Interview

杏と笹野高史が映画館で音を体感してほしいと語る『オケ老人!』

杏と笹野高史が映画館で音を体感してほしいと語る『オケ老人!』

オーケストラで演奏するという夢をあきらめきれない高校教師〈小山千鶴〉が入団したのは、頭を抱えたくなるような演奏をする老人ばかりのアマチュア・オーケストラ。そこで出会ったアマオケ老人たちとのコミュニケーションと共に成長する千鶴を通して“新しいことを始めるのに年齢は関係ない”ということを教えてくれる痛快クラシック・コメディ『オケ老人!』がついに公開。本作の主演である杏と共演の笹野高史に、本作の魅力や撮影当時のエピソードをたっぷり話してもらった。

取材・文 / 吉田可奈 撮影 / 三橋優美子


どんなに年齢を重ねても、探求心、好奇心、童心を忘れない

映画『オケ老人!』ではどのような役作りをしましたか?

 私が演じた小山千鶴は、現代を生きる、20代の等身大の女性なんです。そこまで突出した才能があるわけではない役柄だったので、人格的な説得力を持たせる役作りをするというよりは、バイオリンをうまく弾けるようになるよう練習しました。

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笹野 私は最初、指揮者の役をいただいたので、身振りで指揮の特訓をしていたんです。でも、あまりに気合いが入りすぎて、次の日には肩が上がらなくなったんです(笑)。「これではいかん」と思い、ネットでちゃんと指揮棒を3本ほど購入して、自分でも驚くほど練習に没頭したんです。でも、よくよく考えたら私の役は、途中から指揮者ではなく、バイオリンを弾くようになるんです。

 (笑)。千鶴のバイオリンと指揮を交換するんですよね。

笹野 そう! こんなにも稽古をしたのに、実は無駄なことだったんじゃないかと思ったら、がっかりしてしまって……。でも、後に杏ちゃんが指揮をするシーンでは、指揮を特訓していたおかげで、指揮の動きに合わせて動くことができたんです。改めて、何事も無駄なことはないなと実感できました。

 

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笹野さんが演じた野々村秀太郎は、アマオケのコンマスでありながら、本業は電気屋さんの役でしたね。

笹野 そうなんです。彼は電気屋さんですから、プラスとマイナスだけで生きてきたんですよね。でも唯一、人生の支えとなっていたのが、クラシック音楽なんです。人間って、どんな人でもパッと花火が揚がる瞬間があると思うんですが、この人はこの年齢になるまで一度もその経験がなく、あの歳になってやっと自分の輝ける瞬間を味わえたんです。だからこそ味わい深い花火だったと思うので、その雰囲気を出せたら、と演じました。

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撮影現場はどのような雰囲気だったのですか? お2人を見ているとすごく楽しい現場だったのかなと思います。

 笹野さんは、携帯のメディアやアプリに、ものすごく詳しいんです。撮影中も、3秒間を切り取るという、写真とも動画とも言えないアプリを紹介してくださって、すごく盛り上がりました。

笹野 ほらほら! もっと、「芸に対することを教えてもらいました」みたいなコメントしてよ(笑)。

 それはもちろん! でもなによりも、そのアプリに対する衝撃が強かったんです(笑)。

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笹野さんが撮影現場に自前のトランペットを持ってきたというお話を伺いましたが、実際に持ってこられたんですか?

笹野 そうそう! 私の趣味は楽器集めなんです。私の家にはたくさん楽器があるので、「ぜひ私の楽器を使ってくれ」って言ったんです。

 こんなに楽器を持っている方はいないので、ビックリしましたよ。

笹野 そういえば、フルートは私の楽器を使ってくれたんです。あれは自前のフルートなので、それに注目して観てもらえたらと思います(笑)。

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練習用に買った指揮棒は、杏さんに引き継がれたんですか?

