Interview

要注目3ピースバンド、Saucy Dog。ライヴを積み重ねた経験を成長という音楽に昇華させた『ブルーピリオド』

要注目3ピースバンド、Saucy Dog。ライヴを積み重ねた経験を成長という音楽に昇華させた『ブルーピリオド』

2019年4月に大阪城野外音楽堂、日比谷野外音楽堂でワンマンライヴを開催。7月には大阪BIGCAT、名古屋ダイアモンドホール、Zepp DiverCity(TOKYO)で2マンツアーを行うなど、ライヴの規模を拡大し続けているSaucy Dog。前作『サラダデイズ』(2018年5月発表)以来、約1年半ぶりとなる新作ミニアルバム『ブルーピリオド』には、3人の音楽的成長が感じられると同時に、今、現在のリアルな思いが込められた作品となった。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 関信行


曲を作り始めた頃の気持ちを忘れないで、後世に残るような作品を作りたい

前作『サラダデイズ』以降も精力的なライヴ活動が続いていますね。

せと ゆいか 『サラダデイズ』のレコーディングが終わってすぐにライヴを再開して、初めてのワンマンツアー〈ワンダフルツアー2018〉があって、その後、2マンツアー〈One-Step Tour〉もあって。去年1年で全国を4周くらいしたことになるんですよ。本数で言うと、ツアー以外のライヴを含めて108本になりますね。

すごい。2017年はもっと多かったですよね?

石原慎也 そうですね。

せと ライヴが修行というか(笑)、気がついたらそうなっていたというか。

石原 僕たちがライヴが好きというのもありますね。もちろん続いたら身体的にはしんどいけど、疲れるのは移動だけで、ライヴ自体はいつも楽しいので。

秋澤和貴 大変なときもありますけどね。ただ、僕は免許を持っていなくて運転できないので、移動の大変さは僕よりもみんなのほうが……(笑)。

ツアー中も次の作品のことは考えているんですか?

石原 はい。ライヴのことと、次の作品のことはつねに考えているので。

Saucy Dog エンタメステーションインタビュー

新作『ブルーピリオド』にも、皆さんのこの1年半の成長が反映されていると思います。前作『サラダデイズ』は青春を想起させる曲の印象が強かったように思っていて、今回は青春時代の終わりというか、バンドとしての深みが感じられました。

石原 そういう解釈も間違いじゃないと思います。曲調やアレンジに関しては、これまで以上に考えて、練りながら作っていきました。タイトルの“ブルーピリオド”というのは、ピカソの“青の時代”(画家のパブロ・ピカソの青春期)からきているんです。処女作というか、曲を作り始めた頃の気持ちを忘れないで、後世に残るような作品を作りたいっていう気持ちで付けました。あと、単純に“ブルーピリオド”っていう単語の響きが好きっていうのもありました。

作品を重ねることで、音楽的な変化もありますか?

石原 引き出しが増えた感じはありますね。たとえば1曲目の「雀ノ欠伸」にはいろんな要素を詰め込んでいるんですけど、自然とああいう形になっていったので。

Saucy Dog エンタメステーションインタビュー

石原慎也

「雀ノ欠伸」、曲の途中でテンポも変わっていますよね?

石原 いえ、実はテンポ自体は変わってなくて、2番のAメロが6拍子になっているんですよ。

せと BPMは同じで、8分の8拍子が、8分の6拍子になっています。

石原 “ありのまま、自分らしくいたらいい”というテーマの歌詞なので、アレンジでも思いついたことをいろいろやってみようと思いました。

せと ほかの曲もそれぞれにいろんな色があって。たとえば「月に住む君」は、歌詞の雰囲気が今までとは違っていて、抽象的なんですよね。

石原 この曲は幻影だったり、夢の中にいるような感じを書きたかったので。ずっとリアルなことを書いてきたんですけど、「月に住む君」は、夢と現実を行ったり来たりしているんですよね。聴いてくれた人が何とでも捉えられるような歌詞にしたいというのもあって。

そういう歌詞を書こうと思ったのは、どうしてなんですか?

石原 もとのテーマとしては、自分には兄貴がいたんですけど、僕が生まれる前に死んじゃったんです。だから、僕は夢の中でしか会ったことがない。そのイメージから曲の構想を練って、恋愛の歌にも置き換えられるように書いていきました。

Saucy Dog エンタメステーションインタビュー

秋澤和貴

なるほど。秋澤さんにとって、“今までと違う表現ができた”と思う曲はどれですか?

秋澤 単純に好きな曲なんですけど、6曲目の「Tough」のベースは、自分でもめっちゃいいなと思うし、いい演奏ができたなって思います。

石原 Bメロのベースのリフ、カッコいいよね?

