Interview

Split end 彼女たちは悩みの時期をくぐり抜けて、自分たちの個性の核心をどう見定めたのか?

Split end 彼女たちは悩みの時期をくぐり抜けて、自分たちの個性の核心をどう見定めたのか?

昨年2月にリリースした初の全国流通盤『夜』で支持を広げた彼女たちが、1年8ヶ月ぶりの新作ミニアルバム『deep love』を完成させた。先のリリースで、自分たちの音楽のリスナーが広がっていることを実感し、また周囲の期待の高まりも感じたが、それと前後して自分たちの音楽性の核を見定める時期に入り込んでいたようだ。その時期は、彼女たちにとってかなり苦しい時期だったが、それをくぐり抜けて完成させた今回の作品は、サウンドの面でも歌詞の面でも世界の広がりを感じさせる仕上がりになっている。
ここでは、前作リリース以降の時間を振り返ってもらいながら、今回の新作の聴きどころやバンドの現在の状態について、メンバー全員に語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 高木博史


今までは流行りみたいなことをどうしても気にしてしまう部分があったんですよね。

前作をリリースしてからの1年8ヶ月間は、どんなふうに過ごした時間だったんですか。

ななみ(Vo,Gt) 納得のいく曲がなかなかできなくて、それでずいぶん時間がかかってしまったなあっていう感じなんですけど。

前作を出した時点では、その後もどんどん作品をリリースしていくつもりだったんですか。

ななみ そうですね。気持ちとしては、もっと出したかったですね。

Split end ななみ エンタメステーションインタビュー

ななみ(Vo,Gt)

今から振り返って、その苦労していた時期はどういう問題を抱えていたんでしょうか。

ななみ 自分自身の問題が大きくて…。周りから言われることばっかりじゃ嫌やなと思って。どれだけ自分の好きなものを作れるか、ということをずっと考えていたので、それが自分としてもけっこう苦しかったですね。

自分が作りたいものと周りが言ってくるものとがあまり重なっていなかったということですか。

ななみ 「周りが言ってくるもの」というか…。

みーちゃん(Ba,Cho) 「世間で求められているものはこういうものや」というイメージとのギャップというか、流行りみたいなこととどう折り合いをつけるかというところで、今まではそれをどうしても気にしてしまう部分があったんですよね。

その状態から脱するのに、ななみさんのなかで吹っ切れるタイミングがあったんですか。

ななみ どのタイミングで、というのははっきりとは言えないんですけど…。前は、自分が本当にやりたい音楽というのがぼんやりしてたんです。自分自身、自分が好きなものをやりたいという意志がはっきりしていなかったのが、すごく嫌で。それをどうにかするために、まず自分を一番に見つめようと思って、毎日毎日、“こういうものをやりたい”ということを自分のなかでしっかりイメージするようになって、それが形になるようになってやっとできたのがこの作品です。

イオナズン(Gt) ななみちゃんは、自分で曲を作ってるし、自分の好きなものがはっきりしてるはずやのに、でもそれを曲にしようとすると、“こうしたいねん”というのがすごくわかりにくい場合があったんですよ。そのモヤッとした感じが大きかったのが、今作ができるまでの1年半くらいの間にどんどん洗練されてきた感じはしますね。私たちのほうで、ななみちゃんの言いたいことがより理解できるようになってきた、というところもあるし。だから多分、「Split end=○○」に近づいていってるとは思うんです。今の時点ではまだ不完全かもしれないし、その「○○」も何かっぽいというようなものではないと思うんですけど、それにしてもそういうものにどんどん近づこうとしてて、だから前作よりもずいぶんやりやすくなったなという感じはありますよ。

Split end イオナズン エンタメステーションインタビュー

イオナズン(Gt)

みーちゃん 個人的には、バンドとして歌を優先させるか、メンバーそれぞれが自分の出したいフレーズとかどうしたらいいのかな?みたいな、そのへんの折り合いのつけ方が前作の頃にはまだ難しいなと思ってたところがあったんです。でも今回の作品を作ってる時に、奈良でブッカーをやってる人から「Split endはななみの声があるから、“これはちょっとアングラやな”と思うようなことをやっても、周りからしたらポップに聞こえる。それは武器やと思うよ」と言われて、それで吹っ切れたというか。やりたいようにやっていいんやなって。それで、個人的にも“こういうふうにやりたいな”というところを前作よりも追求できた感じがあるので、そういう意味でもやりやすくなったかなという感じはありますね。