笹野 本当はプレゼントしたかったんですが、使い込んでいる指揮棒は、いいくたびれ方をしているんですよ。それは、長年使わないとそうならないので、プレゼントはせず、スタッフさんが一生懸命に作ってくれた指揮棒を使いました。

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印象に残っている撮影エピソードがあれば教えてください。

 笹野さん演じる野々村さんが倒れるシーンがあるんですが、ものすごく滑稽で面白いんですよ(笑)。共演していた野々村さんの孫役である黒島結菜ちゃんが、思わず「ふふ」って笑ってしまったテイクが使われていて、すごくリアリティがあるんですよね。実際、結菜ちゃんも「素で笑っちゃいました(笑)」と言っていて。あのシーンは何度観ても笑っちゃいますね。

笹野 私はどのシーンも印象的でしたが、何よりも、現場で杏ちゃんに「実は私、この映画が初主演なんです」と言われたときに「え!? 嘘だろ!?」と言ったほど衝撃的だったのを覚えていますね。彼女はいつも自然体なんですよ。待合室でも、カメラの前でも本当に変わらないんですよ! 年寄り連中はそんな杏ちゃんを見て「あの人はいいねぇ、変わらないねぇ」って話していました。「それが彼女の魅力なんだろうね」って噛みしめていましたね。「私、主演なので頑張ります!」という風情がまったく感じられずに、普通に演じていたのでビックリしちゃって。そこが杏ちゃんのいいところなんですけどね。

自然体でいることは、気をつけているのでしょうか?

 いや、今回の千鶴の役が、自分とかけ離れた役という人格ではなくて、隣に住んでいるような女の子だったので、すごく自然体で演じることができたんです。

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実際に完成した映画をご覧になって、いかがでしたか?

 こだわりの演奏シーンは、やはり音の厚みが全然違うので、ぜひ映画館で観てもらいたいと思います。まだ私も試写室でしか観ていないので、あの音を浴びるような感覚を味わえていないんですよ。それを体感するためにも、映画が公開したら、映画館に行こうと思っています。

笹野 私もまだ客観的に観ることができていないんですよ。作品としては封切られてから、お客様と一緒に観て感じられるんじゃないかな。

 たしかに、客観的には観られないですよね。最初に試写室で観て気づくのは「あのシーンがなくなってる!」とか「このシーンは大変だったな」ということばかりで……(笑)。

笹野 そうなんですよね。きっと、こういったインタビューでまだ公開されていないのに立派なことを言っている人はたくさんいるじゃないですか。あれはすごいですよね(笑)。

 いやいや(笑)。冗談は置いておいて、自分たちでは客観的に観られないからこそ、面白いと言ってもらえると本当に嬉しいんです。

笹野 もちろん、この作品はすごく面白いですよ!

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この作品では、面白いだけでなく、何かを始めたり成し遂げようとしたりするのに遅いということはないということを教えてもらいました。

笹野 そのとおりです! 始めるのに、年齢は関係ないですからね。年齢は自分で決めるというスタンスはすごくいいですよね。

 共演した石倉(三郎)さんが、「今回、俺は“老け作り”しているから! 老人役なだけで、老人ではないからね」とおっしゃっていたんです。本当にその言葉どおり、みなさん熱気に溢れていたんです。そんなみなさんを見ていると、どんなに年齢を重ねても、探求心、好奇心、童心を忘れないということは、活力に影響するんだなということを学びました。私もこんなふうに年齢を重ねたいです。

 映画『オケ老人!』

2016年11月11日公開

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梅が丘高校に赴任してきた教師の〈小山千鶴〉。学生時代にオーケストラに所属していた千鶴は、地元の文化会館でアマチュア・オーケストラの演奏を聴き、バイオリンをもう一度演奏したいという気持ちに駆られる。そこで地元でエリートと言われているそのオーケストラに連絡を取ると、あっさり入団OKの返事をもらえた。翌日、心を躍らせながら練習会場へ向かうが、なんだか様子がおかしい。そこへやって来るのは、なぜか老人ばかり……。梅が岡には2つのアマチュア・オーケストラが存在し、どうやら千鶴が入団してしまったのは、もうひとつの別の楽団“梅が岡交響楽団=梅響”だったらしい。入ってしまった年寄りばかりの“梅響”のメンバーは、音楽は大好きだけど、演奏はドヘタ。オケの練習よりもその後の飲み会が楽しみにしている彼らにあきれて退団することを決意するが、あるきっかけで、指揮棒を振る羽目になってしまう。

