原田泰造xコトブキツカサの<試写室噺(ばなし)>  vol. 4

Interview

原田泰造とコトブキツカサが響いた「言葉」とは?映画『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』について語る

原田泰造とコトブキツカサが響いた「言葉」とは?映画『エブリバディ・ウォンツ・サム!!』について語る

野球推薦で大学に入学した新入生の、新学期が始まるまでの3日間を描いた青春群像劇『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』。舞台は1980年のアメリカ。ジェイクは野球推薦で大学の寮に入り、そこで様々な先輩たちと出会う。女のコに声をかけたり、パーティでバカ騒ぎしたり……何気ない日々のエピソードが『6才のボクが、大人になるまで。』の名匠リチャード・リンクレイター監督によって瑞々しく描かれている。 お互いに「青春時代は暗かった」と述懐する原田泰造とコトブキツカサが、映画の内容だけでなく、若き日の思い出や心に響いた“言葉”までもを濃密に語り合います!


自分に向けた言葉はちゃんと受け取らなきゃいけないんだなって

原田 この映画、2回観たんだよね。まず1回目は群像劇として面白く観たんだけど、物語に謎解きがあるような映画じゃないから淡々と見終わってしまって。特に僕はこの映画みたいな明るい青春を送ってないから、置いていかれた感が強くて。でも、もう1回観たら、それぞれのキャラクターやセリフが深く響いてきて、青春ってこういうことだよなっていう要素がいっぱい詰まってる映画だと思ったんだよね。

コトブキ 1980年のアメリカが舞台ですから、別世界の話だと思うんですよね。でも観ていると「あるある」って共感できることも多い。

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原田 インベーダーゲームの“ナゴヤ撃ち”が出てきたりとかね。あと、ビリヤードで補助棒使うのはカッコよくないとか(笑)。あと、これは文化の違いもあると思うんだけど、アメリカの学生って日本と違って上級生も下級生もあんまり区別がないんだよね。

コトブキ 新入生への洗礼みたいなシーンは出てきますけど、キッチリした上下関係はないですよね。これ、日本だったら、もっと世代ごとに分かれる話になるじゃないですか。先輩VS後輩とか、1年生同士の友情とか。でも、この映画の場合は、泰造さんも言ってたように群像劇で、全員が一緒に住んでて、みんなチームメイトっていう感覚。そのぶん、主人公で新入生のジェイクはどの先輩の言うことを信じたらいいかもわからないんですけど(笑)。

原田 僕は大学に行ってないから、新入生ってこういう感じなのかなって想像するしかない部分もあるんだよね。

コトブキ 僕は大学には行ってましたけど、学校での友達がひとりもいなかったので、こういう世界はわからないんですよね(笑)。幼稚舎からある大学だったので、僕なんて入学初日から「誰あいつ?」みたいな扱いでしたから。ディスコのシーンとかも、僕はナンパしないで“ウォールフラワー”になって孤独を感じてるほうでしたから、あんまり共感はできなかったですね。

原田 嫌われ者のナイルズが次の店に連れて行ってもらえなくて「俺、腹筋して寝るから!」みたいなこと言って帰っていくシーン、あの気持ちもよくわかる(笑)

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コトブキ この映画の若者たちは、酒飲んで、ナンパして、大騒ぎしてるけど、それで不安をごまかしてるようなところがありますよね。あえて躁な状態に持っていってるというか。やっぱり野球で大学に入っても、レギュラーになれるかもわからないわけだし、その中でもプロになれるのなんてごく一部。それこそ力量のあるヤツほど、自分の今のレベルとかわかっちゃうじゃないですか。ライバルへの焦りもあるし。

原田 芸人の世界だって同じだよね。僕たちがまだ小さなイベントしか仕事がなかった頃に同年代の芸人さんが『笑っていいとも!』に出たって聞いて、もう先に行かれたっていう焦りがすごかったのと似ているかもしれない。今はちょっとの差でも、1年後にはもっと開くんじゃないかっていう不安がつきまとうんだよね。

コトブキ そういうときに先輩が言ってくれたひと言が支えになることってあるじゃないですか。この映画でも、そうした深いセリフがいくつも出てきて。

原田 絶妙だよね。「死ぬときに後悔するのはやったことじゃない やり残したことだ」って、ナンパばっかりしてる先輩のフィネガンがつぶやくんだけど、それがすごく刺さる。

コトブキ それをお前が言うのかっていう部分もあるんですけど(笑)。でもフィネガンは言葉を持ってるんですよね。適当なことばっかり言ってるんだけど、芯を食ってる。

原田 デイルも「スター選手だったのは過去の話だ。ここでは今の自分がすべて」とか、良いことを言うんだよね。こういう、みんなどこかで持ってるような感覚を、するどいセリフでさりげなくポンポン入れてくるから、面白い。ただ単に騒いでるだけの映画じゃないんだよね。

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コトブキ 実際にありますよね。今思えば、「あいつ深いこと言ってたな」っていうことが。

原田 よく“言霊”って言うじゃない。これは宜保愛子さんに教えていただいたんだけど、自分で吐く言霊もあるけど、誰かから受け取る言霊もあるんだって。ご先祖様が「いいか、この言葉はよく覚えとけ」っていう言葉を誰かに託したら、それが巡り巡って家族とか、知らないおばあちゃんとか、もっと言えば、嫌いな友達から発せられるかもしれないってことなんだそう。

コトブキ そこで自分がちゃんとその言霊を受け取れるかどうかってことですよね。

原田 グデングデンに酔った先輩が言ったひと言でも、ジェイクはちゃんと受け取らないと先に進めないのかもしれないよね。誰が良いことを言うかはわからないけど、自分に向けた言葉はちゃんと受け取らなきゃいけないんだなって思った。

