モリコメンド 一本釣り  vol. 132

Column

NOT WONK 真のレヴェル・ミュージック(既存の価値観への反抗、反逆を含んだ音楽)と呼ぶべき存在

NOT WONK 真のレヴェル・ミュージック(既存の価値観への反抗、反逆を含んだ音楽)と呼ぶべき存在

いきなり個人的な話で申し訳ないが、筆者は中学、高校の頃、ハードコアパンクにどっぷりハマっていた。特に好きだったのがイギリスのハードコアで、カオスUK、ディスチャージ、G.B.Hといったバンドの音源を狂ったように聴いていた(日本だとガーゼ、ギズム、カムズなど)。超高速のビート、ひたすら暴力的なギター、叫びまくるボーカルが、当時の私を刺激しまくり、聴くだけで何だかスッキリしたのだ(バカみたいだが、本当の話です)。しかし、あるときを境に、私の興味はいきなりソウルミュージックに移った。そのきっかけは、ザ・スタイル・カウンシル。UKロックシーンのゴッドファーザー、ポール・ウェラーがザ・ジャム解散後に結成したザ・スタイル・カウンシル(略してスタカン)は、ブラックミュージックを基軸した音楽性で、ここ日本でも高い人気を誇っていた。パンクシーン、モッズシーンの英雄だったポール・ウェラーがなぜこんなオシャレな音楽を……と最初は思ったが、ソウルミュージックを血肉化したその音楽は単にオシャレなだけではなく、熱い魂がたっぷり注ぎ込まれていて、その心意気に惹かれたのだった。

またもや前置きが長くなってしまったが、なぜそんな話をしたかというと、今回紹介する“NOT WONK”の作品を順を追って聴いているうちに、“そういえばハードコア好きだったな”とか“でも、すぐに飽きて、いきなりソウルにハマったな”みたいな思い出が蘇ってきたからだ。もちろんNOT WONKは現在進行形のバンドなので、筆者の勝手なノスタルジーとはまったく関係なく、自らの音楽的本能に従いながら、刺激的な変化と進化を繰り返しているわけだが。

shuhei kato(G/V)、kohei fujii(Ba)、akim chan(Ds)により2010年から活動している、北海道・苫小牧出身の3ピースバンド、NOT WONK。パンクロック、メロコア、エモ、グランジなどのテイストを生々しく融合させた音楽性でライブハウスシーンの支持を得て3人は、2015年にデビュー作『Laghing Nerds And A Wallflower』を発表。翌年リリースされた2ndアルバム『This Ordinary』では、オーセンティックなハードコアパンクを軸にしながら、さらに多彩な音楽の要素を取り入れ、バンドのアイデンティティを明確に打ち立ててみせた。空間を切り裂くようなギターサウンド、骨太のバンドグルーブが渦巻く表題曲「This Oridinary」は、彼らの最初のアンセムと言っていいだろう。

その後、全国各地のライブハウスを回り、ライブバンドとしての地力を付けると同時に、シーンの流れやトレンドに左右されない確固たる存在感を示し続けたNOT WONK。制作意欲もまったく止まることなく、7インチシングルやEPを次々と発表していく。彼らの音楽的変化が端的に表れたのは、2017年に発表したEP『Penfield』の収録曲「Of Reality」。ブラックミュージックのエッセンスを感じさせる音数を抑えたアンサンブル、スムースにしてセクシーなファルセット・ボイスを活かしたボーカルは、明らかに新機軸だった。

そして今年6月には、フルアルバムとしては約3年ぶりとなる3rdアルバム『Down the Valley』をリリース。前述した「Of Reality」を含む本作は、NOT WONKが特定のフィールドに留まることなく、常に新たな地平を切り開くバンドであることを改めて証明している。

音楽的な豊さをさらに増した本作。そのことを象徴しているのが、1曲目の「Down the Valley」だ。軽快でありながら、しっかりとタメが効いたギターフレーズ、大地を蹴り上げるように進んでいくドラム、楽曲のボトムをガッチリと支えるベース。そして、ソウルフルとしか言いようがないボーカル。すべてのフレーズに濃密な感情を込めながら、サビに入った瞬間に驚くべき爆発力を示すこの曲は、まさにハードコアとソウルミュージックを結び付けるようなナンバーだと思う。

本作に収録された楽曲の歌詞はすべて英語だが、その内容はきわめてシリアスで誠実。たとえば「Subtle Flicker」における“Poverty is sold by someone freaking out, He’s a son of a fear.”(“貧乏っていうのは恐怖から生まれ落ちて度を失った連中が叩き売ってるんだ。”)というラインは、格差が進む現在の社会をリリカルに捉えていて秀逸だ。この曲の根底にあるのは、社会のシステムから外れている人々(または“外れてしまうかもしれない”という不安を抱えてる人々て……つまり、ほとんど全員だ)に対する視線だろう。

変化を恐れず、新たな音楽性を徹底的に追求し、社会の現状に対するシャープな批評性を刻み込む。真のレヴェル・ミュージック(既存の価値観への反抗、反逆を含んだ音楽)と呼ぶべきNOT WONK。その存在感は2020年代に向けて、さらに多くのリスナーに求められることになりそうだ。

文 / 森朋之

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