山口洋のSeize the Day/今を生きる  vol. 68

Column

New Acoustic Camp 2019 / より善きことのために

New Acoustic Camp 2019 / より善きことのために

9月14日〜15日、清涼な風が吹き抜ける水上高原で開かれた音楽フェス“New Acoustic Camp 2019”。
「音楽とキャンプ、好きなことを同時に」という想いを形にして今年で10年。
初めてそのステージに立った山口が、イベントをオーガナイズするOAUへのリスペクトとすべてのいのちへの祈りを込めて書き下ろす。


10年目を迎えたNew Acoustic Camp 2019。初めて参加させてもらった。その体験があまりに新鮮で、素晴らしいものだったから、新参者だけれど、ここに記しておきたい。感謝を込めて。

より善きことのために。

関越道を東京から新潟に向けてひた走り、水上インターを下りる。つづら折りの坂を登っていくと、空気がひんやりと高原のそれに変わっていくのがわかる。僕はそこで日常を脱ぎ捨てる。ライヴの前はどちらかというと戦闘的な気分になるものだけれど、今日はまるで逆のベクトル。開かれていくこころに高原の風が吹きぬけてゆく。

©New Acoustic Camp

到着して、フェスにチェクインしたときから、ひどく居心地がよかった。運営に携わっている人たちが近しい理想を見ているのを感じる。会場に足を踏み入れて、それは確信へと変わる。

ひとことでいえば、ピースフル。

確かな理念があって、それを人々に押しつけることなく、たいせつに育て続けて、オーディエンスが家族や恋人、ペットとともにプレシャスな時間を過ごしている。その想いが幾重にも重なって、創り上げたヴァイブス。それぞれが自然の中でたいせつなものを見つめる時間。

©New Acoustic Camp

©New Acoustic Camp

理念は伝わってくるけれど、お金の匂いがしない。こころをこめた手作り感といえばいいのかな。

そして、真ん中にアコースティックな音楽。音楽がこんな風に自然とともに人々のこころにファンクションしているのを観たのは実のところ初めてかもしれない。

©New Acoustic Camp

嬉しかった。

ルールは規制するためにあるのではなく、ともにいい時間を過ごすため、夢を実現するために機能していた。

なによりも。子供たちにとって素晴らしい体験になるだろう。もしも僕が子供として体験したなら、こんなよじれた大人にはならなかったと思う。ここは信じるに足る場所だ。

©New Acoustic Camp

多くのファミリーにとっても、これは夢のような体験だろう。ある人にとっては一年に一度の夢の国、僕のような帰る場所のない人間にとっては実家のような芝生の国。

そんなフェスをオーガナイズしているのが暴れん坊だと一般的に認識されている連中だってところが痛快すぎる。

優しい時間だった。

陽が暮れて、あたりが闇に包まれると、灯りとキャンドルとオブジェが昼とは違う空間を作る。そこには人の想いが加味される。幻想的なのだけれど、真ん中に投影されているのはいつも愛だった。

©New Acoustic Camp

©New Acoustic Camp

神と呼ぶには仰々しすぎるから、ミューズってことにするけれど。ここには確かにニューアコのミューズがいる。だから、彼女にしたがって、何も考えずステージに上がる。

自分のためではない誰かのために生きること。それは結果として自分のために生きること。そう思っていれば、ミューズが善きものを引きだしてくれるから。

何も考えない。観客であるイヌとも仲間になる。一緒に演奏してくれたOAUは素晴らしかった。仲間を100%信じるだけ。考える必要はない。MAKOTOのウッドベースを感じていたのは右のふくらはぎ。KOHKIのギターは左半身が受け止める。あとは体が勝手に反応する。

©New Acoustic Camp

中秋の名月の翌日、満月。残念ながら見えなかったけれど、空にTOSHI-LOWと僕が歌う「満月の夕」が吸い込まれていく。エゴはどこにもなかった。

©New Acoustic Camp

ほんとうの意味で誠実に生きようとするなら、人は孤独にしかならない。だから、残りの人生はもはや孤軍奮闘するしかないのだと覚悟していた。でも、どうやら違うらしい。そんなヒントをもらったよ。書けば、これだけのことだけど、僕にとっては大したことだよ。