コトブキ 今、泰造さんに言われて思い出したのが、20年くらい前に番組の打ち上げか何かでカラオケに行って、女のコとかもいて大騒ぎしてるなか、僕は隅のほうでADの男の子と真面目な話してたんですよ。そのとき酔っ払ったディレクターさんが僕たちに向かって「おーい、やめろー! 解決しないからー」って言ったんですよ。僕たちの話なんて聞いてなかったのに。「そうか、たしかに何も解決しないな」って思って、そのひと言が刺さったんですよ。

原田 そのディレクターさんもそんなつもりで言ったんじゃないかもしれないけど、そのときの自分に刺さって、ずっと覚えてるんだね。

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コトブキ 泰造さんの言葉でも覚えてるのがありますよ。僕と泰造さんと友達の3人でサウナに行ったときなんですけど、その頃、泰造さんはレギュラーがいっぱいあって、僕らはまったく仕事がなかったんです。それで友達が「泰造さん、映画でも舞台でもいいんで、なんかやるときに呼んでくださいよ」って言ったんですよ。そしたら泰造さんが本当に優しい、仏様みたいな顔しながら「それは無理だよ」って言って(笑)。要は「俺が引っ張るんじゃないんだよ、お前が来なきゃいけないんだよ」っていう言い方をしたんですよ。その頃は僕も人生の底の時期で、いろんなスタッフさんたちに「仕事くださいよ」ってずーっと言ってたんですが、それからあまり言わなくなりましたね。泰造さん覚えてます?

原田 ……覚えてはいる。それは今もだけど、先輩が後輩を誘って番組に出すとか苦手なんだよね。やっぱり実力の世界だから、そのときはいいけど、それだけだと続かないから意味がないっていうことなんだよね。

コトブキ 無理に引っ張って光を浴びたとしても、そいつに実力がなかったらすぐ終わっちゃう。だったら実力をつけて上がったほうがいいよってことですよね。

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原田 この映画の中に、ピッチャーのナイルズがずっと自分のことを大きく言ってて、でも練習で先輩から打たれるシーンがあるじゃない? そのあと、先輩に近づいて、ちょっとお尻叩きながら「負けたよ」って言うところが大好きなんだけど、彼は彼で相当なプレッシャーで、ここで結果を残そうって思ってるから、ただのバッティング練習なのに急に本気出しちゃうっていう、あの気持ちもわかるんだよね。

コトブキ 身につまされるというか、あるあるですよね。でもこういう経験を積んで、ナイルズとかジェイクがこのあとどう成長していくのか気になりますけど、この映画はそこまで描かないんですよね。物語のプロローグだけで1本作っちゃったような作品ですから。リチャード・リンクレイター監督は『6才のボクが、大人になるまで。』で12年間撮り続けたり、『ビフォア』シリーズで10年ごとに同じカップルを撮ったりとか、すごく長い期間をかけたりするのに、今作はたったの3日間しか描かないっていうのは潔いですよね。

原田 それがベストだと思ったんだろうね。でも、こういう映画って、同世代というか、今の現役の大学生とかが観たらどう感じるのかな。

コトブキ 現役の若者だったら気づかない部分も多いかもしれないですね。僕が非常勤講師をしている専門学校の授業で、学生に『スタンド・バイ・ミー』を観せたら、何もイベントが起こらないからイマイチだったっていう意見があったんですよ。最初に泰造さんがおっしゃったように、この映画も淡々とした印象で終わる可能性はありますね。

原田 でも本当にいい言葉が詰まってるし、観てるといろんな思い出が甦ってくるから、観終わったあと誰かと喋りたくなるような作品だよね。

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映画『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』

2016年11月5日公開

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野球推薦で入学することになった新入生のジェイクは期待と不安を抱き、大人への一歩を不器用に踏み出そうとしていた。気持ちもあらたに野球部入寮の日を迎えるが、そこには野球エリートとは思えない風変わりなヤツらが揃っていた。マリファナ愛好者で謎めいているウィロビー、ノーラン・ライアンの再来を自認する妄想癖のナイルズ、どうしようもないギャンブル狂のネズビット、田舎者っぽいあだ名を付けられたビリー、カリスマ性はあるがどこか陰りのある早口のフィネガンなど個性的なチームメイトたちと、ジェイクは野球はもちろん、バカ騒ぎをしながら、今までに感じたことのない自由と希望を抱いていく。それは決して長くは続かないけど、人生最高の時の幕開けだった。

【監督・脚本】リチャード・リンクレイター
【キャスト】 ブレイク・ジェナー ゾーイ・ドゥイッチ タイラー・ホークリン グレン・パウエル
ワイアット・ラッセル オースティン・アメリオ ジャスティン・ストリート

【配給】ファントム・フィルム

オフィシャルサイトhttp://everybodywantssome.jp

©2015 PARAMOUNT PICTURES.

原田泰造xコトブキツカサの<試写室噺(ばなし)>

原田泰造

1970年生まれ。“ネプチューン”のメンバーとして、バラエティ番組などで活躍。俳優としてもドラマ、映画、舞台などで高い評価を得ている。出演作の映画『ボクの妻と結婚してください』が2016年11月5日より公開予定。

コトブキツカサ

1973年生まれ。日本工学院専門学校放送・映画科非常勤講師。映画パーソナリティとしても注目を集め、コメンテーターやイベントMCなどで活躍。雑誌連載やテレビレギュラーも多数。年間鑑賞本数は500本を超える。

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