LIVE SHUTTLE  vol. 67

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マーシーも謎掛けを披露!「ましまろスタイル」全開のライブ

マーシーも謎掛けを披露!「ましまろスタイル」全開のライブ

 セカンド・アルバム『ましまろに』のリリース・ツアー“ほーぼーツアー2016”全12本の中の東京公演、渋谷クラブクアトロ2デイズの2日目。
 ステージ右側のふたり、アコースティック・ギターを抱えた真島昌利とセミアコの中森泰弘は着座、右のふたり=ウッドベースとセミアコ・ベースを曲によって使い分けるサポートの伊賀航と、マイクスタンドとパーカッションのセットを前にした真城めぐみは立つ──というフォーメーションで、『ましまろに』のオープニング・チューン「朝」でスタート。
 アルバム音源ではドラムが大きなミックスで入っているこの曲だが、ドラマーは入れず真城が歌いながらパーカッションを叩くのがましまろのライブのスタイルなので、さらにアコースティックなテイストに寄った鳴りかたになる。そしてそのテイストで、「さがしもの」「したたるさよなら」「体温」「ナポリの月」と、『ましまろに』とファースト・アルバム『ましまろ』の曲を混ぜながら進んでいく。
 伊賀航がウッドベースを弓で弾いたり、「海と肉まん」のようにマーシーがメインボーカルをとる曲が随所にはさまれたり、真城とマーシーどっちもメインなツイン・ボーカルの曲でフロアを湧かせたり、最初は弾き語り状態で途中から全員が演奏に入ったり──と、シンプルなバンド編成でバリエーションを付けながら、それぞれの曲が演奏され、歌われる。
3曲目「したたるさよなら」に入ったところで中森のギターストラップが外れて思わず「あっ!」と叫び、曲が中断。真城が「ストラップ外れるのはいいけど、その声なんとかならないですかね。その吹き矢で射られたみたいな声」とツッコミを入れ、フロアに笑いが起きる。

真島昌利

真島昌利

 ほかにも、6曲目「しおからとんぼ」に入る前に真城がグッズの宣伝をしたり、客席から順番に名前を呼ばれて順番に「はい!」と答え終わったと思ったら、「ましまろ!」と叫ばれて思わず全員「はい!」と答えて拍手喝采、という一幕があったり、「おめえどっかで見たことあると思ったらチャールズ・ブロンソンに似てんだべ」というセリフがMCのたびに発されたり(伊賀航がおおはた雄一のお父さんに言われた言葉であることが後半で明かされた)、メンバーが順に謎掛けを披露したり(もっともうまかったのが真城の「渋谷クアトロとかけて『巨人の星』と解きます、その心は柱の陰から見てる人がいます」で、「説明してください、何言ってるのかわかんないです」とお客に言われていたのがマーシーの「渋谷のタワーレコードとかけて古道具屋さんと解きます。その心はカヘイもあるよ」でした。マーシー「今のはカフェと貨幣をかけたんですよ」と説明)──。

 と、終始笑いの耐えない、楽しいムード。若干の、いや、かなりのゆるさに満ちたムードなのだが、それが心地いい。というか、不思議なくらいイヤじゃない。たとえば、お客さんがステージ上のメンバーに話しかける行為が僕は苦手で、その行為に対して「話しかけんじゃねえよ、お友達じゃねえんだよ」とキレた若かりし日の宮本浩次に同意するし、ミュージシャンに対しても「それに答える必要ないよ」と思うものだが、このましまろのライブに関しては気にならないどころか、心地よく感じたりするのだ、そんなやりとりが。お客さんの声のかけかたがプロレスの野次みたいに気が利いていたのと、バンド側もそのかけ合いを楽しんでいたことが、理由なんだろうか。

真城めぐみ

真城めぐみ

 とにかく、ステージの下と上の距離が近い。ただ、近くてゆるくてあったかいんだけど、馴れ合いや甘やかし合いにはならない緊張感が常に漂うステージでもあった。声を放つと同時に、メロディを描くと同時に、せつなさや寂寥感や孤独感を放つ楽曲の空気感がもっとも大きなその理由だろうが、ゆるさを意識的に演出しているステージ上のメンバーたちにも、常にそんなはりつめた空気のようなものがあった気がする。
 曲間のたびにホッピーのジョッキを口に運ぶが、酒が回っていくフシがまったく見えない真城は、テンポの速い曲になるとすごく真剣な表情でパーカッションを叩いているし、アコギを抱えて座ったポーズを変えないマーシーも、後半では間奏でテンション上がって「ウォオオッ!!」とシャウトを発したりする。
で、その絶妙な感じ、ちゃんとフロアにも伝播していたようで、終始ゆるいけど「たるい」「だるい」には転落しない、いい空気がクアトロを満たし続けていた。11曲目「公園」が終わったところでフロアから「いいバンドだ!」という声が飛んだ。その実感のこもった声に、真城は「ありがとう!」と応えた。

