Interview

新しいことにワクワクしよう! Lucky Kilimanjaroが“世界中の毎日をおどらせる”。熊木幸丸が語る2nd EP「FRESH」

新しいことにワクワクしよう! Lucky Kilimanjaroが“世界中の毎日をおどらせる”。熊木幸丸が語る2nd EP「FRESH」

エレクトロポップ・バンド、Lucky Kilimanjaro(ラッキーキリマンジャロ/通称:ラッキリ)が4ヵ月連続リリースシングルをコンパイルした、メジャー2nd EP「FRESH」をリリースした。
大学の軽音サークルでの結成から5年。マイペースな活動を続けてきた彼らだが、2018年11月に1st EP「HUG」でメジャーデビューし、数多くのイベントやロックフェスに出演。聴き手の心をワクワクさせるハッピーなダンスミュージックで確実にシンパを拡大する中、今年4月には“世界中の毎日をおどらせる”というバンドとしての明確なコンセプトを打ち立てた。そこにはどんな意図、どんな思いがあったのか。ボーカルの熊木幸丸に話を聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 冨田望


僕らの曲が“お客さんにとってどういうものでありたいか”

エンタメステーションには初登場になります。今年の4月にバンドとしてのコンセプトをTwitterで発表しました。あらためて、“世界中の毎日をおどらせる”というコンセプトを打ち出した経緯からお伺いできますか?

ずっとダンスミュージックにインスパイアされたような音楽をやってきたんですけど、メジャーデビューしてから関わる人が多くなっていく中で、“自分たちはこういうバンドをやりたいんです”ということを簡潔にしておこうと思って。どういうジャンルに影響されたとかではなくて、“こういう世界を作りたいんです”ということをひとことでまとめたほうがいいなと思ったんです。そのほうがメンバーもスタッフも全員が同じ方向を向けるというか、やりやすくなるなと思って。あと、“どういうジャンルをやっている”じゃなく、僕らの曲が“お客さんにとってどういうものでありたいか”ということをちゃんと示したいと思って、テーマを決めさせていただきました。

バンドとしてどんな思いが込められていますか?

まず、僕の中で “踊る”という単語が出てきて。それは、身体的な踊るということだけでなく、日常をもっと楽しく生きたり、ワクワクするようなことに対して、“踊る”という言葉を使ってるんですけど、僕らの曲を聴いてくれた人、僕らに関わってくれた人がそういう生活を送れるような、そういうバンドでありたいなという思いですね。

Lucky Kilimanjaro エンタメステーションインタビュー

そして、バンドのコンセプトを打ち出したあと、6月から4ヵ月連続リリース企画がスタートしました。

もともと4ヵ月連続リリースをしようという形で曲を作っていたわけじゃなく、去年の11月にメジャー1st EP「HUG」を出して、次のEPを6月くらいに出したいというところで、そこに向けてずっと制作していたんです。同時に、もっとたくさんの人に知ってもらいたいと思っていたところにレーベルから提案があって、連続リリースというのも、ちょっとお祭りみたいで楽しいな、と思ったので、本当にノリで「連続リリースしましょう!」みたいな感じでした。

(笑)では、制作としては、2nd EPを作るというスタンスと変わらないということですよね。前作を経て、次はどういうものを聴かせたいと思っていました?

 

「HUG」をリリースしてから、僕の歌詞や楽曲の意味がちゃんとお客さんに届いて、それが回りまわって世の中を良くする感覚がちょっとだけ見えたというか……。僕たちの音楽でそういうことができるかもしれないという可能性みたいなものを感じていたので、その点はより意識しつつ、僕も新しい音楽を聴くのが好きなので、Lucky Kilimanjaroとしてもやったことのないラインをどんどん入れていって、新鮮さはなくさないようにしようと思っていました。

「FRESH」は、2019年のLucky Kilimanjaroのメッセージとしてうまくまとまった

今、“新鮮さ”とありましたが、2nd EP「FRESH」の制作の最初から全体のコンセプトありきでした?

