Interview

osage 風変わりなバンド名の男性4人組は、自らの個性をどんなふうに見定め、それを新作にどう昇華したのか?

osage 風変わりなバンド名の男性4人組は、自らの個性をどんなふうに見定め、それを新作にどう昇華したのか?

SUPER BEAVERやsumika、マカロニえんぴつらが所属するmuffin discsによる新人オーディション“muffin discs audition 2018”のグランプリを獲得したバンドだ。が、その評価をジャンプ・ボードにして着実に支持を広げている現状は、彼らの音楽に確かな個性と魅力があることの証でもあるだろう。好評を博した今年4月リリースの「ニュートラルe.p」に続いて、初めてのミニアルバム『October』を10月9日にリリースする。
ここでは、結成の経緯から始めて、このバンドの個性がどんなふうに生み出され、今回の新作につながっていったかをメンバー4人に語ってもらった。

取材・文 / 兼田達矢 撮影 / 鈴木圭


この4人で最初に音を鳴らした時の感覚は単純に気持ちいい!という感じでした。

バンド結成のいきさつから聞かせてください。

山口ケンタ(Vo,Ba) 4人とも同じ高校の同級生なんですけど、最初は僕と松永と金廣が一緒にコピー・バンドをやっていて、田中はまた別のコピー・バンドでドラムを叩いてたんです。僕らは、ELLEGARDENとか9mmParabellum Bulletとか…。

金廣洸輝(Gt,Cho) アジカンとか、邦楽ロックをコピーしてて…。

山口 田中はボン・ジョヴィとか…。

田中優希(Ds) ドラムを叩いてる時間の8割はレッチリをコピーしてる高校生でした(笑)。

山口 それから4人とも大学に進んで1年生の時に…。

松永祐太(Gt) 山口がデモをSoundCloudに上げてるのを聴いてた僕と金廣が、食事してる時に「あれ、やりたくね?」という話になって、本人不在でやることに決めました。僕と金廣がギターだったんで、「お前、歌って」と山口に話して。ただ、コピー・バンドの時の彼はピン・ボーカルだったんですけど、このバンドでは楽器を持っていたほうがカッコいいなと思って、山口はベースも弾けたんで持ってもらったら、「いいじゃん」って(笑)。

金廣 様になってたんですよ。

松永 ちょうどその時に、田中もコピー・バンドが終わって…。

田中 大学に入ったら自然消滅という感じになってしまってたんで、声をかけてくれたんです。

“山口さんのオリジナル曲を演奏する”というコンセプトのもとに集まったのがosage、ということになりますか。

松永 そうですね。最初は、SoundCloudに上がってる曲をそのまままるっとやろうという話でしたから。

実際に、この4人で音を鳴らしてみての感触はどうでしたか。

山口 前身バンドでは、デモを作ってもボツになることが多かったので、「このデモをやろう」と言ってくれたことがまず“わかってるなぁ”と思ったんですけど(笑)、僕自身も打ち込みじゃなくて生音では聴いたのはこの4人で鳴らした時が初めてで、“これは絶対イケるな”と思いましたね。

osage 山口ケンタ エンタメステーションインタビュー

山口ケンタ(Vo,Ba)

金廣 来た!来た!来た!って感じでした(笑)。それは、この前に僕と山口がやっていた前身バンドが下手くそだったせいもあると思うんですけど、この4人で鳴らした時にがっちりハマった気がして、最初に音を鳴らした時の感覚は単純に気持ちいい!という感じでしたね。

田中 僕は実質的には一番最後に入った形だったし、山口のデモをそのままやるというコンセプトもそれほど意識してなかったんで(笑)、好き放題やっていたんですが、純粋に曲がいいし、一緒にやって単純に楽しい、という感じでした。

松永 僕はそれまでコピー・バンドしかやってなくて、誰かが新しく作った曲をやるのは初めてだったから、“あっ、これか!”みたいな感じはありましたね。みんなで試行錯誤していく感じがいいなって。だから、僕も単純に楽しいという感覚が大きかったです。

オリジナル曲を作り上げていくことを初めて経験して感じた“これか!”という感覚は今から振り返るとどういう感じだったんでしょう?

