Interview

藤原竜也&鈴木亮平が小学生を果敢に演じ、稀代の劇作家・蓬莱竜太が団地スペクタクルを描く。舞台『渦が森団地の眠れない子たち』まもなく開演!

藤原竜也&鈴木亮平が小学生を果敢に演じ、稀代の劇作家・蓬莱竜太が団地スペクタクルを描く。舞台『渦が森団地の眠れない子たち』まもなく開演!

劇団モダンスイマーズの蓬莱竜太が作・演出を手がけ、ダブル主演の藤原竜也と鈴木亮平が団地に住む小学生を演じる舞台『渦が森団地の眠れない子たち』が、10月4日(金)から新国立劇場 中劇場にて上演される。
藤原竜也と鈴木亮平が舞台で共演するのは10年ぶり。また、蓬莱が藤原に新作を書き下ろすのは、2013年の『木の上の軍隊』以来、2度目となる。共演者も、奥貫 薫、木場勝己、岩瀬 亮、蒲野紳之助、辰巳智秋、林 大貴、宮崎敏行、青山美郷、伊東沙保、太田緑ロランス、田原靖子、傳田うにと実力派が揃う。
エンタメステーションの取材陣は、本作の本読み稽古に立ち会うことができた。緊迫感が溢れる空気に包まれた稽古終了後、主人公の佐山鉄志を演じる藤原竜也と田口圭一郎を演じる鈴木亮平、そして蓬莱竜太にインタビューをした。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 増田慶


自らの子供時代と向き合わなければ演じることができない

まず、本読み稽古お疲れ様でした。目まぐるしく状況が変わる脚本ですね。藤原さん、鈴木さんに質問ですが、本読みを通して改めて感じたご自身の役どころを教えてください。

藤原竜也 脚本を読んだ段階だと、僕の演じる小学生の佐山鉄志は仲間から“キング”と呼ばれ恐れられ、非常に攻撃的で周りをかき回していく、自由奔放なキャラクターとして描かれている印象がありました。そこから何度か本読みをして、ほかの演者の声を実際に聞いていくと、自分の役を少しずつ理解できて、ただ攻撃的な人間ではなくて、鉄志の母親や亮平くんが演じる田口圭一郎の存在に複雑な心境を抱いていたり、物語が進むにつれて徐々に成長していくことに気づいてきました。同時に彼の弱さや優しさも感じるので、今は稽古のたびに多くのことを発見しています。

渦が森団地の眠れない子たち 藤原竜也 エンタメステーションインタビュー

藤原竜也

鈴木亮平 圭一郎は僕の育ったところに近い環境に住んでいるし、舞台になっている世代や時代を含めて、彼に共感できる部分がたくさんありました。特に内向的なところが似ている気がして、僕の子供時代と向き合わなければ演じることができない役だと実感しています。たとえば、無意識に嘘をついて人を傷つけてしまったり、子供のときに味わった心の中に残っている棘や、いじめられた期間に体感した嫌な気持ちといった僕の中に封印していたことを、かなり突きつけられる作品で、笑いも重要な要素のひとつであるのですが、そんな笑いをリアルにするためにも、当時の感情と真摯に向き合っていきたいと思います。

渦が森団地の眠れない子たち 鈴木亮平 エンタメステーションインタビュー

鈴木亮平

竜也くんには子供っぽい一面がある。亮平くんは竜也くんとは違う誠実性がある

蓬莱さんはおふたりの演じている姿を見ていかがですか。

蓬莱竜太 本読みをしてみると、予想外にキャラクターが膨らんでいて驚きました。ふたりは対照的な役で、団地のライバルという設定であり、同時に役者としてライバルでもあるわけですよね。そんなふたりが、時には近づき、時には離れ、時には戦う、お客様にはそんな醍醐味を味わっていただきたいと思っているので、現時点ですでにふたりのやりとりに見応えがあって良かったです。

