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(放送は終了したけど…)異色ショートアニメ『女子かう生』、よくある日常系かと思いきや「セリフなし」の大胆演出にときめいた理由

(放送は終了したけど…)異色ショートアニメ『女子かう生』、よくある日常系かと思いきや「セリフなし」の大胆演出にときめいた理由

4月~6月にかけオンエアされた“2019年春アニメ”の中でも、ひときわ挑戦的な手法で個性を放っていたのが、若井ケンの同名コミックを原作にした『女子かう生』だ。本編わずか3分半のショートアニメだけに、知る人ぞ知る存在となっていた本作をあらためて紐解きながら、その魅力に迫る。

文 / 阿部美香


息づかいと“言葉にならない声”がたっぷり詰め込まれた作品

いたずら心を抑えきれず、ついつい率先してバカをやってしまう天然元気少女・富戸(ふと)もも子(CV:立花理香)。もも子とは小学校からの幼馴染みで、奔放なもも子が起こす騒動に巻き込まれてしまうクールなメガネ女子・渋沢しぶ美(CV:嶺内ともみ)。小柄でとても愛嬌があり、もも子と同じくらい明るく元気で子どもっぽいところがある、ちょっと内気な古井まゆみ(CV:久保ユリカ)。

『女子かう生』は、そんな、もも子を中心とした女子高生トリオのおバカな日常のひとコマを、ほのぼのまったりと描いたショートアニメだ。……と紹介すると、「ああ、よくある“日常系”ね!」と思うでしょう? 実際、物語としてジャンル分けすれば、そうに違いないのだが、他の“日常系”と決定的に違うことがひとつある。それは……セリフが存在しない「サイレントアニメ」であることだ!(もちろん原作もセリフなしです)

女の子ものアニメは、キャストのキュートなボイスを愛でる要素も重要なハズだが、『ラブライブ!』のμ’sメンバーとしても有名な久保ユリカ、『アイドルマスター シンデレラガールズ』の立花理香、『スロウスタート』で注目された嶺内ともみ、とブレイク中の人気声優を起用しながらも、一切セリフを喋らせないというのがすごい。だがこの『女子かう生』、キャラクターたちは“言葉”を話さないだけで、けっして“声”を発しないわけではない。そこが『女子かう生』を愛でる楽しさだったりする。

「クスクス」「うふふっ」な笑い声、「ふわーっ」というあくび、「あーあ」と残念がる声、「うわっ」「おおぅっ」「……?」「……!!!!」と驚く声や、「うーんっ!」「あふぁ~!」「ふっ!」「んっ!」など何か行動を起こすときの瞬間的な息づかいや、ほのかな「♪ふんふんふん」という鼻歌など、言葉にならない声はたっぷり詰め込まれている。そんな、いわゆる“息”の演技の数々が、ちゃんとキャラクターの性格や特徴を表現しているから面白い。

その演技を観て筆者が思いだしたのは、ゲームの音声収録現場を見学したときのことだ。アクションシーンで敵を攻撃したり、やられたりする場面で一言だけ発するボイスを攻撃の大小、敵との距離、武器が何かなど、細かいシチュエーションを変えながら、連続で声を出していくキャスト。こまごまとした指示に合わせて、微妙に変化する声をバシバシ決めていく、プロのテクニックに驚かされたものだ。『女子かう生』のキャスト陣にも、同じプロ魂を感じる。

『女子かう生』の収録現場が具体的にどうだったかは今となってはわからないが、セリフの意味を把握して感情や状況変化に応じた演技をつけるのと、言葉の意味に頼らず“音のみ”で演技するのとでは、ずいぶん勝手が違ったことだろう。オンエアが始まってからのとあるキャストインタビューによれば、本作の台本は細かいト書きのみでセリフは書かれておらず、自分たちでキャラクターが言っていそうなセリフを考えて、収録に臨んだらしい。さぞかし、演者にとっては高度な想像力と表現力が試される、難しい作品だったのではないだろうか。台本がどう書かれていたのかも、とても気になる……(ぜひ公開してほしいものだ)。

最終話ではまさかのサプライズも……!

『女子かう生』は、オープニング&エンディングテーマを含めてわずか3分半ほどの短編ゆえに、3人のキャラクターのおバカな日常の切り取り方がとてもピンポイントで断片的なのがいい。これは当然、原作の魅力にも繋がるところだ。

そのおバカさを引き立てる、どこかひょうきんなBGMも心温まる。とくに筆者が気に入ったのは、第5話「女子かう生とスケボー」だ。学校からの帰り道、線路沿いでスケボーを見つけたもも子たちが、ひたすらいろんな乗り方を試して、ガキンチョのように遊んでいるだけなのだが、それがなんとも気持ちがいい。無邪気な立ち振る舞いとくったくのない表情を捉えた短い映像なのに、グループ内の3人の立ち位置も垣間見え、「ええもん観たな」、「もっとこの子たちの普段が観たいな」という気にさせる。コミックである原作がこの子たちの楽しいスナップ写真集だとすると、アニメ版は、お気に入りフォロワーのSNS動画や、好きなYouTuberのサブチャンネルを観ている感覚に近いかも?

そんなゆるっとした『女子かう生』の最終回となる第12話「女子かう生と帰り道」ラスト。学校帰りの買い食いに忙しいもも子たちの日常は、こうしてずっと続いていくのだな……と思っていたところで、まさかのサプライズが用意されていたのも印象的だった。

おそらく観た人それぞれに、この(いろいろな意味で)衝撃的なラストには思うこともあるだろうが、筆者は思わず「おおおーっ!?」と声を挙げ、「あぁ……うん! うんうん!」と納得し、「……♪(ほっこり)」と感動し、「……!!」とアニメ続編を期待したことを、サイレントで告白しておこう。どんなサプライズがあったかは、動画配信サイトやパッケージ版で、あなた自身の目(と耳!)で、確かめてください!

TVアニメ『女子かう生』

dアニメストアほかにて見放題配信中

【スタッフ】
原作:若井ケン『女子かう生』 (双葉社「WEBコミックアクション」連載)
監督・シリーズ構成:佐々木勅嘉
キャラクターデザイン:山本恭平
プロップデザイン:木村麻亜紗
美術:NAMU ANIMATION /色彩設計:近藤直登
撮影監督・編集:堀川和人
音響監督:長崎行男
音響制作:BloomZ /音楽制作:アップドリーム
アニメーション制作:アニメーションスタジオ・セブン

【キャスト】
富戸もも子:立花理香
渋沢しぶ美:嶺内ともみ
古井まゆみ:久保ユリカ

©若井ケン/双葉社・「女子かう生」製作委員会

TVアニメ『女子かう生』公式サイト

原作コミック『女子かう生』

著:若井ケン 出版社:又葉社