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山田孝之&石丸幹二らがプレミアムな笑いで観客のハートをがっちり掴む。福田雄一演出ミュージカル『ペテン師と詐欺師』、ただいま上演中!

山田孝之&石丸幹二らがプレミアムな笑いで観客のハートをがっちり掴む。福田雄一演出ミュージカル『ペテン師と詐欺師』、ただいま上演中!

2005年にブロードウェイで初演され、卜ニー賞にノミネートされた傑作コメディ・ミュージカル『ペテン師と詐欺師』。その日本版が9月1日(日)から新橋演舞場にて上演中だ。
本作では、テレビドラマの脚本・演出や映画監督としてヒット作を世に送り出し、数多くのコメディやミュージカル舞台でも人気を博す福田雄一が演出・上演台本を手がける。主演は福田作品には欠かせない存在の山田孝之と、福田作品初参戦となる石丸幹二。さらに、宮澤エマ、保坂知寿、大和田美帆、岸 祐二など実力を備えるキャストたちが揃っている。
初日前に行われたゲネプロの模様をレポートする。

取材・文・撮影 / 竹下力


ピースフルで軽やかなヴァイヴスに満ちた作品

立派なスーツを着たハンサムな男が姿見の前に立ち「俺はダビデにしか見えない」と自分の完璧さに絶望すらしてしまう。ローレンス・ジェイムソン(石丸幹二)は自分が世界一だと信じて疑わない高いプライドを持っていて、神をも恐れぬ甘い言葉を女性の耳元でささやく詐欺師。もし彼になれるチャンスがひと握りでもあったとしたら、アルマーニのスーツでも羽織って街に繰り出したくなるだろうし、「こんないい男、ほかにはいない」と寄ってくる女性たちに酔いしれることだろう。

ペテン師と詐欺師 エンタメステーションミュージカルレポート

そして、そんな誰しもが憧れる無敵な詐欺師・ローレンスのところに、フレディ・ベンソン(山田孝之)のような、おっちょこちょいでがさつで、天然なのにイケメンなペテン師が弟子入りし、お互いをペテンに掛け合ったらどうなるのか? その疑問に答えを出すのは、稀代の演出家・福田雄一だ。本作でも彼の作劇マジックが炸裂。超ド級に感動できる“バディもの”のコメディ・ミュージカルに仕上がっていた。

ペテン師と詐欺師 エンタメステーションミュージカルレポート

舞台は高級リゾート地・南仏リヴィエラの豪華なカジノから始まる。「おもてなし」という皮肉の効いたナンバーを歌いながら、凄腕のベテラン詐欺師のローレンスが相棒で警察長のアンドレ(岸 祐二)と、大金持ちの未亡人ミュリエル(保坂知寿)に、自分は王族だと嘘をつき、宝石を奪い去る。

そして、ローレンスはスイスへ逃亡。その道中の列車内で、若いアメリカ人の詐欺師フレディと出会う。フレディは品のいい女性を騙してお金を巻き上げていたのだが、ローレンスは彼のやり口が気に入らず、逆に彼を騙してお金を取り返す。あまりの巧妙な手口に騙されたことに気づかないフレディは、やがてそのことを知ると、ローレンスに弟子入りを志願する。

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ローレンスは思うところあって、彼とタッグを組むことになる。ふたりが初めに騙そうとした女性は、石油王の娘ジョリーン(大和田美帆)だった。ローレンスは結婚詐欺を働こうと彼女に近づくが、強引に結婚を迫ってくる彼女に困り果て、フレディと一緒にひと企み。息を巻くふたりだったが、彼らの関係に亀裂が入り始め……やがて育ちの良いアメリカ人女性で金持ちそうな旅行者のクリスティーン(宮澤エマ)がふたりの前に現れて──。

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今作はひたすらウェルメイド・プレイで、エンターテインメントとしてゴージャスなミュージカルだった。そういった世界観に、福田雄一は惜しげもなく次々と笑いの仕掛けを突っ込んでくる。ギャグ、パロディ、楽屋落ち、おとぼけ、すかしや間の抜けたリアクションには笑わずにはいられない。

そして特徴的なのは、詐欺師が出てくるお話なのに、悪人が誰ひとりいないように見えることだろう。ローレンスやフレディのキャラクター、彼らを演じる石丸幹二と山田孝之の人徳なのかもしれないし、福田雄一の抱いている“性善説パワー”(と勝手に私が呼んでいる)なのかもしれない。とにかくみんな陽気で、ウキウキするナンバーが怒涛のように押し寄せてくる。

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アンドレ・チボーを演じる岸 祐二のすかしを効かせた笑いは癖になる。ジョリーン・オークス 役の大和田美帆の垢抜けない風の芝居はリゾートのきらびやかな世界の中で異彩を放ち、ミュリエル・ユーバンクスを演じる保坂知寿のやたらに強い自己肯定感で他者を圧倒するギャグに腹がよじれる。
クリスティーン・コルゲート役の宮澤エマは佇まいから美しく、品のあるダンスや歌にも目や耳を奪われてしまう。彼女がソロをとった「来たわリヴィエラ」は個人的に今年のミュージカル・ナンバーの“ランキング10”に入るほど逸品だった。