秋澤 ライヴでも映えるだろうし、早くやりたいですね。

すごく生々しいサウンドですよね。

石原 ほかの曲もそうなんですけど、レコーディングは、いつも3人一緒に演奏をしているんですよ。だから、その場の空気感も含めて、温かい音になっているんだと思います。

ライヴと同じスタイルで録っているんですね。

石原 そうですね。僕は、ライヴでできないことはやらないので。

せと ほぼ、それしかやったことがないですね。

Saucy Dog エンタメステーションインタビュー

次は僕らがみんなに還元したいという気持ち

先行配信された「ゴーストバスター」についても聞かせてください。“周囲の声によって、自分の夢や希望が殺されそうになる”ということが描かれていますが、こういう体験は実際にあったんですか?

石原 ありますね。音楽やバンドを続けていると、「それで成功するなんて無理だよ」みたいなことを言われてバカにされることも多かったので。まだ名前が知られていないときは家族にも「小指の先くらいの可能性しかないけど、それでもいいのか?」と言われたりもしましたから。けど、当時、仲の良かったヤツが「言いたいヤツらには言わせておけ」と言ってくれて、それがきっかけで「そうだよな。自分の人生は自分で作っていくしかないんだよな」と思えるようになって。その体験を曲にしたかったし、次は僕らがみんなに還元したいという気持ちもありました。

〈今度は僕がお前を救ってあげるよ〉という強い歌詞もあって。Saucy Dogが多くのリスナーに支持されているからこそ、このフレーズに説得力を持たせられるんでしょうね。

石原 そうですね。今はツアーをやってもソールドアウトすることが多いし、本当にありがたいことだなって思います。そうじゃない時期もありましたからね。片手の指で収まるくらいの人数しかフロアにお客さんがいなかったり。

せと そうなると、とりあえずお客さんを呼ばないといけなくて、友達に連絡してたよね? 今、考えると申し訳なかったですね。たいして興味もないのにライヴに来てもらって、お金まで払わせて(苦笑)。

石原 ホントだよね。

Saucy Dog エンタメステーションインタビュー

せと ゆいか

せとさんも“バンドを続けて大丈夫なの?”みたいなことを言われた経験が?

せと もちろんありました。両親も会社員だったし、私も“就職するのが当たり前”みたいな考えを持ってはいたので。でも、バンドを始めて大学を辞めることに決めて。親にも「いつまでそんなことして遊んでるの?」って言われてましたね。その頃は「もう、うるさいな」という感じだったんですけど(苦笑)。それまで親に自分がどういう音楽をやっているかとかライヴにも誘ったことがなかったんですけど、(代表曲)「いつか」を出して、オーディションでグランプリを獲ったときに、初めて親に自分たちのMVを観てもらって、「こういうバンドをやっていて、今度事務所に入ることになりました」と話したらわかってくれて、今ではすごく応援してくれています。だから、“安心させたい”という気持ちもありますね。

石原 うん、わかる。けど僕、つい最近もおばあちゃんから「音楽は趣味にして、帰ってきたら?」って言われた(笑)。

せと 私もおばあちゃんからはそう言われてるな(笑)。

Saucy Dog エンタメステーションインタビュー

秋澤さんはどうですか?

秋澤 僕も同じような感じですね。バイト先で「おまえみたいなヤツ、売れるわけがない」みたいなことを言われたり。

うわ、ケンカになりそうですね……。

秋澤 ケンカしましたよ(笑)。今は仲がいいですけどね。本気でバンドをやってるってわかってくれているので。さっきも話に出ていましたけど、やっぱり、お客さんが少なかった頃はきつかったですね。床を見ながらライヴをやってる感じというか……。

石原 お客さんがいないから床が丸見えなんだよね(苦笑)。

せと ライヴハウスのスタッフの人たちと対バンの人たちが見守ってくれて。

石原 でも、スタッフの方に「めっちゃ良かった」と言ってもらったり、対バンの人たちが盛り上がって手を挙げてくれるだけで、なんだか「大丈夫や」と思えたし、頑張れる気がしたんですよね。そうやって僕らが実際、音楽に救われることも多かったから、次は自分たちが返す番だなと。

Saucy Dog エンタメステーションインタビュー

そのときに「いいな」と思うことをやっていくと、Saucy Dogの音になる

なるほど。Saucy Dogの音楽性、このバンドでやりたいことも徐々に変化してきているんですか?

石原 やりたいことというより、できることをやっている感じですね。3人で曲を作って「ちょっと違うな」とはまったく思っていないし、「本当はこういう音楽をやりたい」というのも現状ないので。

せと 自然にできてるんですよ。そのときに「いいな」と思うことをやっていくと、Saucy Dogの音になるので。もちろん“もっと良くするためには?”ということも考えながらやっているし。

Saucy Dog エンタメステーションインタビュー

音楽シーンの流れも意識していない?

