかないでしょ(笑)。

た、たしかに(笑)。話題、変えます。8月21日に『ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ- in 日本武道館』のLIVE DVD/Blu-rayが出ますね。映像作品としての仕上がりはいかがでしょうか。

これまでもいろいろとライヴ・ビデオを制作してきましたが、今回はまた、これまでと違った感覚だと思います。監督さんは40代なんですが、特にオープニングのアメリカドラマのシリーズモノにあるみたいな回想シーンで始まる手法に感じましたね。それを観て、僕は監督さんにすぐ言ったんですね、そのことを。そしたら彼は「もう、アメリカのドラマが大好きなんですよ」と。ビンゴでした(笑)。

バックステージ・ドキュメントと、ロング・インタビューも入っていますね。

あのインタビューは……長すぎた(笑)。20分くらいで良かったかなって。

たしかその倍くらいありますね。インタビューの中に、重要な発言が……。

倍はありません(笑)。重要って?

自分は幸運にも“これまで3度のブレイクを果たし、これから4度目を目指す”、と。

あれ、特に重要でもないですよ(笑)。最後のほうに喋っていたので重要なように思えたかもしれないけど……。そもそも僕がいるような世界は浮き沈みがあって、いったん沈むと、ほぼ再び浮かんではこられない。ところがありがたいことに、CHAGE and ASKAは「万里の河」のあとお客さんは増えたけど、ヒットには恵まれず、そしたら「モーニング・ムーン」が出て心配ないくらいにお客さんが増えて、「太陽と埃の中で」を出したときには「これはもうくる」っていうのをビュンビュン背中から感じながらも、そんなときにロンドンに渡り住み、アーティストとしてのイメージを変えて帰ってきた。その後、すぐに「SAY YES」のヒット。つまり、3回も波のある状態を迎えたわけで、こういうミュージシャンはほとんどいない。本当にラッキーな音楽人生。ならば、4度目を目指してみようかなと。それだけです。そんなことだけのために本気になるつもりはありません。そんなことができたら“面白い”くらいの意識です。

ブレイクするって、山登りみたいな感じなんじゃないんですか? ASKAさん、すでに3つの山を登って、もうひとつ、目の前に見つけた、みたいな……。

そうなのかもしれないですが、ただ、もうひとつ“山を見つけた”というのとも違うかもしれない。そもそも“俺たちの山”は、登ってみなければ標高がわからない。ただ高いだけの山か、みんなに愛されている山なのかもわからないので。今回、久しぶりにシングルを出すんですよ。そう思ったのは、そのへんのこともあるんですけど。ここ最近の取材では「もうシングルは出しません」みたいなことも言ってきましたからね。ここにきて風が変わった。若いリスナーをはじめ、僕の音楽を聴いてくれる人たちが、本当に変わった。そんな現象を受けて、もう一度シングルを出してみようという気になりました。

民間はつねに繋がっていないといけないと思う

シングルの話は後ほどたっぷり伺います。さらに別のLIVE DVDが8月25日にも出ます。『CHAGE & ASKA LIVE IN KOREA 韓日親善コンサート Aug.2000』と、『CHAGE and ASKA LIVE DVD BOX 4』(内容は「CHAGE and ASKA ASIAN TOUR 1994 LIVE IN HONG KONG」、「CHAGE & ASKA CONCERT TOUR 電光石火〜TUG OF C&A PRESENTS PREVIEW in 幕張メッセ〜Aug.1999」、「CHAGE & ASKA LIVE IN KOREA 韓日親善コンサート Aug.2000」の3枚入り)。

韓国公演のことなんですが、当時は「失敗だった」と週刊誌に書かれたりもしましたが、そもそも多くの協賛スポンサーもついてくれて、失敗しようのないコンサートだったんですよ。実際、利益も出ましたし。でもそれは、現地の女性団体に寄付して帰ってきた。なので、プラスもなければマイナスもなかった。いろいろと書かれていたので、いまだにそう思っている人もいるかもしれないけど、内実はそうで(苦笑)。そのときに映像を記録していて、直後にDVD化するという話もあったんだけど、僕が当時ストップをかけたんです。やっと韓国が間口を開けてくれて、歴史的なコンサートをやれたことを、決してビジネスにしてはいけないと思ったから。だから、その後もずっと映像化は拒否してきました。

それをなぜ、このタイミングに?