「生命力」は悩んでた時期を象徴するような曲ですね。

皆さんのそうした気持ちの変化のなかで、今回の制作はどういうふうに進んでいったんですか。

みさきーにょす(Dr,Cho) 決まる前にあった曲と決まってから作った曲と半々、みたいな感じやったん違うかな。

ななみ 1年8ヶ月のうち、前半は本当に全然曲ができなかったんですよ。後半というか、ここ半年くらいでバババッと曲ができたんです。

今年6月の店舗限定のシングルを出す時点では、今回のミニアルバムを出すことは決めていたんですか。

ななみ 決めてました。

みーちゃん シングルとアルバムの曲作りを並行して、というか一緒にやって、その曲をどちらに入れるか、みたいな感じやったんです。

その曲たちが半年前くらいに一気にできた、ということなんだと思いますが、そこの時点で一気に曲ができたのはどうしてなんでしょうね。

ななみ だから、そこまでずっと悩んでたんです。自分がどうしたいのか、っていうのを。逆に言うと、自分の好きなものがより自分でわかるようになってきたのが、その時期なんです。今年の初めくらいですね。

その悩みの時期を経て、出来上がってきた曲で一番最初にメンバーに聴かせたのは、どの曲ですか。

ななみ 「生命力」かな?

みーちゃん そうそう。

イオナズン 「生命力」は、1年以上ツンツンしては戻して、みたいな…。

ななみ 練り練りしたね。

イオナズン その結果、元に戻したっていう(笑)。だから、「生命力」は悩んでた時期を象徴するような曲ですね。あの曲は暗めというか、オルタナ感の強い曲かなと思うんですけど、それをすごくポップにしてみたり、「こうしたほうが、聴きやすいんじゃないか」とか、周りの意見にもすごく左右されて、いじり回したんですよね。あの時期、いろんな人から「もっとこうしたほうがいい」みたいな話をされてて…。

期待度が高まってたということでしょうね。

イオナズン そうですね。次のCDの話も出てたと思うし。

ななみ 人に言われなくても、「もっとこうしたほうがいい」みたいな気持ちは私の中で高まってたし(笑)。こうしたほうがいいと言うか、こうしてみたい、1回やってみたい、っていう。“やらないで、そのまま進むのは嫌やから”と思って、いろいろ試して、試して、最終的には最初にやってた感じに戻ったんですけど、でも私のなかでは元に戻ったと言うよりも、正解だとその時に思えたということなんですよね。

Split end エンタメステーションインタビュー

ちなみに、いろいろ試している過程で、歌詞を書き直したり、書き足したりするということはありましたか。

みーちゃん 最後のパートは足したんですよ。

ななみ そうやね。今、思い出した(笑)。

イオナズン そこは、練り練りしたおかげというか、やってよかったところですね。

イオナズンさんは、今回の制作を振り返って印象に残っている曲や場面というと、どれになりますか。やはり「生命力」ですか。

イオナズン 最後の「フェイクワンダーランド」は、シングルのバージョンは普段ライブでやってる形なんですけど、こっちはアルバム・バージョンということでアウトロを伸ばしてインスト部分が1分弱くらいあって、それをソロでつなぐということを初めてやったんですけど、私はマジで死にそうでした(笑)。

(笑)、ギタリストとしての自分の引き出しを全部開けた感じですか。

イオナズン 全部開けたし、いろんなところからかき集めたし。それをやって気づいたこともいろいろあって、だから力になったなという実感もありますね。それから「ぼくたちの戦争」は、自分で作ったリフが難しくて、それも死にそうになりましたけど(笑)。

「ぼくたちの戦争」はイントロから歌に入る流れが印象的ですが、そのイントロがまた間奏で出てきますよね。これは、間奏を先に作って、それをイントロに持ってきたんですか。それとも、イントロから作っていったんですか。

ななみ イントロから作っていきました。

みーちゃん ななみとにょすが二人でスタジオを入って作ってきたものを私たちに提案されたんですけど、その段階でイントロまでは出来てて…。

ななみ それで、私の歌が入るところからみんなで作り始めたんです。

ななみさんとみさきーにょすさんが二人でスタジオに入るというのは、よくあることなんですか。

みさきーにょす それを作った時が初めてで、2時間くらいだったと思うんですけど、それでパッと出来ましたね。

Split end みさきーにょす エンタメステーションインタビュー

みさきーにょす(Dr,Cho)

その時点で、3連系のフレーズから8ビートに展開する流れもななみさんから指定されたんですか。

みさきーにょす そうやったと思います。「8分の6みたいな感じで、いいドラムない?」と言われて、最初は「……」となったんですけど(笑)。

ななみ この曲は、8分の6拍子から8ビートに行く、という展開が一番のポイントやったんです。

みさきーにょすさんは、今回の制作を振り返って印象に残っているのは?