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ローレンス・ジェイムソンを演じる石丸幹二は、台詞回しも歌も明瞭で文句のつけようのない感動的な出来栄え。ダンディーだし洗練された姿勢には惚れ惚れとしてしまう。劇団四季のミュージカル『オペラ座の怪人』で俳優デビューを新橋演舞場で飾って以来、29年ぶりにこのステージに戻ってきたそうだ。たしかに、故・浅利慶太の演技術を叩き込まれた人だと改めて実感する。いわゆる「四季節」と言われるけれど、発声は腹式呼吸を基本に腹から声を出して言葉の美しさと意味を明晰に伝える。観客は一発で何が起きているのかわかるという具合だ。脈々と受け継いできた歴史(今作の初演には劇団四季出身の鹿賀丈史、市村正親も出演していた)が彼の身体に刻印されているのだろう。役者街道を着実に歩き続けてさらなる高みを目指している役者がここにはいた。

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フレディ・ベンソン 役の山田孝之は、映画やテレビで観ない日はないけれど、いつだって颯爽として自由に見える。そして、彼がいれば作品に奇跡が起きる。今作はコメディであるから、彼が出てくれば笑いが起こる。いろんなパターンの詐欺師を演じるため声色で性格を演じ分けるシーンも素晴らしく、歌も抜群で声量もブレない。歌い方自体もカッコいい。また、オーバーなリアクションも、ハプニングではないのにハプニング的に見えたりする。そんな所作も思わず笑ってしまう。

初日に向けて「福田さんには“山田くんは歌と芝居の切り替えが良い意味で独特”と言われたので、“独特”に頑張ります」とコメントを残していたが、飄々と演じて歌っているなかに持っている、得体の知れないオーラそのものが独特なのだと思った。身振り手振り、台詞の間、役者としての彼を構成するすべてが“山田孝之オリジナル”に繋がっているのだろう。

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アンサンブルを含め、登場人物がひと癖もふた癖もあるから面白い。上演台本を仕立てた福田雄一のセンスが閃きまくっている。しかも、どのキャラクターもついつい笑ってしまう、憎めなさと愛らしさがある。ぶっ飛んでいて変てこりんにも関わらず、どういうわけか少しだけ世界から傾いているだけで、この世界のどこにでもいると納得させられてしまう。
『サムシング・ロッテン!』や『スマートモテリーマン講座』を観た際にも思ったが、彼はやはり天才だ。なによりも“舞台が好き”と感じさせる演出で、観ている者をハッピーな気分にさせる手腕はさすがと言っていい。とにかく一部の隙もなく笑わせにかかってくるが、無理やり笑わせようとするのではない。ただ起こっていることに身を委ねているだけで笑っていられる。そして、観客が笑っていれば演者も嬉しくなるだろうし、それら皆の笑顔が福田雄一の喜びに変わる。この笑顔の連鎖が広がって劇場にピースフルで軽やかなヴァイヴスが満ちていく。今作ではそこにラグジュアリー感を増したしなやかな演出が加わっている。

ペテン師と詐欺師 エンタメステーションミュージカルレポート

『ペテン師と詐欺師』。なんだか悪人がいっぱい出てきそうなタイトルにダークな内容を思い浮かべてしまうかもしれないが、“騙されず”に、いや“騙されても”この世界を体感して欲しい。終演後には騙されてよかったと、ハッピーで爽快な気分になれる笑顔を手にしているはずだから。公演は9月26日(木)まで新橋演舞場で上演。

ミュージカル『ペテン師と詐欺師』

ミュージカル『ペテン師と詐欺師』

2019年9月1日(日)〜9月26日(木)新橋演舞場

STORY
若くケチなアメリカ人詐欺師、フレディ・ベンソン(山田孝之)がやってきたのは、世界中の大金持ちが訪れる高級リゾート地・南仏リヴィエラ。すでにそこでは凄腕の詐欺師ローレンス・ジェイムソン(石丸幹二)が、相棒の警察長アンドレ(岸祐二)と共に、大金持ちの未亡人ミュリエル(保坂知寿)をはじめとする富豪の女性たちをダンディな魅力で騙し、荒稼ぎしていた。
ふとしたことからローレンスの正体を知ったフレディは、そのオ能にほれ込み、強引に弟子入りを志願する。
2人は協力し合い、石油王の娘ジョリーン(大和田美帆)を騙すことに成功するが、詐欺師同士、縄張りをめぐって次第に敵対。
見るからに育ちの良いアメリカ人旅行者のクリスティーン(宮澤エマ)を狙い、彼女から先に5万ドルを巻き上げたほうが勝ちという勝負を行うことに。
才気あふれる若手詐欺師と優雅なベテラン詐欺師との、騙し騙される勝負の結末は──!?

脚本:ジェフリー・レイン
音楽・作詞:デイヴィッド・ヤズベク
演出・上演台本:福田雄一

出演:
フレディ・ベンソン:山田孝之
ローレンス・ジェイムソン:石丸幹二
クリスティーン・コルゲート:宮澤エマ
ミュリエル・ユーバンクス:保坂知寿
ジョリーン・オークス:大和田美帆
アンドレ・チボー:岸 祐二

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