そのあと日本と韓国の関係が少しずつおかしくなってきたりして、政治と政治が対立し始めたじゃないですか? それは事実なんだけど、ただ、政治は政治家同士が解決すべきことで、民間は別だし、民間はつねに繋がっていないといけないと思うんです。なので、3年くらい前から、繋がっていたことの証でもある韓日親善コンサートの映像を公開してもいいのではと思い始めていたんです。でも、それを決断した途端に、このような情勢でしょう? これに関しては、デリケートにならなくてはと、日々、揺れてました。

こう話している間にも、両国の情勢は変化していきますね。その当時のライヴの手応え自体はどうだったんでしょうか。

開催したのは2000年の8月26日と27日の2日間でしたが、ホントにいいコンサートができてね。ようやく幕開けだなという実感と、やりたいもの、目指すものを、ただただやることができたコンサートでした。

当時、僕も現地で観ていますが、会場は満杯で、通常のCHAGE and ASKAそのままに、大いに盛り上がったライヴだったと記憶しています。でも、こういう情勢だからこそ、まとう意味合いもあるんですよね。

あの空間の中にCHAGE and ASKAという1組のアーティストがいて、そこに集まった人たちと共に気持ちを許し合っている。そんな光景を、ぜひ観ていただきたいですね。

「歌になりたい」は未来へ向かっていく歌

ちなみに『CHAGE and ASKA LIVE DVD BOX 4』のほうは、「CHAGE & ASKA CONCERT TOUR 電光石火〜TUG OF C&A PRESENTS PREVIEW in 幕張メッセ〜Aug.1999」の映像など貴重なので、コアなファンの方々の要望を受けてのリリースです。さて続いてシングルのことを。少し先ではありますが、11月20日に約10年ぶりのシングル「歌になりたい」がリリースされます。これは先のツア−でも歌われていて、『ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ- in 日本武道館』の本編ラストにも収録されていますね。

「歌になりたい」を書くキッカケは、楳図かずおさんのマンガ『漂流教室』なんです。主人公の高松 翔くんが、物語の最後に“やはり現代には戻らない”という決断をする。なぜ戻らないのかというと、“自分たちは荒廃した地球に蒔かれた未来の種なんだ。もう一回、この地球をもとに戻す役割がある。だから僕らはここにきた”と。もう、そのシーンを初めて読んだときは号泣でした。その後、何回読んでも、あの場面にくるとダメなんですよね。

ライヴで聴いていて胸に刺さったのは、“僕らは命の中にいる”というフレーズなんですけどね。

“肉体”には時間があるけど、“命”は永遠でしょ? “命”は永遠で、その中で“肉体”を持った特別な瞬間が、“今”という時間。だから……“僕らは命の中にいる”というのは、まさにそういうことなんです。さらに言えば、“命”とは言い換えれば“意識”のことで、“意識”を言い換えれば、それは“エネルギー”ということ。これに関しては、少し前に対談させていただいた谷川俊太郎さんも、ほぼ同じことをおっしゃっていましたけど。

タイトルや歌詞は、どう完成したんですか?

詞を書くのには、3時間もかかってないんじゃないかな。書いている途中で“歌になりたい”というタイトルが出てきて、その言葉がフィックスされると、また頭から書き直してね。でも、あっという間に出来ました。

曲のスタイルとしては、コーラスをASKAさんが追いかけるところが特徴的ですね。

あの手法は「no no darlin’」以来です。サビはコーラスに渡して、自分はフェイクしていく、というのはね。「no no darlin’」と違ったのは、サビで別の歌詞をフェイクしてみたら、今回はとっ散らかったのでやめたことですかね。ポップスの役割として、わかりやすくないといけなかったし。だから「歌になりたい」では、コーラスで先行する歌詞を、僕があとから、そのままを歌っているんですよ。

ライヴでは、歌の前に散文詩の朗読がありました。当初、それも含めてひとつの作品かと思っていました。

あれはたまたま、『ASKA 書きおろし詩集』を出すときに「おとぎ話」という散文詩を朗読ムービーとしてYouTubeで流すという試みをやってみて、そのときにライヴでこの散文詩を「歌になりたい」の前に付けたらいいんじゃないかなって、そう思ったのでやってみただけでした。

ミュ−ジック・ビデオの撮影に海外へ行くそうで。

ただなんとなく10年ぶりのシングルを出すだけじゃなく、しっかりとしたプロモーション・ビデオも作りたいということで、アイスランドでロケをします。監督から、地球創世を感じさせる場所で、というアイデアも出てきて、ともかく目指すことを実現するために、経費は度外視です(苦笑)。そもそも「歌になりたい」は未来へ向かっていく歌で、アイスランドは地球が出来上がった頃の状態を残す場所でもあるし、そこで歌うのも悪くないなとも思ったので。

さて、どんな映像になるのでしょうか。

成田から出発してアイスランドへ、YouTubeで刻々と中継をしようかと、今思ってるんですよ。「今から出発します」で、現地に着いたあとに「今、アイスランドにいます。今日はここまで撮りました…」「今日はこういうところに行きました」といった形で。もう、その間はユーチューバーになろうかな(笑)。“機織りしているところはヒトに見せるものじゃない”という根づいてしまった職人気質の考え方もあるけど、今はそういう時代じゃない。作品は、工程を見せることから始まってるんです。YouTubeという、これほど効率よく伝えられるものを利用しない手はありません。

