LIVE SHUTTLE  vol. 68

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「アイドルじゃないし、バンドでもない」。注目のアラサー、 スーパーJ-POPユニット・ONIGAWARAとは?

「アイドルじゃないし、バンドでもない」。注目のアラサー、 スーパーJ-POPユニット・ONIGAWARAとは?

ワンマンGIG&インスタントカメラ撮影会
@渋谷TAKE OFF 7  2016.10.14

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僕の注目しているライブ・アーティストのひとつがONIGAWARAだ。いつもユーモラスな企画で楽しませてくれる彼らが、“1stインスタントカメラ・シングル「シャッターチャンス‘93」リリース記念 ワンマンGIG&インスタントカメラ撮影会”というとんでもないタイトルのライブを行なうというので、早速、足を運んでみた。

今、東京周辺のライブハウスの様相が急速に変化している。ロックバンドの他に、ライブ(地下)アイドルが大活躍。いや、スケジュールを埋めているのはライブアイドルで、ライブハウスは彼女たちなしには成り立たなくなっていると言っていい。ライブアイドルは、テレビなどのメジャー・メディアから次々に生み出されるアイドルに憧れる人が多くなったことと、誰もがライブを楽しむ時代がクロスしたところに生まれた。大人のプロデューサーが演出するアイドルはメジャー・メディアや大手事務所に依然として存在するが、ライブアイドルたちは自分たちでライブを作り上げる演出方法をよく知っている。音楽作りのみにこだわるロックバンドには“演出”の要素が足りず、ライブハウスでアイドル勢に押され気味になっているのは、当然のことだろう。

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そんな時代に現われたのが、ONIGAWARAだ。ボーカル&ギター&プログラミングの竹内サティフォと、ボーカル&GAYA&プログラミングの斉藤伸也からなるスーパーJ-POPユニットで、2人とも眼鏡をかけ、30才を少し過ぎている。彼らはインディーズバンドを共に経験し、解散後、再びコンビを組んでユニット“ONIGAWARA”となった。

2人はライブアイドルがライブハウスに進出してくる景色を見ている。そのとき2人は、バンドには何が足りないのか、アイドルにはどんな可能性があるのかを考え始めたのだと僕は思う。

同時に2人は、もともと持っていたポップな音楽性を、“バンド”という制限なしに発揮しようと思っていた。最初は単なる音楽作りから始まったONIGAWARAは、それをライブで表現しようとしたとき、変貌し始めたアイドルのことが頭をよぎったに違いない。2人は自分たちのことを「アイドルじゃないし、バンドでもない」と言っている。だが本当は、「アイドルだし、バンドだし」と思っているような気がしてならない。かくしてONIGAWARAの日本征服の野望はスタートしたのだった。

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ONIGAWARAの魅力は楽曲の良さと、ライブのアイデアの豊富さにある。まず音楽性の話をすると、曲作りは2人で行なう。竹内は非常に優れたJ-POPファンで、BOΦWYから小沢健二に至る良質な音楽のエッセンスをふんだんに取り入れた作曲を行なう。対して斉藤はソウル・ミュージックをはじめとするダンス・ミュージックに精通していて、歯切れのいいブラスセクションをアレンジに取り入れたりしてONIGAWARAの音楽にスパイシーな味付けをする。2人ともプログラミングが達者なので、作った音楽を思い通りに表現することができる。彼らのライブはそうして出来上がったトラックをバックに、2人だけで行なう。その際、布袋寅泰モデルのギターを持つ竹内はリズムの鋭いギタリストになり、俊敏な動きの斉藤はカッコいいダンサーになる。

歌詞は、主に竹内が書く。これがまた時代の核心を突いていて、いい。座右の銘は「女の子のために僕は歌うよ」と言うだけあって、ロマンチックとユーモアを混ぜ合せて、ワサビ醤油を付けて食べるような爽快な味わいがある。

キャッチ―な音楽性の一方で、ライブに関してONIGAWARAは今、旬を迎えている。今回の“1stインスタントカメラ・シングル「シャッターチャンス‘93」リリース記念 ワンマンGIG&インスタントカメラ撮影会”というタイトルからして、ワクワクさせてくれる。彼らは一体何をやるつもりなのだろう。

