LIVE SHUTTLE  vol. 372

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flumpoolの新たな出発点。「自分たちを育ててくれたツアー」で決意と可能性が滲む渾身のパフォーマンス

flumpoolの新たな出発点。「自分たちを育ててくれたツアー」で決意と可能性が滲む渾身のパフォーマンス

flumpool 9th tour「⌘⇧Z(Command Shift Z)」
2019年10月4日(金)@東京・NHKホール

きっと何十年先も笑っていられる自分でいられる

flumpoolが10月4日(金)の東京・NHKホールの追加公演で、flumpool 9th tour「⌘↑Z(Command Shift Z)」のファイナルを迎えた。

復帰後初となるこの全国ツアーは、2017年末、活動休止に伴い公演中止となった広島、鳥取、三重、福井からスタートし、5月4日から10月4日までの丸5ヵ月間をかけて22箇所24公演をまわるという長期間におよぶホールツアーとなった。

復帰にあたり、発声障害を患ってバンド活動の休止を余儀なくされていた山村隆太の体調を心配する向きもあったかと思うが、いっさいの不安を感じさせない歌に、「おかえり」という声が飛び交うなか、この日彼らは温かく長い拍手に包まれながら全19曲を歌い切り、笑顔でロングツアーを完走した。

flumpool エンタメステーションライブレポート

MCで阪井一生に「山村がすぐにセットリストを変えるんですよ! そのおかげで、5ヵ月間ずっと新鮮な気持ちでいれたけど……」とこぼされていたが、山村が「ここからが僕たちの新しいスタート」と話していた5公演目、5月22日(水)に開催された東京国際フォーラムでのライブとはセットリストが5曲入れ替わっていた。

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「何度でも言わせてください。flumpool、帰ってこれました! ただいま!」という最初のMCのあとの4曲目が「君をつれて」から「DILEMMA」になっていた。

「君をつれて」は4つ打ちのダンスロックで、ボーカルにエフェクトの掛かったEDM調のロックアンセムであるオープニングナンバー「FREE YOUR MIND」からオーディエンスがクラップしながらジャンプして盛り上がる「しおり」、代表曲「花になれ」という最初のブロックの盛り上がりの系譜を継ぐ流れを担っていたが、この日に演奏された「DILEMMA」はピアノのリフが印象的なミドルテンポのポップチューンで、何よりも、地声とファルセットを交互に繰り返すことで、失恋に対する未練や葛藤を表現する楽曲である。
おそらく山村は本ツアーの最中に、歌えるという確かな手応えを感じたのだろう。この曲もそうだが、地声と裏声を自由自在に行き来し、6曲目に歌った、音楽をやるために上京してきたことさえも悔やむフォークロック「東京哀歌」でも抜けのいいファルセットを響かせていた。

また、5曲目が「今年の桜」から「Sprechchor」に。こちらは、歌詞の季節柄を考えての変更だろう。周りの意見に流されることなく、自分の意見を見極め、自分の気持ちを自分の言葉でしっかり発信していこうという声明にも似た歌詞は、本ツアーの根底に流れていた“声を発し、手を伸ばし、個と個で繋がっていこう”というテーマとも通じていたように思う。

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さらに、ヘビーでラウドなロックナンバー「解放区」や「夜は眠れるかい?」と、ツアーのタイトル曲とも言える「HELP」の間には、デビューミニアルバム『Unreal』に収録されていたバラード「Over the rain 〜ひかりの橋〜」が追加されていた。

ステージ後方に設置されたスクリーンには雨が降り、やがて光が差し込み、歌詞が映し出される。ひとつの傷に立ち止まることなく、明日が今日よりよくなることを信じて歩いていこうというメッセージを切々と歌い上げていた。この10月1日にメジャーデビュー11周年を迎えた今現在の彼らの心境とも重なっていたのだろう。

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そして、闇の中の希望を歌った楽曲に続き、山村はこう語った。

「次の曲は、昨年、声が出なかったときのことを思って描いた曲です。今思うと、変な言い方だけど、声が出なくなって良かったなと思います。僕は昔から自分の弱さを見せるのが苦手で。強がりばかり言っていて……声が出なかったり、うまくいかないライブのときも、メンバーが心配してくれているのに、“大丈夫、大丈夫”って前向きな言葉ばかりをずっと言ってきました。そのせいで、助けたいのに助けられない。伸ばしてくれた手も僕が取らなかった。けど、自分自身が苦しくなって、いよいよどうしようもなくなってしまったライブがあって。その夜に『眠れなくなってしまったから、助けて』とポロっと言ったひと言が、本当に多くの人を連れてきてくれました。たくさんの人が『大丈夫?』って声をかけてくれたり、心配してくれました。メンバーもマイナスの自分を知っているから『それでもお前はお前だよ』って言ってくれました。『またここからプラスにしていけばいい』って寄り添ってくれました。そこで、ひとりじゃないって思えて、あきらめずにここまで来れました。誰かを頼るとか、大人になればなるほど難しくなるし、甘えるってバカにされてしまいそうで怖いときもあるけど、自分の弱さを伝えられるのは自分の強さなんだと、今は思います」

スクリーンには水の中に沈んだパソコンの画面に“HELP”という文字が浮かび上がり、そのパソコンを救い出すように手が差し伸べられる。<助けて>と声を上げるボーカルに、バンドメンバーが<心つないで>というコーラスで手を差し出し、声をかける。自分(きみ)を守るために、手をかざせというメッセージが聴き手の心にまっすぐに届き、楽曲の後半では<help yourself, help myself>の大合唱となった。