松永 正解が無いじゃないですか。“どこまでやっていいのかな?”という感じが最初の頃はけっこうあって、突き詰め方も自分で決めることになるし、その曲全体のジャンル感も音作り一つでずいぶん変わってくるし、本当に新しいことをやってるなという感覚がすごくあったんですよね。

osage 松永祐太 エンタメステーションインタビュー

松永祐太(Gt)

「正解が無い」と感じた時に困ってしまう人もいると思いますが、皆さんはむしろそれが面白いと思えたわけですね。

松永 そうですね。しかも、当時はまだ僕らも自分たちのジャンル感が定まってなかったというか…。一緒にずっとやっていくなかで、好きな音楽を共有していくし、大学のサークルでコピーもやっていたので、いろんな音楽に対する知識も増えていって、そういうものを自分たちのオリジナルに落とし込んでみたりもして。だから、山口の曲をやってるんだけれども、いろんなものを取り込んでバンドとして曲をどこに持って行くか、というのをみんなで詰めていくのが楽しかったですね。

何を歌いたいかということよりも響きを重視しているので、その中で言えることは一つだな、と。

資料には「2017年より精力的に活動を始める」とありますが、その「精力的に」というのはいろんなところでライブをやり始めたというようなことですか。

山口 そうですね。それまでは、身内の企画とか高校生が出るイベントに、3ヶ月に1回くらいライブをやる程度で…。

金廣 僕らとしては、純粋にスタジオで合わせてるのが楽しかったので、ライブをやろうとは思わなくて、4人で完結してたんですよ。

田中 趣味で4人集まって、「楽しかった」って帰る、みたいな(笑)。

金廣 (笑)、バンドマンじゃなかったんですよ。でも、たまに出る身内のライブでオリジナルを披露したら「良い!」と言ってくれる人がたくさんいて、それでもっと外に発信していこうという気持ちになってきたのが、2017年の春くらいですね。

osage 金廣洸輝 エンタメステーションインタビュー

金廣洸輝(Gt,Cho)

ライブに出て、お客さんから「良い!」と言われるまで、自分たちのオリジナル曲をいいと思ってなかったんですか。

田中 自分たちのなかでいいなと思って、それで満足してたんです。人が聴いてどう思うかということは考えてなかったというか。

そういう皆さんの気持ちが外に向けて開けていった時に、そのことが作る音楽に何か影響を与えたように思いますか。

松永 あるんじゃないですかね、多分。なぜ“やっていこう!”と思ったか考えてみると、前はプロのミュージシャンってすごく遠くの存在だった気がするんですけど、サークルの先輩とか年代の近い人たちがライブハウスでウケてたりして華々しくバンドをやってるのを見ると、“こういうところからやり始めてプロになっていくんだ”と思ったんです。だったら、その人たちが辿った道筋を僕らも行ってみよう、と。そう思えたことがけっこう大きいんじゃないかなという気がします。だから、さっきも言いましたけど、コピーをやって得た知識とか、そういうものを自分たちの音楽に落とし込んで、それを披露したいという気持ちがどんどん大きくなっているので、やってる音楽も最初とは違ってきてると思います。

大元の曲を作っている山口さんは、何か違ってきている部分がありますか。

山口 最初は、2ビートで英詞の曲だったり、けっこうパンク・ライクな音楽もやってたんですけど、でも結局響くのは日本語で書いた詞で、歌モノのギター・ロックなんだろうなということをライブハウスでやっていくなかで気づいていったので、今はもっぱらそういう音楽をやるようになってますね。

歌詞の内容は変わってきましたか。

金廣 根本は変わってないんじゃない。

松永 一貫してるよね。

山口 例えば世界平和を歌えるとは思わないし、弱っている人を絶対的に救えるような歌も多分歌えないと思うんです。自分が想像できる以上のことを歌にできるとは思わないから、自分の目を通して見たリアルというか、その中でのラッキーだなと思ったことや、それこそ「みんなで音を出して、楽しいよね」ということを歌う、と。そこはずっとブレていないと思います。

曲と詞は、どちらが先とか、パターンはありますか。

山口 曲が先です。打ち込みでデモを作る時には、まずリズム・パターンを決めて、それにコードを乗っけて、リードとなるフレーズを乗せて、最後にメロディーを乗せて、そこに乗るような歌詞を考えるという順番です。先に、メロディーやサウンドの響きの部分が出来ていないと歌詞のイメージが浮かばないんですよね。

今回の作品の6曲を聴くと、歌詞はどれも一つの曲の中で一つのシチュエーション、一つのことを歌っていますが、それも曲の構成に従ってそうなっているということですか。

山口 何を歌いたいかということよりも響きを重視しているので、その中で言えることは一つだな、と。そう決めてるわけじゃないですけど、そうしたいなとは思ってますね。

(今回は)サウンド面で、より自分たちの好きな音を落とし込めたという印象があります。

さて今回の新作ですが、どういうふうに制作は進んだんですか。

山口 まずこの時期にミニアルバムを出す話があったんですけど、僕らとしては出来た曲はすぐに出したいというスタンスでやっているので、4月に出した「ニュートラルe.p」以降の新曲に、昔の曲とのバランスを考えてライブでのキラーチューンになっている「セトモノ」と、「スープ」というバラードを昔の「weipa.」というCDから再録する形で加えて、6曲入りにしました。

