HEATWAVE結成40周年企画  vol. 1

Interview

TOSHI-LOW(BRAHMAN / OAU)が歌う「満月の夕」に秘められた真実。生みの親である山口洋(HEATWAVE)から受け継いできたものとは

TOSHI-LOW(BRAHMAN / OAU)が歌う「満月の夕」に秘められた真実。生みの親である山口洋(HEATWAVE)から受け継いできたものとは

HEATWAVE結成40周年企画第1弾
特別対談 TOSHI-LOW(BRAHMAN / OAU)× 山口洋(HEATWAVE)


40周年を迎えたHEATWAVE山口洋と、25年目を迎えたBRAHMANのTOSHI-LOWは、世代を超えてリスペクトし合ってきた。このふたりの頑固者たちは、頑固だからこそ互いを深く知り、固い絆で結ばれている。
阪神・淡路大震災後に生まれた「満月の夕」は、東日本大震災以降、TOSHI-LOWにとっても大切な曲として歌い継がれてきた。
この夏も“オハラ☆ブレイク”で共演を果たし、“RISING SUN ROCK FESTIVAL”では台風のためセッションが中止になったものの、今週末行なわれるイベント“New Acoustic Camp”(以下NAC)で再び共演する。このイベントはTOSHI-LOWがBRAHMANと並行して活動するバンド“OAU”が主催している。荒々しいパフォーマンスで知られるBRAHMANとは打って変って、OAUはアコースティック楽器のアンサンブルが美しいバンドで、最近、ビルボードライブ東京でライヴを行なった。ふたりの対談はそのあたりからスタートする。

取材・文 / 平山雄一 撮影 / 三浦麻旅子


TOSHI-LOW 山口洋 エンタメステーションインタビュー

OAUがビルボード東京でライヴをするって、正直、驚きました。

山口 DVDを観たんだけど、お客さんが妙齢の女性たちばっかりで、ビックリしたよ。男しかいねえんだろうと思ったら、ちゃんとしたキレイな恰好をした女性がいっぱいいて。

TOSHI-LOW 普段は男と男みたいな女ばっかだけど(笑)。

山口 うん。すごいね、そのへんが。

僕は8年前に、大人の音楽ファンが集まる池上本門寺のイベントでOAUのライヴを初めて観たんだけど、音楽的にすごく合ってて面白かった。

TOSHI-LOW あれは自分としては中途半端なライヴだったと思いますね。椅子があるだけでビビっちゃったり。

ビビっちゃうの!?

TOSHI-LOW ビビっちゃうんですよ(笑)。椅子があったらどうしよう、みたいな。

山口 いや、あと10年もしたらファンの高齢化が止まらなくなって、椅子は用意しないとダメになるよ(笑)。

TOSHI-LOW やっぱり椅子とか休憩時間とか、必要でしょ?(笑)

山口 そうそうそう!

TOSHI-LOW 俺たちはライヴハウスから出てきたんで、座って観る文化にまったく慣れてない。しかもお客さんが飯を食ってるなんて、「どうしよう?」と思っちゃって。そういうシチュエーションにまず心がやられるっていう。

山口 やられるんだ(笑)。

TOSHI-LOW やられる(苦笑)。

でも自分たちで望んでやったことじゃないんですか?

TOSHI-LOW 「やってみない?」って言われたら「やってみようかな」と思うけど、やっぱ初めっからは慣れないですよね。

山口 でも映像を観るかぎりTOSHI-LOWが一番嬉しそうだったよ。

ははは!

山口 MAKOTOが最後に暴れてるのも大好きで、KOHKIは椅子に座ってて、RONちゃん(RONZI)はドラムの叩き方がBRAHMANの時と全然違ってて、すごく良かった。

TOSHI-LOW ホント? それは嬉しい。

これだけメンバーの関係性がフラットなバンドは少ないよ。音を聴いていてわかる。それぞれの個性が素晴らしい(山口)

TOSHI-LOW 山口洋 エンタメステーションインタビュー

OAUのニューアルバム『OAU』は、座って観るシチュエーションにすごくマッチしているところがあると思う。

TOSHI-LOW ありますか?

山口 アルバムを聴いて、すごく真面目に音楽をやる人たちだねって思ったよ。生真面目な人たちだよね。

TOSHI-LOW そうかなあ。

山口 曲作りやアレンジするときに、メンバー全員がいて、細かいアイデアを全部取捨選択して煮詰めてる感じだよね。

TOSHI-LOW まるっきりそのとおり!

山口 俺はそこが素晴らしいと思った。ライヴでMAKOTOが暴れたりする要素も好きだけど、やっぱり真面目に音楽を作ってんだなってすごくわかった。

TOSHI-LOW 真面目がないと、タガがなくなっちゃうから(苦笑)。

山口 たしかに(笑)。

TOSHI-LOW でも、タガがなくなるのは得意っていうか。

山口 へえー、そうなんだ。

TOSHI-LOW 最後にドンガラガッシャンで終わらすのは今までずっとやってきた。だから「音楽じゃないじゃん?」って言われたら、たしかにそう。「ジャンル:ドリフ」っていう(笑)。

山口 でもね、これだけメンバーの関係性がフラットなバンドは少ないよ。それは音を聴いていてわかる。

逆に言うと、ワンマンの部分は全然ないんですか?