みさきーにょす 「deep love」はスッと入ってきた曲調だったので、わりとすぐにドラムのアイデアは出てきたんですけど、「ウェディングドレス」は苦しんだかなあ。前作の「夜と朝」という曲とイメージがカブるから、差別化するにはどういうアプローチがいいんやろ?と思ったところで、自分の引き出しの少なさに一度絶望して(笑)。そこから、めっちゃいろんな曲を聴いて、一番頭を使った曲ですね。

僕からすると、「deep love」はSplit endとしては新しいタイプの曲という印象だったんですが、みさきーにょすさんは馴染みやすかったんですね。

みーちゃん 「deep love」はみんな、わりとスッと馴染めたと思いますよ。

ななみ 私が聴かせた時に、わりと出来上がってたということもあると思いますね。

イオナズンさんが言ってくれたように、「ななみさんのやりたいことがわかりやすい形になっていた」ということですね。

ななみ そうだと思います。

みさきーにょす 3曲目、4曲目みたいな優しいサウンドのほうが“何したら、ええんやろ?”と思うんです。

みーちゃん 4曲目の「ウェディングドレス」は私もすごい悩んで、Apple Musicでいろんな曲を聴いて、にょすとも何度も話して、それでやっとやれました。

ななみ 3曲目と4曲目はどっちも、最初に弾き語りで全部作ってしまった曲なんですよ。「deep love」はバンドの曲として作ったんですけど。

そういう意味では、その2曲は成り立ちが歌モノなんですね。

ななみ そういうことですね。

Split end みーちゃん エンタメステーションインタビュー

みーちゃん(Ba,Cho)

みーちゃんは、今回の制作を振り返ってみていかがですか。

みーちゃん さっき言ってた歌モノとサウンド志向とどっちに振ろうか、みたいなことを考えてた時期から吹っ切れて、1曲目と2曲目はけっこうサウンド重視で作りました。3曲目と4曲目は歌メインで、ゆったり聴くタイプの曲やからあまり難しく考えずにやりましたけど。一番振り切れてるのは、1曲目の「deep love」ですね。

「deep love」はベースも印象的なフレーズを随所に聴かせていますが、そのあたりが今までだったらもっと控え目な感じになっていたかもしれない、ということですか。

みーちゃん そうですね。

ななみさんは今回の制作を振り返っていかがですか。

ななみ 難しかったのはやっぱり「生命力」で、私自身が一番迷ってた曲ですからね。でも、それも含めて、今回はどの曲も本当に納得度が高いです。

最近はすごくポジティブになったんです。その変化が歌詞に表れてるんだと思います。

このアルバムを聴き通してもう一つ印象的だったのは、『夜』の歌詞世界よりも明るくなってきたなということです。

ななみ それは、自分でも感じます。

ということは、そういうふうにしようと思って書いた、というわけではないんですね。

ななみ 前作の時は歌詞を書いている時期はわりと苦しい時期だったんですけど、その頃に比べると最近はすごくポジティブになったんです。その変化が歌詞に表れてるんだと思います。

ポジティブになったのは、何か理由があるんでしょうか。

ななみ う〜ん…、あると思う?

イオナズン 単純に、“幸せになりたい”と思うようになったということのような気がしますね。はたから見てると。『夜』を作ってた時は、打ち上げとかでベロベロになってすぐ泣いてたんですけど(笑)、その最後には「私は幸せになったら、あかんと思う」みたいな話を延々としてたことがあって…。

ななみ 全然、憶えてないわ(笑)。

イオナズン (笑)。それがすごく印象に残ってるんです。でも、そういうことを言わなくなった頃から、曲ができるようになってきた気がしますね。

みーちゃん 元々が、失恋したら曲ができるというタイプやったから…。

ななみ そうやったね。

みーちゃん だから、私はななみが失恋するたびにほくそ笑んでたんですけど(笑)、でもバンドをずっとやっていくには、それじゃやっていけないじゃないですか。曲のストックができないから。そういう話をして、それで自分のメンタリティには関係なく曲を作ったり、歌詞を書いたりするようになったから、歌詞として切り取る部分が今までは悲しい部分だけだったのが、そうじゃない日常の場面からも歌詞を生み出すようになったということはあると思います。