渦が森団地の眠れない子たち 蓬莱竜太 エンタメステーションインタビュー

蓬莱竜太

蓬莱さんの書き下ろしの新作、しかもダブル主演で、実際に藤原さんと鈴木さんに当て書きをされたそうですが、どこから着想を得たのですか。

蓬莱 竜也くんとは『木の上の軍隊』(2013)で一緒になって、それ以降、親交が続いてプライベートでもお酒を飲む仲になったのですが、普段から見ていた竜也くんが、僕の中では、鉄志と似ていたんです。竜也くんはいろいろな役を演じているし、海外の脚本にも挑戦しているけれど、竜也くんには子供っぽい一面があるから、僕が書き下ろすときに小学生を演じてもらったら面白いと思いました。亮平くんは今作で初めて一緒になりますが、彼の出演している作品を観ると、竜也くんとは違う誠実性を感じて。そんな彼らが団地で小さな罪を冒してしまうという設定が今作の着想に繋がっています。

渦が森団地の眠れない子たち 鈴木亮平 エンタメステーションインタビュー

役者にとって当て書きされるのはテンションが上がると思います。

鈴木 蓬莱さんは人の本質を捉えることがとても上手だと思いました。圭一郎は僕と似ているし、誰にも話したことのない僕の経験が書かれているようにさえ感じて演じやすいです。そのぶん、生々しい僕の気持ちと向き合っていかなければいけないから、精神的にもきつい作業になりそうですけど。というのも、子供時代は楽しかったことばかりではなくて、苦しいこともたくさんあったはずですよね。小学生の子供を大人である僕らが演じるので、演劇的にふざける要素はあるのですが、今作は大人の視点から子供時代を美化しない脚本。だからこそ、子供たちに対して失礼がないように、その当時、僕が抱いていた苦しさも表現したいと思います。

藤原 蓬莱さんが、亮平と僕に当て書きをしてくれると聞いて、3人で一緒に食事会をしました。僕自身実際に団地で育ったということもあるし、当て書きをしてくださるということなので、過去のいろいろな思い出を蓬莱さんのためにずっと喋り続けたのですが、そのエピソードがそれほど反映されなくて(笑)。

鈴木蓬莱 あはは(笑)。

藤原 とにかく、当て書きされることは役者にとって贅沢なことで、非常に貴重な経験をさせてもらっているので、蓬莱さんの期待に応えたいです。

渦が森団地の眠れない子たち 藤原竜也 エンタメステーションインタビュー

役者同士で良好な関係を築いて素晴らしいカンパニーをつくりたい

共演者は実力派が揃っていますが、今日の本読みを経てどんな感想を持ちましたか。

藤原 演劇はみんなで一緒につくり上げていくものなので、僕も亮平くんも必死に今作に食らいついて、その相乗効果でほかの役者の方々にも本気で向き合ってきていただき、良好な関係を築いて、素晴らしいカンパニーをつくることができれば嬉しいです。

鈴木 楽しいですね。こんなにお芝居が達者なメンバーと共演できるのは幸せな経験だと思います。特にお気に入りのキャラクターは、デンジャーという役と、楓というオタクの女の子です。楓ちゃんを見ていると飽きないですね(笑)。そんなキャラクターを素晴らしい方が演じるので、観に来てくださったお客様には楽しんでもらいたいですね。

蓬莱 世代の近い人たちが集まってはいますが、奥貫 薫さんや木場勝己さんたちがカンパニーをしっかり支えてくれています。僕は近しい世代の人たちとひとつの芝居をつくることは意味があることだと思いますし、お互いがこの現場で交流できることは幸せなことで。そんな充実した環境を最大限に舞台に還元したい想いがあるし、演劇として新しい事件を起こせたら嬉しいです。

