Report

声優、監督など豪華ゲストを迎えた東京国際映画祭初のアニメ特化型イベント「TIFFアニ!!」とは?(前編)

声優、監督など豪華ゲストを迎えた東京国際映画祭初のアニメ特化型イベント「TIFFアニ!!」とは?(前編)

日本のアニメーションの「今」を取り上げる東京国際映画祭のイベントが行われた。 ハロウィンのこの日、映画・音楽・アニメが国際フォーラムで融合し、東京から世界に発信する新たなプロジェクトが始動!映画祭ならではの、ここでしか見ることのできない映像や特別ゲストを迎えたトークコーナーなど、ジャパニメーションカルチャー満載のイベントだった。その内容をレポートする。

エンタメステーション編集部


2016年10月31日(月)東京国際フォーラムCにて、2つのイベントが開催された。 第一部が「東京国際映画祭 イチオシ・アニメ スペシャル」、第二部が「のじけんBAR~TIFFアニ!!に気まぐれ開店!~」という2つの構成となっていた。

アニメーション特別企画 TIFFアニ!!
第1部 東京国際映画祭 イチオシ・アニメ スペシャルステージ

一部は、この冬、話題の3作品の映像とゲストで構成されるイベントだった。司会はフジテレビアナウンサーの笠井信輔。TBSで放送されていた「超時空要塞マクロス」が少年時代の唯一の楽しみだったというエピソードで自己紹介し、作品の紹介に移った。 「君の名は。」が公開から10週で既に170億円、「聲の形」も20億円の興行収入を突破し、映画界でもアニメーションの存在が際立った2016年となっている。まだまだ話題作が控えている中、まずは、12月23日公開、東映アニメーションが創立60年の節目に贈るオリジナル劇場アニメ『ポッピンQ』が紹介された。

ポッピンQ

『ポッピンQ』は卒業式間近の中学生5人が、突然世界の運命を託されてしまう。世界の危機を救う方法は、「時のカケラ」に導かれた少女たちが協力し合って、ダンスで心をひとつにすること。時空を超えて出会った5人の少女たちの冒険と、心の成長を描く青春ストーリー。

%e3%83%9d%e3%83%83%e3%83%94%e3%83%b3q%ef%bc%9a%e3%83%a1%e3%82%a4%e3%83%b3_s

まずは、映画の冒頭7分間の映像を観賞。7分間は、陸上部に所属する中学3年生“小湊伊純”が何かを抱えているということがわかるシーン。観賞後に登壇したのは、“友立小夏”役種崎敦美、そして監督をした宮原直樹。監督は「5年前から構想し、自身の子供のしぐさなんかも参考にして創り上げた」と語っていた。

%e3%83%9d%e3%83%83%e3%83%94%e3%83%b302

今作の制作のきっかけを聞かれた監督は「この映画ではダンスが重要なシーンになっているんですが、僕はダンスの動きをつける映像を作ってきて、絵はきれいになっていくんですが、それにドラマをうまくつけられないものかと思ったのは5年前で、いろんなネタを加えていきました」と話してくれた。ダンスシーンが大変な魅力とアピールしたところ、笠井アナから「完成披露試写で、声優でダンスシーンを披露した方がいいですよ」と提案、種崎さんは焦りながら「やりますか・・・」と会場を沸かせた。
見どころを聞かれた種崎は「ダンスシーンは凄くこだわって作られていて、ダンスシーンの表情や動きにもキャラの個性が投影されているので、ダンスシーンに注目してほしいです」とアピールした。監督は、「制作途中に、“青春を冒険に言いかえる”という話が出ていまして、不思議な世界に行って、5人がどう成長していくかを見て頂きたいです」とコメントした。

%e3%83%9d%e3%83%83%e3%83%94%e3%83%b3q%ef%bc%9a%e3%82%b5%e3%83%96%ef%bc%91_s

この映画のキーワードは“人生をやりなおす”。中学3年生で人生をやり直すという考え自体に、違和感を覚える人も多いかもしれない。経験は人を成長させるが、中学生という大人への階段を上りはじめ、自分で物事を考えるようになる最初の年代ではなかろうか。その多感な時期にも、「あの時こうしていれば」「こっちを選んでいたら」「あんなこと言わなければ良かった」など、その年代年代でいろいろと壁にぶつかることも多々あるだろう。「やりなおしたいことあった?」と聞かれた種崎は「声優になる前に、接客業をしていた時期もあったんですけど、それは声優養成所に行くための学費を作るために働いていました。仕事を辞めて、声優になるのがもっと早かったらどうだったろうと考えることがあります。」と話していた。それは誰にも解らないが、同じようなことは誰しもが考えることではないだろうか。そんな話を聞いていたら、この映画にはそれでも今いる場所で勝負して、前に進んでいく!という決意が感じられる映画ではないかと想像した。

