Interview

TAKAHIRO・登坂の説得力あるアクションに拘った。『HiGH&LOW THE RED RAIN』山口雄大監督

TAKAHIRO・登坂の説得力あるアクションに拘った。『HiGH&LOW THE RED RAIN』山口雄大監督

あらゆるメディアを股にかけ、壮大なスケールで展開している<HiGH&LOW>プロジェクトの劇場映画第2弾『HiGH&LOW THE RED RAIN』。雅貴(TAKAHIRO)、広斗(登坂広臣)、そして尊龍(斎藤工)の雨宮3兄弟の運命的な闘いを斬新なアクション満載で描き、邦画とは思えないダイナミックな作品に仕上がっている本作のメガホンをとった山口雄大監督に、撮影の舞台裏や本作のコンセプトなどを聞いた。

取材・文 / 吉田武


スタッフは総勢500人くらいになるときもあって、「これは自分の映画なのかな?」って

山口監督は『HiGH&LOW』のテレビシリーズから手がけられてますが、どういう経緯でオファーがあったのでしょうか?

テレビシリーズは、久保茂明監督が最終話まで撮るはずだったんですが、『HiGH&LOW THE MOVIE』の準備に入らなくちゃいけなくなって、9、10話を撮る監督がいない事態になってしまったんです。そこで制作プロデューサーから僕に連絡があって、そこから脚本と人物相関図を受け取って、すぐに撮影に入りました。僕は途中参加でしたが、現場ではキャストの方たちが自分のキャラクターをよく理解していてくれたので、逆に僕のほうから「こういうときどうする?」と尋ねながら作り上げていきました。

『HiGH&LOW』の全体像を掌握する企画&プロデューサーのHIROさんとはどんなお話をされました?

HIROさんからは、ありがたいことに僕が撮った9、10話をすごく気に入ってもらえて、「自由にやってください」と言っていただけました。ドラマ部分については「男同士の絆と泣かせるシーン」は必須だったので、そこは意識しましたね。アクションに関しては僕から“ゼロレンジコンバット”(格闘術)を取り入れたいと提案しました。元々『HiGH&LOW』シリーズって殴り合いのケンカがメインだったんですけど、今回は敵が九龍グループの上園会になるので、銃が出てくる。銃VS拳という闘いにどうやったら説得力を持たせられるのかなって考えたときに、僕の昔からの仲間である匠馬敏郎が3年前から取り組んでいる“ゼロレンジコンバット”が浮かんだんです。実際にHIROさんの前で“ゼロレンジコンバット”のプレゼンをしたら気に入ってもらえて「今までの雨宮兄弟の戦い方とは違うけど、やってみよう」ってことになったんです。

ゼロレンジコンバットは映画的でありながら説得力もあるという、斬新なアクションでした。

TAKAHIROさんと登坂さんには基礎から練習してもらいました。2人ともカンが良いので匠馬もビックリするほどの吸収力で、しかもカメラに対してどう見せればいいかということもわかっているので、ほぼ2〜3テイクでアクション・パートも決めてくれましたね。

大掛かりなバイクチェイスもスゴかったです!

やっぱり海外ロケという環境だから実現できたと思います。日本では道路を封鎖しての撮影なんてこの御時世では無理ですからね。バイクチェイスのシーンは、スケジュール的な問題で僕はドラマのシーンを撮っていて、同時に動いているセカンドユニットの匠馬敏郎が監督してくれてたんです。僕たち芝居班は1ヵ月ちょっと海外ロケして、もう1ヵ月は日本で撮影、匠馬たちセカンドユニットは引き続きアクション・パートを撮る作業。匠馬とは「久しぶりに一緒にガッツリ映画が作れるね」って話をしていたんですが、結局、一緒にいた時間は少なかったです(笑)。

HIROさんもスケール感を出すことにはこだわっていた

かなりタイトなスケジュールだったんですか?

