小田和正『あの日 あの時』特集  vol. 13

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KAZUMASA ODA TOUR 2016 “君住む街へ”横浜公演を見て感じたこのツアーの意義とは?

KAZUMASA ODA TOUR 2016 “君住む街へ”横浜公演を見て感じたこのツアーの意義とは?

小田和正『あの日 あの時』特集Part.XⅢ

KAZUMASA ODA TOUR 2016 “君住む街へ”横浜公演を観て感じたこのツアーの意義とは?

 オープニングに流れる映像は、小田が音楽活動を始めてから現在までを、写真で振り返る構成であり、それぞれに撮影された年が表示されていた。それを見ていたら、小田が一番長髪だったのは1973年であることに気づいた。オイル・ショックで経済は大混乱、若者にジーンズ・ルックが定着したのがこの頃で、当時の小田もそんな格好をしていたのだろう。
 でも80年代になると、写真の中ではナイーヴそうに見えた青年は、よりフィジカルに重点を置くかのような立ち姿へ変わっていく。ファッションもスポーティーなものとなる。さらにどんどん現在へと近づき、その時ふと、「小田のなかで今も変わらないものは何なのだろう?」と考えた。さらにさらに現在に、まさにまさに今となり、オープニング曲が新曲の「wonderful life」であるというのは、出来過ぎとも思えるくらい繋がりのいい曲の並べ方なのである。

取材・文 / 小貫信昭 撮影 / 菊地英二

心象風景と実景

 地元の横浜だけに、ローカルな話も披露した。「港の見える丘公園」の開園は小田が15歳の時であり、その想い出(雪合戦をしたこと、この地区恒例の「除夜の汽笛」をみんなで聞いたこと)も語った。まさかこの公園を歌にするなんて「夢にも思わなかった」と言い、そして歌われたのが「秋の気配」。「小田くんの歌は心象風景が多いから、実景を入れてみたら?」というディレクター氏のアドバイスもあって完成した歌だが、小田にとって取材などせずとも思い描きやすかった“実景”が、まさにこの公園だったのだろう。
 横浜で聴くと、ほかの会場とは聞こえ方が違う。作品を育んだ場所で聴けば、歌の背景に思い入れし易くもなり、だから一層、味わい深く響く。もっとも、横浜アリーナの最寄り駅は「新横浜」という名称ではあるけれど、「港の見える丘公園」からはかなり外れた場所なのだが…。

 今回のツアーの最初の意義としては、オフコース時代の作品を単なるノスタルジーを越えたところでより満足のいく形で演奏出来たことが挙げられるだろう。リメイクされることがなかった「眠れぬ夜」を、ベスト盤『あの日 あの時』で録り直すことになり、それが納得した形となり、ステージで披露されたことは大きいし、さらに「心はなれて」のようなストリングスがメインの曲も、金原千恵子をはじめとする弦のカルテットがいる編成なら、当然のごとくレパートリーに加えられる。小田があの時代にスタジオで打ち立てた音楽性を、もしかしたらあの頃以上にそのままステージに上げることが出来ているのだ。ファーイースト・クラブ・バンドのロック・テイストな波動が会場を支配する時と、ストリングスがメインで場の空気を操る時とのメリハリというか、その音の風景の変化の見事さは、他のアーティストのライヴでは絶対に味わえない贅沢なものだ。

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ツアー・タイトルに込めた想い

さらに今回のツアーでは、ツアー・タイトルにもなった「君住む街へ」が重要な役割となった。この歌は、そもそも新幹線の中で車窓の景色を眺めていた時に浮かんだメロディが元になっているので、最初から旅(=ツアー)とは縁があるのだが、実は始まる直前、小田はこんなことを言っていたのだ。