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山村が「人は何度でも生まれ変われる!」と叫び、目の前にそびえる壁に立ち向かう強さを描いた「reboot 〜あきらめない詩〜」「Blue Apple & Red Banana」を情熱的に演奏。バンドが作る強固なグルーヴによって会場全体をひとつにする。

畳み掛けるように山村は「昨日の自分に負けるな!」というメッセージを投げかけ、会場をコール&レスポンスで盛り上げると、「声が出なくなってあきらめていた景色が今、目の前にあります」と感謝の気持ちを伝え、「愛してるぜ! 渋谷!!」と絶叫。タオル回し曲「World beats」では熱気と高揚感を生み出し、ギターが際立つロックナンバー「星に願いを」では歌詞を“渋谷ひとりひとりのために!!”と替えて熱唱した。

そして、本編ラストも「明日への賛歌」ではなく、あなたがいるかぎり、声が枯れても歌い続けるという強い意志が込められた「どんな未来にも愛はある」となっていた。歓びの歌であり、絆を感じる曲でもある。
山村は「この11年間、求め続けていたものが、きっとみんなの存在だったんだと思います」と語り、スクリーンにはこの曲も歌詞が映し出された。<もう一人にさせはしない/ただ、あなたが笑ってくれるから 僕は生きてゆける>というフレーズこそ、本ツアーで彼らが伝えたかったことなのではないかと思う。

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アンコールで山村が「自分たちを育ててくれたツアーだと思います。復帰1発目の大事なホールツアーで、声に心配や不安を感じていたところもあったんですけど、メンバーやスタッフも含め、たくさんの人が支えてくれたし、なにより、頑張って盛り上げてくれたみんなの思いも伝わってきて、24公演、どこも大成功して、昨日の自分たちを超えられて、どんどん成長できたツアーでした。本当に皆さんのおかげです。どうもありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えると、この日、何度目かわからないくらいの長く温かい拍手が湧き起こった。

さらに山村は「強くなったっていうよりも、カッコつけて着込んでいた鎧が剥がれた気がしています。それが強さというのかもしれないなと思いました。ひとりじゃないなと思えたし、このメンバーがいれば、きっと何十年先も笑っていられる自分でいられると思ったし、何よりもみんなと一緒にこれから先も歩んでいけたらいいなと心から思えたツアーでした」と語り、「つながり」をパフォーマンス。弱さや不安、痛みや孤独を抱えたままの<一人の“君”と“僕”で>抱き合おうよというメッセージを届けた。

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最後に再び観客に感謝の気持ちを伝え、「みんなとなら、きっとまた、明日も明後日も、来年も再来年も、今まで以上に楽しいことが待ってるんじゃないかなという期待で胸が膨らんでいます」と笑顔を見せた。

アンコールの最後もインディーズ時代からの人気曲「labo」ではなく、映画主題歌としてヒットした「君に届け」に変更。君との未来をまっすぐに信じるアップテンポのポップロックで会場全体を盛り上げ、「ありがとう! 君に会えてよかった!」と絶叫して、復帰ツアーを締め括った。

全編を通して感じたのは、この歌を、このメッセージを、絶対に届けるんだという執念にも似た山村の思いだ。長い暗闇を抜けて、ようやく取り戻したバンド活動。覚悟や勇気を持って再び歩み始めたゆえに、その思い、その歌声、そのエネルギーは以前に比べて潔くて強い。
なお、終演後には12月30日(月)に大阪城ホールで年末ライブを開催することをアナウンス。さらに、そこで新曲を披露することも明かし、来年にはアルバムをリリースすることも発表した。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / ヤオタケシ

flumpool 9th tour「⌘⇧Z(Command Shift Z)」

2019年10月4日(金)@東京・NHKホール SET LIST

M01. FREE YOUR MIND
M02. しおり
M03. 花になれ
M04. DILEMMA
M05. Sprechchor
M06. 東京哀歌
M07. 空の旅路
M08. 解放区
M09. HOPE
M10. 夜は眠れるかい?
M11. Over the rain 〜ひかりの橋〜
M12. HELP
M13. Reboot 〜あきらめない詩〜
M14. Blue Apple & Red Banana
M15. World beats
M16. 星に願いを
M17. どんな未来にも愛はある
ENCORE
EN01. つながり
EN02. 君に届け

ライブ情報

flumpool年末ライブ「FOR ROOTS」~シロテン・フィールズ・ワンスモア~

2019年12月30日(月)大阪城ホール

flumpool(フランプール)

山村隆太(vocal)、阪井一生(guitar)、尼川元気(bass)、小倉誠司(drums)。
2008年10月にダウンロードシングル「花になれ」でデビュー。2009年10月に日本武道館2デイズ公演を開催以降、ホールやアリーナツアーをはじめ、台湾・シンガポール・香港公演なども行う。2017年5月の3度目の日本武道館公演を皮切りに全国ツアーをスタートさせたが、その途中で山村の病気療養を発表。同年12月よりバンド活動を休止。2019年に入り活動を再開。2月よりファンクラブツアーを開催、5月22日にはシングル「HELP」をリリース。5月より全国ツアー〈flumpool 9th tour「⌘⇧Z(Command Shift Z)」〉を敢行。12月30日には年末ライブ〈「FOR ROOTS」~シロテン・フィールズ・ワンスモア~〉を開催する。

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