渦が森団地の眠れない子たち 蓬莱竜太 エンタメステーションインタビュー

本読みでお互いに演じている姿を見ていかがですか。

藤原 圭一郎は台詞の量が多いし、所作も多いのに、亮平くんはしっかり準備して稽古場に入ってきた印象がありました。

鈴木 僕は、鉄志は“藤原竜也”そのものだと思うほど、竜也くんは人の上に自然と立ってしまう人間だと感心しました。彼が団地の小学生たちをまとめて頂に立っているシーンは観ていて安心するというか、傍若無人になればなるほどお客様を納得させる芝居力があるし、そんな彼を見たいと思わせてしまう、生まれ持ったスター性が竜也くんには備わっていると思います。

渦が森団地の眠れない子たち 藤原竜也 エンタメステーションインタビュー

藤原さんは『木の上の軍隊』では蓬莱さんと脚本でご一緒でしたが、演出を受けるのは初めてですね。

藤原 とても嬉しくて新鮮ですね。新しい人との出会いやものづくりを共有していくことは役者にとって重要だと思いますし、僕にとって演劇の素晴らしさをあらためて教えてもらい、舞台に戻ってきた気がします。これから稽古がどんどん進んでいきますが、今の時点でも蓬莱さんは的確に演技に対しておっしゃってくれて、役も深まっていくので楽しいです。僕はどの作品も答えは作家が持っていると思っていて、そこにプラス演出となると、蓬莱さんが作品の答えを役者自ら感じて欲しいと思ってお芝居を要求されているように思うので、試されている気もしますね。

鈴木 蓬莱さんは脚本も演出も、人間関係の洞察力が繊細で緻密で、しかも面白くそれを表現していらっしゃる。演劇の醍醐味は、役者が作家と演出家の色に染まっていく時間があることだと思っているので、舞台に出演するときはいつも彼らの色に染まって新しい自分を発見したいと思っています。今作は作家と演出家が一緒なので、おっしゃることがブレずに腑に落ちますし、安心して演じることができます。そんな蓬莱さんに心から染まることができるのでこれからの稽古が楽しみです。

この芝居が終わる頃には、お互いが交流できるカンパニーになれば

蓬莱さんも団地にお住まいだったそうで、そこでの経験が活かされているんですね。

蓬莱 そうですね。今作は“団地あるある”が詰め込まれている作品だと思っています。たとえば、団地に住むとみんな同じ間取りの部屋に住みますよね。経済事情さえもだいたい同じなのに、親の力の差ではなく、どういうわけか子供たちの間には上下関係が出来上がってしまう。そもそもフラットな関係のはずなのに、いつの間にかむき出しの闘争が始まるのは、“学校あるある”や“子供あるある”に通じるかもしれません。突き詰めていけば、この芝居には“謝罪”という言葉がないんです。大人みたいに「反省しています」と振り返ることができないから、ひたすら前に進んで行くしかない。誰かを傷つけても前進していくだけだから、一方通行のドラマが起きる。それによって、そこからエンターテインメントが生まれると思います。子供だからこそ裏切りが起きたら突然立場が逆転したり、望まないのに持ち上げられたり、タイトルにある“渦”のようになって物語が進んでいく。今作は震災が起こすストレスを扱った作品でもあるのですが、エンターテインメントして観て欲しいので、大人が観ても通じるものがあると思います。

渦が森団地の眠れない子たち 蓬莱竜太 エンタメステーションインタビュー

最終的にどんなカンパニーにしたいと思っていますか。

蓬莱 この芝居が終わる頃には、いろんな立場の差はあれど、演劇仲間としてくだらない話をしたり、お互いが交流できるカンパニーになるといいですね。もちろん、竜也くんと亮平くんふたりありきの話なので、ふたりに引っ張ってもらいたいという期待もありますし、それに負けないようにみんなが戦いながら、最高のお酒が飲める関係になってもらえると嬉しいです。演劇はお客様に面白いと思っていただくことが大事ですが、演じている側も充実していることが大切だと思います。演劇をつくる喜びをつくり手が感じないと、お客様に面白さは伝わらないので、これから立ち稽古に入っていきますが、お互いがいろいろな芝居を打ち出せるカンパニーになればいいと思っています。

