Interview

監督・内村光良が、知念侑李とのW主演映画『金メダル男』で追求した“笑い”

監督・内村光良が、知念侑李とのW主演映画『金メダル男』で追求した“笑い”

バラエティやコント番組などで活躍する内村光良が、2011年に上演した一人舞台『東京オリンピック生まれの男』を原案に、監督・脚本・主演まで務め上げて放つ渾身のコメディ映画『金メダル男』。あらゆるジャンルで一等賞=金メダルをめざす秋田泉一の波瀾万丈の人生と、彼と交錯する個性的な面々を豪華キャストで描き、笑いと感動がギュっと詰まった壮大な内村ワールドが展開する作品となっている。本作で映画監督としては3作目となり、メガホンを持つ姿もすっかり板についた感もありながら、その内面では強烈なプレッシャーも感じているという内村に話を聞いた。

取材・文 / 大谷 弦 撮影 / 吉井 明


今回は映画の笑いっていうのに挑戦したかった

『金メダル男』の主人公<秋田泉一>は、内村さんと同じ1964年生まれという設定です。

自分が生まれ育ってきた時代が舞台になるので、単純に脚本が書きやすかったんですよね。自分の体験が一番生かされたなって思う部分は、主に性の目覚めですかね(笑)。水泳で隣りのコースの女子が気になるとか、剣道でつば迫り合いになったときに、面から盛れる吐息が気になるとか、全部ホントにあったことです。剣道は1個上の先輩がすごく綺麗で憧れてたので、試合するときは何かとつば迫り合いに持ち込んでましたね……。あとは<劇団和洋折衷>ですかね。私たちも<劇団SHA・LA・LA>で活動していたことがあったので、あの頃の空気感を思い出しながら(笑)。

<劇団和洋折衷>は代表の村田俊太郎を演じたムロツヨシさんも含めてすごいインパクトでしたね。

あのシーンは撮りながら、かなりナーバスになってましたね。桃太郎の踊りをやってるときなんて「この映画大丈夫かな?」って本気で思いましたから(笑)。現場でムロくんに「<和洋折衷>は全部カットになるかもしれない」って言ってました。

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今回、内村さんは原作・脚本・監督・主演と4役を兼任されてますが、どれが一番大変でしたか?

……やっぱり脚本づくりですね。このお話は舞台版っていう元があったんですけど、映画用に直した部分も多かったし、書くのに時間がかかりました。脚本が仕上がる頃に、小説版の依頼があって。悩みましたけど、せっかくの連載ということでやることにしたんですが、脚本を書いてから原作を書くっていう珍しいパターンで。

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映画と小説がお互いに補完するような関係になってるんですね。

撮るのも書くのも同時進行だったので、影響はあったと思います。横井みどり(土屋太鳳)さんにフラれるシーンは、小説では夜の道沿いで公園の灯りの下というシチュエーションなんですけど、映画では橋の上で、風の強い日に撮ったんです。でも、その撮影のときに感じた風の匂いを情景描写に生かしたりとか、自分が演じたシーンでも、実際にそのときに思ったことや感じたことを表現することができましたね。

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知念侑李さんとは二人で一役でしたが、お互いに似せるような役づくりはされましたか?

知念くんとはテレビ番組で共演してるんですけど、この映画が決まってから、収録中の僕の喋り方とか物腰をよく見て研究してたみたいです。僕は髪の分け方とか、眉毛をちょっと濃く書いたりとか、顔の部分を寄せていきましたね。あと、知念くんは左利きなんですけど、右利きにしてもらったんです。卓球のシーンとか、結構大変だったと思うんですけど、自然に演じててすごい身体能力だな、と。

知念さんが<表現部>として文化祭で披露する<坂本龍馬 その生と死>のシーンは素晴らしかったです。

あのシーンは僕も一番好きですね。さすがジャニーズと思いました。あの文化祭の作り込みも美術さんにすごく頑張っていただいて、奥にたこ焼きの屋台があったりとか、生徒たちは80年代前半の髪型にしてもらったりとか、かなり凝ってるんですよ。今回は美術さんと衣装さんは本当に大変だったと思います。デパートで落下するシーンのセットも突貫工事で作ってもらって、全部1日で撮りましたから。

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あの落下スタントは、ジャッキー・チェンのオマージュというか、ウッチー・チェンを思い出しました!

やっぱりアクションが好きというか……やりたくなっちゃうんですよね。ワイヤーを持ってくれてる方たちに、本番は1回だけ強めでお願いしますって、ガッチリやって……痛かったけど、頑張りました(笑)。

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アクションも本格的ですし、目まぐるしくシーンが変わって、どのシーンも凝ってて、大変な労作だと感じました。

今回はプレッシャーがスゴかったですね。過去の2作は撮ってて楽しいなって感じだったんですけど、今回は監督も脚本も演技もしてるので、逃げ場がない。お褒めの言葉も批判も一身に浴びなきゃいけないんで、ナーバスになりましたね。悩んでたら袋小路に入っちゃって、(笑福亭)鶴瓶師匠にもテイク10ぐらいやってもらったりしましたから。何度も撮り直してるうちに、自分でもわからなくなってきちゃって(笑)。編集もダビングもギリギリまで粘ってたので、もうみんなから「しつこいな」って言われてました。

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特にこだわった部分はどのあたりですか?

