Review

人気&長期シリーズ化にはワケがある。TVアニメ『文豪ストレイドッグス』第3シーズン完結の今からでも観てほしい痛快な面白さ

人気&長期シリーズ化にはワケがある。TVアニメ『文豪ストレイドッグス』第3シーズン完結の今からでも観てほしい痛快な面白さ

中島敦、太宰治、中原中也、芥川龍之介、江戸川乱歩など、文豪の名を懐いたキャラクターたちが繰り広げる異能バトルアクション。『文豪ストレイドッグス』は、2016年春に第1シーズン、同年秋に第2シーズンが1クールずつ放映され、2018年3月公開の劇場版を挟んで、今年4月~6月には第3シーズンがオンエアされた人気アニメだ。

シリーズが続くにつれ、作画クオリティを含めた“アニメーションとしての快楽”は右肩上がりにアップ。異能バトルの演出も、謎が謎を呼び二転三転するストーリーにもハラハラさせられ……。非常に満足度の高い内容だった第3シーズンを経て、あらためて本作をめぐるこんな思いが湧いてきた。女性ファンが多い本作だが、「この痛快な面白さ、性別問わずもっと多くの人に知ってもらいたい!」ということだ。ここでは、そんな『文豪ストレイドッグス』の魅力を改めて振り返り、未見のアニメファンにもおすすめしたいポイントをピックアップしてみた。

文 / 阿部美香


アクションバトル作品としてのワクワクが目白押し!

第1シーズン、第2シーズン……と放映が続くTVアニメシリーズにおいて、“続く”ことで作品の面白さが深みとなって上積みされ、視聴者の満足度がアップしていく作品は、じつに幸せだ。『文豪ストレイドッグス』(以下、『文スト』)は、まさにそんなアニメだ。

原作:朝霧カフカ/漫画:春河35による「ヤングエース」(KADOKAWA)連載作品をTVアニメ化。古今東西の文豪たちの生き様と代表作の特徴的な要素をピックアップ、それらの要素を人物設定および異能力の特徴としてキャラクター化した、“異能力バトルアクション”作品だ。

舞台は架空都市・ヨコハマ。軍や警察すら踏み込めない荒事を解決すると噂されている「武装探偵社」、ヨコハマの裏社会に巣食う悪虐の徒「ポートマフィア」という2勢力が活動するその街に、第2シーズンではヨコハマ壊滅を画策する「組合(ギルド)」と呼ばれる謎の組織が大国より襲来。「武装探偵社」と「ポートマフィア」は休戦協定を結んでヨコハマを救うが、第3シーズンでは願いを書けば叶うという「白紙の文学書」を求めて、地下盗賊団「死の家の鼠」が襲い来る……と、次々に敵味方が入り乱れ、知略を駆使して三つ巴、四つ巴を繰り広げる異能殲滅合戦が繰り広げられるのだ。

激しいバトルを繰り広げるキャラクター&異能力の個性も、非常に際立っている。武装探偵社の中島敦は巨大な白虎に変身。太宰治は「人間失格」の異能を発動して触れた相手の異能を無効化。美少女の泉鏡花は高い戦闘能力を持つ「夜叉白雪」を召喚でき、与謝野晶子が「君死給勿(きみしにたもうことなかれ)」を発動すれば、瀕死の人間を完全治癒できる。ポートマフィアの芥川龍之介が「羅生門」を発動すれば、おどろおどろしい外套が鋭い武器(黒獣)に変形して何物をも切り裂き、中原中也は触れたものの重力を自在に操る。

ここに挙げたキャラクターも異能もほんの一部に過ぎないのだが、とにもかくにもアクションバトル作品としての言わば“中二病”心を揺さぶるワクワク設定が目白押しとなっている。

文豪の知識がなくても楽しめます!

絵柄も非常にスタイリッシュだ。男性にも人気があるスタイリッシュな異能バトルというと、『ジョジョの奇妙な冒険』などが思い起こされるが、『文スト』には『ジョジョ』好きのアニメファンにも刺さる要素がてんこ盛りだと個人的には感じている。

さらに言えば、実在の人物をモデルにして特異な能力を与えてデフォルメし、敵味方入り乱れるダイナミックなバトルを描くという意味では、一斉を風靡したアクションゲーム『戦国無双』や『三國無双』にもノリが近い部分がある。個性豊かなキャラたちがギャグをかますお笑い要素も随所に盛りこまれ、シリアスなバトルとユーモアの配合もお見事。そのバランスの良さが、見終わった後の爽快感と痛快さを十二分に引き立てている。実際に異能バトルシーンの迫力もダイナミックな異能の演出もシーズンを重ねるごとにグレードアップしていて、アニメーションもいちいちカッコいい。……これだけの要因が揃っているのだから、男子が観ても十分面白いはず!

