Interview

YUIを育てた近藤ひさしが 見初めた19歳の原石

YUIを育てた近藤ひさしが 見初めた19歳の原石

NANAのソロプロジェクト・Lily’s Blow。 そのドラマチックなデビューへの軌跡

まるでドラマのようだ。高校時代に組んでいたバンドメンバーとともにメジャーデビューを夢見て上京したNANA。昨年の冬に、バンドの解散を決意した彼女は、年が明けた2月、音楽プロデューサーのHISASHI KONDOと出会い、ソロプロジェクト“Lily’s Blow”としての活動をスタートさせた。6月には早くも下北沢WAVERで初のワンマンライブを開催し、7月にはライブ会場限定販売の初CD『Road』を制作。さらに、映画『傷だらけの悪魔』の主題歌オーディションに参加し、応募総数約1万人の中からグランプリに選ばれ、2017年2月公開予定の映画「傷だらけの悪魔」主題歌でのメジャーデビューが決定。バンド解散からここまでたったの1年である。他に類を見ない怒涛のスピードで階段を駆け上がってきたプロデューサーの近藤とNANAそれぞれの思いを語り合ってもらった。

取材・文/永堀アツオ 撮影/森崎純子


今のままでは絶対に変われないのかなっていうことを去年の年末からずっと考えていて

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まず、お二人が出会うまでの簡単な経歴をお伺いしてもいいですか?

近藤 僕はもともとは北海道から上京してきたバンドマンで、当時ソニーからメジャーデビュー。その数年後からは、ソニーミュージックのA&Rとして働いていました。YUIの楽曲プロデュースや作詞、作曲、編曲といった制作が主になってきたところで、自身の事務所を立ち上げ、昨年、ビーイングに移籍したばかり・・・と、そんな時期の出来事になります。

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NANA 私は高校2年生の時から地元の友達とバンドを組んでいたんですね。私以外は男性のメンバーだったんですけど、「俺たち、上京しようぜ!」となって、みんなで上京してきて。でも、バンド結成から3年、上京してから1年経って、やりたいことが違ってきて、解散しようっていうことになって。よくバンドで解散するときに言う『方向性の違い』って本当にあるんだなと思いましたね。それが今年の2月です。

たったの8ヶ月前なんですね!

近藤 そうなんです。すごく駆け足ですよね。ただ、僕と出会う前の1年間の話を聞くと、メンバー間だけで動かしてるから、うまく進められなかった葛藤もあったみたいで。

NANA 上京してからまだ1年しか経ってないっていう考え方もできると思うんですけど、自分の中では若いうちにやれることは全部やりたいっていう焦りもあったし、今のままでは絶対に変われないのかなっていうことを去年の年末からずっと考えていて。年が明けたと同時に決心がついて、みんなにも伝えて。最初は「なんだよ!」っていう感じだったんですけど、最終的にはみんなも分かってくれたし、今でも仲がいいです。それで、解散が決まった時に、下北沢でお世話になってたライブハウスの店長さんに「これからどうするの?」って言われて。あんまり決めてなかったんですけど、「どこまでやれるか試してみたいので、いろんなオーディションを受けてみようと思ってます」って言ったら、ひさしさんを紹介していただいて。

近藤 そこで思うのは、彼女のバンドが解散しそうだっていう時に、すぐに僕に連絡をくれた人がいたくらい、周りの方々から一目置かれていた存在だったっていうことですよね。当時、僕の事務所は下北沢に構えていたので、交流があった下北沢のライブハウスの店長さんから、うちの事務所のスタッフに「紹介したいヴォーカリストがいるんだ」という連絡をもらいました。そこから始まりました。

図々しさと謙虚さの絶妙なバランスを持ってる

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初対面の時はお互いにどんな印象を持ちましたか?

近藤 なんかやってくれそうな感じというか、このままじゃ終わらない感じに惹かれたんですよね。言い方悪いかもしれないけど、図々しさと謙虚さの絶妙なバランスを持ってる。さらに、ステージに立つと、圧倒的な存在感を放っていて。歌に魂がこもっているから、お客さんを魅了するし、バンドも引っ張られて、いいパフォーマンスをする。何より、ステージを駆け回っているかのような彼女の勢いを止めちゃいけないなと思ったんですよね。だから、出会ってから割と早い段階で、ワンマンライブを決めました。まだオリジナルの曲もなかったけど、ライブハウスにお客さんを集めることがどれだけ大変なのかも知っている彼女が真剣に挑戦したいと言ってくれた言葉を信じてみようと思いました。きっと中途半端なことではやめないっていう確信も持てたからだと思います。

