総力特集 海を渡ってきたJ-POPシンガー『K』  vol. 6

Interview

【寺岡呼人xK対談】自然体で行き当たりばったりのプロデユーサー論

【寺岡呼人xK対談】自然体で行き当たりばったりのプロデユーサー論

Kと寺岡呼人。お互いを「似ている」と言う二人が、ミュージャンシップを語る対談第2回目。
寺岡が複数のアーティストのプロデュースを手掛けるように、Kもまた後輩アーティストのプロデュースを始めるようになった。自分を押し付けないという共通のプロデュース手法について意気投合する二人の軽妙なトークを。

インタビュー / エンタメステーション編集部 構成 / 森朋之


Kくんとは小学校の友だち同士のような感覚

呼人さんと出会って、Kさんはジュンスカなども聞いたと思うんですよね。
“ゆず”をはじめとするプロデューサーとしての仕事だったり、さらに寺田(奥田民生とのライブユニット)みたいなユニットもありますが、呼人さんに対してはどんなイメージを持っていますか?

K 僕が最初に思ったイメージは「言葉をすごく大切にしてる」ということですね。それが「一緒にお仕事をさせてください」って僕からお願いしたポイントでもあったんです。Golden Circleのときもそうだし、僕の楽曲に対してもそうなんですが、歌詞、言葉をすごく大切にしているし、僕もどんどんそういう作品を作っていきたいと思っているので。

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呼人さんはプロデューサーとしても幅広く活躍されていますが、Kくんのプロデュースに関してはどんなアプローチを考えていたんですか?

寺岡 Kくんに関しては「あの声に、もっとヒューマンな感じ、人間臭さが備わってきたらどうなるんだろう?そういう曲を聞いてみたい」と思っていた矢先に「一緒にやりませんか」と話をもらって。だから、アレンジとかサウンドよりも言葉ですよね。そこで自分なりにアプローチをしてみたのが「dear…」という曲だったり、「スニーカー」だったり。ああいう曲で、Kくんの人間臭さみたいなものを少し入れてみようかなっていうのが、自分にとってのプロデュースだったのかなって気がしますね。

Kさんは最初、日本語がまったく話せなかったわけじゃないですか。それが今これだけしゃべれるようになって。冒頭で呼人さんが言った「音源聞いて、日本人の歌手以上にソウルを感じた」という評価もそうですが、韓国人でありながら、日本語で音楽をここまでちゃんと伝えられるのはすごくレアなケースだと思うんですよね。

寺岡 そうですね。現在は日本語で歌う韓国のアーティストもいっぱいいると思うんですけど、Kくんは最初から、歌のなかに魂(=ソウル)というものが感じられたので。僕と一緒にやることになったときに、たぶん「この先20年30年後も、日本でやりたいの? それとも(韓国に)帰ってやるの?」みたいな会話をしたことがあったんですよ。そしたら「30年後も40年後も日本でやっていきたい」ということだったので、余計に日本の言葉というもので、人間臭い部分を出せたらなっていうのがあったんですけどね。

なるほど。Kさんに関する取材をしていて「Kさんほど人に嫌われない人はいない」という話をよくなるのですが、やはりそう思われます?

寺岡 思いますね。

その理由はどこにあるんでしょうか?

寺岡 いや、計算できないですからね、それは。やろうと思ってやれたら、みんなやってますから(笑)。

K (笑)。でも、呼人さんもそっち系じゃないですか。

人に好かれる魅力があると。

寺岡 負けます。

K いやいやいや(笑)。

寺岡 負けますね、Kくんには。

K そっち系の顔じゃないですか。

寺岡 (笑)顔は関係ないと思うけど。

K V6の井ノ原さんも同じこと言ってたんですよ。こっち系の顔は嫌われないって(笑)。

寺岡 (笑)何て言ったらいいのかなあ、よく「気遣いがある」と言いますけど、意識してやる気遣いと「気付いたらやってる」っていう気遣いがあると思うんですよ。Kくんは「気付いたらやってる」タイプですからね。最初に僕が彼に会ったときに感じたのは、小学生のときの友達に会ったような感覚だったんです。別に打算もないし、ゴマすりもないし。学校終わって後に約束もせず「○○くん、あ~そ~ぼ」って家に行って「いいよ〜」みたいな感じで遊んでた、あのときのピュアさみたいなのがありますね。

なるほど。年齢差って、ひと回りぐらいですか?

