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近藤公園と平岩紙が初めての二人芝居に挑戦中!『あたま山心中〜散ル、散ル、満チル〜』

近藤公園と平岩紙が初めての二人芝居に挑戦中!『あたま山心中〜散ル、散ル、満チル〜』

初舞台が同じ作品(2000年『キレイー神様と待ち合わした女ー』)だったという絆で結ばれた“同期”である、大人計画所属の個性派、近藤公園と平岩紙が初めての二人芝居に挑戦中だ。彼らが探しに探して選んだという演目は、古典落語の『あたま山』をモチーフに、兄と妹のようでそうでもなさそうな不思議な関係の男女のやりとりを描いた竹内銃一郎の傑作戯曲『あたま山心中~散ル、散ル、満チル~』。演出は、二人が揃ってファンだったという“tsumazuki no ishi(つまづきのいし)”を主宰する劇作家で演出家、俳優でもある寺十吾(じつなしさとる)が手がけている。10月12日、東京・下北沢の駅前劇場で初日が開幕する数時間前に、本番同様に緊張感溢れるゲネプロが行われた。その様子をレポートする。

取材・文 / 田中里津子


舞台俳優としてのあらたな一歩に立ち会わせてもらったような気さえした

むきだしの平台(通常はステージの土台として使われる木製の台)が何枚かは裏返しになったりもしながら無造作に重ねられ、立体的になった床の中央には何本もの幹がより集められ大木のようになっている桜。ほぼ満開状態の花は、駅前劇場の低い天井をはうようにして左右と前方客席の頭上まで広がって咲いている。なんだか、劇場の下からステージを突き破って生えてきたかのよう。客電が落ちると柱時計の機械音がし始め、ボーンボーンと8回、時を打ったところから物語は始まる。

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明転すると、桜の根元部分に座り込んでいたのは臙脂色のクラシックなワンピースを着た平岩。どうやら旅支度をしているようだ。そこに、シンプルな白シャツとパンツ姿になぜか裸足の近藤が現れる。兄はチルチル、妹はミチルという名前で青い鳥を探しに旅に出るようなのだが、徐々に様子がおかしくなってくる。だいたい、二人は本当に兄妹なのかどうかも危ういところ。そこに、はらはらっと数枚の桜の花びらが舞うと、舞台上の空気がすうっと変わる。平岩演じるミチルは、かわいらしい幼女のような口ぶりだったのが、急にハイテンションの歳のいった狂女にも見えてくるから不思議。一方の近藤は少年なのかと思いきや、もう40歳だとも言う。しっかり者の兄からナイーブな夫、夢うつつをさまよう母を気遣う息子と、場面によって微妙に演技のニュアンスと声を変化させていく。二人ともがこのうえなく年齢不詳だ。

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会話の途中で、モチーフとなっている落語『あたま山』の一節がセリフに組み込まれたりもしていて、中央の桜の木が平岩の頭に生えている設定なのかもしれないと思わされたりもする。延々と二人の会話のみが続くわけではなく、モノローグとして近藤が椅子の上に正座し、まさに落語のようなスタイルで『あたま山』の前半部分を披露する場面も。さらに後半ではその物語の続きの顛末を平岩が、こちらは昔話を語る老女のように話し出す。

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妹は兄のことを“アナタ”と呼んだりし、特別な感情があるようにも見える。それでいて次の瞬間には浮気をした昔の夫を激しくなじる元妻の口調になったり、小さな息子のための舞台衣裳を縫う母親になると何度も何度も同じセリフを繰り返す。物語は兄妹の話なのか、夫婦の話なのか、それとも母子の話なのかはっきりさせることをしないまま、ゆらめきながら進む。会話には「ネクタイで“しめる”」とか「死んだら会えるかしら?」など、つねに“死”を連想させる言葉が頻繁に使われ、おそらく兄(夫、息子)は妹(妻、母)に何らかの強い想いを抱いていて自ら手にかけようとしているのか、もしくは共に命を絶とうと決心しているのか……。

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ちょっと怖く、かなり切なく、そしてひたすら美しいおとぎ話のような、実に上質の舞台だった。奇をてらうことなく真摯にこの名戯曲に向き合った寺十の演出も上品で秀逸だったが、舞台美術、音楽、照明、音響、この作品を彩るすべての要素がバランスよく、想像していた以上のハイクオリティ。近藤も平岩も実力があることはもちろん知ってはいたものの、改めて演技力というか俳優力の高さに感じ入った。感情のアップダウンの表現の仕方も、美しい言葉で綴られたセリフを発する二人の声の変化も、絶妙。平岩の少女のようなかわいらしさと、嫉妬や恨みでエキセントリックに感情を爆発させるときのギャップには凄まじいまでの高低差があり、それを柔らかく受け止める近藤の包容力にはある意味、人間力みたいなものもにじみ出ていたように思う。二人の相性の良さは最初から保証されていたようなものだが、初めてのこの二人芝居でこれまであまり発揮できなかった部分を互いに引き出し、磨き合い、自分たちならではの輝きに昇華させていて、この日、共に歩み出した舞台俳優としてのあらたな一歩に立ち会わせてもらったような気さえした。まだ本格的な稽古の前だったインタビュー時には「この企画を続けるかどうかは未定」と笑っていた二人だが、ぜひともまた別の作品でも観てみたい。あらたにチャレンジできる脚本を探し出して、二人芝居シリーズとして続けてほしいと心から願うばかりだ。

今作はこのあと10月19日まで、東京・下北沢の駅前劇場で上演する。

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『あたま山心中〜散ル、散ル、満チル〜』

2016年10月12日〜10月19日 下北沢駅前劇場

※前売券はすべて完売。
※当日券は開演の60分前より劇場受付にて販売(先着順・おひとり様1枚の販売)。 (当日券は全ステージ必ずご用意致しますが、販売枚数は毎公演変わります)

竹内銃一郎が吉田日出子の依頼を受けて「さくらんぼの種を食べてしまったばかりに頭に桜が生えてしまった男の悲喜劇を綴った落語『あたま山』から想を得て、メーテルリンクの『青い鳥』を軸に描いた物語。本公演ではtsumazuki no ishiの寺十吾が演出を手がける。

【作】竹内銃一郎
【演出】寺十吾
【キャスト】近藤公園 平岩紙
【企画・製作】近藤公園 平岩紙

『あたま山心中〜散ル、散ル、満チル〜』オフィシャルサイト http://konkami.com