Interview

KREVA デビュー15周年イヤー連続リリース最終弾、“KREVA流のミックステープ”の気になる中身とは?

KREVA デビュー15周年イヤー連続リリース最終弾、“KREVA流のミックステープ”の気になる中身とは?

デビュー15周年を迎え、今年1月から連続リリース企画を続けてきたKREVAが、その最終弾となる作品『AFTERMIXTAPE』を9月18日にリリースした。今年6月にベストアルバムの新しい形を提示する『成長の記録〜全曲バンドで録り直し〜』を発表したKREVAだが、本作もKREVA流のミックステープというこれまでとは違う切り口でアプローチ。先行シングルの「無煙狼煙」と「One feat. JQ from Nulbarich」、リリースに先駆けてMVが公開された「敵がいない国」の3曲だけでも振り幅の広さがわかるが、さらに宇多丸(RHYMESTER)と小林賢太郎という異能を迎えた「それとこれとは話がべつ!feat. 宇多丸、小林賢太郎」も収録されるなど、バラエティに富んだという言葉以上に多種多様な楽曲が並ぶ一枚を作り上げた。加えて、今回は各曲の再生時間が短いこともあって、聴き応えたっぷりであるにも関わらずサクッと聴ける仕上がり。そもそもKREVAが考える“ミックステープ”とはどのようなものなのか。まずはそこから話を訊いてみた。

取材・文 / 猪又 孝


ヒップホップ特有の表現形態“ミックステープ”の自由なフォーマット

今回の作品は“ミックステープ”というワードがキーになっています。まずはKREVAさんが考える“ミックステープ”の定義/概念を教えてください。

それは、ちゃんと語ろうとすると2000字くらい必要になってくるんですけど、簡単に言うと、“ミックステープ”ってヒップホップ特有の表現形態なんです。ほかのジャンルはアルバムとシングルとEPなんだけど、ヒップホップにはミックステープっていう形態があって。昔は本当に曲がミックスされたテープだったんですけど、テープという媒体がなくなってもミックステープという名前が残って、そのうちDJがミックスしなくなってもミックステープという名前は残って。現在は、ほとんどアルバムみたいな存在になって、コマーシャルミックステープが出てきて、ミックステープがグラミー賞を獲る、みたいな。

シカゴ出身のラッパー、チャンス・ザ・ラッパーが2016年に出した『Coloring Book』というミックステープでグラミー賞の最優秀新人賞や最優秀ラップアルバム賞に輝いたことは大きな話題となりました。

小林(雅明)さんの著書『ミックステープ文化論』の締めにもありましたけど、ミックステープには無法地帯というか法律のグレーゾーンみたいなところが昔から今まで変わらずにあって。俺は今回、ミックステープっていうフォーマットの自由さが欲しかったんだと思います。だから、自分的には切り口を変えたというか、呼び方を変えただけで。俺はミックステープを作ってるんだと思ったら本当に自由な気持ちで音楽を作れた。それがすごく大きかったです。

そこに“AFTER”と付けた理由は?

俺はミックステープを作ってるんだと言っても、それがどういうものかわからない人に説明して回るのは至難の業だぞと。だったらもう、曲の出来も良かったし、アルバムっていう考え方でもいいやって。でも俺はミックステープを作ったんだよっていう気持ちがあったんで、“ミックステープ以後”の考え方みたいな感じで出せればなと。

プレスリリースによると、“アフターミックス”というコーヒーの焙煎方法もあるそうですね。

“アフターミックス”っていう言葉をずっと使いたいと思っていたんです。普通は生豆の状態で混ぜるんだけど、アフターミックスは、一個一個をベストの焙煎豆にしてから混ぜる。たとえばブラジルとコロンビアだったら、ブラジルは4分かな、コロンビアは8分かなって2回やらなきゃいけない。時間も手間もかかるんだけど、今回、超ぴったりだなと思って。

1曲が3分を切っているものがたくさん入ってるアルバムにしたかった

その一方で、今回の作品を聞いたときにインスタントな印象も受けたんです。インスピレーションの湧くままにビートを打って一筆書きでリリックを書いたような風通しの良さを感じたというか。

インスタント感が残っているのは狙ったところで、ボーカルをほとんど録り直さなかったんです。それは出来たときの衝動というか勢いを残したかったから。全曲そうだと言わないですけど、本当録ったまま、という感じですね。心のままに曲を作っていったから。

楽曲のタイプに応じて作り方を変えていこうと。

そう。自分が録ったものをプロの人にミックスしてもらうっていう。それこそアフターミックスだと思うから。たとえば「One」は声録りもちゃんとプロにやってもらって何回も録り直して。でも今回はミックステープだし、粗っぽい感じをちょっと残したかったんです。

ほかに全体の方向として考えていたことは?