寺岡 もっとかな。15ぐらい違います。

K でもそれは僕も同じで、あんまり年齢差は感じないです。そのぐらい気軽に話せるっていうか。それこそ国も違えば言葉も違うし、ジェネレーションギャップも当然あるはずなんですけど。今年おいくつでしたっけ?

寺岡 48。

K こう聞くと「あ〜」ってなるんですけど(笑)、まったくその壁を感じないのは、呼人さんがそういう場を作ってくださってるというか。そういう雰囲気を出してくれるんだと思います。

でも、Kさんのように飲み会でいろんな人にお酌しているアーティストなんて、なかなかいないですよ(笑)。

K まあ、育った環境もあるかもしれないですよね。親父が怖くて、それこそ親父が来る前にごはんを先に食べると怒られるとか。呼人さんのおうちはどうでした?

寺岡 うちはそういうのなかったね、あんまり。

K 参鶏湯っていう料理あるじゃないですか。その足のところは絶対食えなかったんですよ、子供のとき。親父が足食ってたから。で、子供は脂が乗ってないところを食べて。今思えば、そっちのほうが健康的で良かったんですけど(笑)。

寺岡 昭和20年代ぐらいの日本の家族な感じだね、たぶん。

K 一度、母に向かって「水ちょうだい」って言ったら、すっごい怒られたことがあって。「水は自分で取りに行くもんだ」って、そのときに覚えました(笑)。そういう環境だったんで、それこそ日本に来てからも「目上の方の前で足組まない」とか。だんだんそういう感じも無くなってるんですけど、たとえばお酒の席とか、ふと「あ、そうだったな」って思い出すときはありますね。

入った事務所やまわりのスタッフにも恵まれてたんでしょうね。

K そうですね。僕としてはこの縁のまま、ずっと作品作りをやっていきたいなと思ってて。今いろいろ動いてる最中なんですよ。この先どういうものが出るのかを楽しみにしてもらいたいなって。

呼人さんとKさんのコラボレーションも続いていきそうですね。

寺岡 そうですね。僕は今回のGolden Circleで気付いたことがいっぱいあって。終わってすぐ、Kくんとふたりで飲みに行ったりとかしたんですね。具体的なことではないですけど、そのときも「Kくんとこういうことを出来ればいいな」という気付きがあったし。ライブと音楽っていうのが、そうやってちゃんとシンクロしていくって、すごいいいことだと思うんです。“イベントはイベント”じゃなくて。

プロデュースは、その人のカラーを引き出すこと

いち音楽ファンとしては、例えば呼人さんと桜井さんが作った楽曲を、Kくんが歌うみたいなのは、すごく聞いてみたいなと思いますけどね。

K あの、僕からも質問いいですか? 自分のソロをやってるときと、人をプロデュースするときの違いとか、気を付けてることはありますか?

寺岡 それね、全然ないんだよ。人をプロデュースすることで言えば、例えば小室(哲哉)さんとかつんく くんみたいに、誰をプロデュースしても「このサウンドはあの人だ」みたいな人っているじゃないですか。それが羨ましいところもあるんだけど、僕はどっちかっていうと、その人に対する興味から始まるんですよ。「ふだん何を考えてるのかな?」から始まって、「こういうところ出したら面白いかもな」って考えていくというか。もちろん当たりハズレはあるんだけど、そういうなかで勉強とか刺激になることもいっぱいあるんですよね。自分のソロも同じですね。

K アプローチを変えるとかも?

寺岡 ないかも。

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自然体のプロデュースっていうことですかね。

寺岡 いい言い方をすれば(笑)。

K (笑)。

寺岡 悪い言い方をすれば、まあ、行き当たりばったりですね(笑)。

K 僕が他のアーティストに楽曲提供をさせてもらうときは、どうしたほうがいいのかわからないことがすごく多くて。自分を出しすぎるのも良くないと思ったり、「Kというものを出すことも大事だな」と思ったり。だから呼人さんと一緒にお仕事させてもらうと、すごい勉強になるんですよね。

寺岡 まあ、だんだんわかってくるとこもあるからね。続けていくうちにKくんなりのバランスっていうのが出てくるかもしれないし。

Kさんは現在、新しいアーティストのプロデュースを担当しているそうですが、そこでも悩むことはありますか?