せと どうなんだろう?……「面白い」「すごい」と思うことはあるけど、それを自分たちのバンドに取り入れることはあまりないかもしれない。ただ、3人が「これをやってみよう」ってなったら、抵抗なくやると思います。

石原 自然とインプットもしていますからね。それこそ前作以降の1年半も、いろんなものを吸収してきたので。

どんなところからインプットをされるんですか?

秋澤 僕は音楽を聴くことが好きなので。去年から始めたんですけど、自分の中で“今年のベスト100曲”のリストを作ってるんですよ。新規で聴いたものも含めて、アーティストがかぶらないように100曲を選んで。今年は90曲くらいリストアップしているので、あと10曲ですね。

石原 いろんなバンドを聴いてるよな? ザ・キンクス、オアシス、ペイヴメントとか。

ロック以外も聴きます?

秋澤 そうですね。ウータン・クランとかビースティ・ボーイズ、マーヴィン・ゲイなんかも聴くので。

せと 私の場合はライヴハウスでいろいろなバンドを観て、刺激をもらうことが多いですね。最近だと、島根のOmoinotakeというバンドが面白かったです。キーボード&ボーカルで、ギターがいなくて、サックスの女の子がいて。私たちとは全然違う音楽性なんだけど、すごくいいんですよ。

石原 僕は音楽だけじゃなくて、アニメや漫画、ゲーム、映画から得ているものが大きいかもしれない。全然困らないくらい刺激をもらってます(笑)。

Saucy Dog エンタメステーションインタビュー

もちろん、曲の制作も続いているんですよね。

石原 今ちょうど新曲を作っていて。これまではレコーディングが終わったら(曲作りが)落ち着くことが多かったんですけど、「作り続けなくちゃあかんな」と話していたところで。

せと そう、休憩期間がちょっと長かったんですよね(笑)。けど、追い込まれるのはつらいので、普段から曲を作っておこうと話し合って。

石原 いい曲も出来ているので、引き続き頑張ります!(笑)

Saucy Dog エンタメステーションインタビュー

そしてツアーも続いていて。10月から11月にかけて『ブルーピリオド』のリリースツアー〈いつだって今日がはじまりツアー〉、さらに2020年3月には初のホールツアー〈はじめてのホールツアー〉が開催されます。

秋澤 リリースツアーは、以前よりも会場が大きくなっていて。自信を持って、今のSaucy Dogを見せたいですね。ホールツアーに関しては、いい意味でライヴハウスとは違う雰囲気にしたいという気持ちもあります。

せと うん。もちろんライヴハウスは大好きなんですけど、いろんな場所でやりたいので。

石原 ホールは声もしっかり響くと思うし、僕らの音楽的にも合ってるんじゃないかなって思っているので、すごく楽しみですね。

ライブ情報

ブルーピリオド Release tour「いつだって今日がはじまりツアー」

2019年
10月18日(金)北海道・札幌ペニーレーン24
10月19日(土)北海道・札幌ペニーレーン24
10月25日(金)宮城・仙台Rensa
11月07日(木)福島・郡山#9
11月09日(土)新潟・NEXS NIIGATA
11月10日(日)長野・長野CLUB JUNK BOX
11月14日(木)福岡・福岡イムズホール
11月16日(土)香川・高松MONSTER
11月17日(日)広島・広島CLUB QUATTRO
11月22日(金)大阪・なんばHatch
11月23日(土)愛知・名古屋ダイアモンドホール
11月28日(木)東京・Zepp TOKYO<TOUR FINAL>

Saucy Dog 「はじめてのホールツアー」

2020年
3月22日(日)東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)
3月24日(火)大阪・オリックス劇場
3月27日(金) 愛知・名古屋市公会堂
3月29日(日)東京・人見記念講堂

Saucy Dog(サウシードッグ)

石原慎也(vocal, guitar)、秋澤和貴(bass)、せとゆいか(drums)。
2013年に西日本各地出身のメンバーで大阪で結成。メンバーチェンジを経て、2016年度〈MASH A&R〉のオーディションでグランプリを獲得。代表曲「いつか」のMV再生回数が1,000万回を突破。2019年4月には大阪城野外音楽堂、日比谷野外音楽堂にてワンマンライブを開催。7月には2マンツアーとして04 Limited Sazabys、クリープハイプ、SUPER BEAVERと各所で共演。10月にミニアルバム『ブルーピリオド』リリース後には、全国ツアー〈ブルーピリオド Release tour「いつだって今日がはじまりツアー」〉、2020年には初のホールツアー〈Saucy Dog 「はじめてのホールツアー」〉も決定している。

オフィシャルサイト

フォトギャラリー