既成概念を取っ払う。新しいことを成功させるときは

そして待望の次のツアーも発表になっていますので、最後にこの話題を。12月10日の京都から〈ASKA premium ensemble concert -higher ground-〉がスタートします。今回はASKAバンドとクラシック界の名手によるビルボードクラシックス・ストリングス(弦楽アンサンブル)の共演、とのことですが。

こういう試みをやったアーティストの方はいらっしゃると思うんですが、この形で“ツアーをやる”のは初めてだと思うんです。そもそも、2008年に行った各地、各国のオーケストラのみなさんとステージを共にした形式が、今では普通になりました。海外でも行われています。今回のは、また違うんです。“billboard classics”の弦チームがツアーメンバーになってくださいました。大所帯でのツアーです。参加してくださった弦チームも、バンドとツアーをするなんて発想はなかったでしょう。既成概念を取っ払う。新しいことを成功させるときは、必要です。

素人考えですと、バンドと弦楽アンサンブルだと、両者のバランスが難しそうですが……。

それも考え方次第でしょうね。ステージ上においてのマイクのセッティング・スタイルを作るわけですから。クラシックの人たちは、指揮者が煽らなくては、緩やかに演奏しがちです。今回のステージでは、スタジオレコーディングのようにクリックを聞きながら弾いてもらうかもしれません。これを成功させたのは、おそらく過去にはELO(エレクトリック・ライト・オーケストラ / ASKAが影響を受けたジェフ・リンが在籍したバンド)くらいしかいないんじゃないかな。成功させたいですね。

ASKAさん行くところに新たな挑戦あるのみ、ですね。今日は多岐にわたるお話、ありがとうございました!

ASKA premium ensemble concert -higher ground-

2019年
12月10日(火)京都コンサートホール 大ホール
12月11日(水)愛知県芸術劇場 大ホール
12月20日(金)兵庫県立芸術文化センターKOBELCO 大ホール
12月27日(金)東京エレクトロンホール宮城 大ホール
2020年
1月3日(金)福岡サンパレスホテル&ホール
1月6日(月)フェスティバルホール
1月9日(木)東京国際フォーラム ホールA
1月11日(土)札幌文化芸術劇場hitaru
1月15日(水)LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
1月18日(土)りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
2月2日(日)高崎芸術劇場 大劇場
2月9日(日)神奈川県民ホール 大ホール
【特別公演】3月20日(金・祝)熊本城ホール メインホール

CHAGE and ASKA
DVD BOX『CHAGE and ASKA LIVE DVD BOX 4』

CHAGE and ASKA Official Web Shop 完全受注生産(受付期間限定)
YMEHDVD-21~23 ¥16,000(税別)
〈収録DVD〉
DISC-1:CHAGE and ASKA ASIAN TOUR 1994 LIVE IN HONG KONG(1994年公演)
DISC-2:CHAGE & ASKA CONCERT TOUR 電光石火~TUG OF C&A PRESENTS PREVIEW in 幕張メッセ~ Aug.1999(1999 年公演)
DISC-3:CHAGE & ASKA LIVE IN KOREA 韓日親善コンサート Aug.2000(2000年公演)

*同BOX収録の「LIVE IN KOREA」と8/25リリースの「LIVE IN KOREA」は同内容


ASKA(アスカ)

1979年にCHAGE and ASKAとして「ひとり咲き」でデビュー。「SAY YES」「YAH YAH YAH」「めぐり逢い」など、数々のミリオンヒット曲を生む。並行して、音楽家として楽曲提供やソロ活動も行い、1991年発表の「はじまりはいつも雨」がミリオンセールスを記録。同年リリースのアルバム『SCENEⅡ』もベストセラーに。また、アジアのミュージシャンとしては初めて「MTV Unplugged」へも出演。2017年には自主レーベル「DADA label」よりアルバム『Too many people』『Black&White』をリリース。2018年7月には『Black&White』のMusic Video集、10月にはファンが選んだベストアルバム『We are the Fellows』と、ASKAが選んだベストアルバム『Made in ASKA』、11月には『SCENE -Remix ver.-』『SCENEⅡ -Remix ver.-』を発表。また、11〜12月に〈billboard classics ASKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018-THE PRIDE-〉へ出演。2019年2月からは日本武道館公演やアジアを含むバンドツアー〈ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA -40年のありったけ-〉を開催。3月22日には書籍『ASKA 書きおろし詩集』も発売している。

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