Interview

インディペンデントに活動を続けながらユニークな個性を発揮するNakanoまるが、新作『WOW』で開いた未来。

インディペンデントに活動を続けながらユニークな個性を発揮するNakanoまるが、新作『WOW』で開いた未来。

シンガー・ソングライターのNakanoまるが、1stミニ・アルバム『WOW』をリリースする。2017年に「ミスiD」の審査員特別賞を受賞し、『MOM』で全国デビュー。ポップでチャーミングかつユーモラスな「笑う女の子」のMVで注目を集め、2019年にブレイクが期待されるYouTube Music「Artists to Watch」にも選出された。短編映画の主演や主題歌を手がけるなど活動の幅を広げている彼女だが、新作では痛みと毒気を併せ持つソングライティングの才能とロック的な資質が開花。インディペンデントに活動を続けながらユニークな個性を発揮するNakanoまるとは?

取材・文 / 佐野郷子 撮影 / 板橋淳一


故郷から東京へ。転機になったオーディション「ミスiD2017」

まるさんが、音楽に目覚めたきっかけから教えてもらえますか?

お姉ちゃんが二人いるので、子供の頃からJUDY&MARY、SHAKALABBITS、東京事変、GOINGSTEADYとかを聴いて育ったんです。中学2年のときに音楽の授業でギターのレッスンがあって、同じ頃、テレビドラマの『天体観測』でBUMP OF CHICKENを大好きになったこともあり、自分でもギターを弾いて歌いたいと思うように。高校時代は軽音学部のバンドで、色んなカヴァーをやりました。ELLEGARDEN、Superfly、いきものがかり、YUI……メンバーそれぞれが好きな曲を演奏していました。

福岡県糸島市出身で、2012年に上京。シンガー・ソングライターを目指して東京に?

はい。高校が進学校だったので一応大学受験はしたんですけど、大学に行きながら音楽を目指すのは考えられなくて、何のアテもないまま姉が東京にいたので来ちゃったんです。小学生の頃から地元を早く出て、東京に行きたいという思いは強かったと思います。

東京での音楽活動はどういう風に始めたんですか?

先ずは曲をつくってライブハウスに出なくちゃと思って、半年くらいかけてオリジナルをつくって、下北沢のライブハウスに出ました。ノルマは2500円のチケット5枚分くらいだったので、バイト先で知り合った友達が買ってくれて最初のうちは何とかなりました(笑)。上京してしばらくはヴォイス・トレーニングやギターのレッスンやDTMの勉強もしたり……。

オーディションを受けたり?

しました。転機になったのは、「ミスiD 2017」でしたね。「ミスiD」はアイドルに限らずジャンルを問わないオーディションだったので、そこで弾き語りで歌って、審査員特別賞を受賞したのは大きかったと思います。自分の曲もその辺りで変わってきましたね。

Nakanoまる エンタメステーションインタビュー

アルバム『MOM』で全国デビュー。クラウドファンディングを起ち上げてMVを制作。

アルバム『MOM』で全国デビューしたのも2017年ですね。

レーベル〈花とポップス〉を主宰しているつるうちはなさんにお話できたのも、「ミスiD」の準決勝のときでした。はなさんにアレンジャーさんのタカユキカトーさんや、MVの監督の森岡千織さんを紹介してもらって、やっとCDが出来たんです。ずっと、全国リリースしたくて流通元を探していたので、ようやく見つかったという感じでしたね。

自分の曲のアレンジやサウンドに関してのイメージはどう考えていましたか?

最初はどういうサウンドがいいのか上手く伝えられなくて、音源が上がってきても「何か違う」って困らせてばかりいました。オリジナルの曲はその時点で100曲くらいあったのかな? その中からはなさん、カトーさんと相談しながら自分が好きな曲をアルバムに入れたんですけど、アレンジしてもらって自分はこういう音をやりたかったんだなと気がついたんです。高校生の頃にバンドをやっていたし、バンドを聞いて育ってきたのでバンドサウンドにしたかったし、一人でやっているときから「バンド映えする曲だね」と言われることも多かったので、やっとそれがかたちになったなと。

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ミュージック・ビデオ制作のためにクラウドファンディングを起ち上げた経緯は?

