LIVE SHUTTLE  vol. 366

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欅坂46 観客の胸に深く突き刺ささるパフォーマンス。初の東京ドーム公演をレポート。

欅坂46 観客の胸に深く突き刺ささるパフォーマンス。初の東京ドーム公演をレポート。

夏の全国アリーナツアー2019 追加公演 in 東京ドーム
2019年9月19日 東京ドーム

アンビバレント。辞書を調べると、「1つの物事に対して、相反する感情を同時に抱くこと。または、相反する態度を同時に示すこと」とある。同名のヒット曲をもつ欅坂46を広義で象徴している言葉だと思う。感情や態度だけではく、表現として。明と暗、本当と嘘、現実と夢、希望と絶望、過去と未来、笑顔と泣き顔、喜びと怒り、生と死、ポジティブとネガティブ、善意と悪意、子供と大人、心と体、個と集団……。欅坂46のパフォーマンスは、一般的には相反するものと考えられる事象が共存しながらも、説得力のある確かなエモーションで発せられるからこそ、観客の胸に深く突き刺ささるのだろう。

欅坂46が9月19日(木)に東京ドームで「夏の全国アリーナツアー2019」のファイナル公演を迎えた。8月16日(金)のゼビオアリーナ仙台を皮切りに、横浜アリーナ、大阪城ホール、福岡国際センターの全国4都市10公演をめぐり、追加公演として、グループ初の東京ドーム2days公演を開催。ツアー初日の前日となる8月15日(木)に平手友梨奈が右肘の負傷による出演見合わせが発表され、ツアーでは楽曲ごとに鈴本美愉や小林由依、土生瑞穂、上村莉菜、守屋茜、菅井友香らがセンターを務めてきたが、大阪城ホール公演から「避雷針」のみ、平手が復帰。セットリストをガラリと変え、8枚目のシングル「黒い羊」以外の全シングル曲を盛り込んだ東京ドーム公演では平手が完全復活を果たしていた。

オープニングに登場したのは平手ただ一人だった。ノイズや金属音が鳴り響く廃工場のような場所に足を踏み入れた彼女は、虚空に手をかざし、両腕を開き、床を触り、軽く足を上げてくるりと回った。やがて、階段へと歩みを進め、二階に置かれたグランドピアノを見つけ、窓から差し込む光に向けて祈りを捧げた。そして、ピアノを一音だけ強く叩くと、ステージ後方から金網に囲まれたメンバーがリフトアップ。閉じ込められた檻から解放し、ライブがスタートした。炎が立ち上がる中で“目の前にある想像のガラス”をぶち破り、続く「語るなら未来を…」では、割れた“心の中にあるガラス瓶”の破片を拾い集めるなと叱責する。集団と個、群れからの独立を歌やダンスで表現していくが、曲間のダンストラックでは、再び交通標識に合わせた団体行動に陥ってしまう。噴水があがるセンターステージでの「Student Dance」では小池美波がマリオネットのような動きを見せた。すると、再び、平手はピアノの上に立ち、鍵盤を足で力強く叩きつけ、タオル回し曲である「エキセントリック」では、二期生で最年少の山﨑天が「もう、そういうの勘弁してよ」と言い放つと、メンバーは髪をまとめていたゴムをとり、メインステージからセンターステージへの瞬間移動のようなイリュージョンを見せながら、我のままに自由に伸び伸びと生きることを決意する。同調圧力からの解放を果たし、1幕は締めくくられた。

最初のMCでは、佐藤詩織がファンやスタッフに感謝の気持ちを伝えながら「お見立て会から始まって。その時はこんなに大きな場所でライブができるとは思ってなかったので、すごく感慨深いです」と涙で声を詰まらせ、キャプテンの菅井に話を振られ守屋は「友香とは、いつか東京ドームに立てたらいいねと話していたので、本当に感無量ですし、1曲目の『ガラスを割れ!』で真っ赤のペンライトに染まった広い会場を見た時に、今、東京ドームのステージに立っているんだって実感が湧いてきました」と続けた。

そして、1期生がステージを去った後のMCを任された二期生の田村保乃、松田里奈、森田ひかる、山﨑はそれぞれ欅坂46に対する思い入れを語ったが、山﨑の「『サイレントマジョリティー』のミュージックビデオを見てから、自分もこういうことを言えるようになったらいいいなって思って。今は、欅に入る前よりも入った後、今の方が欅坂46が好き」という言葉には、全員が「わかる」とうなずいた。グループに対する愛情や一期生に対する信頼や感謝とともに、現在の欅坂46の活動の充実度も感じられる場面であった。