もともと僕は作品一枚ベースではテーマを決めないタイプだったんです。個人的にも単曲でプレイリストを組んで聴くタイプなので、アルバムとして聴くということが実はあんまりなくて。だから、「FRESH」の制作時もそういう思いはなく、むしろ単曲単曲でちゃんと届けていこうというのがあり、それが連続リリースにも繋がったのかもしれないです。でも、「FRESH」という曲は連続リリースが決まってから書いた曲なんですけど、この曲が書けたときに、2019年のLucky Kilimanjaroのメッセージとしてうまくまとまったというか、もっとワクワクしたい、楽しみたいっていう人のための曲になったなという実感があって。それは全然想定していなかった収穫でしたね。

Lucky Kilimanjaro エンタメステーションインタビュー

EPのタイトル曲で新曲でもある「FRESH」を含めた5曲を通して聴くと、サウンド感はバラエティに富んでいますけど、歌詞の根底には共通のメッセージを感じますよね。新しい自分になるために、今の自分を変えるために、何が好きで何が嫌いで、未来をどうしたいかを自分で決めるんだっていう。

そうですね。2019年としてそういう言葉を使っていきたいというのは、シングルの曲を考えていたときからあったもので。自分の好きなものを選ぶということに今、人が集まってくると思うし、そこをちゃんと大事にして欲しいし、そこに対して恐れないで自信を持って欲しいというところは、2019年のひとつのテーマとして歌ってきていたので、うまく集約されたのかなと思います。

1曲目の「FRESH」では、みんなで新しいところを目指そうよっていうメッセージを投げかけています。

今年一番僕が言いたかったことですね。人間って知らないことが怖いらしいんです。知らないことが怖いから、差別や偏見が生まれるし、そういうのがすごくもったいないと思っていて。でも、知らないことの先に新しく自分がワクワクできることがきっとあると思うんです。新しい場所に転校したり、転職したり異動したりっていうこともそうだし、知らない人と話したりとか。そこに新しい自分の道があると思うので、そういうことを大事にして欲しいという曲ですね。

ご自身としても日々、新しいものとの出会いを求めている?

そうですね。常に、“新しい”と自分で思える曲を探す人生になってきましたね。だから、知らない作品を観るし、読むし、知らないところにも行く。それを経て、新しい作品を作ろうというのは日常的にあるかもしれないです。

今回は全曲でMVを制作していますが、映像に関してはどういうイメージでしたか。

「FRESH」は早朝に広いところで撮りたいというのはリクエストしていて。場所は監督に探してもらったんですけど、富士山の麓っていうジャストなところで撮ることになって、朝4時くらいにそこに到着したんですけど、雲の間の靄とかがすごくキレイで。その瞬間、絶対にいい映像になるなって思ったし、実際に観た映像もすごく良くて。自分的には2019年で一番満足したというか、今年これで終われて良かったなって思っているところです(笑)。

(笑)まだ終わってないです。ちなみに、どうして早朝で野外でしたか。これまでのサウンドのイメージとしては、クラブか自分の部屋で楽しんでいるっていう都会のナイトミュージックというイメージでした。

もっと広がった印象が欲しいなと思ったのと、「FRESH」は朝の話をしているので、単純に朝の映像で撮りたくて。みんなの可能性も含めた、全体が広がるっていうイメージが自分の中にあって、そういうのを再現したいなと思って、狭い空間じゃなく、広い空間で撮らせてくださいという話をしました。

ちょっと軽くなれるような、向いていた方向を変えられるような曲に

続く「風になる」からもメッセージを感じました。

この曲はできるだけシンプルに、難しい言葉は使わないようにしましたね。プラシーボ(効果)でもいいから、自分がちょっと軽くなれるような、向いていた方向を変えられるような曲にしたいなと思っていたので。だから、サウンドもあまりベースをブンブンさせないで、軽めにサクッと入れようというのがありました。本当に風が吹くような曲にしようと思って作った曲ですね。聴き終わったときに、どういうことを言ってる曲なんだってことがちゃんとわかればいいなと思っていました。