クラファンを初めて知ったときは、「これだ!」と思いました。私は事務所に所属しているわけではないので、CDの制作費もプロモーション費も自分で調達しなければならなくて、森岡千織さんのつくるMVがポップで可愛くて大好きだったので、MVとアートワークをどうしてもお願いしたくて、クラウドファンディングで実現することが出来たんです。

今どきの方法とはいえ、自ら起ち上げるのは行動力がありますね。

自分でもあの時はめっちゃ行動的でしたね。

ポップで毒がある「笑う女の子」のMVはキャッチーな曲と共にまるさんのキャラクターが強い印象を残しましたね。

そうですね。ポップでカラフルでキッチュ……たぶん、その辺りはJUDY AND MARY、YUKIさん、椎名林檎さんの影響なのかもしれないですね。自分が着たい服や好きなカルチャーもそっち系というか、お姉ちゃん世代の影響もあるのかな。MVのおかげで反響もあったし、周りからは「これで売れるね!」と言われたんですけど、そうでもなかった(笑)。

〈キャッチーなメロディーに分かりやすい歌詞を乗せてEDMはちょっと古い〉という歌詞もユーモラスで面白かった。

軽やかに、ポップに、突き刺さる歌にしたかったんです。ちょっと暗い、哀しいひねくれている歌詞でもポップなサウンドで歌いたいというのはずっと頭にあったんです。

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自主映画『ドキ死』でベスト・ミュージシャン賞を受賞。自分を表現する面白さに開眼。

「MOOSIC LAB 2018 コンペティション」の短編部門でグランプリを獲得した自主映画『ドキ死』では主演と主題歌を務めていますが、以前から演技にも興味があったんですか?

もともとはなかったんです。でも、MVの「笑う女の子」、「はんぶんこ」、「メルヘンチックじゃない」で自分を表現する面白さを知って、まさか自分が主演するとは思っていなかったんですが、やってみたら超楽しかった! ライブしているときの感覚とリンクするというか、表現の幅がすごくひろがりました。

映画ではナレーションを務め、ギターで弾き語るシーンもあり、まるさんのコメディエンヌの資質が開花していますね。

ホントですか? 嬉しいです。監督が持って来た映画の企画が私のつくった「ドキ死」という曲に合うと思って提案したんです。「ドキ死」でベスト・ミュージシャン賞と女優賞をいただいて、今年も「MOOSIC LAB」で長編映画に出演することになったんです。

中村インディアさん主催の『令和源氏オペレッタ』にも参加されていますね。

初めて台詞を言った舞台も楽しかったので、これからも機会があれば演技の活動も続けていきたいです。

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言葉にすることによって、自分自身のことも理解できるようになった新作『WOW』。

今年3月には新曲「とっても明るい未来」のMV公開、4月に配信リリースしていますね。

去年の夏から次のアルバムを考えていて、業界の大人の方たちのお金で進んでいたんですが、途中でその話がなくなって、じゃあ自分でつくるしかないなと、またクラファンを始めて。そこであらためて覚悟が決まったような気がしますね。他人任せにしないで、自分のアルバムは自分でつくる。自分で宣伝する。そう決めたんです。

新作の1stミニ・アルバム『WOW』はどういう内容にしようと考えていましたか?

今度の『WOW』は人との関係性について曲になったものをEPにしました。

「とっても明るい未来」は、女の子同士の友達関係の難しさを描いていて、ドキリとさせる歌詞ですね。

曲をつくるときは一人の女の子をイメージして書くんです。そこに自分の経験や思いを重ねてゆく。「とっても明るい未来」は、連絡は来るけど、友達として好きでも嫌いでもない微妙な関係ってあるじゃないですか?LINEのグループで飲み会に誘われて「どうしようかな?」って思ったりとか……。