K いまお仕事させてもらってるのはグループなんですけど、彼らの色に合わせるということかなと。でも、楽曲は自分のストックから出てきてるわけだから…。でも、さっき呼人さんがおっしゃっていた“アーティスト自身に興味を持つ”というのは参考になりますね。それは取り入れてみようと思ってます。

寺岡 それは大きいと思うよ。「この人たちのこういうところを聞いて欲しい」っていう。自分では出し切れてなかった部分もあると思うしね、意外と。

K ありますよね、それは。

寺岡 そういうときは自分も(プロデュースするアーティストと)同じぐらいの気持ちでやんなきゃと思うし。それは確かに勉強になるよね。

Kさんが言った「アーティストの色に合わせる」というのは、呼人さんの考えとまったく同じですよね。

寺岡 そうですね。自分を押し付けるというより、なるべくその人のカラーを出すっていう感じなので。

ふたり、結構似てますね。

寺岡 似てるところは多いと思いますね。

K 大阪のGolden Circleのときに呼人さんの知り合いの方が「(Kを見て)学生のときの呼人さんとそっくりだ」っておっしゃってましたよね。

寺岡 高校の先生だね(笑)。僕の高校の先生が大阪までイベントを観に来てくれたんですけど、楽屋に来てくれたときの第一声が「Kくんは高校のときの寺岡にそっくりだ」だったっていう。

(笑)最後に、呼人さんが今後のKさんに期待するものというのは?

寺岡 それをずっと一生懸命考えてました(笑)。もう10年経って“韓国から来た”っていうスペシャル感で勝負するのではなく、日本のアーティストとして根を張っているわけですからね。今、すごくいいチャンスなんじゃないかなと思うんですよ。この先もいい作品をどんどん作っていって、一皮も二皮もむけた30代のKくん、そこから40代に向かっていくKくんを見たいなって思いますね。

わかりました。今日は「K特集」のゲストとして呼人さんに参加していただきましたけども、次回はアーティストとしてご登場願えればと。

寺岡 じゃあ、そのときはKくんがゲストで。

K それじゃ、一緒じゃないですか(笑)。

寺岡呼人

自身のアーティスト活動と並行してプロデュース活動を行い、ゆず、矢野まき、ミドリカワ書房、植村花菜「トイレの神様」、グッドモーニングアメリカ、八代亜紀など多彩に手掛ける。 また、自身を中心とした3世代が集うライブイベント『ゴールデンサークル』を2001年に立ち上げ、松任谷由実、小田和正、仲井戸麗市、桜井和寿、奥田民生、斉藤和義、backnumberなど多くのアーティストが参加。 現在、再結成を果たしたJUN SKY WALKER(S)ベーシストとしても活動中。

K

韓国・ソウル出身のJ-POPシンガーソングライター。2005年3月TBS ドラマ「H2」の主題歌『over…』でデビュー。同年 11 月CXドラマ「1リットルの涙」の主題歌『Only Human』が大ヒット。その後リリースした1st アルバム『Beyond the Sea』はアルバムチャート最高位 2 位、30 万枚超のヒットを記録。このアルバムでアジアの男性アーティストとしては史上初のアルバムTOP3入りを果たした。2009年、外国籍としては史上初となる全国 47 都道府県を制覇した弾き語りツアー「K style~timeless night~」など、圧倒的なライブパフォーマンスで高い支持を集める。2010年11月30日には自身初となる日本武道館公演を成功させる。2011年1月18日に韓国民の義務である兵役のため入隊。2012年10月20日に陸軍軍楽隊を除隊。2015年には、デビュー10周年記念企画として毎回スペシャルゲストを迎えたアコースティックライブ「“K”olors」を全10公演開催。2016年、3月9日に16th Singleとして『あの雲の向こう側』を発売。カップリングには坂本九の名曲『心の瞳』をカバー収録。
オフィシャルサイトhttp://www.club-k.cc

ライブ情報

K Premium Live 2017

1月5・6日 ビルボードライブ東京
1月8・9日 名古屋ブルーノート
1月13・14日 ビルボードライブ大阪

vol.5
vol.6