中森泰弘

中森泰弘

 真城の「知ってるとこがあったら一緒に歌ってください」という言葉で始まった、アップテンポな「ローラ・コースター」でフロアの温度を上げ、「大ヒットナンバーの時間です」という紹介で歌われたデビューシングル「ガランとしてる」で美しいハモリを聴かせ、ボッサな響きのセカンドシングル「遠雷」にオーディエンスを浸らせ、中森がマンドリンを持ち、伊賀航が弓でウッドベースを弾く「ひき潮」で、本編が終了。
 アンコールで登場したマーシー、ステージ前に出て遠くを見つめるような目つきでしばし仁王立ちしたあとにひとこと、「ディランの真似」。
 で、ビートルズのライブ・ドキュメンタリー映画を公開日にみんなで大阪で観たという話から、その場でアドリブで「ツイスト・アンド・シャウト」「シーズ・ア・ウーマン」「ディジー・ミズリー」をプレイ、オーディエンスを喜ばせる。
 マーシーの独唱による「天国の扉」(ボブ・ディランの「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」に日本語詞をつけたもの)に続いて、「じゃあ最後にもう1曲これ、みんなで歌って帰りましょう、知ってるとこだけでいいから」(真城)と、「ずっと」で、フロアがシンガロングで包まれる。
 曲が終わり、マーシーはまたフロントに出てディランの真似で仁王立ち。拍手と歓声を浴びながらしばらくじっとした、と思ったら「もう1曲やろう」と予定外の追加。シングル「ガランとしてる」収録の「ハートビート」(バディ・ホリーの曲に日本語詞をつけたもの)でテンション高くしめくくられた。「ありがとう、またね」とあいさつしたマーシーは、本日3回目のディランポーズを見せてからステージを下りた。一礼してにこやかに去る真城の手のジョッキ、ホッピーは1/5くらいに減っていた。

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 マーシーの曲を真城めぐみが歌い、中森泰弘がリード・ギターを弾く。真城の声にマーシーの声がハモる。というかそもそも、久々にマーシーが歌う。かつてはソロなどで披露されていたが最近発表されていない、マーシーの、いわば「あのあたりの感じの」曲たちを、また聴くことができる。
 という時点で、それはもう大変にうれしかった事件が、2015年のましまろの結成とデビューだったが、当然だが2枚目とそのツアーでは、それらは単なる前提になる。新しい何かを提示してほしい、それを観たいし聴きたい。というこちらの期待に、存分に応えてくれるステージだった。
 なお、『ましまろに』リリース時、このツアーの抱負として「素敵なゆるいライブをやる先輩たちはみんな関西系なので、自分たちは『東京のゆるさ』を目指す」というようなことを、このエンタメステーションのインタビューで3人は言っていた(こちら https://entertainmentstation.jp/38490 )。あの時はギャグっぽいニュアンスもあったけど、マジだったんだな、と、終わってから思った。

 

取材・文 / 兵庫慎司


ましまろ“ほーぼーツアー2016
2016.10.07(金)@渋谷クラブクアトロ セットリスト


01.朝
02.さがしもの
03.したたるさよなら
04.体温
05.ナポリの月
06.しおからとんぼ
07.海と肉まん
08.けあらしの町
09.わたりどり
10.妙なねじれ
11.公園
12.成りゆきまかせ
13.ローラー・コースター
14.ガランとしてる
15.遠雷
16.ひき潮

EN1.天国の扉
EN2.ずっと
EN3.ハートビート


プロフィール

ましまろ

真島昌利(ザ・クロマニヨンズ)、真城めぐみ・中森泰弘(ヒックスヴィル)からなるバンド。

1980年代の初頭、新宿JAM STUDIOで知り合った3人が30数年の時を経てかき鳴らすHIPでCOOLなFOLK&ROLL。2015年春デビュー!
公式サイト:http://www.mashi-maro.net/

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