NANA 私は……失礼に聞こえるかもしれないんですけど、大人だけど大人じゃない方だなって感じました。私がそれまでに出会った大人の人たちは、自分の歌や表現の仕方を否定する方が多かったんですよね。ダメ出しばかりで、なんだよ!って思ってたんです(笑)。でも、ひさしさんは、初めて「カッコいいね」って言ってくれたし、私の気持ちも含めて、全部を認めてくれて。基本的に私はあまり人を信用しないんですけど、ひさしさんには言葉に愛があるし、この人なら大丈夫かな、信じたいな、かけてみたいなと思って付いていくことを決めました。

出会ってからの展開も早いですよね。3月にはソロとしての初お披露目があって、6月には初のワンマンを開催し、7月には初の音源をライブハウスで手売りしてました。

近藤 僕がオーディションなどで新人と出逢うとき高校生が一番多いので、19歳の彼女との出逢いは遅かったと思うんですよね。その分、バンドとして経験もしているけれども、これは出来るだけスピードを上げたいなと思ったし、彼女が信頼してくれているのであれば、僕も信頼して進めようと思いました。今でもよく話すんですけど、僕は「5割でGO」っていう言い方をしてて。僕も間違うことがあるし、いろいろやってみたけど、失敗することもある。そこでアーティストは不安になって、「本当にこれでよかったんですか?」となってくと思うんだけど、彼女には最初に<10やって、半分失敗しても、半分成功したら良しにしてくれないか>っていう話をして。慎重になってるとスピードは上げられないんですよね。今は、どこに急カーブがあるかもわからずに、アクセルを踏んでいる状態ですので、彼女もたくさん擦り傷を負ってるとは思いますけど。

NANA 大丈夫です。やるって決めたからにはやるしかないと思っているので。それに、ソロとしての活動を始める前までは色のない世界を生きている感じがしていて。何度もやめたいなって思うこともあったけど、今は世界が広がって、だいぶカラフルでポップになった気がします。ひさしさんをはじめ、いろんなスタッフの方と出会って、歌ってやっぱり楽しいな、諦めないでよかった、やめないでよかったなって思えたんですよね。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

花言葉を調べたら、<純潔>とか<純粋>とかいろいろある中に<愉快>もあって

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NANAさんの言葉からはすごく気合を感じますよね。

近藤 そうなんですよ。あと、周りへの挨拶もしっかりしているから、田舎のヤンキーだったんじゃないか? っていう疑惑も持ち上がったんですけど(笑)、中学生の時はバレー部のキャプテンだったそうで、なるほどなと思いましたね。

(笑)ソロのユニット名はどうやって決めたんですか?

近藤 LilyというワードはNANAさんから出てきたもので。

NANA 私、基本的に暗いんですよ(笑)。だから、お葬式でよく見る<百合の花>が自分に重なって思えて。でも、花言葉を調べたら、<純潔>とか<純粋>とかいろいろある中に<愉快>もあって。私も愉快になれるのかなって思ったんですね。自分がステージで歌って、楽しんでいる姿を見て、周りも楽しんでくれたらいいなっていう思いでつけました。

近藤 Lilyの風を起こそうっていう意味を込めて、<Lily’s Blow>はどうか?って提案したら気に入ってくれて。ソロだけど、1つのバンド名のような称号をつけて音楽活動をしてもらえたらいいなと思っています。

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そして、10月26日には最初で最後のインディーズ盤「Ready to go」のリリースが決定しています。

近藤 彼女はいつも、いろんな想いを話してくれるんですが、「Ready to go」を作ろうとした時は、まだ当然リリースも何もない段階で「私は叶えたいんだ。私には帰るところもないし、絶対にやるしかないんだ!」っていう熱い想いをあらためて話してくれたところから、二人のやり取りの中で生まれた曲になってます。

NANA 私の想いを、私の心をそのまんま歌にしてくれた曲ですね。私は田舎から上京してきて、音楽をやりながら生活費も稼がないといけない日々で。一人暮らしなので、家に帰っても誰もいない。でも、自分で決めて上京してきたんだから、弱音を吐くわけにもいかない。そんな、お先真っ暗で、どうしたらいいんだろう?っていう気持ちを書いてもらったので、今、そういう思いをしている人たちに聞いて欲しいですね。