10曲超えてるんだけど全体で30分くらい。1曲が3分を切っているものがたくさん入ってる。1曲の途中でトラックが変わるものが絶対入ってるものにしようっていうのだけ最初に決めてました。

今回は短い曲が多いことも特徴だと思います。2ヴァースで終わりとか、1ヴァース+1フックっていう曲もありますし。

それは全部狙って。できれば全部3分以内でいきたかったくらい。集中力の持続時間の限界が、音声だけだと3分くらいかなとなんとなく思って。

海外のヒップホップは今、2分台の曲がすごく増えています。その傾向をどう捉えていますか?

たしかに最近ヴァースの長さが半分になってきてますね。16小節だったところが8小節とか。でも海外のその傾向は全然気にしてないですね。自分が気持ちいいと思う長さでやりました。

あと、今回は音がいいですね。すごくイマドキっぽい音。KREVAさんはもともとクリアな音を作る印象が強いですが、今回は特に雑味がないというか。今までより、さらに天井が高くなったような空間の広がりも感じました。

それはミックスの違いだと思います。今までとは違う人ともやりたいなと思って、D.O.Iさんに、どんどんお願いしました。あとは絢香ちゃんとレコーディングしたときに良かったので諸鍛冶(辰也)さんにも1曲ミックスしてもらいました。今までどおりG.M-KAZさんにもやってもらった曲もあるので、まさにアフターミックスですね。コーヒーで言うと、今までは深煎りみたいな感じだったんですけど(笑)、今回はちょっと香りも残して、という感じですかね。

みんながライヴを楽しみに来ている会場から思いついた「敵がいない国」

リード曲の「敵がいない国」は、ファンキーなベースラインでぐいぐい引っ張っていくナンバーですね。

そのベースラインと、どこの国かわからないサンプリングソースを組み合わせて、これはメチャクチャ面白いトラックが出来たなと思って。とにかく俺はこのトラックがすごく好きで、なんとか形にしたかったので、歌詞も結構粘って何回かトライして作りました。

歌詞はどのように作業を進めていったんですか?

「敵がいない 敵がいない」っていうフレーズは6年前くらいに思いついてたんです。自分で歌った声のピッチを上げてるんですけど、そのやり方もすでにやっていて、最初はもっと哀しい感じのトラックに乗せて作ってたんです。歌詞はすごく時間がかかったけど、自由にみんなが踊ってる、みんなが楽しみに来ている会場は敵がいない国だと思いついて、そこから一気に書けました。

5曲目「アイソレーター」は、粗暴なビートと攻撃的にスピットするラップが印象的でした。

いつもはPro Toolsで作ってるんですけど、これは「完全1人ツアー」でも使っていたAbleton Liveの中に入ってる音だけで作ってみようと。出来上がったトラックを繰り返し聞いていたら、この歌詞が一気に出てきたんです。曲が出来たあとに、これは俺流のグライムだなって。ディジー・ラスカルとかスケプタとか、あのへんの感じが出たなって思いました。

“アイソレーター”は絶縁体という意味でタイトルに付けたんですか?