ななみ その通りです(笑)。それで、曲を作る頻度が上がりました。というか、無理矢理、増やしました。それで、自分が生活していることの何もかもを曲作りにつなげるようになりましたね。曲数を増やしたいという気持ちが、私の中ですごく大きかったから。この1年8ヶ月の間の前半部分は、全然曲ができなくて、それでこうやってリリースが開いてしまったのが、自分ですごく嫌やったんです。もっとたくさん曲を作りたいと本当にすごく思うようになって、どんな小さなことでもすぐメモするようになったし、すぐメロディも録るようになったし。

そういう努力と幸せになりたいと思うようになったのと、その結果ポジティブになったんでしょうね。

ななみ ずっと自分らしさという話をしてきましたけど、自分がどういうものを好きか、自分がどうなりたいか、みたいなことをちゃんと考え始めたのが全部のきっかけやと思います。

Split end エンタメステーションインタビュー

さて、この新作が出てから1年後、来年の秋にはどうなっていたいと思いますか。

イオナズン ざっくり言うと、売れたいですけど…(笑)。

ななみ (笑)、ざっくりやなあ。

イオナズン もっとライブに来てほしいんですね。音源を制作して出すという過程とライブというのは、私のなかでは別物で、音源を出すことで、それをきっかけにウチらのもう一つの面、ライブというところでも気にかけて、見てくれたらいいなと思うんです。多分、CDで聴くイメージとライブの印象は全然違うと思うんですよね。ウチらは音源を再現するというライブじゃないと思うんです。そこを感じてもらえたら、ウチらの音楽のもっと深いところまで考えてもらえるんじゃないかなという気がします。

みーちゃん 私もざっくり、売れたいと思ってますし(笑)、ライブハウスのキャパも上げたいと思ってますけど、ただその前にというか、これまでワンマンをやらせてもらったライブハウスをまだ売り切ったことがないので、そこをしっかり売り切って、ちゃんと段階を踏んで上がっていきたいなと思いますね。

みさきーにょす 全く同意見なんですけど、単純にライブのキャパを上げるというのではなくて、ここ数年の間にお世話になったみなさんにちゃんとお礼をして上がっていきたいですね。

ななみ まず、来年の秋までには新しいCDを絶対出したいです。それで、今作以上にもっとたくさんに人に聴いてもらえるようにしたいし、もちろんライブの動員も増やしたいですね。

では、来月からのツアーが新作のきっかけになるようなツアーになることを期待しています。ありがとうございました。

その他のSplit endの作品はこちらへ。

ライブ情報

Split end 3 rd mini album release tour『愛を纏え、愛を放て』

11月5日(火) 兵庫・神戸太陽と虎
11月16日(土) 埼玉・越谷EASYGOINGS
11月17日(日) 神奈川・横浜F.A.D
11月26日(火) 愛知・名古屋池下UPSET
12月8日(日) 福島・郡山PEAKACTION
12月9日(月) 宮城・仙台FLYINGSON
12月14日(土) 広島・福山Cable

2020年
1月13日(月) 新潟・新潟CLUB RIVERST
2月7日(金) 東京・渋谷TSUTAYA O-Crest
2月15日(土) 大阪・心斎橋Music Club JANUS

Split end

ななみ(Vo,Gt)、みーちゃん(Ba,Cho)、みさきーにょす(Dr,Cho)、イオナズン(Gt)。2009年4月、高校の同級生で4ピースのガールズ・コピー・バンド「Split end」を結成。13年12月、1stデモ「キサンタンガム」をリリース。14年10月1 stミニアルバム『雨模様』をリリース。17年1月、現体制となり、同年夏には東京、大阪のライブハウス・サーキットで大いに話題を集める。18年2月、初の全国流通盤となる2nd ミニアルバム『夜』をリリース。同年5月、大阪・福島2nd LINEにて初のワンマン・ライブ開催。19年6月、店舗限定シングル「フェイクワンダーランド」リリース。

オフィシャルサイト
http://www.splitendofficial.com