シミルボンの本棚  vol. 1

Column

これは原作超え!伊坂幸太郎映画3選

これは原作超え!伊坂幸太郎映画3選

伊坂作品と映像、音楽は親和性が高い

伊坂作品はもともと、行間から音楽が聞こえるような作品が多いのです。初期作品では全体のテーマ音楽が決められているものもあって、それがなんともスタイリッシュで、映像化によって更に引き立てられていたりして。 その中でも、一部の伊坂作品はダントツで配役が良い。(伊藤淳史のキレ役は、ドラマ「無痛」が最初じゃないんだよ…?)
今回は、先に映画を観た人に「原作のほうが面白いよ!」と言えない作品3つを挙げようと思います。

アヒルと鴨のコインロッカー

神様には見て見ぬふりしてもらおうよ。神様を閉じ込めてさ、なかったことにすればいい。こうすれば神様にバレない。
※神様はコインロッカーに閉じ込めます。
本作はボブ・ディラン「風に吹かれて」が全体に流れるテーマで、同時に物語のキーにもなっています。映画はもちろん音楽が流れるわけで、それだけで原作超えちゃってる感じ。
また、椎名役の濱田岳と河崎役の瑛太の演技が文章の表現を超えて、作品をとてもとても魅力的に仕上げています。
作中最も重要な「外人が住んでいる部屋」の謎が明かされる瞬間と、全ての伏線が繋がる、回想シーンから序盤の「ディラン?」に繋がる演出が本当に素晴らしい。
原作の読後感と映画の余韻が全く同じで、なんかすごく良かったなあ…
と感じる、文句なしの名作。


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アヒルと鴨のコインロッカー

伊坂 幸太郎 (著)
東京創元社



ゴールデンスランバー

「お前、オズワルドにされるぞ!」 現時点での伊坂作品の最高峰と言われる本作。絶対的な力にモッサリ型配達員が挑む名作です。勝つことではなく負けないこと、生きるための戦い。ものすごく面白かった。英語版のタイトルは【Remote Control】、邦題よりもサスペンス感を押し出している印象。(日本の大学生のモラトリアムな感じはあんまり馴染めないのかもなあ)
でも正直、私は映画のほうが好きです。原作もめちゃくちゃ面白いんだよ。でも映画がすごく良いんだよ!
作中のサイコなシリアルキラー「キルオ」は原作者がキャスト指定した濱田岳。冴えた演技は数年後「宇宙兄弟」のキレやすい関西人「やっさん」役でも発揮されています。
青柳を追い詰める佐々木(香川照之)と、永島敏行扮する小鳩沢(ファミレスでショットガンぶっ放すシーンの強烈さね…)の怪演も見事。伊東四朗、ベンガル、でんでん、竜雷太など実力派の名優が脇役を固め、一つ一つの演技にいちいち惹きつけられます。
エンディグ曲は斉藤和義「幸福な朝食、退屈な夕食」。 これは伊坂氏がサラリーマンを辞めて専業作家になることを決意したきっかけの曲です。本作が作者にとってどれほど重要なものであるか伺えます。

あと、青柳のニュースを日本中が息を詰めて見ている中でちょっとだけ映る、ロックこと岩崎さんの家庭の感じがとても好き。
どう見ても2Kくらいのクッソ狭いアパートのリビング、小さいテレビをコタツで見ているロック岩崎と娘二人…の後ろに、窮屈そうに置いてあるアップライトピアノ!
どう見ても貧乏なのに、狭いのに、絶対楽器禁止のアパートなのに、娘にピアノを習わせるのだけは諦めなかったロック岩崎が愛おしくなる瞬間です。


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ゴールデンスランバー

伊坂 幸太郎 (著)
新潮社



フィッシュストーリー

「なあ、この歌は誰かに届くのかよ?」 伊坂節冴え渡る、「繋がる」短編集。映像化された短編集の中では本作が一番かな。
1975年、セックス・ピストルズがデビューする1年前に日本でパンクロックを発明してしまっていた、早すぎたバンド「逆鱗」の音楽が、時を超えて未来に届く。
とはいえ、序盤は「隕石衝突による滅亡を目の前にした日本」から始まります。チープなSFと思うなかれ、見終わった後の爽快感はちょっと言葉に尽くしがたいから。
個人的な推しは二人。伊藤淳史扮する逆鱗のリーダー繁樹と森山未來扮する正義の味方です。
繁樹君は、バンドの雑務を一手に引き受ける苦労人であると同時に喧嘩っ早く、突沸タイプのキレる若者。彼の「ぷちっ」とした瞬間の顔のためだけに本作観ても良いくらいです。
森山未來はダンサーならではの身体能力の高さが遺憾なく発揮されています。エンディングで全部持っていくかっこよさでした。モ○期とか世○の○心でとかは森山未來の無駄遣いだと思ってた舞台好きなので非常に嬉しかった。
「正義の味方」以外にも「ハーフじゃなかった男」「好青年」「運命の女性」など、ニヤリとする役名がいっぱいで、本当に最後の最後までひたすらに面白い作品でした。
ちなみに逆鱗の音楽は斉藤和義担当です。好き過ぎか。


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フィッシュストーリー

伊坂 幸太郎 (著)
新潮社



その他、悪くないけど、物足りなかった映画たち

「死神の精度」…原作が好きすぎたからか、物足りなかった。藤田さんと春くんが足りないよ!あと死神VS老婆の謎の近未来感は何だったの!
「ラッシュライフ」…同じく、原作が好きすぎたからか以下略。もっとスピード感がほしかった!あと黒澤さんが足りないよ!
「陽気なギャングが地球を回す」…面白かったけれど、原作のほうがもっと爽快でもっとワクワクしたなあ。響野さんと久遠くんのキャラクターは、伊坂節だからこそ光るものだった感じ。

あれ?改めて見てみたら、推し作品って全部中村義洋監督作じゃん…あと濱田岳出演じゃん。結局そこだったのか。
そういえばジェネラル・ルージュも原作より映画のほうが好きでした。

(Amati)

 

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