Interview

水谷果穂 『深呼吸』というタイトルに込めた思い、1stアルバムを完成させた手応えを訊く。

水谷果穂 『深呼吸』というタイトルに込めた思い、1stアルバムを完成させた手応えを訊く。

歌手デビューから2年。現在、放送中のNHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』やドラマ『凪のお暇』に出演中の水谷果穂が1stアルバム『深呼吸』をリリースした。
自身が主演した短編映画『明日、アリゼの浜辺で』の主題歌「青い涙」やアニメ『若おかみは小学生!』の主題歌「君のステージへ」、反町隆史主演のドラマBiz『リーガル・ハート 〜いのちの再建弁護士〜』の主題歌に起用されたリード曲「朝が来るまで」を含む全13曲を収録した本作には、『深呼吸』というタイトルがつけられている。大きく息を吸い、ゆっくりと吐き出し、リラックスしてスロウダウン。彼女の伸びやかで澄み切った歌声には間違いなく深呼吸と同じ効果があり、聴き手に静かな希望や勇気を与えてくれる。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 萩原大志


1曲1曲に自分の歌だっていう感覚があって。それをちゃんといい形で残したいなって思ってました

水谷果穂 エンタメステーションインタビュー

シンガーデビューからこの夏でちょうど2年が経ちました。

自分としては、まだ2年なんだなっていう感覚ですね。もっと、長くやってるような感じがしてます。

女優デビューが2013年の夏なので、今年でまる6年になりますが、歌手活動を始めてから何か変化はありましたか?

映画やドラマの現場で「歌もやってるんだよね」っていう話をしてもらえることが増えましたね。「歌えるんだ!」っていう、ちょっと驚きの反応をもらえると、なんだか嬉しいなっていう気持ちになります。

ちょっとおとなしい正統派の美女というイメージがあるから、歌に挑戦することが意外なのかもしれないですね。では、ご自身にとって初となるアルバムはどんな作品にしたいと思ってましたか?

以前からライブで歌っていた曲が多いので、すでに1曲1曲に自分の歌だっていう感覚があって。それをちゃんといい形で残したいなって思ってました。

完成してどう感じました?

どれもいい曲だな〜って思いましたね(笑)。

あはははは。まず、歌い手自身が胸を張ってそう言えるのは幸せなことですよね。

そうですね。本当に、心の底から自分がいいなって思える形で作ってもらえたことが嬉しくて。それはきっと当たり前のことではないと思うので、感謝の気持ちでいっぱいですね。私自身は、歌を録音した後の作業はほとんど立ち会えていないんですけど、その経過は聞いていて。そんなに細かいところまで気を配ってやったうえで完成するんだなっていうことを知って、より一層、1曲1曲を大事に思うようになりましたね。

特にお気に入りの曲はありますか?

「あしあと」がすごく好きですね。

ああ! 「あしあと」「いつだって」「明日への扉」の3曲が特に、果穂さんの地に足のついた凛とした歌声と合ってるなと感じました。一緒にクラップしたくなるという共通項もありますし。

ありがとうございます。その3曲は、声質的に自分で歌いやすいので、歌っていて気持ちいいんですよね。それに加えて、歌詞にも自分で思ってたようなことが入っていたりするので、歌っていて楽しい曲ですね。

「変わらない」っていうことを気にせずに、「変わろう」っていう意識でいる方がいいんじゃないかなって

水谷果穂 エンタメステーションインタビュー

では、その3曲について詳しくお伺いしたいんですが、「あしあと」はどんなところが好きですか?

サビの歌詞がまるまる好きですね。<変わらないものは なにかって 思ってた今日も/変えようと 胸に描いた明日も>っていう。自分でも「変わりたいな」とか、「でも、こういうところは変えちゃダメなのかな」とか、変わるっていうことに今まで結構……とらわれるっていうと悪い意味ですけど、少し感じながらやってきたところがるので、心に響きました。

果穂さん自身はどう考えてますか? 変わりたくないものと、変わりたいものについて。

以前は変えたくないっていう部分が自分でいろいろと多かった気がするんですよね。でも、今はそんなことなくて。自分の芯は変わっちゃわないようにしようと思いますけど、意外とそこまで考えすぎなくていいというか。道をすごく踏み外さない限り(笑)、そこまで大きく変わったりしないなんだなって、今まで生きてきて思ったんですね。だから、そこまで「変わらない」っていうことを気にせずに、「変わろう」っていう意識でいる方がいいんじゃないかなって思いました。

それは、ちょっとしたことでは自分の芯はブレないんだっていう自信ができたからなんですかね。

そうかもしれないですね。変わっちゃうかもっていう不安があんまりなくなりましたね。

その変わらない自分らしさって、言葉にできますか?