世界はときどき美しい。

そこには「ガルシアの風」が吹いていた。かつてほんとうの自由を目指した偉大な先達たちのスピリットが「勝手に」受け継がれていた。

僕はオーガナイズしていた暴れん坊たちに感謝をこめてジェリー・ガルシア・バンドの「Simple Twist Of Fate」を送った。

©New Acoustic Camp

このフェスでこんなヴァイブスが必要だったらまた僕を呼んでほしい、と。書き添えて。

より善きことのために。

感謝を込めて、今を生きる。

©New Acoustic Camp


OAU(OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND)
2005年、BRAHMANのTOSHI-LOW(Vo, A.Gt)、KOHKI(A.Gt)、MAKOTO(Cb)、RONZI(Dr)にフロントマンも務めるMARTIN(Vo, Violin, A.Gt)、KAKUEI(Perc)が加わり、6人で結成。アイルランドやアメリカの伝統的な民族音楽、ルーツ・ミュージックに現代的なサウンドを有機的に融合し、多くのオーディエンスを魅了。繊細さとダイナミズムを併せ持つパフォーマンスも評判を呼び、国内最大級のフェスをはじめ海外でもライヴを重ねる。2010年からは全アーティストがアコースティック限定の編成で出演するキャンプフェス“New Acoustic Camp”のオーガナイザーを務めている。
バンド名を冠した最新アルバムを9月4日にリリース。9月28日(土)石垣島 流れ星の丘 くうら“ぬあしび~CAMPING EARTH 2019~”のイベント出演を皮切りに “OAU Tour 2019「A Better Life」”がスタート。12月5日(木)東京 国際フォーラム ホールCまで全国15ヵ所を廻る。2月3日(月)大阪サンケイホールブリーゼで幕を開ける追加ホール・ツアー“Hall Tour 2020-A Better Life-”も発表されたばかり。

オフィシャルサイト


New Acoustic Camp 10th Anniversaryテーマ曲「こころの歌」オフィシャルMV


『OAU』
初回限定盤(CD+DVD)TFCC-86688 ¥3,800(税別)
通常盤(CD)TFCC-86689 ¥3,000(税別)
LP TFJC-38038 ¥3,500(税別)
トイズ・ファクトリーより発売中
結成から14年、バンド名を正式にOAUに変更した彼らの最新作。New Acoustic Camp 10th Anniversaryテーマ曲「こころの花」、New Acoustic Camp 公式テーマ曲「Midnight Sun」、テレビ東京系ドラマ24『きのう何食べた?』オープニングテーマ曲「帰り道」、映画『新聞記者』主題歌「Where have you gone」等、話題曲満載の全13曲。初回限定盤DVD「OAU ~The premium release party~@Billboard Live TOKYO(2019.7.4)」には、7月4日に行われたビルボードライブ東京でのステージから1stアルバム収録曲「Dissonant Melody」をはじめ全11曲が収録されている。‬‬


著者プロフィール:山口洋(HEATWAVE)

©New Acoustic Camp

1963年福岡県生まれ。1979年にHEATWAVEを結成。1990年、アルバム『柱』でメジャー・デビュー。1995年発表のアルバム『1995』に収録された「満月の夕」は阪神・淡路大震災後に作られた楽曲で、多くのミュージシャン、幅広い世代に現在も歌い継がれている。“ミュージシャンズ・ミュージシャン”としてその名を挙げるアーティストも多岐にわたり、近年は野外フェスやR&Rイベントへの出演も多い。バンド結成40周年となる今年、これまで以上に精力的にライヴとレコーディングを行っており、9月23日開催のHEATWAVE SESSIONS 2019 “the boy 40”@東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGE会場では最新シングル「HEAVENLY」がリリースされた。3月から全国を廻ってきたソロ・アコースティック・ツアー“the boy 40 tour”も10月10日福島、12日岩手でいよいよファイナルを迎え、11月からはHEATWAVE結成40周年全国ツアーがスタート。ファイナルは12月22日、東京 日本橋三井ホールに決定した。

オフィシャルサイト

ライブ情報

山口洋(HEATWAVE)the boy 40 tour
10月10日(木)福島県いわき市 Music Bar burrows(バロウズ)
10月12日(土)岩手県奥州市 おうちカフェMIUMIU(ミゥミゥ)
詳細はこちら

HEATWAVE 40th Anniversary TOUR 2019
11月10日(日)高松オリーブホール
11月16日(土)長野ネオンホール
11月17日(日)仙台 CLUB JUNK BOX
12月6日(金)福岡 Drum Be-1

12月13日(金)大阪 バナナホール
12月22日(日)東京 日本橋三井ホール
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リクオ スペシャル・ライブ「グラデーション・ワールド」 *ゲスト出演
11月26日(火)下北沢 GARDEN
出演:リクオ with HOBO HOUSE BAND
ゲスト:古市コータロー(ザ・コレクターズ)/ 山口洋(HEATWAVE)ほか
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SMILEY’S CONNECTION~ノイズホテル TOKYO~
12月8日(日)渋谷 LOFT HEAVEN
出演:フルノイズ(from 福岡)、山口洋(HEATWAVE)、百々和宏 with有江嘉典
詳細はこちら

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