TOSHI-LOW ワンマンというか、目立つ部分は自分がやるから。そうじゃない部分は、みんなが適材適所でやってる。そのことに不満を感じてるメンバーはいないんじゃないかな。HEATWAVEもフラットで、みんなタメ口で喋って、和気藹々とやってるじゃないですか。

和気藹々かどうかはわかんないけど(笑)。

一同 (笑)。

山口 俺、とりあえずドラムに何か言いたくなるからさ(笑)、「それ違うだろ!」とか言いたくなる。だから言えない人が最初からドラム(池畑潤二)でいてくださるのが素晴らしいと思うよ。

TOSHI-LOW そのためにあの人をドラムで入れたの?(笑)。

山口 こっちがぐうの音も出ないくらい素晴らしいっていうのは、公平にやっていくためには大事なことだと思う。

OAUもBRAHMANも、メンバーの関係性が素晴らしいと。

山口 うん、素晴らしい。それぞれの個性が素晴らしい。それに、みんな優しい男だし。みんなそれぞれのベクトルで思いやりがある。まあ俺もこう見えて思いやりがあるタイプだから。なんちゃって。ははは!

メンバー間は最初からイーブンな関係性だったんですか?

TOSHI-LOW たぶん俺たちは、イーブンなやり方しか知らないので。若い頃は音楽以外のパワーバランス、もちろん小競り合いはあったとしても、それ以外は役割を分割してくっていう昔の方法論、ライヴハウスの方法論しか知らないので。特にOAUは、MARTINが初めてのバンドだったので。

山口 あ、そうなの?

TOSHI-LOW うん。よくよくそこをキッチリしておかないと、MARTINだけが主張することになっちゃうし。それはもう徹底的に、バンドは6人いたら6人だっていうのをキッチリすることにしておかないと、あとあとめんどくせえなあと思って。もちろんアイデアを出す人がリードしていくけども、べつにそれが偉いわけでもない。

山口 そういうみんなの立ち位置も含めて、すごくいいバンドだと思った。あと、俺が一番グッときたのは、TOSHI-LOWが12弦ギターでスライドしながら歌ってるっていうのが衝撃だった(笑)。

一同 (笑)。

TOSHI-LOW あんまり見たことないよね(笑)。

山口 やればできるんじゃん! みたいな(笑)。

TOSHI-LOW 恥ずかしーっ! だからギター、教えてよ(笑)。スライドギターを弾きながら歌うのって、ムッチャ大変。

山口 2016年にBRAHMAN が“RISING SUN”でトリを務めたときに、朝方の4時か5時頃、TOSHI-LOWが客席に突っ込んでって、みんなに抱えられて、なんかライオンキングみたいになってたのね。その人と同じ人には見えない(笑)。

一同 (笑)。

山口 ははは! あれは面白かった!

余白を残して、その日その日の歌がうたえるほうが達人だと思う。山口洋の歌は、毎回すごいなと思いますよ(TOSHI-LOW)

TOSHI-LOW 山口洋 エンタメステーションインタビュー

TOSHI-LOWさんは、自分の中でBRAHMANとOAUの違いはあるの?

TOSHI-LOW 棲み分けはないですよ。自分をどっち側の器で盛るかだけしかないので。たとえば分厚い器だったら熱いものを入れられるじゃないですか。でもガラスや木で出来てるものには入れないじゃないですか。っていうだけの話で。

山口 ふーん、そうなんだ。

TOSHI-LOW なんか今はそうなってる。一番初めはもちろん棲み分けをしなきゃいけないと思ってたんですけど、結局出どころは一緒で、最近は「あれ? 自分としては、どっちも一緒だなあ」って。

面白いなあ。

山口 歌い方を見ててもわかるけど、TOSHI-LOWは几帳面な人だからね。俺みたいに雑じゃないの。

TOSHI-LOW いやいやいや。几帳面じゃないっすよ。

山口 ちゃんとしてる。

山口さんは歌うたびにメロディが変わっちゃうもんね。

山口 うん。

TOSHI-LOW いや、余白を残して、その日その日の歌がうたえるって、そっちのほうが達人だと思う。やっぱ毎日同じことをやってれば、繰り返しだからある程度うまくなる。俺たちはそういうふうにしないと、前に進めないんですよね。だから、ホントの正解は、その日にしか歌えないメロディを歌える人のほうが上手。それがエンタメだと思うので、山口洋の歌は、毎回すごいなと思いますよ。

水彩画にスーッと入れたみたいな気持ち。フワーッと泳がせてもらってる感じで、ムチャムチャ気持ち良かった(TOSHI-LOW)