 そもそも「君住む街へ」というのは、気持ちはいつも、君たちのところに一緒にありますよ、という歌だけど、たまたま震災後に歌いにくい(歌詞の)部分もあって、ここのところは歌わないで来てて、でも今度は、この言葉を銘打ってツアーに出て行くわけだし、それを前向きな気持ちの表われと受け止めてくれたなら、とは思ってますけどね(ファンクラブ会報『PRESS』2016年3月25日発行号より)

 この言葉からも分かるとおり、まさに君住む街へ出掛けて行って、この作品を歌うということがツアーの大きな意義であったのは言うまでもなく、しかし状況としては忸怩たる想いも生み、そして静岡の初日(4月30日)でそれが果たされるが、小田は歌の途中で感極まった。その時は客席から大合唱が起こったが、実はこの日の横浜でも、ちょっとしたことがあった。途中、声を詰まらせたかのように思えた瞬間があったのである。でもツアーも無事終わろうという時だったから、ここで湧き上がった感情は、歌を届け終えた達成感からだったのだろう。 実はこの日、アンコールの最後の最後にふたたび「君住む街へ」を演奏した。予定外だった。その際、「さっき間違っちゃったから…」と、そう小田は言い添えた。“間違っちゃったから”という表現は、感極まったことを指していたのか、はたまた別のことなのか…。

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僕(等)の終わりは僕(等)が終わる

 「君住む街へ」というツアーの意義は、特にツアーが後半に行くに従い、小田が観客達に「またステージに戻ってくる」と、そう約束したことにもあった。横浜でのMCでも、そのことにも触れた。今後に関しては、未定のまま臨んだツアーだったようだが、各地で観客の笑顔に触れているうちに、つい、ステージに戻ってくると「約束しちゃっていた」と小田は言った。当初は「そんな積もりはなかったけど」とも言っていた。
 代々木の時は、毎回ステージに上がる前は高い声が出るか不安だが、いざやってみれば「出るんだよ」とも言った。もともとセルフ・モニタリングには長けた人だとは思うが、そうして自分を把握しつつの毎回のステージなのだろう。“もう終わりなのか…”という悲壮感にも似たファンの想いのなか、「さよならは 言わない」を披露したのは2008年のドーム公演だったけど、既にもう、あれから8年も経過したわけだ。
 今回のツアーでは、最後に「NEXTのテーマ~僕等がいた~」が歌われたのが象徴的な出来事だった。そして歌の余韻とともにステージを去った。オフコース解散騒動のなかで“僕等の終わりは 僕等が終わる”んだから誰にもそのことは“語れはしないだろう”と明言していたあの歌…。実は今回のツアーで歌い始めたのは初日からではなく、何日目かからだったはずだ。その時、この歌を歌わねばという、大きな意義が小田のなかに生まれたのだろうか。でもそれを察することは出来ても、僕には決して“語れはしない”のだが…。

 終演後、バックステージを訪ねると、小田は僕の顔をみつけるなりこう言った。

「今日、(吉田)拓郎もやってるんだろ? そっち行かなくていいのかよ?」

 私のことはともかく、小田の脳裏に、「今日、拓郎もライヴやってるんだよな。負けられねえな」という、そんな想いがあったのは確かだろう。で、くだんの用件についても訊いてみた。そう。「NEXTのテーマ~僕等がいた~」のことだ。最後になぜ、あの歌なんでしょうかね…。

「な? 意味シンだろ?」。

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 話は変わるが、今日のライヴで「YES‐NO」の時、客席に降りた小田は、家族連れで来てた少年にマイクを差し出したのだけど、するとこの少年が、サビを見事に歌いきったのだった。あのシーンは、すごく印象的だった。一般成人男子にはキツいキーである場合が殆どの小田のレパートリーだが、彼は伸びやかに歌っていた(変声期前だったのだろうか)。
 でも一度、小田に訊ねたことがあった。「客席にマイクを差し出す時は、どういうヒトを選んでいるんでしょうか?」。すると小田はこう言った。「歌ってくれそうな人かどうか、顔をみれば分かるんだよ」。経験というのは、つくづく凄いモノである。顔をみれば分かるのだから。
 家に帰る途中、頭に浮かんだのは新曲「風は止んだ」の冒頭の、生まれてきた「わけ」と生きていく「意味」についての考察だった。本質的かつ哲学的なこの歌には、おそらく続編がありそうだ。というのも、小田は生きていく「意味」が分かったとは歌ってないからだ。少しだけ分かった気がした、としか歌っていないからである。