金廣さんは、今回の制作を振り返って印象深い曲を一つあげるとすれば、どの曲になりますか。

金廣 4曲目に収録されている「ginger air」という曲が、今までのosageとはちょっと違って、乗りやすいテンポ感の曲なんですけど、そのリズムが難しくてバッキングのギターを20回くらい録り直しました(笑)。

あの曲は曲を貫いてるリフをベースが弾いて始まるが、ベースであのフレーズを思いついて、それをギターに受け渡したんですか。それとも、先にリフがあって、それをベースで始めることを思いついたんですか。

山口 後者です。ベースとギターとの掛け合いで、あのリフのリズムがまずあって、それから“ベースのスラップと歌で始まる曲ってめちゃめちゃ気持ち悪いな”と思いついたんです。こんな気持ち悪いことをやっている人はいないだろうなと思って、それでああいう形になりました(笑)。

松永さんは、今回の制作を振り返っていかがですか。

松永 サウンド面で、より自分たちの好きな音を落とし込めたという印象があります。「ニュートラルe.p」は今のJ-POPの音作りというものをある程度意識していたと思うんですけど、今回はもっと具体的にというか、「好きなアーティストのこのアプローチを」とか「こういうサウンドで」とか、そういうことを話し合って入れたりしたんです。

制作に入る前から、今回はそういうことをやろうと考えていたんですか。

松永 考えていました。デモの時点で、今ハマっている音楽とか「この曲のここ、いいよね」みたいなことは山口と共有して、それを自分たちのフォーマットに落とし込むという作り方が出来た気がします。例えば1曲目の「アナログ」は音像的に抽象的にしたいなと思って、それで邦楽のオルタナティブ系の音をいろいろ参考にしたりしたんですけど…。

山口 ドラムはナンバガっぽく叩いたんだよね。

田中 「アナログ」の歌詞は高校生ではない青春がテーマということだったので、“自分の青春時代に衝撃を受けたナンバーガールのアヒトイナザワさんがこの曲のドラムを叩くとしたらこうするんだろう?”というのと、“でも自分はこうするな”というのを混ぜ込んで、ドラムは叩きました。

osage 田中優希 エンタメステーションインタビュー

田中優希(Ds)

田中さんは今回の制作を振り返ってどうですか。

田中 今回の新曲4曲は、今まで一番ドラムは悩んだんです。昔は本当に自己満足でやっていた感じだったんですけど、最近は自分のやりたいことと、曲全体を見渡した時にベストな形になることが違うことが増えてきて、それをどう折り合いつけるかというところで、今回はみんなとも話し合ったりしながらすごく考えました。

自分のやりたいこととは別に、曲全体のことを考えるという意識が出てきたのはどういう変化だと自分では受け止めていますか。

田中 今回のCDができて聴いた時に、すごくいいと思ったんですけど、そこで思ったのは自分がやりたいのは好きなことをやるということではなくて、みんなと一緒にいい音楽を作ることが第一になってきたなということで…。すごくざっくり言うと(笑)、大人になったなと思いますね。

再録の5曲目と6曲目は、前のバージョンをそのまま入れたんですか。録り直したんですか。

山口 録り直しました。アレンジも変えました。

6曲目の「スープ」のサビでドラムのストロークが大きくなって、前半はそのまま進み、そうすると後半は普通なら刻み方を倍にするなどして加速する印象を盛り上げたくなると思うんですが、この曲は1回目のサビも2回目のサビもそうしないですよね。

山口 この曲の歌詞は、別れを歌っているようでもあるけど、「じゃあ、また明日。バイバイ」でもあるというか、どっちとも取れるような感じにしたかったんです。とするとどういうことを歌おうか?と考えた時に、この登場人物たちは別れが名残惜しいというか、見送られてる人間も実はまだ帰りたくないんですよね。走りたくないから歩いているんです。でも、そこで盛り上げて音楽を加速させてしまうと、その名残惜しく思っている人が走り出している感じになっちゃいますよね。むしろ、“この時間がもっと続いていけばいいな”と思っている感じを出したかったから、あそこは絶対加速する感じにしちゃいけないと思って。時間の流れが本当にゆっくりだなと思ってもらえるような感じにしたかったんです。

osage エンタメステーションインタビュー

この曲に限らず、osageの音楽を聴いていると、時間の流れがゆっくりというか、時間が流れないようにしようという気持ちがあるようにさえ感じます。

山口 とりあえず場面の変化は少ないですよね。

それは、さっき言ってくれた“たくさんのことを言わないようにしよう”という意識の反映ですか。

山口 1曲の中で歌えることは、本当に断片的というか、1シーンだと思うんです。映像じゃなくて写真、というか。1枚の写真を見て、そこからいろいろ思い出したり気持ちを広げていくことができると思うんですけど、でも見ているのは1枚の写真なんですよね。「その写真を隅から隅まで映していったら、こんな曲ができました」みたいな感じです。