アクション物のアニメ、それこそ『ジョジョ』を好んで観ている30代男性アニメファンに、「『文スト』ってどう思ってる?」と尋ねてみたことがある。その答えは……要約すると「観るキッカケがなかった」というものだった。これだけ痛快なバトルアニメでも、名作文学になじみがない身からすると、“文豪”というワードが強いことと、キャラクターのビジュアルや女性人気の高い声優陣のイメージから「男には関係のない世界なんだろうなぁ」と、漠然とした敷居の高さを感じて手を出せていなかったのだという。でも、その雰囲気だけで敬遠しているだけだとしたら……この作品の場合、すごくもったいない! 仮に文豪の知識がなくたって、十分に楽しめるはずだから。

“長期シリーズならではの快楽”を楽しんでほしい

ストーリー的にも、アニメ『文スト』は原作マンガの内容だけに納まらず、主要キャラクターの過去を描く朝霧カフカ作のスピンアウト小説をアニメ化してTVシリーズに付加。キャラクターと世界観を深めるための魅力的な工夫が凝らしていたのも印象的だ。

第2シーズンでは、もともとはポートマフィアの最年少幹部だった太宰治と織田作之助、阪口安吾との悲しい交流から、太宰治がポートマフィアを抜けて武装探偵社に入るまでの前日譚を描いた「黒の時代」エピソードを冒頭4話にわたりオンエア。第3シーズンでは、ポートマフィア時代に“双黒”と呼ばれる名コンビだった現・武装探偵社の太宰と現在もポートマフィア幹部として活躍する中原中也の出会いを描く「十五歳」編エピソード3話を冒頭に置くことで、敵対勢力同士の切っても切れない関係、キャラクターの人間的苦悩を、視聴者の胸に刻み込んだ。

華やかな異能バトルに目を奪われがちな『文スト』だが、例え主人公の中島敦が所属する武装探偵社にとっての“敵”であり“悪”だとしても、登場キャラクターそれぞれが過去、やむにやまれない想いを抱く出来事があったからこその今なのだ、という人間としての深みが、シーズンを追うごとに観る者に理解され、重みとなってストーリーを彩っていっているのは、長期シリーズ作品ならではの快楽だ。

ストーリー面ではもうひとつ、太宰と中也の関係――性格的にまったく相容れない、反発しあう同士の異能の共闘が驚異的な力を発揮し、事件解決のために必要不可欠となるというアンビバレンツな関係性は、太宰・中也の後輩世代の武装探偵社の中島敦とポートマフィアの芥川龍之介の関係性にもそのまま当てはまるのもポイント。さらに、第3シーズンでは、太宰と中也の先輩世代である武装探偵社の社長・福沢諭吉とポートマフィアの首領・森鴎外にも同じような過去があったという、運命的繋がりをしっかりと見せていたのも、『文スト』をただの痛快なバトルアニメだけに終わらせない魅力だった。

ギャグとシリアスのメリハリが効いた、テンポのいい展開もオススメの要素だ。数多くのアニメファンが楽しめる魅力を持つ『文スト』、女性キャラの活躍もあるので、男性も食わず嫌いをしないでぜひ一度観てください(絶対ソンはさせません)! キャラクター同士の関係性、敵対勢力同士の関係性が徐々に発展していく様が楽しめる作品なので、まずはTVアニメ第1話で『文スト』の世界に足を踏み入れて主人公・中島敦の正体探しをミステリー風に解き明かしつつ、異能バトルのダイナミズムを体験してほしい。そこからは、必ずやすべてが進化を見せる第2話以降が気になってもらえるはず! Blu-ray/DVDや主要サブスクリプションサービスでも配信中なので、未見の方はこの機会にぜひ。

TVアニメ『文豪ストレイドッグス』

dアニメストアほかにて見放題配信中

【スタッフ(TVアニメ第3シーズン)】
原作:朝霧カフカ
漫画:春河35 (「ヤングエース」連載)
監督:五十嵐卓哉
シリーズ構成・脚本:榎戸洋司
キャラクターデザイン・総作画監督:新井伸浩
メカニックデザイン:片貝文洋
美術監督:近藤由美子
色彩設計:後藤ゆかり
撮影監督:神林剛
CGディレクター:安東容太
編集:西山茂
音楽:岩崎琢
音楽制作:ランティス
音響監督:若林和弘
音響制作:グロービジョン
アニメーション制作:ボンズ
製作:2019文豪ストレイドッグス製作委員会

【キャスト(TVアニメ第3シーズン)】
中島敦: 上村祐翔
太宰治: 宮野真守
国木田独歩: 細谷佳正
江戸川乱歩: 神谷浩史
谷崎潤一郎: 豊永利行
宮沢賢治: 花倉洸幸
田山花袋: 鈴村健一
与謝野晶子: 嶋村侑
泉鏡花: 諸星すみれ
谷崎ナオミ: 小見川千明
福沢諭吉: 小山力也
芥川龍之介: 小野賢章
中原中也: 谷山紀章
梶井基次郎: 羽多野渉
尾崎紅葉: 小清水亜美
樋口一葉: 瀬戸麻沙美
エリス: 雨宮天
森鴎外: 宮本充
フランシス・F : 櫻井孝宏
ナサニエル・H : 新垣樽助
ポオ: 森川智之
ルイーザ・A : 植田ひかる
ルーシー・M : 花澤香菜
坂口安吾: 福山潤
フョードル・D : 石田彰

© 朝霧カフカ・春河 35/ KADOKAWA /2019 文豪ストレイドッグス製作委員会

アニメ『文豪ストレイドッグス』オフィシャルサイト

原作コミック『文豪ストレイドッグス』

著:朝霧カフカ(原作)/春河35(漫画) 出版社:KADOKAWA