“アイソレーター”はVestaxのDJ機材の名前なんです。DJミックスするときに、ミキサーを使うより、HighとMidとLowのEQをバッサリ一気にカットできる。ざっくり言うと、マナーの悪い人たちは本当いなくなってくれって思ってて。「マナーの悪い人、はい、消えたー」っていう。だから「ハイカット、ミッドカット、ロウカット」って言ってるんです。

実際、その部分では音もそういうふうに処理する遊び心も見せてます(笑)。

そう(笑)。

こういうマナー違反に対する怒りはSNSでたびたび話題に上がりますし、共感度が高いと思うんですよね。

でも、アルバムだったらこういうトピックを入れようと思わなかったかもしれないですね。「基準」もムチャクチャ怒ってますけど、何が対象か具体的に言ってないから。このように怒る対象を次から次へと挙げていくっていうのは普通だったらやらないのかな。だけど、今回はミックステープだからいいやと。

ただ、ここに書いたことがブーメランにならないように。「クレさん、こないだ子供が見てる前で赤信号で渡ってましたよね」とか(笑)。

そうですね。たしかに。アイソレートされないように気をつけます(笑)。

KREVA流のタイトルセンスが横溢する「無煙狼煙」と「もしかしない」

先行シングルの「無煙狼煙」は、“狼煙なのに煙がないってどういうこと?”みたいな禅問答のようなタイトルが面白かったです。

「無煙狼煙」は、「One」でバンドメンバーの白根(佳尚)が叩いたドラムをサンプリングして作ったんですけど、これもトラックがすごく気に入っていて。なんとか形にしたいと思っていろいろ考えていたら、トラックから荒れた大地を切り拓く絵が浮かんできて開拓者っぽい感じかなと思って。で、“狼煙”ってこうやって書くんだと。無煙の狼煙って面白いなぁっていうところから歌詞を書き始めたんです。そもそも俺、タイトルとかで「なんだろう?」と思わせたい人だし(笑)。

「もしかしない」もKREVA流のタイトルセンスが出た新語ですね。これは自分に向けて歌ってるんですか?

いや。これはある人に向けて歌ったんですけど、そうなんだよって言ったら落ち込んでいたから、もう言うのやめようって。

「先延ばしにしても何も変わらない」っていうリリックに、ハッとする人はたくさんいる気がします。

ずっと言い訳してるんですよ、その人が。「生まれ変わったら職場なくなってないかなぁ」とか「朝起きたら仕事なくなってないかなぁ」とか。「なくなんねぇよ!」つって(笑)。それをそのまま歌にしました。

そのカジュアル感もミックステープならでは。

実はこれ、最初は英語でサビの歌詞を思いついてて。その英語の響きを日本語に変えていったら、「もしかしない」っていう言葉が出てきて、そこからその人の話に繋がっていった感じですね。今回、最初に作ったのは「人生」だったんですけど、サビに英語詞が出てくるんです。普段だったら英語で思いついても日本語に直す作業をしてるんですけど、このときは英語で思いついたからそのままいこうって。「人生」で英語を一回やっていたからか、「もしかしない」は日本語に書き直したんですよね。

「俺の中の二大パイセン」客演の「それとこれとは話がべつ!feat. 宇多丸, 小林賢太郎」

11曲目の「それとこれとは話がべつ!feat. 宇多丸, 小林賢太郎」は大きな話題を集めそうな曲ですね。客演のふたりを引き合わせようというプランは、いつ、どのように思いついたんですか?

最初に思いついたのは3〜4年前なんです。そのときから「それとこれとは話がべつ!」っていうフレーズを思いついてて、これはメチャクチャ気持ちいいな、これはバズるなと思ってたんです。そこに俺の中の二大パイセン。宇多丸さんと小林賢太郎さんという二大文系最高峰。俺のパイセンどころか、日本でも指折りの文系アーティストが一同に会したらヤバイんじゃないかと思って。

このふたりに“それとこれとは話がべつ”というテーマを振った時点で勝算アリという感じですよね。口では負けないというような人たちですし(笑)。

はい。絶対ディベートしたくないですよ、本当(笑)。宇多丸さんに関しては『ウィークエンド・シャッフル』(レギュラーラジオ番組)が終わるタイミングだったから1年半くらい前かな。今ならきっとやってくれると思ってお願いしました。が、すぐに新番組が月〜木でスタートして、お願いした手前ずっとラジオを聞いてたら「これは無理だな」「これはやってくれないわ」「あー、入院したわ」となって(笑)。

このハードスケジュールじゃ無理かなと。

そう。もともと遅いとは聞いてたけど、案の定メッチャ遅かったです。一番初めにお願いしたのに。

宇多丸さんにはどのようにオファーしたんですか?

