SPITZ ニューアルバム『見っけ』発売記念特集「私とスピッツ」  vol. 3

Interview

奥貫薫が語る、スピッツとの30年。「人生の記憶と結びつく。人生の傍らにスピッツがある」

奥貫薫が語る、スピッツとの30年。「人生の記憶と結びつく。人生の傍らにスピッツがある」

スピッツ16作目のニューアルバム『見っけ』が、2019年10月9日に発売されることを記念して、スピッツを愛する表現者たちに「私とスピッツ」についてインタビューする企画の第三回。第一回=上白石萌歌第二回=ハライチ・岩井勇気に続いて登場するのは、奥貫薫。
ラジオに呼ばれて亀田誠治と共にスピッツを語ったりするなど、ハードコアなスピッツファンとして知られている方だけあって、1989年リリースのスピッツ唯一のインディー盤であり、一切復刻されていないので今でも入手困難なミニアルバム『ヒバリのこころ』を持って現れました。

取材・文 / 兵庫慎司 撮影 / 森崎純子


スピッツに心を動かされるかどうかが、私の心のバロメーター

『ヒバリのこころ』じゃないですか。

そう、持って来たんです。ディスクユニオンで見つけたのを憶えています。これ、メジャーデビューしたあとも、しばらくお店で売っていたんですよね。

奥貫薫 エンタメステーションインタビュー

最初に聴いたのはどれでしょう?

大学生の頃でしょうか……『ヒバリのこころ』は、さかのぼって出会ったような気もするのですが。『名前をつけてやる』の頃かもしれないですね。私、吉本ばななさんが大好きなんですけれど、何かの小説のあとがきに、「ヒバリのこころ」という曲を聴いて、このスピッツというバンドはもしかしたら私の小説を好きでいてくれるんじゃないかと思った、というようなことを書かれていて。この取材の前に確認しておこうと思って、ばななさんに「どの本のあとがきだったでしょうか?」とお尋ねしたら、「はっきり覚えていないけれど、あの曲は超好き!」と。私も、30年近く前の記憶なので、曖昧なんですけれど、気づいたら私の人生にスピッツがあった、という感じです。

そこからはスピッツ一本?

そうですね……あ、エレカシ(エレファントカシマシ)も好きでした。エレカシは、草野さんも宮本さんを崇拝してらっしゃるじゃないですか。エレカシのアルバムは正座して聴く、という話をインタビューでされていて──。

それ、メジャーデビューの時のロッキング・オン・ジャパンのインタビューですね。1991年の3月。

(笑)そうそう。それも読んでるということは、その頃もう好きだったんですね。エレカシとスピッツの対バンライブを観たことがありますが、それぞれのカバーに大感動しました。

スピッツは、それまで奥貫さんが知っていた音楽とどんなふうに違ったから、そこまではまったんでしょうね。

音楽は好きでよく聴いていました。歌謡曲では、松田聖子さんや松本隆さんの世界も好きで。父も音楽が好きだったので、井上陽水さんなどフォークのアルバムも身近にあったんですけど、何が違ったのかな……音楽であり、文学だな、という気がして。草野さんの詩は文学ですよね。そしてメロディーは叙情的で、でも精神はパンクでロック。私にとってはやはり特別なバンドです。

奥貫薫 エンタメステーションインタビュー

いちばん回数を聴いたアルバムは?

回数ですか?

いや、「いちばん好きなのは?」と言われると、困るかなと思って。

そうなんです。スピッツが好き、ということで、ラジオなどに呼んでいただいたこともあるのですが、そのたびに必ず好きな曲を訊かれるんです。でも、本当に答えられないし、その時何を選んでも、私、すごく後悔してしまうんですよ。一曲なんて挙げられないので。だから、いちばん好きなアルバムを訊かれた時には、新曲を聴くたびに「好き」が更新されるから、「最新作です」って答えるようにしています。

はい。では、いちばん回数を聴いたアルバムは?

(笑)。回数を聴いたのは……『ハヤブサ』だと思います。なぜかというと、私、その年に、初めて実家を出てひとり暮らしを始めて、すごくさみしかったんです。その心細い時期に『ハヤブサ』をとにかくずっと聴いていたので。当時のことを思い出しますね、『ハヤブサ』は。
あと、『とげまる』を聴くと、リリースの少しあとに出産をしたので、息子が小さかった頃のことを思うし、『三日月ロック』を聴くと、映画の撮影でウズベキスタンに行った時のことを思い出すんです。ウズベキスタンの風景と、『三日月ロック』の「夜を駆ける」の感じがすごく合ったんですよ。そんな風に、どのアルバムも人生の記憶と結びつくんですよね、スピッツって。人生の傍らにスピッツがあるというか。 あと、私も1987年にデビューしているんです。スピッツ結成の年で、ちょうど私の仕事人生とも重なるんですよね。だから「1987→」(「CYCLE HIT 2006-2017 Spitz Complete Single Collection」収録・2017年)を聴いた時には、ちょっと泣けました。

