サザンオールスターズと昭和・平成・令和元年  vol. 8

Column

5ヵ月連続シングルリリース。“FIVE ROCK SHOW”に見るサザンオールスターズのバリエーション

5ヵ月連続シングルリリース。“FIVE ROCK SHOW”に見るサザンオールスターズのバリエーション

今年デビュー40周年を迎えたサザンオールスターズのバンド・ヒストリーを、彼らが生み出した数々の作品から改めて見つめていく。音楽評論家・小貫信昭が独自に紐解く、サザンオールスターズの魅力──。


“FIVE ROCK SHOW(ファイブ・ロック・ショー)”は、5枚のシングルを5ヵ月連続でリリースしようという彼らの試みだった(実際は6ヵ月間を要した)。当時としては、「切り口を変えよう」「別の見せ場を作ろうみたいな意識」だったそうだ(桑田佳祐・著『ブルー・ノート・スケール』 / ロッキング・オン刊)。

第1弾は「涙のアベニュー」(1980年2月)。巷(ウィキペディアなど)では、ボズ・スキャッグスの「Harbor Lights」をモチーフに……みたいな紹介もされているようだが、改めて聴いてみて、さほど関連は見られない(エレピのたゆたう響きが水面に映る港の灯りを彷彿させる、というあたりは共通しなくもないが)。ブルース・フィーリングのある端正なロッカバラードである。歌にしろ間奏のギター・ソロにしろ、勢いで演りました、というより、よくフレーズを吟味し、練られた(そして整理された)仕上がりだ。英語詞を適材適所、効果的に配し、洋楽を聴いているような邦楽を聴いているような、独特の味わいだ。

カップリングは「Hey! Ryudo!(ヘイ!リュード!)」。ザ・ビートルズの「Hey Jude」も特定の人間へ捧げた歌とされるが、これは宇崎竜童へ捧げたものと解釈するのが妥当なようだ。ちなみに、宇崎がダウンタウン・ブギウギ・バンド時代の作品を封印したのは1979年の大晦日。それを頭に入れて聴くと、歌詞の味わいが増すだろう。

第2弾は「恋するマンスリー・デイ」(3月)。女性の生理を正面から取り上げつつ、同じ職場(バンド)で働く者同士としてどう女性に対して労りの感情を持つかがテーマである。それを重たく描かず、ちょっとやんちゃな男の子がクラスの女の子の“ワンダー”な部分に触れ、戸惑いながらも最善のパートナーシップを模索するかのようなタッチになっている。歌詞に実際の女性メンバーの名前〈ユウコ〉が出てくるが(しかも10回も!)、これは“思いっきり主観をぶつけることでむしろ客観性を呼び込む手法”とみた。

「青い空の心(No me? More no!)」がカップリング曲で、「三ツ矢サイダー」のCMソングとして制作された。マイナー調のロック歌謡で、繰り返される〈サイダー〉という言葉が、場面に応じ、裏に別の言葉を敷いているように響く。エンディングではテンポがアップし、ニューオーリンズ風のピアノで盛り立てる。

さて第3弾は、お馴染みの「いなせなロコモーション」(5月)だ。サザンオールスターズによる60年代アメリカン・ポップへの見事なオマージュである。〈ドリス・デイ〉など流行歌手の名前や、当時の髪型〈ポニーテール〉、爆発的に流行ったダンス・スタイル〈マッシュ・ポテト〉など、全編がオールディーズ調の世界観でまとめられている。サウンドは、あの時代への愛に溢れつつ、今日的なものに磨き直されている。

第4弾となったのは「ジャズマン(JAZZ MAN)」(6月)で、弦や管の編曲は八木正生。スイング時代のジャズを意識しており、関口和之も“ウォーキング・ベース”的演奏を試みている。この作品、サビの部分はフランス語が充てられていて、かつてアメリカ国内で生活できず、パリへと処を移した多くのジャズマンたちを思い起こさせもする。ストレートに“ジャズマン”が主人公というより、“ジャズマン”という“人種”を考察したうえで書かれたストーリーである。

カップリングの「ひょうたんからこま」は関口和之の作品でボーカルも彼だ。曲は桑田とハッキリ違うテイストであり、イギリスのプログレッシブ・ロックのグループが演るような、ちょっと神秘的なバラードだ。

そして“FIVE ROCK SHOW(ファイブ・ロック・ショー)”のラストを飾ったのが「わすれじのレイド・バック」(7月)である。この場合の“レイド・バック”とは、“勢い込まないくつろいだ状態”を指すようで、実際、そんなサウンドが聴こえてくる。お馬に揺られて道を往くかのようなテンポ感。バンジョーやエレキをボウ(弓)で弾いたような音も印象的だ。しかし歌詞は、この時期の桑田作品に多い、(曲調とは関連なく)性愛をダイレクトに描いたものであり、しかも歌いっぷりは言葉にいちいち感情移入したものではなく、あくまでそれらが“記号”であるかのようにサラリと歌う。後半、みんなに歌うよう桑田が促して大合唱になる流れは実に自然だ。この曲は現在も人気が高い。改めて、ホントにいい作品だ。

カップリングは「Five Rock Show」と題された作品で、締め括りにふさわしい。様々なオリジナル楽曲をインターリュード的に挟みつつ繋げる組曲風であり、もしやこれらは、この時期に制作しつつ発表の場に恵まれなかった曲たちだったのかも。原 由子以外の全員が歌っている、サザンにしては珍しい“男子校的”な聴き心地。途中、エルヴィス風の“腰骨あたりで歌ったようなロケンロール”もあり、最後は突然ワルツ・テンポのミュージカル風大団円と、遊び心も満載だ。

文 / 小貫信昭


SINGLE「涙のアベニュー」
1980年2月2日発売
VICL-36006 ¥762(税別)

〈収録曲〉
01. 涙のアベニュー
02. Hey! Ryudo!(ヘイ!リュード!)

SINGLE「恋するマンスリー・デイ」
1980年3月21日発売
VICL-36007 ¥762(税別)

〈収録曲〉
01. 恋するマンスリー・デイ
02. 青い空の心(No me? More no!)

SINGLE「いなせなロコモーション」
1980年5月21日発売
VICL-36008 ¥762(税別)

〈収録曲〉
01. いなせなロコモーション
02. LOVE SICK CHICKEN

SINGLE「ジャズマン(JAZZ MAN)」
1980年6月21日発売
VICL-36009 ¥762(税別)

〈収録曲〉
01. ジャズマン(JAZZ MAN)
02. ひょうたんからこま

SINGLE「わすれじのレイド・バック」
1980年7月21日発売
VICL-36010 ¥762(税別)

〈収録曲〉
01. わすれじのレイド・バック
02. Five Rock Show

SINGLE「涙のアベニュー」
SINGLE「恋するマンスリー・デイ」
SINGLE「いなせなロコモーション」
SINGLE「ジャズマン(JAZZ MAN)」
SINGLE「わすれじのレイド・バック」
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