でも〈フェイスブックでは友達のまんま〉なんですよね(笑)。

そうなんですよね(笑)。そういうずっと心のどこかで引っかかっていたことをようやく客観的に書けるようになってきたんです。ずっと閉じて生きてきたから、自分を冷静に見ることができなかったのかな? 最近、東京の友達にも「変わったね」って言われるんですけど、それは「とっても明るい未来」のような歌詞を書けたからなんです。言葉にすることによって、自分自身のことも理解できるようになってきたというか、ようやく開いたというか。

「QU」は、友達の関係性のその先を歌っていますね。

「QU」は、BUMP OF CHICKENを好きだった親友のことを思い浮かべてつくったんです。今は離れて暮らしているし、お互いに違う環境にいるけれど、「お誕生日おめでとう」の連絡もなくなって、ちょっと寂しいなと感じたときに書いたんです。でも、どんな風に二人が変わっても友達だった。だから、「QU」と「とっても明るい未来」は友達との関係性を歌っていて、この曲ができて、その関係性は0か100かだけじゃなくて30にもなるし150にもなるんだなって腑に落ちました。この2曲が出来たとき、自分でも何か抜けたなと思いました。

Nakanoまる エンタメステーションインタビュー

自分の歌であり、「あの娘」でもある歌を届けたい。

映画の主題歌「ドキ死」は、ラブソングでもありますよね。

知り合いがTwitterで「一生ドキドキしていたい!」ってツイートしていて、「一生ドキドキしてたら死んじゃうよ!」って感じて書いたんです。恋愛関係はあんまり得意とは言えないんですけど、〈あいあいあいしてる〉なんて言葉は初めて書きました。「喧嘩」という曲の〈ごめんねありがとう〉という言葉も以前なら自分らしくないと思って却下していた言葉ですね。

「いかのお寿司」や「俺たち、クズ人間」は、まるさんのユニークな言葉の感覚と怒りや反骨心が表れていますね。

「いかのお寿司」は、『いかのおすし おかしもな』という標語が電柱に貼ってあって、「こんなところに小さく表現されているだけで世間まで伝わるのかよ!」って思ってできた曲で、差別とかいじめとかセクハラとか色々あっても絶対に生き抜いていこうって歌ですね。「俺たち、クズ人間」は知り合いが浮気して「俺はクズだから」って開き直っているにことに怒りを感じて出来たんです。そんな世の中だけど、せめてうちらは、正しく生きてハッピーになれたらいいなと思って。

サウンドはポップではあるけれど、まるさんのロック的な資質がはっきり出てきた気がしますね。

そうですね。この前のライブでも、「ロックだね、パンクだね」言われました。『WOW』でやっと等身大になれた気がするんです。どの曲も言いたいことが言えたと思うし、胸を張って「聴いてください!」って言えることが嬉しいし、自分がどんどんオープンになってきているんですよね。

「とっても明るい未来」が開けそうな?

開けるといいですねー。自分の歌であり、「あの娘」でもある歌をもっとたくさんのヒトに届けたいと思うんです。おこがましいですけど、私が音楽で救われたように、しんどい思いをしているヒトが少しでもハッピーになれるようになればいいなって思っています。

その他のNakanoまるの作品はこちらへ。

ライブ情報

WOW project!!!無料バンドワンマンライブDOKIDOKI

9月28日(土) 東京・下北沢BASEMENT BAR

Nakanoまる

シンガー・ソングライター。福岡県糸島市出。2017年「ミスiD」審査員特別賞後、つるうちはな主宰レーベル「花とポップス」に加入。2017年アルバム『MOM』で全国デビュー。2018年 「MOOSIC LAB 2018」短編部門にて、音楽と主演を務めた『ドキ死』がグランプリ、ベストミュージシャン賞、女優賞を受賞。2019年にブレイクが期待されるアーティストを紹介する、YouTube Music「Artists to Watch」に選出され、音楽活動以外にも着物・オブジェ作家・重宗玉緒の作品のモデルも担当するなど多方面で活躍。8月28日には『MOM』から1年9か月振りとなる1stミニ・アルバム『WOW』をリリース。すでに配信リリースされている「ドキ死」、しすたまるとのコラボMVが話題の「とっても明るい未来」の2曲を含む全6曲を収録。

オフィシャルサイト
https://nakanomaru.hanatopops.com/