All Time Best Album
あの日 あの時

あの日 あの時

FHCL-3005 ~ FHCL-3007 ¥3,611+税
【初回仕様限定盤】
・デジパック仕様
・特製ギターピック封入(2種(「あの日あの時ver.」or「君住む街へver.」)から1種ランダム封入)
*本人直筆のタイトル「あの日あの時」or「君住む街へ」がピックに印刷されています。

日本人に長き渡り親しまれ、J-POPシーンのトップとしてそれぞれの時代を駆け抜け数々の記録を打ち立ててきた小田和正。1969年オフコースを結成し、翌70年プロとして音楽活動を開始、「さよなら」「言葉にできない」などのヒット曲を発表、今作にはオフコース時代のセルフカバー作品に手を加え多数収録。89年2月オフコースを解散後、ソロアーティスト活動を再開。1991年270万枚を超える大ヒット作となった「ラブ・ストーリーは突然に」明治安田生命CM曲でのヒット曲「たしかなこと」「今日もどこかで」やSUBARU ブランドCM タイアップソング「wonderful life」や、5月から全国東宝系にてロードショー公開される映画『64-ロクヨン-前編/後編』の主題歌「風は止んだ」も初CD化。まさに43年に渡る小田和正の創作活動の軌跡をたどった、珠玉の50曲を収録。

【DISC 1】

  1. 01. 僕の贈りもの
  2. 02. 眠れぬ夜
  3. 03. 秋の気配
  4. 04. 夏の終り
  5. 05. 愛を止めないで
  6. 06. さよなら
  7. 07. 生まれ来る子供たちのために
  8. 08. Yes-No
  9. 09. 時に愛は
  10. 10. 心はなれて
  11. 11. 言葉にできない
  12. 12. I LOVE YOU
  13. 13. YES-YES-YES
  14. 14. 緑の日々
  15. 15. たそがれ
  16. 16. 君住む街へ

【DISC 2】

  1. 01. 哀しみを、そのまゝ
  2. 02. between the word & the heart-言葉と心-
  3. 03. 恋は大騒ぎ
  4. 04. ラブ・ストーリーは突然に
  5. 05. Oh! Yeah!
  6. 06. そのままの 君が好き
  7. 07. いつか どこかで
  8. 08. 風と君を待つだけ
  9. 09. 風の坂道
  10. 10. それとも二人
  11. 11. my home town
  12. 12. 真夏の恋
  13. 13. 伝えたいことがあるんだ
  14. 14. 緑の街
  15. 15. woh woh
  16. 16. the flag
  17. 17. キラキラ

【DISC 3】

  1. 01. たしかなこと
  2. 02. 大好きな君に
  3. 03. 明日
  4. 04. 風のようにうたが流れていた
  5. 05. ダイジョウブ
  6. 06. こころ
  7. 07. 今日も どこかで
  8. 08. さよならは 言わない
  9. 09. グッバイ
  10. 10. やさしい雨
  11. 11. 東京の空
  12. 12. その日が来るまで
  13. 13. 愛になる
  14. 14. そんなことより 幸せになろう
  15. 15. やさしい夜
  16. 16. wonderful life
  17. 17. 風は止んだ

小田和正スペシャルサイト:http://www.kazumasaoda.com/

オフィシャルHP:https://www.fareastcafe.co.jp/

小田 和正 (おだ かずまさ)

