映画『アズミ・ハルコは行方不明』  vol. 1

Interview

ハルコの恋人役・石崎ひゅーい&松居大悟監督が大人の思春期を語る

ハルコの恋人役・石崎ひゅーい&松居大悟監督が大人の思春期を語る

『アフロ田中』『男子高校生の日常』『スイートプールサイド』の童貞映画3部作を経て、2015年にはクリープハイプのファンである4人の女子高校生を描いた青春ロードー・ムービー『私たちのハァハァ』が公開された松居大悟監督。この秋で31歳を迎えた彼の最新作『アズミ・ハルコは行方不明』は、女子高生/ハタチ/アラサー/アラフォーの各世代の女性が交錯する、ポップでスリリングな青春映画となっている。<エンタメステーション>では、今後の日本映画界を掻き回すであろう若き才能が集結した本作の公開を記念して、本作キャスト&スタッフと松居監督の対談連載企画を実施。特集第1回目のゲストは、今作で映画デビューを飾った、現在、32歳のシンガー・ソングライター石崎ひゅーい。年齢や世代といったテーマを念頭に、2人の出会いからそれぞれの本作に対する思いを語り合ってもらった。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影 / 関信行


春子が帰ろうとしたら、曽我が「もおおお……」ってなるところ。あの、自分に対しての苛立ちみたいなのはすごくよくわかる

2人の出会いは、松居監督がMCを務めていたWEB動画連載『松の間』でしたよね。第8回(2015年3月)の客人として、ひゅーいくんを呼んで。

松居 そうなんです。その連載では「好きな人や会いたい人を呼んでいいよ」と言われてて、そこでリクエストした中のひとりがひゅーいで。MVとかを観てて、すごくアーティスティックな人なのかなと思ってたんだけど、尾崎(世界観)くんから聞く話は「アイツは飲むとうんこをもらすよ」っていう感じで(笑)。そんなエピソードとパブリックイメージが繋がらないなぁって思って気になっていたんです。で、実際に会って話してみたら、うんこ側だったから(笑)。あ、こっち側だって安心しましたね。

石崎 あはは! 営業妨害!! 僕も松居くんの作品を観ていたし、尾崎世界観からプライベートも含めいろいろ聞いていて。だから、会う前からなんとなくわかってましたね。こじらせたクソ野郎だろうなって。

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(笑)プレスキッドには、ひゅーいくんを曽我雄二役にキャスティングしたのは「いい意味での野暮ったさがあったから」と書いてありました。

松居 ギラギラはしてるんだけど、それを感じさせないというか。一緒にいたらリラックスするというか、「俺も頑張らなきゃ!」ではなく、「この人といることがラクだな」と思ったんですよね。だから、この町を出ようなんて思ったこともなくて、毎日バイトして、出会い系アプリをやって生きている曽我に、春子が吸い込まれていくあの感じは、役者が役づくりをしてどうこうではなくて、そもそも、その人が持っているものに対して吸い込まれそうになるほうが説得力があるなと思って。ひゅーいをキャスティングしたときに、曽我のそういう一番大事なところはすでに共有してるなって思ったんですよね。

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ひゅーいくんは曽我を演じるにあたってどんなイメージを持っていました?

石崎 最初、読み合わせをやる前に、曽我をすごい想像して作って現場に行ったんです。それで、「すごい作ってきたぞ!」っていうようなヤツを出しちゃったんですよ。トーンの低い、ぶっきらぼうな男を自分の中で作ってて。そういう感じで臨んだら、まず怒られました。自分ではそれが正解なのかと思ってやっていたんだけど、結果は間違っていて。で、緊張もしてて。そのときに松居くんから「呼吸だよ」っていうメールが来て。「呼吸ってなんだろう?」っていうことを考えてたら、肩の力が抜けてきて。(蒼井)優ちゃんと話す、コミュニケーションをとる、呼吸を合わせるというところを意識してやったら、良くなっていきました。

松居 すごく洗練されたね、コメントが。

石崎 (いろいろな取材で)いっぱい話してますからね(笑)。

松居 ひゅーいが持つ曽我のイメージは必要なかったんですよね。ひゅーいがそこにいてくれて、みんなとコミュニケーションを取っていけば自然とあぶり出されていくだろうと思ってたから。ひゅーいの魅力は、得体のしれなさにあって。技術が伴わないから、どんどん動物的に芝居をするようになっていったんだけど、共演者も巻き込むし、作品自体をも巻き込んで、すごく読めない作品になっているから面白いなって思う。

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2人は男性として、曽我をどういう男と解釈していますか? 共通するところはありました?

石崎 僕は結構、自分と似てるなって思いました。

松居 プライドが高くて、自分から誘えなくてみたいな感じ?

石崎 そう。オラオラってタイプじゃなくて。

松居 そうだね。「もうっ!」みたいな。だから、あのシーンはすごくこだわったんですよ。曽我が春子から「セックスする?」と声をかけられるんだけど、やれなくて、春子が帰ろうとしたら、曽我が「もおおお……」ってなるところ。あの、自分に対しての苛立ちみたいなのはすごくよくわかる。

石崎 (松居監督を見ながら)本当に情けない男だよ。

松居 俺かい!?(笑)

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あはは! ひゅーいくんはクランクアップ後にリリースした自身のシングル「ピノとアメリ」のカップリング「お前は恋をしたことがあるか」で、曽我の気持ちを歌ってますよね。尾崎くんとのデュエットで、当時のインタビューでは「映画の自分の役の心情そのままで書いた」と言ってて。

松居 撮影が全部終わったあとに、みんなでご飯を食べたときにひゅーいが「とりあえず聴かせられるものができたから」って3曲聴かせてくれて。それが、めちゃくちゃ良くて。もしかしたら同じ景色を見てきたからかもしれないけど、それを抜きにしてもすごく良くて、単純に嬉しかったです。

石崎 曽我って、こういうこと(歌詞のようなこと)を言っちゃうタイプだと思うんですよ。っていうか、こういうふうに思っていてほしいなって。そうじゃないと救いがないからかわいそうじゃないですか。ただのくそ野郎なんだもん(笑)。

松居 <顔を洗って歯を磨いて/天気予報士を馬鹿にした>っていう歌詞がすごくいいよね。やっぱり、ひゅーいが、曽我を役者として生きたけど、ミュージシャンとしての自分の中にちゃんと落とし込んで、それが曲になったのが嬉しいし、また繋がっていく感じがする。

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ひぃーいくんにとって、松居監督はどんな存在ですか?

石崎 松居くんは……最近、お金払ってくれるし。

松居 やめて(苦笑)。

石崎 最初はね、払ってくれなかったんですよ。割り勘する前に帰っちゃったりとか。最近は違って、多めにパッと置いて帰っていくんです。だから、恩人ですね(笑)。こういう場所を与えてくれたことも、石崎ひゅーいにとってはかなり大きな出来事だし、すごい経験だった。だって、「出たい!」って言っても出れるものじゃないでしょ?

松居 出れない、出れない。

石崎 だから、2つの意味で、恩人ですね。

ちなみにひゅーいくんから見た松居くんの精神年齢はいくつくらい?

石崎 13くらいじゃないですか?

松居 あはは。中1か。でも、ひゅーいは10歳だよ。

石崎 あはは!

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