セミや虫の鳴き声、車の排気音などの街の喧騒を思わせるSEから始まった二幕は廃工場ような場所から外へと飛び出し、次々と場面が展開していった。「世界には愛しかない」ではスクリーンに雨が降りしきる中、傘をさしてパフォーマンスし、「青空が違う」では、菅井と渡辺梨加、守屋と渡邉理佐のペアが2台の気球に乗って場内を一周。小さなお家の前で繰り広げられた「バレエと少年」では、小池が原田葵をバッグハグし、頭をポンポンと優しく叩き、「制服と太陽」ではメンバーが爽やかな笑顔を見せた。二期生の関有美子と藤吉夏鈴のパートも加わり、最後は全員でセンターステージでピースやハグをしながら記念撮影のようなポーズをとった。さらに花道をスキップしながら後方ステージへと移動し、「二人セゾン」ではメインステージへと戻るメンバーに対し、平手だけが残るが、やがて走り出し、メンバーが待つメインステージへと合流。噴水が湧き上がった「キミガイナイ」では渡辺梨加が一人になるシーンもあった。ここで、ピアノに葉が落ちて生い茂り、スクリーンには巨大樹が映し出された。霧のようなスモークに囲まれた中で、背中合わせでパフォーマンスした「もう森へ帰ろうか?」では鈴本の一瞬のフリーズにハッとさせられ、上村、長沢菜々香、土生、渡辺梨加、渡邉理佐らによる「僕たちの戦争」では映像とのシンクロニシティを見せ、石森虹花や齋藤冬優花、佐藤、土生の「結局、じゃあねしか言えない」ではそれぞれが自転車に乗って、花道を四方に疾走。ドーム公演ならではの演出が満載で、上下左右と会場をダイナミックに使っていたが、根底には、それぞれが“個”の葉のままで、グループとして1つの幹になるという姿勢が表現されていたように思う。

それぞれが独立した個の集まりとなった三幕は、メンバーが代表曲と胸を張って掲げるデビュー曲「サイレントマジョリティー」で幕開け。雷が落ちる中、<私が愛の避雷針になる>と決意する「避雷針」、早着替えから場内をカラフルなバルーンが舞った「アンビバレント」、メンバー同士でハイタッチするディスコナンバー「風に吹かれても」、小林の「お前らサイコー!」に場内が湧いたライブの盛り上がり曲「危なっかしい計画」と、個と集団の対比を鮮やかに見せ、最後はミラーボールが回る中で、フューチャーベースを取り入れたメッセージソング「太陽は見上げる人を選ばない」で締めくくった。小池が「みんなのこと大好き!」と絶叫し、菅井は「みんなで出会えて、欅坂でよかったです。また全員で帰ってきたいと思います。これからの欅坂を期待してください」と丁寧にお辞儀をし、手を振りながらステージを後にした。

アンコールでは、2017年末の紅白歌合戦以来となる、平手がセンターに位置する「不協和音」を披露。イントロが鳴った瞬間に大歓声が沸き起こり、1番の平手の<僕は嫌だ>、2番の田村による<僕は嫌だ>、そして、再び平手の<僕は嫌だ>。この、手を振りほどきながらの絶叫には生々しい感情があり、理由や理屈抜きで涙を誘われる思いがした。さらに、この日はダブルアンコールが実現。平手が一人でセンターステージに現れ、自身の主演映画『響 -HIBIKI-』の主題歌であるフォークソング「角を曲がる」を歌唱。「自分らしさとはなんだろう?」と自問自答しながら観客の胸にまっすぐに歌声を届け、最後に少しだけ微笑んで、「ありがとうございました」と頭を下げた。平手の笑顔は最後のこの一瞬だけだったが、もしかしたら泣いていたかもしれない。あの泣き笑いのようななんとも言い難い、アンビバレントな表情が頭から離れず、その余韻は一夜明けてもまだ消えていない。

文 / 永堀アツオ 撮影 / 上山陽介

夏の全国アリーナツアー2019 追加公演 in 東京ドーム
2019年9月19日 東京ドーム

セットリスト

1. ガラスを割れ!
2. 語るなら未来を…
3. Student Dance
4. エキセントリック
5. 世界には愛しかない
6. 青空が違う
7. バレエと少年
8. 制服と太陽
9. 二人セゾン
10. キミガイナイ
11. もう森へ帰ろうか?
12. 僕たちの戦争
13. 結局、じゃあねしか言えない
14. サイレントマジョリティー
15. 避雷針
16. アンビバレント
17. 風に吹かれても
18. 危なっかしい計画
19. 太陽は見上げる人を選ばない
アンコール
EN.不協和音
WEN.角を曲がる


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オフィシャルサイト
http://www.keyakizaka46.com

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