宇多丸さんのリリックがほかの人より面白いっていうことがフィーチャリングでは起こり得るから、それは絶対イヤだなと。同じテンションにしたいから、先輩に言うのは失礼だけど、“それとこれとは話がべつ”というテーマで宇多丸さんに先に書いてもらって、後出しジャンケンさせてくれと。そしたらいつまで待ってもこないから、俺が先に書いて渡した感じですね。

賢太郎さんは? 

賢太郎さんの場合は、「じゃあ、俺も“それとこれとは話がべつ”っていうコントを作るから」って言いだして。賢太郎さんってアイデアをどんどん改稿していくんですけど、その間にテーマからだいぶ乖離しちゃって、改めてちゃんとオファーした感じですね。そしたら今度は“それとこれとは話がべつ”にはこういうパターンがあるよねって、“その1:ナントカなパターン”“その2:ナントカなパターン”みたいな感じで、パターンごとに複数案出してくれて。“それとこれとは話をべつにしてはいけない場合”とか“こんな話をクレがしたらいいんじゃないか?”っていうアイデアもくれたりして。最初はひと言だけ賢太郎さんに声をもらえればいいかなと思ってたんだけど、そうやって作ってくれた案の中からいろんな視点の“それとこれとは話がべつ”が入ってくるように選んで、スタジオで実際にアクティングしてもらって出来上がりました。

こういう曲が「One feat. JQ from Nulbarich」と並んで入ってるところも、ミックステープの自由さかもしれないですね。

そう。あとは、この曲を録って、「One」を録って、ベーシストの岡(雄三)さんが亡くなったんです。もし俺も死んだら、作ってる曲が世の中に出ないと思ったから、出し惜しみとかしてる場合じゃないなと。

岡さんは、6月に出した『成長の記録〜全曲バンドで録り直し〜』でも全曲ベースを弾いていましたね。

「One」は1年前に「908 FESTIVAL」でやって、そこからJQと何回もやりとりさせて完成させたんですけど、『成長の記録』のレコーディングの最後に「この曲もバンドで録っといていい?」って録らせてもらったんです。そしたらスタッフに「じゃあ、『One』はミックステープに入れない感じですかね」って言われて。「いや、逆にミックステープには、こういう良い曲が惜しげもなく入ってるものなの!」って言って入れたんです。今持ってる曲、出したいと思って作った曲を全部入れて作った一枚なんですよね。

908 FESTIVAL 2019

9月26日(木)神奈川・横浜アリーナ
KREVA / 三浦大知 / s**t kingz / DEAN FUJIOKA / BONNIE PINK
908 FESTIVAL 特設サイト

KREVA CONCERT TOUR 2019-2020「敵がいない国」

12月13日(金)宮城・チームスマイル・仙台PIT
12月16日(月)愛知・ダイアモンドホール
12月17日(火)大阪・なんば Hatch
12月19日(木)福岡・DRUM LOGOS
12月23日(月)東京・豊洲PIT
and more…!!
「敵がいない国」ツアー特設サイト

KREVA

国民的人気を誇るHIP HOPアーティスト。HIP HOPの殿堂「B-BOY PARK」のMCバトルで3年連続日本一の栄冠に輝く実績を持つ。2004年9月08日(クレバの日)にソロ・メジャーデビュー。2006年の2ndアルバム『愛・自分博』でHIP HOPソロ・アーティストとして史上初のオリコンチャート初登場1位を獲得。以降、リリースされる楽曲は常にチャート上位にランクイン。ソロデビュー15周年イヤーの2019年は、9月8日の“クレバの日”まで9ヵ月連続リリースを敢行。6月にはニューベストアルバム『成長の記録 ~全曲バンドで録り直し~』をリリースし、日本武道館公演を開催。9月4日にはステージ上ですべての機材、楽器、パフォーマンスをひとりで行う「完全1人ツアー 2018 at Zepp Tokyo」のライヴBlu-ray&DVDをリリース。9月26日には恒例のKREVA主催の“音楽の祭り”「908 FESTIVAL 2019」を開催する。

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