Review

B'z 稲葉浩志配信シングル「YELLOW」から、心の行間を読み解く。

B'z  稲葉浩志配信シングル「YELLOW」から、心の行間を読み解く。

3月6日、“Koshi Inaba LIVE 2016 〜enⅢ〜”の最終公演@日本武道館が終わり、武道館のバックステージにて稲葉さんを待っている間、彼に何を言おうか考えていた。これまで「稲葉浩志のソロ活動は“隙間産業”である」を筆頭に、失礼なことばかり言ってきたのだが、失礼ついでに、その路線は変更しないでいこうと漠然と思っていた。

そして、稲葉さんがウェイティング・ルームに来て、握手をしたあとで、僕は「今日の武道館公演を含む今回のツアーで、僕はようやく、稲葉さんの“心の行間”を知ることができました」と言った。稲葉さんは少々驚きながらも「そうですか」と微笑んでくれた。

僕の発言は、捉えようによっては、いわゆる“上から目線”な大変失礼なものだ。角度を変えて捉えれば「今日まで、稲葉さんに心の行間があるとは思わなかった」となるからである。僕の無神経さを差し引いても、これではあまりに稲葉さんに失礼だと思う読者諸氏も多いことだろう。

だが、シングル『羽』をリリースしたことで、これまでの稲葉ソロ作品の“累積”は明確になり、まるで稲葉浩志という“瓶(かめ)”から、楽曲という名の水が溢れ出てくるのをはっきりと目視できるような事態になったのである。

『マグマ』から始まった稲葉楽曲の積み重なりが、瓶の中でどのくらいの分量になっているか、僕にはまるでわからなかった。稲葉さん当人はある程度把握していたのかもしれぬが、それを取材の席でインタビュアーに吐露することはなかった。彼はただ、黙々と楽曲を作り続けてきた。

『羽』に収められた「水路」が、制作過程として“詞先”、つまり歌詞がほぼ完全にできてから作曲とアレンジを考えていったという話を聞いて、稲葉楽曲は、その核に誰にも侵害されないものを持ったと思えた。そして、そこで初めて彼の心の行間が読めたのである。

 

8月に配信シングルとなった「YELLOW」。簡潔なギターリフを骨子に持つ昇圧系エイトビート楽曲は、そのアレンジ=体裁から類推されるある一定の歌詞の方向性=テーマがあることは、音楽をたくさん聴いてきた読者諸氏にもお判りいただけるだろう。「YELLOW」は、“ブルースの連鎖イズライフ”なるフレーズを含みながら、太陽光の下、立ち現れるであろう定番の感情を裏切る。太陽光と……何というか「Everyday I have the Blues」という情感が稲葉浩志によって一体化するのである。

瓶から溢れ出てきた水の如き稲葉楽曲は、もはや途切れることはないはずだ。仮に作品リリースのインターバルが空いたとしても、彼の心の中で熟成されていくことと思う。

文/佐伯 明

ライブ情報

INABA / SALAS “CHUBBY GROOVE TOUR 2017”

1月25日(水) 名古屋・ Zepp Nagoya
1月26日(木) 大阪・Zepp Namba
1月27日(金) 大阪・Zepp Namba 
1月30日(月) 札幌・Zepp Sapporo
2月3日(金) 福岡・DRUM LOGOS
2月6日(月) 東京・Zepp Tokyo
2月7日(火) 東京・Zepp Tokyo
2月8日(水) 東京・ Zepp Tokyo

稲葉浩志(KOSHI INABA)

9月23日生まれ。岡山県出身。1988年、B’zでデビュー。ヴォーカル及び作詞を担当。1997年、全作詞・作曲・編曲を手掛けたソロとしての1stアルバム「マグマ」をリリース。これまでにアルバム5作、シングル4作を発表している。2004年からはソロライブツアーも開催。