なんだろう。うーん、ま、でも、人と関わった時に、ついつい出てきちゃうのが、自分らしさだなって思うんですよね。自分でこう見せようとか、考えすぎちゃうんじゃなくて。何かをした時にふと出ちゃうものが、自分だなって思ったんですね。例えば……これはちょっと違うかもしれないんですけど、「もっと真面目じゃなくていいんじゃない?」って言われることが結構、多くて。自分ではそんなに自分のことを真面目だとは思ってないんですよ。仕事をしてる人たちは、みんな真面目だから、「真面目じゃなくていい」ってどういうことだろうって思ってたんですけど(笑)、だんだん、真面目=一生懸命やらないっていう意味じゃなくて、もうちょっと冒険していいんじゃない?っていう意味なんだろうなって思ったりしました。

応援してくれてる人とか、聴いてくれてる人と一緒に、いろんな景色を見ながら人生を歩んでいくイメージで歌ってました

水谷果穂 エンタメステーションインタビュー

女優と歌手という二足のわらじを履いてる時点で、かなり冒険してるとは思いますけどね。曲中の“君”はどんなイメージでした?

いつも身近にいる人っていうよりは、この歌を聴いてくれている人たち、ファンの方が思い浮かんでましたね。応援してくれてる人とか、聴いてくれてる人と一緒に、いろんな景色を見ながら人生を歩んでいくイメージで歌ってました。

この曲の“君”と“僕”は、“ファン”と“水谷果穂”なんですね。では、「いつだって」の“あなた”は? 

友達ですね。“my friend”っていう言葉が出てきますけど、意外と友達をテーマにした曲がなかったんですよ。これは本当に直球で、友達との思い出とか、友達が本当にいてくれてよかったなっていう気持ちで歌いました。

2ndシングル「君のステージへ」のMVではまさに友情出演していましたが、果穂さんにとって友達とはどんな存在ですか?

地元の友達は特に、自分と違うタイプの子っていうよりも、似た者同士が多いんですよ。共通しているのは、長女のB型。だから、みんな個々なんですけど、一緒にいると楽だよねっていう存在だったりしますね。私は幼稚園から高校まで友達が変わらず、幼馴染とずっと一緒にいたので、その子たちとの思い出がほとんどを占めてますね。

この曲のように恋愛相談に乗ったりは?

恋の話はいっぱいするんですけど、それは相談じゃなく、ただの報告ですね。それに関して、アドバイスをすることもないし、向こうも聞きもしないし。友達と相談し合うっていうことはないかな。

あはははは。話すテンポはみんな、ゆっくりなんですか?

そうですそうです。私がツッコミだったりすることの方が多いくらいですね。

(笑)友達の中にいるときの果穂さんを見てみたい気がします。また、この曲はシンガーソングライターの辻詩音さんの提供曲になってます。

いままではkiraさんの曲がほとんどだったので新鮮でしたし、年代も近いので言葉選びもすごく共感できましたね。あと、作詞をしていただいた「ナナイロ」や「空想トレイン」もそうなんですけど、登場人物の女の子がいつも可愛いので、それもワクワクする要素でした。

私の仕事は答えがない中でやっていたりするので、すごく好きな歌詞の1つですし、本当に等身大で歌える曲だなって思ってます

水谷果穂 エンタメステーションインタビュー

「空想トレイン」の子は<私をさらってほしいの>なんて言ってますからね。続く、「明日への扉」も好きな曲と言ってましたが。

元祖・好きな曲っていう感じで(笑)、ワンマンライブでも一番最後の曲に選んでいたくらい、ずっと好きな曲です。前向きな曲なんですけど、無理せずに頑張れる曲というか。<マニュアルのない日々の中で/答えは1つだけじゃないから>っていう歌詞があるんですけど、私の仕事は答えがない中でやっていたりするので、すごく好きな歌詞の1つですし、本当に等身大で歌える曲だなって思ってます。

<少し立ち止まり/深呼吸してみよう>っていうフレーズもありますが、アルバムのタイトルはここからですか?

それが違うんですよ。人に言われてから気づきました。あ、ここにも「深呼吸」っていう言葉が入ってるって(笑)。元々は、アルバムに入れる曲が決まった段階で、全部の曲を通して共通しているものとか、このアルバムを聴いた時にどんな気持ちになってもらえるかなっていうのを考えた時に、深呼吸するように落ちつけたり、その後に前向きになれるようなアルバムだなと思って、深呼吸というタイトルをつけました。

果穂さん自身は、自分のペースを失ったときはどうしてます? 

うーん、とりあえず、どうやったらうまくいくかわからないから、なんかしらやってみようというか。試してみようっていう気持ちで、実際に動いちゃいますね。落ち込んだり、くよくよしたりするよりも、まず、行動するようにしてます。

では、<大事な物を落とさないように>という歌詞からはどんなものを想像してましたか?