%e3%83%9d%e3%83%83%e3%83%94%e3%83%b301

『ポッピンQ』はアルファベット表記では、「POP IN Q」。寄り道をするという意味があるという。寄り道といえるような生易しいものではないと思うが、異空間で出会い、成長する5人の物語に期待したい。


チェインクロニクル~ヘクセイタスの閃(ひかり)~

2作品目は、2013年にサービスをスタートさせ、総ダウンロード数500万回を超える大人気RPGを長編アニメーション化した作品『チェインクロニクル~ヘクセイタスの閃(ひかり)~』。こちらは、TVアニメ放送前に劇場公開してしまうという大胆な企画。これも映画冒頭の21分が披露された。

%e3%83%a6%e3%83%bc%e3%83%aa

冒頭から迫力のあるソードアクションシーンを中心に観客をくぎ付け、新キャラクター“アラム”の決意のシーンで終わるという寸止めでの上映だった。笠井アナウンサーの紹介で、スマホゲームでは約40のキャラクターを演じたという“ユーリ”役石田彰、新キャラクター“アネム”役の山下大輝、そして監督・キャラクターデザインの工藤昌司が登壇。

%e3%83%81%e3%82%a7%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%82%af%e3%83%ad%e3%83%8b%e3%82%af%e3%83%ab02

この物語は「アルスラーン戦記」などに続く、新しいファンタジー作品。“全ては闇に覆われる…”という黒の軍勢に戦いを挑んだユーリ率いる義勇軍だが敗れ、王都は黒の王に支配されてしまう。その戦いに敗れ、撤退している最中に、アラムと出会うユーリ。そしてキズナの物語がスタートするというストーリー。
ゲームでは約40のキャラクターを演じた石田は“勢いとビジュアルからのインスピレーション”で演じたというが、今回映像化にあたっては、「1役で良かったなと正直思いました。でも新キャラの“アネム”はやってもいいかな、と思った」と答え、“アネム”役の山下を慌てさせ、会場を盛り上げていた。
この作品は冒頭から大胆な演出をしている。キャラクターの説明もなくバトルから入る冒頭について監督は、「最初からクライマックスなので、見ている方がおいてけぼりかもしれないなと思いつつも、皆さんを信じてやってみようかなというところですね。そこから世界観に入って頂ければ楽しんで頂けると思いました」と演出意図を披露した。

%e3%82%a2%e3%83%a9%e3%83%a0

石田はアニメ化について「ゲームは平面の中で捉えていましたが、アニメ化で立体的に捉えられ、物語に入ってきやすくなっていると思いました」と物語の説得力が増すことをアピールした。山下は「ゲームでもキャラクターが豊富に出てくるので、アニメでもキャラが沢山でてくるのかなという期待というか、ワクワク感があります」とコメントした。

%e3%83%81%e3%82%a7%e3%82%a4%e3%83%b3%e3%82%af%e3%83%ad%e3%83%8b%e3%82%af%e3%83%ab01

ゲームからアニメ化された作品は多く存在するが、この作品は2Dセル調の作画と3DCGの何層にも渡る融合で、チェンクロの世界観を表現しているとのことで、奥深いストーリーに加えて、新しいファンタジーアニメの代表格へ躍り出る可能性を秘めた作品だ。ゲームをプレイした人だけではなく、ファンタジー作品が好きな方には是非、見てもらいたい。


虐殺器官

3作品目は、Project Itoh3部作のトリを飾る『虐殺器官』。
制作会社の倒産という悲劇から、立ちあがり完成に至るまでの苦労は計りしれない。日本だけではなく世界中が待っていた作品だ。

16060102-01_00_07_14-still005

こちらも冒頭17分に及ぶ映像が公開され、その後、“クラヴィス・シェパード”役中村悠一、“ジョン・ポール”役の櫻井孝宏、プロデューサーの山本幸治が登場。笠井アナから「村瀬監督は?」と聞かれた山本は「上映会用のマスターを朝までリテイクしていたので…完全に命を削ってますね」と、監督欠席の理由を開かした。

『虐殺器官』は、9・11以降の“テロとの戦い”は転機を迎え、先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官”とは?というストーリー。