歌詞にあるとおり、〈風になる 風になる〉〈わたしは/ぼくは風になる〉って口ずさむだけでちょっと気持ちが軽くなるような気がします。

そうですね、「風になる」はもともとそのフレーズだけ残ればいいとは思っていて、そこだけ残ればこの曲としては完成というか……だけど、そこに肉付けするような言葉もちゃんとお客さんに響いているんだなってことは、リリースしたあとに感じました。

変化することに対して恐れないっていう勇気をもらったという人も多いと思います。この曲が4ヵ月連続シングルリリースの第1弾でしたが、MVでは風は吹いてなくて。

最初は監督からも「FRESH」みたいに外で風が吹いてるようなイメージを提案されたんですけど、僕の中ではもっと内省的なところがあって。あと、メンバーをもっと出したい、メンバーが楽しんでいる感じを出したいっていうのがありました。凛として風に向かっていく感じではなくて、もっと和気藹々としていたいみたいな、そんなイメージを伝えたらああいう感じになりました。

スタジオに忍び込んで遊んでいるような映像になっています。

あの撮影は深夜の1時とか2時に撮ったんですけど、すごい疲れましたね(笑)。今回の5作品のMVの中で一番撮影時間が長くて大変でした。もう……大変だったなっていう記憶しかない(笑)。

Lucky Kilimanjaro エンタメステーションインタビュー

(笑)リリース順としては、そのあとが「HOUSE」です。

一般的なハウスミュージックよりはちょっとキックを抑えてはいるんですけど、そもそも“ハウスミュージック”っていうジャンルと“家=ハウス”をかけるっていうアイデアをやりたいがために作った曲です(笑)。どちらかというと、ファンク寄りのハウスですよね? でも、インドア派だから、ブンブンしているよりは、ちょっといなたいほうがいいなというバランスを大事にしようと思いながらサウンドを作りました。曲もカッコつける要素をできるだけ減らすというか、最終的には「風になる」とギャップがあるような感じになりましたね。

熊木さん自身はインドア派ですか?

僕は本当にインドア派だと思います。めっちゃインドアなのに、取材もあるし、レコーディングもあるしで、全然家にいれないんですけど(笑)、家で漫画を読んだりゲームしたりするのが好きですね。それよりも何よりも、家で曲を作るのが一番好き(笑)。なので、ずっと家にいちゃうっていう。

これも共感する人が多かったですよね。インドア派の逆襲が始まる感がありました。

はい。思ったよりも共感してもらって、やっぱりいるんだな、インドア派ってと思いました(笑)。

「Do Do Do」はオルタナティブR&Bとしても聴けるくらいの歌モノになっていますよね。

わりとダークじゃない、オーソドックスなトラックで、ちょっとブラスが入っているような感じをイメージしていたんですけど、この曲が一番言葉が強く出ていて。Lucky Kilimanjaroとしてもこういう曲をちゃんとやるのは初めてだったし、楽曲にもっとパワフルな印象も欲しかったので、全体的に強め強めにやりました。映像も暗いところでガッツリ撮ったし、ちゃんと歌として聴いていただけるものになったのかなというのはありますね。

何かを選ぶために何かがなくなるってことに対して、それでも進んでいこう

最後は「初恋」ですが、これはどんな心情と言えばいいですか?

パッと聴きは失恋ソングなんですけど、僕の場合はもうちょっと広い解釈で。何かを選ぶために何かがなくなるってことに対して、それでも進んでいこう、という曲です。

人生におけるチョイスですよね。手放したものに対して後悔せずに、新しい出会いに期待しようっていう。

そうですね。こっちを取ったらこっちがなくなるというチョイスは誰にでも絶対にあるもので。基本的に選択というのはそれの連続で、何かがなくなっちゃうはずなので、そこで悔やみたくないというか、せめて自分自身がこっちを選んだということだけは自分の中で大事にしたいなって思うんです。

未練は多少ありながらも。

結局、未練はあると思うんですよね。選択ってどうしても、“あっちのほうが良かったかも”ってなるから。それこそ、こっちがうまくいかないかぎりは、ずっと“あっちが良かったかも”って思い続けると思うんですけど、そこも含めて“いいよ”とちゃんと言いたくて。