やっぱり“笑い”ですよね。テレビと舞台の笑いっていうのはなんとなくわかってきたんですけど、今回は映画の笑いっていうのに挑戦したかったんです。映画って間が違うんですよ。舞台だと、その場で間の調整ができるんですけど、映画は完成したものをバンっと見せなきゃいけないので、そこでどうすれば笑ってもらえるんだろうって。完成してから、試写に何度か立ち会ったんですけど、そのたびにお客さんが笑う箇所が違ったりするんですよ。それでも、必ず笑っていただけるのが田中(直樹)が登場するシーンですね。あと、長澤まさみさんが絵をひっくり返すところもリアクションが良かったです。

あの絵は内村さんが描いたんですよね。

美術さんに「こういう感じでお願いします」っていう見本として渡したら、「これでいいじゃないっすか」って採用になってしまったんです。あとからだいぶ描き直しましたけど。

劇中に登場する「私のサンクチュアリ」というアイドル・ソングの作曲も手がけてます。

あの曲は自宅のキーボードで作りました。まさに“ひとり表現部”ですね(笑)。

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主題歌は桑田佳祐さんの書き下ろし曲ですが、この経緯は?

僕はもう本当にサザンオールスターズで育ってますから、桑田さんに主題歌をやっていただけたら、もう夢というか。それで、舞台版のDVDと「泉一の最後を桑田さんの曲で飾らせてください」という手紙をホントにダメもとで送ったんです。すると、完成した曲が送られてきて、そのタイトルが「君への手紙」って書かれていて……さすがに震えて男泣きしましたね。聴かせていただいたら本当に素晴らしくて、自分の一生の歌になりました。映画のラストも本当にこの曲ですべてまとまって、もう桑田さんには感謝しかないです。

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映画監督としては3作目が完成しましたが、今後も監督業は続けていかれるのでしょうか?

機会さえ与えられれば、ぜひやりたいですね。僕も『ピーナッツ』の頃と比べたら格段に進歩してると思いますし、今回もたくさん学ばせていただきましたから。やっぱり、知らない人同士が、大きなスクリーンを観て、みんなで笑いを共有してもらえるのは映画でしかできない。『金メダル男』を観て、たくさん笑ってもらえたら、本当に嬉しいです(笑)。

映画『金メダル男』

2016年10月22日公開

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STORY
東京オリンピックの開催に日本中が湧いていた1964年。長野県塩尻市にひとりの男の子が誕生した。彼の名は、秋田泉一。幼少時はごく普通のぼんやりした男児だったが、小学生のときに運動会の徒競走で一等賞に輝いたことで人生が一変する。一等賞がもたらす幸福感にすっかり取り憑かれてしまった泉一は、ありとあらゆるジャンルで一等賞を穫りまくり、いつしか“塩尻の金メダル男”と呼ばれるまでになっていた。ところが、中学になると異性のことが気になり始め、集中力を欠くようになってしまう。一等賞から見放された泉一は高校で巻き返しを図るがうまくいかない。しかしそれは、めくるめく七転び八起き人生の始まりに過ぎなかった……。

【原作・脚本・監督】内村光良
【キャスト】
内村光良 知念侑李(Hey!Say!JUMP)
木村多江/ムロツヨシ 土屋太鳳/平泉成 宮崎美子/笑福亭鶴瓶
【主題歌】「君への手紙」桑田佳祐
【配給】ショウゲート

オフィシャルサイト http://kinmedao.com

©「金メダル男」製作委員会

内村光良

1964年生まれ、熊本県出身。南原清隆とお笑いコンビ“ウッチャンナンチャン”を結成。
テレビのバラエティ番組をはじめ、俳優、映画監督、企画ユニットでCDデビューを果たすなど多方面で活躍。2006年に映画『ピーナッツ』で初の監督・脚本を務め、2013年に『ボクたちの交換日記』を手がけている。
主な出演作品には【映画】『七人のおたく』(92/山田大樹 監督)、『木更津キャッツアイ 日本シリーズ』(03/金子文紀 監督)、『ゼブラーマン』(04/三池崇史 監督)、『恋人はスナイパー 劇場版』(04/澤田鎌作 監督)、『サヨナラCOLOR』(05/竹中直人 監督)、『西遊記』(07/澤田鎌作 監督)、『内村さまぁ〜ず THE MOVIE エンジェル』(15/工藤浩之 監督)【テレビドラマ】『バスストップ』(00/CX)、『ぼくが地球を救う』(02/TBS)、『ボクの妻と結婚してください』(15/NHK)などがある。
また、本作の小説『金メダル男』(中央公論社刊)が6月に発売されている。