奥貫薫 エンタメステーションインタビュー

ああ、30周年の時に発表した曲。

そうです。だから、そういう意味でも励みになりますね。私、子供を生んでからしばらく、小説を読んだり、音楽を聴いたり、映画や舞台を観ることができなくなってしまった時期があって。とても忙しかったので物理的な理由もあったと思うのですが、フィクションが心に届かなくなってしまったというか。今まであんなに好きだったものを観ても、聴いても、すごく遠いものに感じられて。その時に、自分の人生がずいぶん離れたところに来てしまった、みたいなさみしさがあったんです。
でも、そんな時でも、スピッツは違ったんですよね。スピッツを聴いた時には、やっぱり心が動いて。「あ、こういう気持ちになれる私でよかった」と思った。だから、スピッツは私の心のバロメーターでもあります。スピッツを好きでいられるうちは大丈夫、って。スピッツの音楽には、真実の何かがあるんだなあって、すごく思いますね。

最初にライブを観たのはいつですか?

ライブを観たのは遅くて……福島(COMING POP’95 “WIND PARK-NARAHA”@福島県楢葉町天神岬スポーツ公園)か何かのフェスだったんです。一緒に行った友達が、「草野さんの声でマフラー編んだらあったかそうだね」って言ったのを憶えています。「ほんとにそうだなぁ」と思って。素敵でしたねぇ。そこからライブに行くようになるんですけど、今みたいにネットでチケットを取る時代ではなかったので、発売日にプレイガイドに並んだり、電話をかけたり。あとAmazonなどもなかったから、CDが出るたびに、近所のレコード屋さんで注文して取り寄せていたんです。シングルが、8センチの短冊の頃ですね。そんなことをしている間に、スピッツが売れて。レコード屋さんのおじさんに「奥貫さん、スピッツ売れてよかったね」って言われました(笑)

はははは。

当初は、注文しないとCDがお店になかったので。

奥貫薫 エンタメステーションインタビュー

記憶に残っているライブ、ほかにもありました?

そうですねえ……新宿ロフトで観られたのはうれしかったですね。ロフトの35周年の企画で、スピッツが22年前に初めてロフトでワンマンをやった日で(2012年7月12日。GOING UNDER GROUND、PERIDOTS、よしむらひらくと共演)。あと、あれいつだったかな、大宮ソニックシティのライブで、MCの途中で草野さんが、アコギを弾きながら「♪お〜みや〜お〜みや」って歌い出したんですね。それで、「ごめんね、イマイチだったね、おわびに今度大宮の歌を作ってくるね」と、話していて。その数年後にまた大宮のライブを観に行ったら、「前に約束した大宮の歌を作ってきました」と「大宮サンセット」を歌ってくれたんです。曲が生まれるところに立ち会えたことがうれしかったですね。

「天神駅の改札口」は、行ってみたことがあります

もし草野マサムネにインタビューするとしたら、どんなことを訊きたいですか?

それ、難しいですねえ……草野さんが作ってる曲たちが、お手紙みたいなものだとしたら、誰に宛てて書いている手紙ですか? って訊きたいです。ごめんなさい、抽象的ですけど。あと、散歩している時、いつもどんなものを見ていますか? というのも訊いてみたいです。草野さんの見つめている景色が、歌になっているのかなあ、とも思うので。

奥貫薫 エンタメステーションインタビュー

ああ、なるほど。

「天神駅の改札口」(「さわって、変わって」)は、行ってみたことがあります。あと、「街道沿いのロイホ」(「ナナへの気持ち」)は甲州街道のロイヤルホストだときいて、「ここのロイホかなあ」と思ってみたり(笑)

「優しいあの子」は、いかがでした?

この曲に限らずなんですけど、新曲を聴くたびに、わぁ、いつものスピッツだぁ、とうれしくなるのですが、でも、ずっと同じことをしていたら、きっとそれは古くなっていくと思うんですよね。いつもと変わらないスピッツだ!っていうふうに届くんだけど、その裏で、きっとすごいマイナーチェンジをされているんだろうなぁと、その努力に頭がさがるし、メンバーのみなさんの音楽に対する想いとか生き方、謙虚な姿勢が、音に表れているんだろうなあと。だから古くならない。自分もそうありたいとも思わせてくれます。
この曲も、最初のテッちゃんのギターを聴くだけで、もうスピッツ、ですよね。息子が、今、8歳なんですけれど、彼が知らないであろうスピッツの曲がラジオでかかった時、最初のギターのフレーズを聴いて「あ、お母さん、これスピッツだ」って言ったんです。子供でも、草野さんの声を聴く前に、スピッツってわかる。それもすごいことですよね。草野さんの素敵さはもちろんですが、メンバーのみなさんも同じようにすごくて、スピッツというチームが素晴らしいんですよね、スタッフさんも含めて。だから、もう、そのチームに対する愛ですね、今となっては(笑)。