ちなみにONIGAWARAは今年6月に“ペンライト・シングル「タンクトップは似合わない」”をリリースした。彼らのライブの定番グッズのペンライトに、楽曲のダウンロードカードをセットにして売り出したのだ。今回はオリジナルパッケージのインスタントカメラに、「シャッターチャンス‘93」のダウンロードカードが付いている。それに合わせて、というか、いまどきあまり使い道のないインスタントカメラを使ってもらうために、“撮影会”というスタイルのライブを行なおうというのだ。それにしても“1st”となっているが、セカンド・インスタントカメラ・シングルもリリースする予定があるのだろうか、ONIGAWARAは!(笑)。

ついでに言うと、GIGとは、BOΦWYが自分たちのライブをそう呼んでいたところから来ている。さらに、「シャッターチャンス‘93」というタイトルは、なんだかclassの「夏の日の1993」を思い起こさせたりして、本当にONIGAWARAは油断できない。そして、そこが楽しい。この旬はどこまで続くのだろうか。それを確かめる意味でも、注目のライブとなった。

渋谷TAKE OFF 7への階段を降りると、目の前にグッズショップがデンと店開きしている。アイデア満載のカラフルなグッズを売るスタッフも、ニコニコ楽しそうだ。せっかくなので僕も1stインスタントカメラ・シングル「シャッターチャンス‘93」を“一個”購入して、撮影会に備える。

TAKE OFF 7の中に入ると、フロア中央には低いランウェイが設置されている。竹内と斉藤は、ここで暴れるつもりだ。ランウェイを囲むように陣取ったオーディエンスは、手に手にインスタントカメラを持っている。「どうやってフィルムを巻くんだっけ?」とか「フラッシュはどこ?」など、ガヤガヤ話し合っている。そういえば僕もインスタントカメラは久しぶりなので、一応確認する。このライブがなかったら、一生、インスタントカメラを手に取ることはなかったかも・・・。

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この日は2回公演。僕が行ったのは2回目の方で、ぎっしり満員だ。やがて会場の明りが落とされ、黒いスーツを着た2人が登場すると、キャーキャー大騒ぎになる。それでも2人は、ビシッとした表情を崩さない。ポーズを決めると、トラックがスタートする。1曲目は「欲望」。今年3月に出した1stミニアルバムからの曲だ。ロックな曲調にアース・ウインド&ファイアのブラスのニュアンスを引用して、オープニングをド派手に飾る。途中のギターソロで、竹内がランウェイに足を踏み入れると、オーディエンスはさらにキャーキャー言いながらカメラのフラッシュを浴びせる。こんなライブは初めてだ。

続く「タンクトップは似合わない」で竹内がスーツを脱ぐと、下は黒のタンクトップ。がりがりに痩せている竹内は、歌のとおり、タンクトップが似合わない。筋肉体質を夢見る歌詞が、リアルに笑える。それでもサウンドはカッコよく、4つ打ちビートが場を盛り上げる。

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終わるとタンクトップ竹内がいったんステージを去る。斉藤が「こんな曲、いってみる?」と言って、斉藤がソロで「アリス」(作詞・作曲 斉藤伸也)を歌い始めた。ステージの上には斉藤だけ。しかし堂々と初期のONIGAWARAナンバーを歌う姿に、しばしカメラを忘れてみんな食い入るように聴いている。

そこに、ブルーのパジャマに着替えた竹内が登場。交代して斉藤が去る。竹内も初期の「TSU・BA・SA」をアコースティックギター1本で歌う。この曲が唯一の生演奏となったが、竹内の繊細なギターワークが堪能できたのが嬉しかった。この曲は非常に洗練されたコードが使われており、ONIGAWARAの背後に潜むJ-POPや80年代のシティポップへのリスペクトが垣間見ることができる。

赤いパジャマの斉藤が合流して、あくびの演技をすると、客席から「おはよ~」という声が掛かる。観客もONIGAWARAのコンセプトをよくわかっていて楽しんでいる。斉藤はすかさず、「みなさん、眠いですか~? 次の曲は『恋はすいみん不足』!」とライブを進める。この手際のいい進行に、オーディエンスはステージの2人と同じ振り付けで応えたのだった。

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2人がランウェイに出ると、最前列の観客は腰をかがめて後ろの人が写真を撮るのを助ける。2人はランウェイの先端までくると、振り返って観客にサービスする。こんなにコミュニケーションのいいライブは滅多にない。ONIGAWARAは本気で「女の子のために僕は歌うよ」を実践している。いや、少なからずいる男性客もペンライトを振って、大騒ぎを楽しんでいる。