Lucky Kilimanjaro エンタメステーションインタビュー

細かいところですが、〈次の夢を追うわ〉って、そこだけ女性のような語尾になっていますよね。

今回は、全体の主人公を凛とした女性をイメージしています。女性の曲ではないんですけど、凛とした女性っぽい感じを自分の中では持っていました。それを一瞬出したいなって思ったんでしょうね。僕の言葉ではなくて、その女性の言葉として出すことで、曲の世界に入っていける人が変わるかもしれないと思って。ほかの曲には、僕のことというか、男っぽい言葉があるので、この曲はもうちょっと女性っぽい言葉に寄せようかなと思ったんです。

フランス語に男性名詞と女性名詞があるように、楽曲自体が女性名詞になっているような雰囲気もありますよね。

そういうのは意識していますね。僕の場合、優しい言葉を使おうという意識はあるので。あまり煽らない言葉を使うというか、男でもオラオラしてないというか(笑)。

(笑)この曲のMVのみ、熊木さんやメンバーではなく、女優さんが出演されています。

茅島みずきさんですね。僕が茅島さんが「めっちゃいい!」と言って、レーベルからオファーしていただきました。まだ15歳で、来年高校生なんですよ。信じられないと思いました(笑)。

未来のシーンは、かなり大人っぽいですね。

僕の中で思っていたイメージにジャストで、すごい嬉しかったですね。

新しいことにワクワクしていって、踊りましょう

5曲揃って、リスナーにはどう届いたらいいなと思いますか。

自分の好きなことを選んで、新しいことにワクワクしていって、踊りましょうっていう根本的なメッセージさえちゃんと伝わってくれれば、2019年のLucky Kilimanjaroとしては十分だなと思っています。

2019年以降は視野に入っていますか? 本作を聴くと、今のその先へと向かっていますよね。

まだ今はお客さんに知られようとしている状態だと思うんですけど、だんだん知ってくれる人やファンになってくれる人が大きくなってきて。その過程で、バズを狙っていくよりも、お客さんが本当にLucky Kilimanjaroを好きで良かったと思えるように、まずはそこをちゃんとやりたいなと思っています。安易にウケを狙わないで、自分たちを好きになってくれた人のコミュニティを大事にして、そのうえでもっと大きくしたい。最終的には僕らの音楽を聴いて何かを始めた人が、のちに僕らと仕事をしたりできたらすごい楽しいなっていう妄想をしてますね。

Lucky Kilimanjaro エンタメステーションインタビュー

そして、11月には初ワンマンが控えています。まず、“初”ということが意外です。

5年やっていて初めてのワンマンです。自分たち企画のライヴはやっていたんですが、ワンマンをやろうとなったことがなくて。それも初めてだなと思いました(笑)。

すでにソールドアウトしてしまっていますが。

そうですね。僕らも思っていたより早くソールドアウトしてしまったので驚きました。まだそんなバンドじゃないと思っていたし、そのための4ヵ月連続リリースでもあったのに(笑)。だから、むしろ来れないお客さんがいっぱいいることに申し訳ないという気持ちです。Lucky Kilimanjaroとしてもワンマンの長さのライヴをやるのは初めてなのですが、今までの曲も含めてLucky Kilimanjaroのいろんな面を見せていけるし、演出も含めてカッコいいものを見せられると思っています。

初ワンマンライブ「FRESH」

2019年11月23日(土)Shibuya WWW ※SOLD OUT

Lucky Kilimanjaro(ラッキーキリマンジャロ)

熊木幸丸(vocal)、大瀧真央(synthesizer)、松崎浩二(guitar)、山浦聖司(bass)、柴田昌輝(drums)、奥 真人(percussion)。
2014年に熊木幸丸を中心に活動を開始。2015年7月に1stミニアルバム『FULLCOLOR』、2017年11月に1st アルバム『Favorite Fantasy』を発表。2018年にドリーミュージックからメジャーデビュー。2019年6月より4ヵ月連続シングルリリースを経て、10月に2nd EP『FRESH』をリリース。

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オフィシャルTwitter(@Lucky_klmnjr)

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