相楽樹の「ご一緒してもいいですか?」  vol. 1

Column

相楽樹 『とと姉ちゃん』を終えてのこれから<前編>

相楽樹 『とと姉ちゃん』を終えてのこれから<前編>

『とと姉ちゃん』の小橋家次女“鞠子”役で大注目され、今後活躍が期待される女優、相楽樹のコラムがスタート。タイトルは“相楽樹の「ご一緒してもいいですか?」”。不定期に、今話したい人、興味あることを本人自身の視点で綴っていきます。スタートとなる初回は、2回に分けて、相楽樹本人に終えたばかりの朝ドラ『とと姉ちゃん』を振り返り、今感じていることを話してもらいました。

取材・文 / 村崎文香 撮影 / 荻原大志


『とと姉ちゃん』を終えて

今年は大きな飛躍の年でしたね。『とと姉ちゃん』の鞠子役は、清新な風とともに懐かしいあたたかさをお茶の間に運んでくれる存在でした。ふり返って、いかがですか?

こんなに長い間、一つの作品を経験したことがなかったので、最初は不安でした。台詞は覚えられるのか、10ヶ月間やり続けられるのか……。共演するのは、自分がずっとTVで観ていた人ばかり。不安はたくさんあったけれど、だんだん、スタッフさんの仕事も見られるようになってきて。
みんなで一つの作品をつくっている実感は毎日ありました。
自分の中でうまくいかなかったこともあったけれど、長い分、失敗をやり直す時間もあった。失敗と成功を繰り返して、始まる前と比べると、自分が変われた気がします。

「失敗」というと?

もっと違う演技ができたんじゃないか、とか。自分で納得いかなかったことですね。収録するスピードが早いので、自分のせいで「もう一回お願いします」とは言えない。木村多江さんも高畑充希さんも、その短い時間の中でそれぞれの「見せ場」をつくっていらっしゃって。凄いなと思いました。

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客観的に観ることはできたのですか?

収録が終わったのが8月末なんです。9月はリアルタイムでTVを観ていました。最初の頃は3週間先の完パケ(放送前の、編集が終わった作品)が送られてきていたのですが、だんだん遅くなって、ほとんど放送と同時くらいに届くようになっていたので、TVで初めて自分の演技を観ることもありました(笑)。鞠子が結婚してからは、商品試験のときなど撮影場所にも行かないことがよくあったので、本当に視聴者の一人として、古田新太さんがカニを食べるシーンとか「凄いなー」と思って観ていました(笑)。

唐沢さんが入って空気が変わった

ベテランの役者さんに小劇場出身の個性派俳優さん等、多彩な出演者の中で、どなたがいちばん印象的でしたか?

唐沢寿明さんですね。唐沢さんが入ったことで場の空気が変わりました。唐沢さんのペースに私たちが巻き込まれていった。やっぱり花山伊佐次さんの役は、唐沢さんだったんだと思います。

視聴者としても、毎回楽しみに観ていました。

やっぱり見応えが増しましたよね。花山さんの、異端児的な、何をやるかわからない存在感。唐沢さんはアドリブが多いので、その意味でも毎回楽しみでした。
唐沢さんは台本にない台詞やアドリブをたくさん考えていらして、月曜日のリハーサルで試されるんです。で、監督が「それいいですね!」と言うと採用になるけれど、「それやり過ぎです」と言われると却下(笑)。
唐沢さん、いろんな引き出しがあるので、次々に出してくるんですね。それは、自分のためというより私たちのリアクションを引き出すためにやってくださっている。自分の役のことだけじゃなく、ドラマ全体を考えてお芝居をやっていらっしゃるんです。凄くストイックだなと、勉強になりました。
スタッフさんたちも、唐沢さんが入ったことでシャキッとしたっていうか、緊張感が出て、チーム全体の空気が変わった気がします。

「ひとりの役者」を超えて、全体を創っていく人だった。

そうですね。本当に、役者さんというより、全体を考えていらっしゃる方でした。

明るい方なんですか? 『THE LAST COP/ラストコップ』で演じていらっしゃる刑事みたいに?

ああ、そうですね。近いかもしれない。若い気持ちを持った、パワフルな方です。53歳とは思えない(笑)。よく食事会を開いてくださって。『とと姉ちゃん』の出演者みんなを連れていってくださったこともあります。

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高畑充希さんはどんな方でしたか?

充希さんもパワフルですね。考え方が楽観的。台詞がたくさんあっても「なんとかなるさ」。マイペース。そのくらいでいるほうが自分を追い込まない。ヒロインって、そうでないとって思います。ずーっと出ずっぱりなので。

杉咲花さんは?

花ちゃんも実際には充希ちゃんと同じ一人っ子なんですが、妹気質で、本当に「お姉ちゃん」として接してくれました。勉強家だし、いろんな映画をたくさん観ている。私が18のときあんなに勉強してたかなって思います。一生懸命で、かわいいですね。

時々会ったりするんですか?

それぞれ別の現場に入ってしまうと、なかなか。でも予定が合えば、会いたいと思っています。

多江さんみたいな女性になりたい

片桐はいりさんは?

はいりさんは……はいりさんだからできることがあって。私がはいりさんのようにやっても、はいりさんのようにはいかない。特別な方ですね。とても繊細なお芝居をされる方で、現場でも静かになさっていました。で、本番になると、スイッチが切り替わる。小劇場を通ってきた方の凄さがあります。
はいりさんは生き方自体も魅力的な方で。旅が好きで、時間が空いたらすぐ海外に行かれたり。いろんなものを観て、感じていらっしゃる。映像をやりながらも、自分の主になる舞台をしっかり続けていらっしゃるところも尊敬します。いまやっている舞台も観せていただこうと思っています。

古田新太さんは?