ステージの背後の壁には、振り付けを指導するように、線描きのレーザーのアニメーションが映し出され、ライブハウス規模での最高のエンターテイメントを演出する。

新曲「シャッターチャンス`93」のPVのメイキング映像が流れた後、再び着替えた竹内と斉藤が登場して、「シャッターチャンス`93」をライブで披露。♪まるで別人のプロポーション “1993”にはなかった技術 誰もがみんな魔法使い シンデレラにだってすぐなれるよ♪というリリックが、気持ちよく心に刺さってくる。皮肉を盛り込んだ歌詞を、スマートに聴かせる。「ムカつくけど、かわいい」と言ってはばからないONIGAWARAファンが多いのもうなづけるポップチューンだ。

もちろんこの曲で“シャッターチャンス・タイム”となる。ランウェイの2人は、ストップモーションで観客のカメラに応える。“観客カメラマン”がフィルムを巻き上げる音があちこちから聴こえる。2人はどんどんポーズを替えていく。「こんなライブがあるんだなあ」と思いながら、僕もシャッターを切っていた。

ラストの「”LIFE”を聴きながら」は、小沢健二の傑作アルバム『LIFE』に捧げるオマージュだ。ノスタルジックなミディアム・ポップで、ONIGAWARAの楽曲のバリエーションは申し分ない。もっと広い会場でも充分にセットリストは組み立て可能だろう。

アンコールは代表曲の「Eじゃん」で、最後のひと盛り上がり。終わって斉藤が、「みんな、もっと撮らなくていいの?」と言うと、観客から「もうフィルムがない~」と声が上がる。すると斉藤が「それがアナログの良さだよ!」と答えた。このひと言が、60分の完璧なショーを見事に締めくくっていた。とにかくオーディエンスたちの笑顔・笑顔・笑顔が印象的なライブだった。

ONIGAWARAは終始一貫して、誰の音楽/アイデア/夢を受け継いでいるのかを明らかにしながら、前向きに表現していた。「アイドルじゃないし、バンドでもない」ONIGAWARAは、間違いなく今のライブシーンの状況を最も鮮烈に反映しているユニットだ。

文 / 平山雄一 撮影 / nishinaga “saicho” isao

ライブ情報

ベッド・イン Presents『バブルオンde夜霧のねるとんNIGHT〜彼女がバブルに着替えたら〜』
10月30日(日) 会場:渋谷WWW X

The Mirraz 10周年スタートツアー〜10年目の奇跡2016AW〜』
11月6日(日) 会場:名古屋APOLLO BASE

「弱虫のロック論2(仮)」ライブハウス・スペシャル
11月9日(水) 会場:Shibuya Milkyway

愛はズボーンpresents ”アメ村天国”
11月12日(水) 会場:FANJ twice 、Pangea、BRONZE、CLAPPER、digmeout ART & DINER

ONIGAWARA 1stワンマンツアー2017~新春初ONI詣~
1月14日(土) 大阪・梅田Zeela
1月15日(日) 愛知・大須ell.SIZE
1月21日(土) 東京・渋谷O-WEST


ONIGAWARA

ex.竹内電気の竹内サティフォと斉藤伸也による、スーパー J-POPユニット、ONIGAWARA。
2013年より本格始動し、2015年9月に1stアルバム「エビバディOK?」で全国デビュー。2016年3月には1stミニアルバム「欲望」をリリース。
YOUTUBEで公開されている数々の時代錯誤ギリギリなPVは、「ダサい!最高!」「ダサかっこいい!」「なんかムカつくけどかわいい!」など物議を醸しながらも拡散中。
「アイドルじゃないし、バンドでもない」完全独自なポップ街道邁進中のONIGAWARAの神髄は、そこにいる全員が笑顔になるGIGにあり。全国の様々なフェス、ライブサーキット、アイドルイベントなどに出演し、入場規制・ソールドアウトの会場が続出。笑撃のステージで各地に続々と”ガワラー”を増やし続けている。
2016年6月には1stペンライトシングル「タンクトップは似合わない」をリリース。ONIGAWARAのJ-POP伝説が加速する・・・

オフィシャルサイトhttp://www.onigawara.club

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