奥貫薫 エンタメステーションインタビュー

ニューアルバム『見っけ』は、聴いてどう思われましたか。

アルバムって最初に聴いた時に好きな曲と、ずっと聴いているうちに好きになる曲って、ありませんか?今は「ありがとさん」と「初夏の日」が好きです。でも聴き込んでいくうちに、また変わるかもしれないし、ツアーもすごく楽しみです。
あと、草野さん、ジャケ写の女の子を選ぶのも、上手ですよね。今回の『見っけ』のカバーガールの生越(千晴)ちゃん、すごく仲良しなのです。モダンスイマーズという劇団に所属している女優さんで、舞台で何度か共演したこともあって。その前の『醒めない』の佐藤玲ちゃんも仲良しで。勝手に縁を感じてます(笑)。

これからのスピッツに期待することがあるとしたら、なんでしょうね。

うーん。続けていてくれたら、バンドがあってくれたら、もうそれだけでいいです。それ以上のことはないです。でも、続けるっていうことが大変で、すごいことじゃないですか。だから本当に、ずっと元気でいてください、おばあちゃんになっても観に行くので、おじいちゃんになっても続けていてくださいね、って。


次回は西野七瀬さんが登場!
10月17日(木)17時掲載予定です。

ライブ情報

SPITZ JAMBOREE TOUR 2019-2020 “MIKKE”

2019年
11月30日(土)  静岡エコパアリーナ
12月05日(木)  武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ
12月07日(土)  武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ
12月08日(日)  武蔵野の森総合スポーツプラザ メインアリーナ
12月12日(木)  横浜アリーナ
12月14日(土)  横浜アリーナ
12月15日(日)  横浜アリーナ
12月27日(金)  マリンメッセ福岡
12月28日(土)  マリンメッセ福岡

2020年
1月18日(土)  大阪城ホール
1月19日(日)  大阪城ホール
1月28日(火)  大阪城ホール
1月29日(水)  大阪城ホール
3月28日(土)  YCC県民文化ホール(山梨県立県民文化ホール)
3月31日(火)  高崎芸術劇場
4月07日(火)  米子コンベンションセンター・BiG SHiP
4月09日(木)  広島文化学園HBGホール
4月10日(金)  広島文化学園HBGホール
4月14日(火)  宇都宮市文化会館
4月18日(土)  和歌山県民文化会館 大ホール
4月19日(日)  姫路市文化センター 大ホール
4月21日(火)  レクザムホール・大ホール(香川県県民ホール)
4月28日(火)  市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
4月30日(木)  大分iichikoグランシアタ
5月05日(火・祝)名古屋国際会議場センチュリーホール
5月06日(水・振)名古屋国際会議場センチュリーホール
5月08日(金)  名古屋国際会議場センチュリーホール
5月12日(火)  金沢歌劇座
5月14日(木)  新潟県民会館
5月19日(火)  札幌文化芸術劇場hitaru
5月20日(水)  札幌文化芸術劇場hitaru
5月26日(火)  仙台サンプラザホール
5月27日(水)  仙台サンプラザホール
6月01日(月)  沖縄コンベンションセンター劇場棟
6月02日(火)  沖縄コンベンションセンター劇場棟
6月07日(日)  松山市民会館・大ホール
6月08日(月)  高知県立県民文化ホール・オレンジホール
6月12日(金)  山形県総合文化芸術館
6月14日(日)  リンクステーションホール青森(青森市文化会館)
6月21日(日)  帯広市民文化ホール大ホール
6月23日(火)  コーチャンフォー釧路文化ホール
6月29日(月)  大宮ソニックシティホール
6月30日(火)  大宮ソニックシティホール
7月05日(日)  福井フェニックスプラザ
7月06日(月)  滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール 大ホール
7月08日(水)  岡山市民会館
7月14日(火)  三重県文化会館大ホール
7月16日(木)  長良川国際会議場メインホール

SPITZ オフィシャルサイト
https://spitz-web.com/

SPITZ mobile(SPITZ オフィシャルモバイルサイト)
http://spimo.net


奥貫 薫(おくぬき かおる)

1970年11月22日生まれ 東京都出身
89年に映画『バトルヒーター』でスクリーンデビュー。その後も数々の映画、ドラマ、CMなど多方面で活躍。近年の主な出演作に、『連続テレビ小説 とと姉ちゃん』(16/NHK)、『娘の結婚』(18/テレビ東京)、『トドメの接吻』(18/日本テレビ)、『義母と娘のブルース』(18/TBS)、『名探偵・明智小五郎』(19/テレビ朝日)、『きのう何食べた?』(19/テレビ東京)、『螢草 菜々の剣』(19/NHK)、映画『恋妻家宮本』(17/遊川和彦監督)、『嘘を愛する女』(18/中江和仁監督)、『志乃ちゃんは自分の名前が言えない』(18/湯浅弘章監督)、舞台『星回帰線』(16/蓬莱竜太演出)、『No.9―不滅の旋律―』(18~19/白井晃演出)などがある。 10月から、舞台『渦が森団地の眠れない子たち』(蓬莱竜太演出)に出演中。

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