【監督・脚本】細川徹
【原作】荒木源(小学館文庫刊)
【キャスト】
杏 黒島結菜 坂口健太郎 左とん平 小松政夫 藤田弓子 石倉三郎 茅島成美 森下能幸 萩原利久 フィリップ・エマール 飛永翼(ラバーガール)/光石研 笹野高史
【配給】ファントム・フィルム
オフィシャルサイトhttp://oke-rojin.com/

©2016荒木源・小学館/「オケ老人!」製作委員会


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オケ老人!

荒木源 (著)
小学館

老人ばかりで構成された平均年齢おそらく世界最高齢のアマ・オーケストラ「梅が丘交響楽団」(略称・梅響)に、ひとりの高校教師・中島が間違って入り込んでしまったところから物語は始まります。 彼は、全く演奏など論外のはずの土下手くそな「オケ老人」たちのなかで勿論一番若く、力も備わっていると目され、いきなり指揮者になってくれと皆から懇願されます。 その後、彼が本当に門を叩きたかった同じ町にある人気のアマオケ「梅が丘フィル」(略称・梅フィル)との確執、梅フィルの怜悧で完璧主義のコンマス・大沢が熱望するロシアの人気指揮者・ゴルゴンスキーの来日騒動などを経て、日本・ロシアの国家機密の情報漏洩にまで話は大きく展開していきます!

1986年生まれ、東京都出身。2005年から海外のファッションショーで活躍し、2006年の『Newsweek』の「世界が尊敬する日本人100人」に選出される。2007年にドラマ『天国と地獄』(EX)で女優デビューを飾り、『名前をなくした女神』(11/CX)で連続ドラマ初主演を果たす。NHK連続テレビ小説『ごちそうさん』(13~14)で主演を務め、一躍人気を集める。そのほかの主な出演作に【ドラマ】『花咲舞が黙ってない』(14・15/NTV)、『デート~恋とはどんなものかしら~』(15/CX)【映画】『おかえり、はやぶさ』(12/本木克英 監督)、『映画 妖怪人間ベム』(12/狩山俊輔 監督)、『プラチナデータ』(13/大友啓史 監督)、『真夏の方程式』(13/西谷弘 監督)、『百日紅 ~Miss HOKUSAI~』(15・声の出演/原恵一 監督)、『星ガ丘ワンダーランド』(16/柳沢翔 監督)などがある。また、第2弾エッセイ集『杏の気分ほろほろ』(朝日新聞出版)が発売中。

笹野高史

1948年生まれ、兵庫県出身。1968年より俳優活動をスタートし、映画、テレビドラマ、CM、舞台などで活躍する。1985年の『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』以来、山田洋次監督作品の常連となり、『武士の一分』(06/山田洋次 監督)で日本アカデミー賞最優秀助演男優賞に輝く。そのほかの主な出演作に【映画】『男はつらいよ』シリーズ(85~95/山田洋次 監督)、『学校』シリーズ(93~00/山田洋次 監督)、『おくりびと』(08/滝田洋二郎 監督)、『劒岳 点の記』(09/木村大作 監督)、『テルマエ・ロマエ』(12/武内英樹 監督)、『テルマエ・ロマエ II』(14/武内英樹 監督)、『ふしぎな岬の物語』(14/成島出 監督)、『クリーピー 偽りの隣人』(16/黒沢清 監督)、主演作『あったまら銭湯』(16/大継康高 監督)などがある。2017年は出演作『新宿スワンⅡ』が1月21日に、『たたら侍』(錦織良成 監督)が初夏に公開予定。