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なんて罪深いゲーム!『ファイアーエムブレム 風花雪月』が突きつける体験

なんて罪深いゲーム!『ファイアーエムブレム 風花雪月』が突きつける体験

9月に入り、今年も残すところあと4ヶ月。季節は夏から秋にと移り変わってきました。新しい季節、言わば新シーズンに突入です! 私は1回目の記事から『ファイアーエムブレム 風花雪月』(以下、『FE 風花雪月』)をプレイし先日ついにクリア、2周目という新シーズンを謳歌中。2回目の記事で「2周目はクロードのいる金鹿の学級を選ぶ」と言ったけれど、『FE 風花雪月』の第二部である“5年後”のディミトリのビジュアルを見たら理性がふっ飛びました。青獅子の学級さんに3000点ですよ。クロードも好きだけど、清廉な印象だったディミトリが5年後にはやや荒々しさが加わって私の好みの外角高めにズドン。ギャップも相まってさらに倍。いけません、いけませんよこれは……! しかも2周目以降では自室の机で設定を……おっと、これ以上は言えません。ぜひともクリアして歓喜に咽び、萌え転がってください。
と、私の趣味嗜好は置いておいて、本稿ではプレイ中に活用できるオンライン機能と、『FE 風花雪月』の真骨頂でありこれまで丁寧に敷き詰められてきたものの集大成である5年後の物語を紹介。生徒に頼られるいい教師を目指してここまでやってきたけど、はたしてその想いは貫けたのか……。今回も黒鷲の学級・紅花の章のプレイで本稿を進めていくよ。

文 / 大部美智子


並行世界の生徒たちがやってくる

Nintendo Switch™ Onlineに加入し、ネットワークに接続した状態で出撃すると、紫色や黄色のオーブがふよふよと漂っているマスがある。これは世界中で戦ったプレイヤーたちの魂で、彼らが戦死したマップに現れる。紫色の魂は敵ユニットで、黄色の魂は味方ユニット。紫色の魂のマスで待機すると戦死者が落としたと思われる武器を拾うことができ、黄色の魂のマスの場合は経験値がもらえたり、装備品の耐久値や計略の回数が回復するなどの祝福を受けることができる。一方で戦死者の魂がさまよっているところは激戦区という見かたができるので、味方ユニットを慎重に進める目安にもなっていて、私はアイテムや祝福よりそちらのほうがすごく助かった。

ファイアーエムブレム 風花雪月 エンタメステーションゲームレビュー

▲おわかりいただけるだろうか……画面右端に写った戦死者の魂が。魂というとギョッとしがちだけど、『FE 風花雪月』では「戦っているのは自分だけじゃない」という心強さを感じる

また、ネットワークに接続していると留学生というシステムも使えるようになる。大修道院に並行世界の4人の留学生が訪れるようになり、その留学生を送り出したプレイヤーが設定したアイテムを“特産品”としてお店より少し安く買うことができるのだ。20人以上の留学生を見てきたけど、“最上級試験パス”を特産品にしている人が多い印象。最上級職のユニットなしでクリアしてしまったのでその恩恵には与れなかったけど、8割ぐらいの人が特産品に設定しているのですごく需要があるのだと思う。
留学生に話しかけると“潜伏訓練”ができて、敷地内に隠れた留学生を見つけられたら勝ち、というミニゲームが楽しめる。報酬が伴うものだけど、ある日の報酬はなぜかミミズだった。ミミズ……。そのときの相手がヒューベルトだったからかな、と思ってしまう。ふふ、あの冷徹で無慈悲で容赦のない性格、けっこう好きなのよね。余談だけど、もしも留学生が全員ヒューベルトだった場合、大修道院に5人のヒューベルトがいることになる。ひぇー。
留学生は自分も送りだせるので、何か役に立ちそうなアイテムを持たせて旅立たせるといいかも。なお、持たせたアイテムはなくなっちゃうのでご注意を。

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▲留学生は副官として1回雇うこともできて、戦闘をサポートしてもらえる。当時の主人公のレベルは17だけど、この留学生のフェリクスはレベル41。そばにいてくれるだけで頼もしい!

戦死者の魂も留学生もこれまでの学園生活や出撃状態を大きく変える要素ではないけれど、あるとうれしい、なくなると寂しい要素。みんなは私よりももっとうまく活用しているのかな? ステキな活用法があったらぜひ教えてくださーい!

成長した生徒たちの姿と行く末

さてさて。教師となって生徒たちを導きながら数ヶ月。学園生活を満喫しながらもたびたびキナ臭い事件が起こっており、主人公が突如想定外のイメチェンを果たす程度には波乱万丈な日々を送っていた。そんななか、ある生徒の行動によってフォドラ全体を巻き込んだ戦争が始まる。そしてそこから5年、戦争のさなかに行方不明になっていた主人公が、5年後にガルグ=マクで成長した生徒たちと再会した。5年という短くない年月で生徒たちがどのように変わったのか、そして5年ものあいだ居なかった主人公をまだ教師として扱ってくれるのか……。

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▲装いを新たに、成長とともに逞しくなった生徒たち

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▲身長が14cmも伸びたカスパル。何事にも一直線でそれゆえに暴走気味なところがあった彼だけど、いい感じの落ちつきと生来の真面目さがあいまって、それはそれはいい男になりました。ちゃんと「運も実力のうちだぜ!」って間違えずに言えるようになっていて、うれしくもあり寂しくもあり……

