モリコメンド 一本釣り  vol. 138

Column

レルエ “生楽器×エレクトロ”というベーシックなスタイルを力強く前進させた初のフルアルバム

レルエ “生楽器×エレクトロ”というベーシックなスタイルを力強く前進させた初のフルアルバム

ギターロックとクラブミュージックを融合させたバンドが(主に海外のシーンで)続々と登場したのは、00年代前半だったと思う。ロック特有の高揚感や生々しさ、そして、エレクトロ、テクノ、ハウスなどダンスミュージックとしての機能を高めることで、バンドという表現の可能性は飛躍的に向上。たとえば今年のサマーソニックで話題を集めたTHE 1975やThe Chainsmokersも、その潮流にあるアーティストと言えるだろう。(“The Chainsmokersはバンドではない”というツッコミもあるだろうが、生ドラムを主体としたリズム・アレンジ、エモーショナルなボーカルを含め、彼らのライブの雰囲気は完全にロックバンドだった)

ギターロック×クラブミュージックの流れはもちろん、日本のシーンにも大きな影響を与えてきた。このスタイルをいち早く取り入れ、もっとも成功したバンドはおそらくサカナクション。また、ここ数年のONE OK ROCKも(アメリカのプロデューサー、トラックメイカーと手を組み)ダンスミュージックの要素を貪欲に吸収し続けている。そして、今回紹介するレルエもまた、この潮流を汲みつつ、さらなる進化を遂げようとしているバンドの一つだ。

櫻井健太郎(Vo&Gt)、エンドウリョウ(Ba)、saya(Violon&Syn&Cho)によるレルエは、ギターロック系の前身バンドを経て、2013年に結成された。ギター&ボーカル、ベース、バイオリンというかなり変則的な編成だが、エレクトロサウンドを取り込むことで、その音楽性は大きく変化。Two Door Cinema Club、THE ROYAL CONCEPT、Klaxonsといった00年代のバンドからの影響、そして、10年代以降に生まれたダンスミュージックにもアプローチしながら、独自のスタイルを生み出すべく、果敢なトライ&エラーを繰り返したという。突破口になったのが、2017年末に発表された「夜はモーション」。派手なEDMサウンドとエッジの効いたギター、叙情豊かなバイオリンの音色と凛としたボーカルがひとつになったこの曲は、早耳の音楽ファンにキャッチされ、レルエの知名度は一気に上がった。さらに特筆すべてきは、櫻井のメロディセンスだ。一瞬で耳に残るキャッチーさ、そしてリピートするたびに深みを増していく中毒性を兼ね備えた櫻井のメロディは、まちがいなく、このバンドの核になっている。

レルエが飛躍するきっかけとなった「夜はモーション」の手ごたえは、9月18日にリリースされた初のフルアルバム『Alice』によって、さらなる高みへと達している。“生楽器×エレクトロ”というベーシックなスタイルを力強く前進させた本作には、「夜はモーション」、デジタルシングル「時鳴りの街」など11曲を収録。<不思議な異世界に引き込んで、いろんな音楽と出会う>というイメージで名付けられたというタイトル通り、このバンドの音楽世界をたっぷり堪能できる作品に仕上がっている。

まず印象に残るには、アルバム前半の「時鳴りの街」と「火花」。J-POP的な手触りーーつまり、耳なじみがよく、誰もが楽しめる間口の広さがある——を持った「時鳴りの街」。そして、心地よく上昇していくようなトラック、リズムと絡み合いながら高揚感を増していくメロディがひとつになった「火花」は、レルエの優れたポップ感覚を端的に示している。

その他、鋭利なギターリフ、滑らかなバイオリンを軸にしたアッパーチューン「UP TO DATE」、スペイシーな音像からはじまり、軽やかなギターカッティングとともに疾走していく「あの子はきっとインベーダー」、ソウルミュージック、R&Bにも通じるグルーヴを軸にした「ホリデーバード」など、音楽的意匠に富んだ楽曲もたっぷり。3人の音楽性の広さを提示していることも、本作の意義だろう。また、サウンドやメロディのイメージを際立たせる、映像喚起力に優れた(聴いていると、いろいろな風景が頭の中に浮かぶ)歌詞にも注目してほしい。

もう一つ、アルバムの最後を飾る「プレイアデス」も紹介しておきたい。本作のなかでもっとも新しい曲だという「プレイデアス」は、壮大なスケール感を描き出すミディアムナンバー。エモーショナルに展開するメロディ、エキゾチックな大陸感をたたえたバイオリンなど、アリーナクラスの会場が似合いそうな“大きさ”を持ったこの曲は、レルエのポテンシャルの高さを改めて示していると思う。

11月には東京、大阪でワンマンツアー「LELLE live tour 2019“Alice”」を開催。際立ったポップネスとカラフルな表現力を併せ持った3人の音楽は、ここからさらに広いフィールドで鳴らされるはずだ。(個人的にはぜひ、コーチェラなどの海外のフェスに出演してほしい!)

文 / 森朋之

その他のレルエの作品はこちらへ。

オフィシャルサイト
https://www.lellelelle.com

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