公開日が決まってたので、それには絶対に間に合わせないといけなくて。それに、海外ロケでうまく進まない部分もあったし、気温が40℃くらいになるんですよ。TAKAHIROさんたちは革ジャン着てるので暑いし、さらにハーレーも熱くなって、現場はものすごいことになっていて。1日の撮影が3〜4カットくらいしか撮れないこともありました。編集マンを現地に呼んで、ホテルの一室を編集室にして、撮ったそばから編集していくという体制で乗り切りました。スタッフは総勢500人くらいになるときもあって、テントを立てたら縁日みたいな状態で「これは自分の映画なのかな?」って疑問に思うくらいでした(笑)。

スケールが大きいですね! いままで低予算映画が多かった山口監督の現場とは思えないです(笑)。

逆に、低予算をやってきた経験がものすごく生きました。自画自賛するのは苦手ですが、僕はお金をかけないですごいモノを撮るという自信はあるんです(笑)。でも、逆にお金をかけて、ちゃんとお金をかけたような画面にするのって、意外と難しいんですよね。予算かけたのに「これぐらい?」って見られがちなので、そこはとても気を遣いました。HIROさんもテレビシリーズのときからスケール感を出すことにはこだわっていたので、できるだけカメラを動かすようにして、クレーンショットも多くして、ダイナミックな画作りを心がけました。空撮はドローン撮影なんですけど、現地には良いドローンチームがいなくて香港からわざわざ呼んだんですよ。

自由にやらせてくれたおかげで、ほぼやりたいことができた

いままでの山口雄大作品と画角や構図が違うなと思いました。空間の使い方や背景の意識の仕方がカッコよかった。

僕がたくさん撮ってきたコメディ作品はカメラワークや照明を意識すると、笑えなくなっちゃうんです。今回は「とにかくカッコイイ映画を撮る」のがテーマだったし、セリフも多いわけではないので、画で見せていくことを意識しました。ただカメラマンは『珍遊記』と一緒の方なんですよ。

低予算映画を撮り続けてきた監督が高い予算を得たら、それ以上のバリューの映画が撮れるってことを証明した作品だと思います。

日本の映画の現場って、企画段階では大風呂敷を広げて「あれをやろう」「これをやろう」って話すんですけど、いろいろな制約があって、結局、「こんなものしか出来ませんでした」っていうことが多いじゃないですか。それがこのプロジェクトではなかったし、HIROさんが自由にやらせてくれたおかげで、ほぼやりたいことができたんです。中盤にお祭りのシーンがあるんですが、普通に考えたらあんなの脚本で書いた段階でダメって言われるはず。でも、僕の中では『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』みたいな雰囲気を撮りたかったんですよね。最後の銃撃戦はデカい女神像の前で『リベリオン』みたいにしたいとか。いままで、お金がないからあきらめてたり、新しい表現に結びつかないっていうフラストレーションが溜まってましたが、今回のプロジェクトでそこが広げられたと思います。

『RED RAIN』のクライマックスでは、次に続くような終わり方もしていますが?

今はまだ詳しくは言えないんですが……『HiGH&LOW』の世界観が今後さらなる進化を遂げて広がっていくことだけは間違いないです!

山口雄大

1971年生まれ、東京都出身。日本映画学校を卒業後、北村龍平監督と出会い意気投合。脚本と第二班監督を担当した『VERSUS』(01)は、海外映画祭を席巻した。2003年に『地獄甲子園』で監督デビュー。
『魁!クロマティ高校 THE☆MOVIE』(05)、『激情版 エリートヤンキー三郎』(09)、『珍遊記』(16)など、実写化不可能と言われたマンガ原作を続々と映画化している。『HiGH&LOW』には<SEASON1>の9、10話から参加し、<SEASON2>でもパート監督を務めた。

映画『HiGH&LOW THE RED RAIN』

2016年10月8日公開

いつも無邪気に弟を笑わせる兄・雨宮雅貴、感情を顔に出すことのない弟・雨宮広斗、二人が尊敬する長兄・雨宮尊龍の三兄弟がいた。幼い頃に両親を亡くした彼らの絆は固く、尊龍は弟たちに「拳は、大事なもんを守るために使え」と言い聞かせていた。しかし1年前、尊龍が突如姿を消し、弟たちは兄の行方を探し続けていた。両親の命日。尊龍が現れることを期待し、雅貴と広斗は家族の墓を訪れる。だが、そこに現れたのは謎の少女・成瀬愛華だった——。

【企画プロデュース】EXILE HIRO
【監督】山口雄大
【脚本】松田祐子 牧野圭祐 平沼紀久 渡辺啓
【出演】
TAKAHIRO 登坂広臣/斎藤工
吉本実憂/岩田剛典 鈴木伸之 町田啓太 山下健二郎 佐藤寛太 佐藤大樹 藤井萩花 坂東希 濱田龍臣、
小野寺晃良 吉澤太陽 中井ノエミ
石黒賢/中村達也 早乙女太一 渡邉紘平 三浦誠己 小木茂光 片岡礼子 矢野浩二 近江谷太朗 長谷川初範/飯島直子/岩城滉一

【配給】松竹
オフィシャルサイトhigh-low.jp