あわよくば「10月になったらosageの『October』を聴きたいよね」というふうになってほしいなと。

歌詞に関してもう一つ聞かせてください。メンバーにおさげ髪の人はいないし女性のメンバーさえいないのにバンド名はosage、というのと同じように、「1954」という曲はどうしてそういうタイトルになるか全然わからないし、「Greenback」という曲の歌詞に“Greenback”という言葉は一切出てこないといったことが随所にあります。それは、意識してそうしているんですか。

山口 そこは、想像して欲しいところなんです。聴いている人が“これって、もしかしてこういう意味があるのかも”みたいなものを、落とせるだけ落としていきたいんですよ。音楽は聴く時のテンションや感情の違いで全く違って聴こえますよね。その感じ方が何通りかできるようにしたいなと思っていて、だから歌詞とタイトルはあまり結び付けないようにしています。

「1954」の歌詞に中国語が出てくるのはなぜですか。

山口 あの曲は、元々のイメージがチャイニーズ・ライクな曲ということで、作っている最中も“もっと中国っぽく、もっと中国っぽく”と思ってたんですけど、“だったら歌詞にも入れちゃおう”と思ったんですよね。

他にも、「Greenback」や「ginger air」のギター・フレーズに、チャイニーズ・テイストが色濃く出てるのも印象的です。

松永 “中国感”というのはずっとあって、山口の手クセでよく出てくるのを、僕らは「いいね!」ってそのままやってきているんですよ。特に「1954」はデモ段階でのタイトルが「チャイニーズ・ガール」で、「これは“osage節”みたいなものが出せるね」という話もしていて、それでああいう出来上がりになりました。

『October.』というタイトルは、どの段階で決めたんですか。

山口 一番最後に決めたんですけど、この中に入っている楽曲たちはどれも別れを歌ってるんですよね。一般的には、別れというと、卒業から進学と続く3月、4月がそれを意識する時期じゃないですか。でも僕ら大学生や、高校生もそうだと思いますが、夏が終わって秋になっていき、いろんな行事も終わって、という10月というのは、進路も決まったりしてこれからのことを意識し始める時期だと思うんです。そこに本当の別れがあるんじゃないかなと気づいて、その感傷的な気分になる10月=Octoberのことを歌った人はあまりいないかなとも思ったので、作品自体のタイトルを『October』にして、あわよくば「10月になったらosageの『October』を聴きたいよね」というふうになってほしいなと思ったんです。

リリース後にはツアーも決定していますが、今osageはどんなことを意識してライブに臨んでいますか。

山口 お客さんが、ライブ中にけっこう泣いていたりするんです。それって、僕らの音楽がすごく届いているし、滲みでているんだろうなと思うんですよね。だから僕らも、今のぼくらの全部を詰め込んで感情でぶつかりにいこうって。それは、意識するというよりも、そうなってしまっていますね。

いいツアーになるのを期待しています。ありがとうございました。

その他のosageの作品はこちらへ。

ライブ情報

“osage『October.』Release Tour”

2019年10月20日(日) 東京・下北沢 近松
2019年10月22日(火) 広島・広島CAVE-BE  
2019年10月31日(木) 宮城・仙台enn 3 rd   
2019年11月30日(土) 大阪・心斎橋Anima
2019年12月1日(日) 愛知・名古屋CLUB ROCK’N’ROLL
2020年1月18日(土) 東京・shibuya eggman【ワンマンライブ】

osage

山口ケンタ(Vo,Ba)、松永祐太(Gt)、金廣洸輝(GtCho)、田中優希(Ds)。
下北沢にて、結成。2017年より精力的に活動を始める。18年10月、muffin discs audition 2018グランプリ。19年4月、maffin discs内レーベル“muffin Lab.”より、4曲入り「ニュートラルe.p」を、タワーレコード限定リリース。同年5月、“ニュートラルe.p Release Tour”を開催。下北沢 近松で行われた初日のレコ発ライブはソールドアウト。150人を動員。同年7月、“ニュートラルe.p Release Tour FINAL”はshibuya eggmanにて行われ、ソールドアウト。300人を動員。同年10月、初めてのミニアルバム『October.』をリリース。

オフィシャルサイト
https://www.osage-band.com

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