1947年9月20日生 神奈川県横浜市出身

東北大学工学部、早稲田大学理工学部建築科修士課程卒業
1969年オフコース結成。翌70年プロとして音楽活動を開始、「愛を止めないで」「さよなら」「Yes-No」などのヒット曲を発表する。
82年には日本武道館連続10日間公演を実施、それまでの記録を塗り替えた。日本の音楽シーンに様々な記録を残しつつ、89年2月、東京ドーム公演を最後にオフコース解散。その後、プロデュース活動を経てソロとしてアーティスト活動を再開。91年に発表したシングル「ラブ・ストーリーは突然に」は270万枚を超える大ヒット作となった。また映画やテレビの特別番組など映像監督としても活躍し、これまでに「いつか どこかで」(92年)、「緑の街」(98年)の2本の映画監督作品を発表している。2001年からは毎年12月に「クリスマスの約束」と題した音楽特番を放映(TBS)、好評を博している。
2008年4月5日を皮切りにスタートした全国ツア―「今日もどこかで」は、ドーム4公演を含め、全国で53万人を動員する記録的なものとなった。そして、2011年4月20日6年ぶりのオリジナル・アルバム『どーも』発表。業界紙オリコンにてチャート1位を記録。5作連続、通算9作目のアルバム首位を獲得し、自身の持つアルバム最年長1位記録を更新した。同年5月7日長野BIG HATを皮切りに、5大ドーム8公演を含む全国31会場59公演総動員74万人、1年に及ぶ全国ツアーを実施した。
2013年4月24日に約2年5カ月ぶりのニューシングル「その日が来るまで / やさしい風が吹いたら」の両A面シングル発売。さくらの植樹活動を通じて震災を風化させないように取り組む「東北さくらライブプロジェクト」の活動を支援するコンサートは、今後も継続的に実施してゆく。同時期ベストアルバム「自己ベスト」が発売から足掛け11年で500週目のランクイン(=TOP300入り)を果たす史上初の快挙を成し遂げた。
7月2日9枚目のオリジナル・アルバム『小田日和』リリース。同年25会場50公演の37万人動員の全国ツアーを実施。
2016年ベスト・アルバム『あの日あの時』を発売。また、全国ツアー『明治安田生命Presents KAZUMASA ODA TOUR2016「君住む街へ」』を2016年4月30日(土)の静岡エコパアリーナからスタートさせた。

ツアースケジュール

【明治安田生命Presents 「KAZUMASA ODA TOUR2016 君住む街へ」】
4/30(土)・5/01(日)静岡エコパアリーナ
5/07(土)・5/08(日)四日市ドーム
5/14(土)・5/15(日)別府ビーコンプラザ
5/21(土)・5/22(日)函館アリーナ
5/28(土)・5/29(日)富山市総合体育館 第一アリーナ
6/07(火)・6/08(水)神戸・ワールド記念ホール
6/14(火)・6/15(水)さいたまスーパーアリーナ
6/21(火)・6/22(水)朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
6/30(木)・7/01(金)東京体育館
7/06(水)・7/07(木)盛岡市アイスアリーナ
7/13(水)・7/14(木)北海道立総合体育センター 北海きたえーる
7/23(土)・7/24(日)さぬき市野外音楽広場テアトロン
7/30(土)・7/31(日)宮城セキスイハイムスーパーアリーナ
8/05(金)・8/06(土)ビックパレットふくしま
8/11(木・祝)・8/12(金)出雲ドーム
8/17(水)・8/18(木)マリンメッセ福岡
8/24(水)・8/25(木)大阪市中央体育館
8/30(火)・8/31(水)名古屋・日本ガイシホール
9/6(火)・9/7(水)大阪城ホール
9/17(土)・9/18(日)広島グリーンアリーナ
9/27(火)・9/28(水)国立代々木競技場第一体育館
10/09(日)・10/10(月・祝)高知県立県民体育館
10/18(火)・10/19(水)横浜アリーナ
10/29(土)・10/30(日)宜野湾海浜公園屋外劇場
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