渦が森団地の眠れない子たち 鈴木亮平 エンタメステーションインタビュー

鈴木亮平が機関車の先頭車両のようにグイグイ引っ張っていく

おふたりはいかがですか。

藤原 まだ、稽古が始まったばかりですし、座長としてカンパニーを引っ張っていこうという考えに至ってはいないのですが、今はほかの俳優との交流よりも台詞を入れることに邁進して、僕だけのし上がっていこうかな(笑)。

蓬莱 あはは!(笑)

鈴木 (笑)。じゃあ、僕が機関車の先頭車両のようにグイグイ引っ張っていきますよ!

藤原蓬莱 あはは(笑)。

Sky presents『渦が森団地の眠れない子たち』

Sky presents『渦が森団地の眠れない子たち』

STORY
佐山鉄志(藤原竜也)と田口圭一郎(鈴木亮平)は、同じ団地に住む小学生。
圭一郎が低学年で団地に越してきて以来、鉄志とは親友である。
しかしある事件をきっかけに、2人は対立し、次第に団地の王座をかけて争うようになる――。

東京公演:2019年10月4日(金)〜10月20日(日)新国立劇場 中劇場
鳥栖公演:2019年10月26日(土)〜10月27日(日)鳥栖市民文化会館 大ホール
大阪公演:2019年10月29日(火)〜10月30日(水)森ノ宮ピロティホール
名古屋公演:2019年11月1日(金)〜11月4日(月・祝)御園座
広島公演:2019年11月7日(木)〜11月8日(金)JMS アステールプラザ大ホール
仙台公演:2019年11月16日(土)〜11月17日(日)多賀城市民会館大ホール(多賀城文化センター内)

作・演出:蓬莱竜太

出演:
藤原竜也 鈴木亮平
奥貫 薫 木場勝己
岩瀬 亮 蒲野紳之助 辰巳智秋 林 大貴 宮崎敏行
青山美郷 伊東沙保 太田緑ロランス 田原靖子 傳田うに

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@uzugamori2019)

藤原竜也(ふじわら・たつや)

1982年5月15日生まれ、埼玉県出身。1997年、蜷川幸雄に見出され『身毒丸』の主役オーディションに合格し、ロンドンで初舞台を踏む。以来、舞台、映画、テレビドラマ、CM等幅広く活躍。最近の主な出演舞台には『アテネのタイモン』『レインマン』、『プラトーノフ』などがある。出演待機作に映画『カイジ ファイナルゲーム』(2020年1月10日公開)があるほか、2020年5月には『太陽は動かない』の映画と連続ドラマ化が決定している。

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鈴木亮平(すずき・りょうへい)

1983年3月29日生まれ、兵庫県出身。2006年にテレビドラマ『レガッタ〜君といた永遠〜』で俳優デビュー。以降、数多くのテレビ、映画、舞台に出演。2018年NHK 大河ドラマ『西郷どん』では主演の西郷隆盛 役を務めた。最近の主な出演舞台には『ライ王のテラス』、『トロイ戦争は起こらない』などがある。出演待機作に映画『ひとよ 一夜』(2019年11月8日公開予定)、映画『燃えよ剣』(2020年公開予定)がある。

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蓬莱竜太(ほうらい・りゅうた)

1976年1月7日生まれ、兵庫県出身。1999年に舞台芸術学院の同期生・西條義将(主宰)と劇団モダンスイマーズを旗揚げ。以降、モダンスイマーズ全公演の作・演出を手がけるほか、舞台版『世界の中心で、愛をさけぶ』(2005)や舞台版『東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~』(2007)などの話題作も担当。骨太な筆致から若手劇作家として各方面から注目を浴びている。2009年『まほろば』で第53回岸田國士戯曲賞、2017年『母と惑星について、および自転する女たちの記録』で第20回鶴屋南北戯曲賞、2019年『消えていくなら朝』で第6回ハヤカワ悲劇喜劇賞など、数多くの受賞歴がある。

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