古田さん、現場では会ってないんですよ! でも、台本見ると、貫禄というか、怖いですよね。「ずっと肉を食べている」とか。オンエア観てびっくりです(笑)。 劇団☆新感線の舞台、好きなんです。殺陣とかカッコいいじゃないですか。舞台を観ると古田さんのファンになっちゃいますね(笑)。

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夫役、水田正平を演じた伊藤淳史さんはいかがでしたか?

二人のシーンが多かったので、いちばん仲良くなったんですけど、イメージより男らしい方でした。そして、誰とでもすぐ近くなれる。伊藤さんも本番までは静かで、さっとスイッチを切り替えられる方でした。勉強になりました。

お母さん、「かか」を演じた木村多江さんは?

多江さんは、何から何までお手本になる人でした。ホントーに優しいし、スタッフさんへの気遣いとか、人として凄く魅力的。お芝居はもちろんのこと、おしとやかさもありつつ、男っぽいところもあって、男性にも女性にも好かれる。キャリアを感じさせない柔らかさ、謙虚さ。ずっと見ていて、多江さんみたいな女性になりたいって憧れていました。

小さな幸せをかみしめて

いろいろな方のこと、凄くよく見ていらっしゃいますね。

わりと冷静なタイプなんです。いろんな意味で達観しているところがある。 私以外、みんな有名な方の中で、「何で私ここにいるんだろう?」って思うこともあったんですが、とりあえず「私は私」でやっていこう、って開き直って。絶対いいお芝居をやってやる! みたいなガツガツ感はなかったですね。

ガツガツした感じが出てしまうと、鞠子の佇まいも変わってしまったと思います。モチーフとなった晴子さんが実際の大橋家を支えたように、ドラマの鞠子は小橋家を支えた。常子さんはじめ家族みんなのお母さんとなって。そのふっくらした佇まいがとても素敵だと思いました。歳を重ねていく感じもよく出ていました。まだお若いのに。

小劇場で、29歳と19歳、一人の人物の現在と過去を演じ分けるお芝居をしたことがあるんです。そのときに「29歳のほうが合ってる」と言われて。喋り方とか、声のトーンとか。むしろ若くするほうが苦戦して(笑)。自分でも、ちょっと上の年齢をやったほうがしっくりくるなぁ、というのはありました。
でも、朝ドラは60代までやるので、「どうしたもんじゃろのう?」と(笑)。
女学生を演じるときはできるだけ声を高くしたり、かなり「若づくり」したんです。30代くらいでいまの自分くらいにして。それを過ぎてからは、かなり背伸びしました。
子どもがいるお母さんの所作とか、経験してないからよくわからない。けっこう母に聞きました。
小さい子に対する話しかけ方とか、子どもが大きくなっていったとき、どのくらいで対等に話すのか、やっぱり「子ども」として接するのか、とか。
母に聞いたことで腑に落ちるところがありました。

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お母様とそういう話しができたって素敵ですね。

やっぱり、いちばん身近で経験した人だから、聞かないとって(笑)。うちの母の場合は、私が高校生になったときには友達みたいな感覚で話していた、と。鞠子も、たまきが中学生くらいになってからは少しずつ対等に接していくようにしました。あとはNHKに行く電車の中で、子どものいるお母さんのこともよく観察しました。おばあちゃんの歩き方も。手すりを使って階段登っているな、とか。

そういう細かい演技をつけられたりはしないのですね。

そうですね。そんな時間はないので、それぞれ考えて動いて。でも、「かか」がいたことは大きかったですね。鞠子が歳をとるにしたがって「かかに似てきたね」って言われたんです。とくに、かかに似せようとしてはいなかったんですけど、女学生時代から、かかの動き、所作をずっと見てきたので、普通の親子みたいに自然に出たのかな、と。

戦前から戦中・戦後〜高度経済成長期の日本を描いて、本当にたくさんのメッセージを伝えてくれたドラマでした。

そうですね。『とと姉ちゃん』をやってから、ものを「自分でつくる」ことをするようになりました。戦争中、ものがないときの工夫。お芝居とはいえ、あの時代を経験できたことは大きかった。 プランターに野菜の種を植えてみたり。ぬか漬けもつくってみようか、とか。 身近にある小さな幸せ。友達も「いて当たり前」じゃなくて、たまには連絡とって会ってみようか、とか。そういう「小さな幸せ」をいままでより見つけられるようになりました。 家族でいられる当たり前の時間も、戦争を通して凄く大事なんだと気づかされました。

西田征史さんの脚本も弛みがなく、甘くなく、重くなりすぎず、よかったですね。

西田さんも大変だったと思います。26冊(26週分)も書かなくちゃいけない(笑)。素晴らしい脚本、ドラマでした、本当に。

【相楽樹 衣装】
トップス (Mocha) / ボトムス (Heloisa Faria)
ともに、BRING showroom
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その他、スタイリスト私物

相楽樹

1995年生まれ。埼玉県出身。
2010年に女優として活動をスタート。ドラマ、映画、舞台、CMやミュージックビデオに等にも出演。
NHK朝の連続テレビ小説「とと姉ちゃん」小橋家次女・鞠子役でレギュラー出演。
2016年6月25日にはオムニバス映画「スリリングな日常」の1編「不審者」の主演を務める。
今後活躍が期待される女優。

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