私は“人”かな。一番最初、まだ10代の時に東京に来て、今の事務所に入った時に、いい大人の人達ばかりだなと思って。こういう大人になりたいなっていう気持ちがあったし、それは今でも思い出すことですね。あと、もらった手紙もずっと残しておくタイプですね。

何かがあったとしても、最終的には自分を許して、人を許してっていう気持ちになれるように。少しでも聴いてくれる人の救いになれたら

水谷果穂 エンタメステーションインタビュー

リード曲「朝が来るまで」についても聞かせてください。この曲はピアノバラードになってます。

曲調はすごく静かなところから入るんですけど、ちょっと壮大な感じもあって。月だったり、空だったり、広く大きなものに包まれているような、大きい視点から自分を振り返ることができる曲ですね。最後の<君を許すように>っていう部分を大事にしているんですけど、何かがあったとしても、最終的には自分を許して、人を許してっていう気持ちになれるように。少しでも聴いてくれる人の救いになれたらなっていう思いで歌いました。

直接、歌いかけられてるように聞こえます。またピアニストの清塚信也さんと一発録りでセッションしたバージョンも収録されています。

リハーサルを入れて3〜4回くらいだったんですけど、「自由に歌ってくれて大丈夫だよ」っていう姿勢でいてくださって。わたしの横で生で演奏してくれて、アイコンタクトを取りながら一緒に歌ったので、呼吸に合わせてくれる感覚があるというか。どんどん自分でも曲に入り込めていける感じがして、すごくのびのびと歌えたし、とても楽しい時間でした。

1番は自分自身の“本当”なんですけど、2番はそれができていない人に向けて歌っててます

水谷果穂 エンタメステーションインタビュー

この曲も歌詞は辻さんですが、<本当でいたい><本当を知りたい>はどう捉えました?

本当っていろいろあると思うんですけど、自分を過剰に見せたりとか、取り繕わないっていうことかなって思いました。あと、1番は自分自身の“本当”なんですけど、2番はそれができていない人に向けて歌っててますね。

<空が明日を運ぶから>というフレーズもありますが、アルバムを通して、明日や未来に視線が向かってますよね。果穂さん自身はどんな未来を望んでますか?

私はあんまり心配性ではないんですけど、自分がイメージできる未来は2〜3年後までなんですよね。26歳や28歳の自分がどういうふうな人になっているかは、あんまり想像つかないんですね。手前から、1つずつやっていきたいなって思っています。

音楽活動についてはどう考えてます?

歌うことは、続けていきたいですね。

それはもう、ぜひ歌い続けてほしいです!

あははは。ありがとうございます。あと、続けていくうえでは、新しい曲調や、全然違うものにチャレンジしたいっていう思いよりかは、今やってるものの精度を上げていくっていうイメージでいますね。新しい、良い曲に出会いたいっていう思いもあるし、今は歌手と女優がくっきり分かれているんですけど、いつかちゃんと、その2つを相互に活かせたらいいなっていう気持ちもありますね。

今は別々っていう感じなんですね。

そうですね。歌の時の方が自分自身でやっているし、歌を通して、自分を作っていく感じがあるので、今の時点ではちょっと離れてる感覚ですね。

ずっと愛されている作品を残していきたいなって思います

水谷果穂 エンタメステーションインタビュー

じゃあ、未来ではなく、夢というと?

夢と目標は分けて考えるようにしていて。夢ってなると、あんまり綺麗じゃないかもしれないんですけど……家族の中で一番稼げるようになりたいです。あはははは。あとは、自分が小さい時に想像してた未来よりもいい未来にしたいなって思ってます。それくらいぼんやりしてますね。で、目標となると、例えば、こないだ、家入レオさんの幕張メッセでのライブに行った時に、一緒に行った人たちに「いつか果穂ちゃんのライブをここで見たいな」って言われると、そういうのを実現したいなっていう気持ちになりますね。あとは、やっぱり、ずっと愛されている作品を残していきたいなって思います。目標の方がちょっと具体的ですね。

そして、11月3日にワンマンライブが控えてます。

その日、お誕生日なので、最高の自分で迎えたいです。

22歳になりますね。どんな1年にしたいですか?

うーん……理想としては、がっつり重い作品を経験してみたいなっていう気持ちがあります。暗いものがやりたいっていうわけじゃないんですけど、どっしりしたものを、しっかりと一度やってみたいなっていうのがありますね。ただ、お芝居の方は、やっぱり役や作品との出会いが大きいので歌と違って、お芝居は逆になんでもやりたいなっていう気持ちですね。もっと広く、いろんな役をやっていきたいなと思ってますね。

その他の水谷果穂の作品はこちらへ。

ライブ情報

「水谷果穂バースデーワンマンライブ」

11月3日(日)     青山・月見ル君ヲ想フ

水谷果穂  1stアルバム「深呼吸」発売記念イベント

8月28日(水)19:00     紀伊國屋書店新宿本店(※ミニライブはありません)
8月31日(土)14:00     タワーレコード池袋店
8月31日(土)18:00     タワーレコード新宿店
9月1日(日)13:00     タワーレコード梅田NU茶屋町店
9月1日(日)16:30     ディスクピア日本橋店

水谷果穂

1997年11月3日生まれ。静岡県浜松市出身の女優・歌手。
2013年4月TVCMで女優デビューし、同年7月にドラマ初出演。
2017年7月、1stシングル「青い涙」にて歌手デビュー。2018年6月、2ndシングル「君のステージへ」をリリース。
現在は女優・歌手の二刀流として多数のドラマ・映画等に出演し、NHK朝の連続テレビ小説『なつぞら』(三橋佐知子 役)、TBS系金曜ドラマ『凪のお暇』(エリィ 役)にて出演中。

オフィシャルサイト
http://kaho-mizutani.com