彼女の言葉自体が出会いを導いてくれたんだっていうエピソードは入れられた

NANAさんのデビュー前の下積み時代を描いた具体的なエピソードが入ってるんですね。

近藤 例えば<そう叫んでみたら/運命がほんのちょっと味方してくれるから>っていう歌詞があるんですけど、彼女は自分が何を頑張っていいかわからなくなった時、出会った人たちに片っ端から「音楽がやりたいんです」と夢を語り続けたっていうんですね。だからこそ、ライブハウスの人が僕を紹介してくれて、つながることができた。彼女の言葉自体が出会いを導いてくれたんだっていうエピソードは入れられたかなと思いますね。

<もう少しだ/待ってろよ>とも歌ってます。

近藤 この曲を作ってる時はリリースも決まってないし、オーディションも受ける前だったんですよね。でも、ある日、テレビ朝日の横を2人で通ったことがあって。「あのビルでMステの生放送をしてるんだよ」って言ったら、歩道から大声で「待ってろよ!」って彼女が叫んだんですね。それを覚えてて、サビ前に入れたんです。

NANA 今、その話を聞いて思い出しました。確かに大声で言ってましたね。ちょっと恥ずかしいですけど(笑)、本当に「待ってろよ!」と思って。

今の自分にできることはすべて歌に詰め込みたいし、命を削って歌っていきたい

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いよいよ来年にはメジャーデビューも決定しています。最後に今後の目標を聞かせてください。

NANA これからどうなっていきたいかって考えることも大事だと思うんですけど、私は今を一生懸命に生きて、歌っていきたいと思ってます。今の自分にできることはすべて歌に詰め込みたいし、命を削って歌っていきたいなと思ってますね。

今時、「命を削って」なんて言える人、なかなかいないですよね。

近藤 ね、だからこそ、彼女の歌はグッとくるんじゃないかと思いますね。メジャーデビューに向けて、関わる人も応援してくれる人も増えていくだろうし、規模が大きくなればなるほど、意見もたくさん出るだろうと思う。10人が10人、同じ方向を向くのはなかなか難しい事だから、どうしても慎重になりがちだけど、僕の仕事としては、その中でもできるだけスピードを落とさないようなジャッジをしていく事かなと思ってます。彼女の“何かやらかしてくれそうな”雰囲気と魅力をなくしてしまわないようにできたらなと思っています。

NANA 私、本当に頑張るんで、皆さん、よろしくお願いします! ありきたりかもしれないけど、私の音楽や歌声を聞いて、がんばろうって思ってもらえるようになりたいですし、いろんなところに行って、いろんな人と出会って、いろんな人に自分の音楽を聴いてもらって、いろんな人の人生に関われたらなと思います。

NANA(Lily’s Blow)

都内のライブハウスを中心に活動するNANA(19)のソロプロジェクト「Lily’s Blow」。
高校生の頃、地元で記録的な動員をする人気バンドのメンバーとして音楽活動をスタート。その後プロを目指しメンバーと上京するもすぐに解散。2016年からHISASHI KONDOプロデュースで活動再開。
そんな中、2016年に開催されたBeing Group主催の映画「傷だらけの悪魔」主題歌オーディションにて、応募総数約1万人の中からグランプリに選ばれ、2017年2月公開予定の映画「傷だらけの悪魔」主題歌でメジャーデビューが決定。
現在は事務所の先輩にあたるChelsy AMIもサポートドラムとして参加するなど、レギュラーバンドを引っさげての評価の高いパフォーマンスを披露し注目が集まっている。 2016年6月24日に行われた初ワンマンライブも大盛況で終えた期待のRock‘n Girl。新人とは思えないステージングと歌声は圧巻。
2016年10月26日、最初で最後のインディーズ盤「Ready to go」をリリース。

オフィシャルサイトhttp://lilysblow.com

近藤ひさし

大学在学中より作家として音楽出版社に所属。
楽曲提供という形でプロとしての仕事をスタートさせる。
その後、ヴォーカル&ギター、ソングライティングを担当するバンドでメジャーデビュー。
解散後、デビュー前から親交のあったつんく♂氏のアシスタントとして、レコーディング・プロデュースワークなどを学び、多数のヒット曲の制作に携わる。
その後、ソニーミュージックでのディレクター、A&Rを経て、特に歌の中で生きる詞にこだわりを持ったプロデューサーとして活動の場を拡げる。
インディーズ盤から活動休止までYUIを全楽曲プロデュース、ステレオポニーやFTISLANDでも、デビュー時からのプロデュースに関わるほか、中川翔子、SCANDAL、雨宮天、新山詩織、Chelsy等の制作に携わる。現ビーイング所属。

オフィシャルサイトhttp://honeybeestudio.jp/