TOSHI-LOW エンタメステーションインタビュー

褒められてますよ(笑)。

山口 いえいえ(笑)。どっちがいいんだろうね。わかんねえや。でもBRAHMANやOAUと一緒に演奏できる機会があったら、その日にしかできないことができるといいなあと思う。今年の“オハラ☆ブレイク”で、TOSHI-LOWが選んだ曲をやったんだけど、わざとリズムを難しくしてみたのね。

TOSHI-LOW 俺、リズムがズレちゃいました。で、洋が止めてくれて、やり直しました。

山口 そうそう(笑)。でも今までと違うTOSHI-LOWが出てたと思うし、最終的には成功したと思う。CHABO(仲井戸麗市)さんもアレを観てて、「面白かったよ!」って言ってくれた。でも、俺がTOSHI-LOWに伝えたかったことはなんとなくわかったでしょ? わざと難しくしたかったんじゃなくて、そのときにしかできない音楽になるっていう感じ。それは細海魚(HEATWAVEのキーボーディスト)とも相談して、BRAHMANもOAUも結構キッチリしてるから、崩したほうが面白いよねって。「じゃあそうしようか」っつって。

TOSHI-LOW 俺たちの音楽は油絵みたいだけど、あのときは水彩画にスーッと入れたみたいな気持ちだった。要は、滲んだ部分で歌うのは、音がしっかり取れなくて不安だけど、歌っていけばフワーッと泳がせてもらってる感じで、ムチャムチャ気持ち良かった。野菜で言うジュンサイみたいな感じ。

浮いてて、ヌルヌルしてて、みたいな(笑)。

山口 そういう演奏の中でのTOSHI-LOWの歌っていうのは、より引き立つという確信があって、それを一緒にやりたかったんですね。で、北海道の“RISING SUN”でそれが完結するはずだったんだけど、台風で飛んじゃって。ちょっと残念だったかな。

じゃあ、今度の“NAC”ではぜひリベンジを。

山口 ぜひぜひ、うん。

TOSHI-LOW あ、そういえば、KOHKIが「何やります?」って言ってたっけ。

え、まだやる曲が決まってないの?

山口 んふふ。

TOSHI-LOW 「簡単なのお願いします!」って(笑)。

山口 ははは! 大丈夫だよ、あいつうまいもん。

TOSHI-LOW 何も決まってないんで、山口洋という大きな器に俺たちが乗るだけです。

ははは、乗るんだ(笑)。

TOSHI-LOW はい。で、間違えても怒んないっていう。

山口 んはは!

だって山口さんはHEATWAVEで、「何度でもやり直す」って歌ってるもんね。

TOSHI-LOW たしかに、そうそうそう。

俺も狙ってるものがあるんで、融合すると嬉しい。人間同士、そこまでわかってくれる相手は、なかなかいないですよ(TOSHI-LOW)

TOSHI-LOW 山口洋 エンタメステーションインタビュー

“NAC”ではどんなセッションを考えていますか?

TOSHI-LOW セッション自体っていうよりは、俺にとってはいつもイベント自体に意味があって、今回のセッションも命題があったりするから、自分も選曲をそれに近づけたい。相手もこっちの命題に重ねてくれるだろうっていう信頼もあるし。でも意外に、他の人の選曲を見たら「全然、命題を考えてねえな」みたいな感じでガッカリしたりすることもある。

山口 TOSHI-LOWがたとえば(遠藤)ミチロウさんの曲を選んできて、俺とミチロウさんの関わりがあったり、それぞれにいろんな想いがあるわけで。TOSHI-LOWのいいところは、そういうことを事前に語り合ったりはしないこと。だから「たぶんこんな感じなんだろうな」と思って想像して演奏するんだけど、なぜTOSHI-LOWがこの曲を選んだかというのはなんとなくわかるので、あえて聞かずに、「こうなんだろうか」って想像する。それが面白い。

TOSHI-LOW その答えを言おうと思ったら“RISING SUN”が飛んだっていう。

なるほどね(笑)。

TOSHI-LOW その話をしてから曲に入ろうと思ってたのに。

そのぶん、“NAC”のセッションが盛り上がるんじゃないですか?

TOSHI-LOW ああ、そうっすねえ。でも“NAC”で何をやるか何も決まってないから。

山口 それはライヴの本番で感じることだから、面白いんだよ。

TOSHI-LOW あえて聞かないでくれるのもいいなあと思って。俺も一生懸命考えたうえで、お互いが想像する部分で答え合わせがステージ上でできるんだったら、それがスリリングだけれども一番面白いだろうねって。

自分たちも驚けるしね。

TOSHI-LOW うん。“MY LIFE IS MY MESSAGE”で何を歌うのか。やっぱり俺も狙ってるものがあるんで、そこが融合すると嬉しい。人間同士、そこまでわかってくれる相手は、なかなかいないですよ。

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