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▲細かいことだけど、“個別指導”が“個別訓練”に変わった。場所も黒鷲の学級の教室から会議室のような一室へ。教師が生徒を導くというスタイルから、各々が互いに高め合うスタイルに変わったみたい

主人公やほかの教師たちが居なくなった5年まえから独自の鍛錬を続けてきた生徒たちだけれど、変わらず「先生(師)」と慕ってくれた。ありがとうありがとう。でも、プレイ当初に目指していた“頼れる教師”とは違った存在になっていた。そう、前を歩いて生徒たちを導くのではなく、生徒たちが肩を並べて、あるいは先を行って引っ張ってくれるまでに成長していたのだ。かつては教える対象であった生徒たちから“高度教練”を受けられるようになったことで月日の流れを感じてしまう。“講習”に関しても、その都度生徒のひとりが行う形になっていた。主人公以外の教師たちがいないなかで、エーデルガルトを中心にお互いを高めあってここまで成長してきたと思うと、生徒たちの健気さというか一生懸命さが胸に来る。描かれていない5年間だけれど、こういった端々でどんな風に彼らが過ごしてきたか想像ができた。ものすごく行間に描写力のあるゲームだと思う。

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▲第二部では生徒が講習を開催することも。講習後は参加者のやる気が50アップ!

現在は5年まえから続く戦争の真っ只なか。聡明な読者は何となく察していると思うけれど、生徒たちはいったいどんな勢力と、“誰”と戦っているのかという点。5年まえの3つの学級はフォドラの縮図と呼ばれていた。それはフォドラという大地を統治するアドラステア帝国、ファーガス神聖王国、レスター諸侯同盟の3つの勢力のことで、黒鷲の学級、青獅子の学級、金鹿の学級がそれぞれにあてはまっていた。士官学校の全員が巻き込まれてぶつかり合う今、つまり戦う“敵”は……ということである。
私は古くからの『ファイアーエムブレム』(以下、『FE』)シリーズプレイヤーなので、シリーズの展開の容赦のなさにはある程度免疫がある。しかしそれでも、5年後の『FE 風花雪月』は安易に出撃できなかった。それはもう、瞑想の境地で心を無にして“敵”をなぎ払っていった。あるときは主人公が、あるときは自分が指示を出した生徒たちが……。
第一部では理想の教師を目指して奔走していたが、“理想の教師”とはいったい何なのだろうかと考えた。つらい。戦争、つらい。『FE 風花雪月』が『FE』シリーズで初めて手にした作品だったプレイヤーはどんな思いで進めていったのだろう。近年まれに見る罪深い作品だと思う。ただ、心に刻まれるようなその罪深さを表現するためにこれまで積み上げられてきたものは見事というほかなくて、そこがプレイヤーを唸らせる部分なのは間違いない。

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▲かろうじてひとりだけ説得できたが……

そんな私の心にわずかに光明が差す。上の写真のように説得・勧誘が行える“敵”キャラクターがいた。友人は2周目をクリアしているが、説得・勧誘のシーンは一切なかったという。なぜ発生したのか、全キャラクターも可能なのか不明だが、過去作をプレイした経験則で考えると、本作の支援レベルが関係しているのではないかという気もする。プレイ開始から始まる選択のひとつひとつ、行動の一手一手の積み重ねがどんなに大事か思い至る。とにかく、手のひらから零れ落ちそうな相手を救える可能性を体験できた。
私はまだ黒鷲の学級でしかクリアしていないし、途中で物語を大きく変えるような選択肢の一方しか経験していないので、自分が目撃し体験したことだけがこの作品のすべてじゃないというところが恐ろしい。いまは、「もしあのときこうしていたら、未来は違ったかもしれない」といういろいろな“もし”が頭のなかを駆け巡っている。
たとえば、「もし、あのキャラクターをスカウトしていたら」、「もし、もうひとつの選択肢を選んでいたら」、「もし、ほかの学級を選んでいたら」、「もし、“敵”キャラクターとの支援関係がいまよりも親密だったなら」など……。実際にどうなるかはわからないし、何も変わらないかもしれない。

しかし、クリア後にエンディングで味方キャラクターのその後が簡単に紹介されるのだが、そこでうれしいと思えるある出来事の記述があった。同じ黒鷲の学級をクリアした友人にはなかった、キャラクターの晩年のエピソード。シリーズ作にあった、とある仕組みを思い出した。これを見ると、「きっと変わることもある」と信じずにはいられない作り込みなのがこの『FE 風花雪月』。開発陣に敬礼しつつ、大きな期待とささやかな希望を持って私は2周目にトライするのだった。

フォトギャラリー

ファイアーエムブレム 風花雪月ロゴ


■タイトル:ファイアーエムブレム 風花雪月
■メーカー:任天堂
■対応ハード:Nintendo Switch™
■ジャンル:ロールプレイングシミュレーション
■対象年齢:12歳以上
■発売日:発売中(2019年7月26日)
■価格:パッケージ版・ダウンロード版 各6,980円+税


『ファイアーエムブレム 風花雪月』オフィシャルサイト

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