%e8%99%90%e6%ae%ba02

去年の頭に声入れを行ったというが、『虐殺器官』の魅力を聞かれた中村は「映像映えしそうだと思いました。そしてヴォリュームが多いので…監督も言ってましたが、セリフ量が多いけど削りすぎると『虐殺器官』ではなくなってしまうということもあり、どういうところをシェイプアップし、作品作りしていくのか楽しみなところでもありました」。櫻井は、「原作の英語を日本語にした文体が印象的で、SFなので人の脳内で作られたものなんですが、なんか生々しいというか、妙にリアリティがあって、作品に侵されていく感覚がありました」と作品の持つ高いポテンシャルがうかがえた。
笠井アナも「善悪の判断がつきにくくなる感覚がある。とんでもない作品になるなと確信したんです。完成前の作品を見させて頂いて感じました。絵はもちろんですが、村瀬監督の脚本の完成度が極めて高い。濃密なハリウッドスケールな映画であって、スパイもの、戦争アクションもの、ポリティカルサスペンスでもあり、愛の物語でもあるという様々な要素を盛り込んでいて…」と熱く語っていた。
プロダクションの倒産について聞かれた山本は「ここで頑張って作れば目立つかなと思って作ったんです(笑)」と、明るく答えてくれていたが、進んでいたところでの頓挫は、並大抵のことで再興できないし、想像以上のプレッシャーや苦労があったことは推して知るべし。倒産を受けて会社を立ち上げるに至った山本は「大きなものを背負ってしまいました」と話したが、想像を超える作品に仕上がった自信も感じられた。

16060102-01_00_11_27-still006

またこの日、Project Itoh3部作の処女作「虐殺器官」の公開が、2017年2月3日となったこと、新ビジュアルも公開された。
数々の困難の末、最後の公開になるまで多くの時間を要した。その時間が更なる完成度の高さにつながっていることはうかがえる。櫻井は「血の表現とか、容赦なくやっているのが、最後につながる強烈なフックになっているので、冒頭から飲まれました。作りものではあるんですが、もしかしたら自分が生きている世界でもあったりするのかとよぎったり、SFで近未来な感じはするんですが、こんな未来きちゃうのかもしれないなと考えさせられました」。中村は「伊藤さんが思い描いたものが形になっていると思う」と作品の充実度をアピールした。

%e8%99%90%e6%ae%ba01

作品のクオリティは冒頭で確認できたが、この映像作品がアニメーションの表現力をどこまで高めてくれているのか楽しみである。

3作品ともジャンルは違えど、それぞれに個性的でこだわりがある良い意味で“くせ”のある作品だと感じた。日本が発信するアニメーションの概念は常に進化し、進んでいることが確信できたイベントとしてとても意義のあるものだったと思う。



映画公開情報

ポッピンQ
2016年12月23日(金・祝)全国ロードショー pop_pos_fix2

【スタッフ】
監督:宮原 直樹
企画・プロデュース:松井俊之/プロデューサー:金丸裕/原作:東堂 いづみ
キャラクター原案:黒星 紅白/脚本:荒井 修子/キャラクターデザイン・総作画監督:浦上 貴之
CGディレクター:中沢大樹/色彩設計:永井留美子/美術設定:坂本 信人/美術監督:大西 穣
音楽:水谷 広実( Team-MAX )、片山 修志( Team-MAX )
主題歌:「FANTASY」 (Questy)
配給:東映
アニメーション制作:東映アニメーション
製作: 「ポッピンQ」Partners

【キャスト】
瀬戸麻沙美、井澤詩織、種﨑敦美、小澤亜李、黒沢ともよ
田上真里奈、石原夏織、本渡 楓、M・A・O、新井里美
石塚運昇、山崎エリイ、田所あずさ、戸田めぐみ
内山昴輝、羽佐間道夫、小野大輔、島崎和歌子

©東映アニメーション/「ポッピンQ」Partners 2016
公式サイト:http://www.popin-q.com/


チェインクロニクル~ヘクセイタスの閃~
第1章 2016年12月3日(土)
第2章 2017年1月14日(土)
第3章 2017年2月11日(土)
2週間限定上映
第1章B1ポスター

【スタッフ】
原作:セガ
監督・キャラクターデザイン:工藤昌史
副監督:花井宏和
シリーズ構成:待田堂子
美術監督:陳場大輔
撮影監督:荻原猛夫
アニメーション制作:テレコム・アニメーションフィルム×グラフィニカ
配収:ショーゲート

【キャスト】
石田 彰/ 山下 大輝/ 佐倉 綾音/ 内田 真礼/ 豊永 利行/ 内田 彩
今井 麻美/ 小岩井ことり/ 緑川 光/ 柳田 淳一/ 佐藤美由希/ 日野 聡
伊藤 美来/川原 慶久/ 村川 梨衣/ 大坪 由佳/ 沼倉 愛美/ 大塚 明夫

©SEGA/チェンクロ・フィルムパートナーズ
公式サイト:http://chronicle-anime.sega-net.com/


虐殺器官
2017年2月3日(金)公開 Poster_t2_2

【スタッフ】
原作:伊藤計劃(ハヤカワ文庫JA)
監督:村瀬修功
キャラクター原案:redjuice
アニメーション制作:ジェノスタジオ

【キャスト】
中村悠一/ 三上 哲/ 梶 裕貴/ 石川界人/ 大塚明夫/ 小林沙苗/ 櫻井孝宏

©Project Itoh ⁄ GENOCIDAL ORGAN
公式サイト:http://project-itoh.com/


©2016 TIFF