Interview

菅田将暉はストイックな求道者!? 愛をもって暴君を演じる。舞台『カリギュラ』に見る、彼の信念

菅田将暉はストイックな求道者!? 愛をもって暴君を演じる。舞台『カリギュラ』に見る、彼の信念

20世紀のフランスを代表する作家のアルベール・カミュが『異邦人』『シーシュポスの神話』と共に“不条理3部作”と位置付けた傑作戯曲『カリギュラ』は、1945年にフランスのパリでジェラール・フィリップ主演によって初演をされた歴史ある作品で、このたび日本の演劇界を代表する演出家の栗山民也の手により、11月9日(土)から新国立劇場 中劇場にて上演される。
主演には、数々の映画賞を受賞し、今年デビュー10周年を迎え、俳優のみならずミュージシャンとしても注目を集める菅田将暉、ほかに高杉真宙、谷田 歩、橋本 淳、秋山菜津子など豪華な布陣で『カリギュラ』を現代に蘇らせる。
本作で栗山と初タッグを組み、主人公・カリギュラを演じる菅田将暉にインタビュー。

取材・文 / 竹下力 撮影 / 冨田望


カリギュラを演じることは僕の俳優人生にとって大きな意味がある

歴史ある作品に出演することになったお気持ちから聞かせてください。

これまでも様々な俳優が演じてきた偉大な作品ですし、カリギュラを演じることは僕の俳優人生にとって大きな意味があると思うので光栄です。『カリギュラ』という傑作を今の“菅田将暉”で演じて欲しい、観たいと思ってくださる方がいることに感謝して、わがままに、それでいて丁寧に、舞台の上を暴れることができれば嬉しいです。

菅田さんにとって、デビュー10周年という節目でこの大作に挑戦することになりました。何か特別な気持ちを抱かれることはありますか。

今になって振り返ってみると、あっという間に10周年を迎え、まだまだこれから先は長いですが、僕なりに区切りをつけることで、僕の過去も未来も見えてくると思うので、そんなときに『カリギュラ』に出演できることは特別な気がしています。親元を離れ、自分なりに一生懸命に芝居を続けてきて、タイミング的にも新しい僕をお客様に評価していただく時期であり、僕の人生を考え直さないといけないタームでもあったので、これから役者としてどうしていくのかという選択肢を『カリギュラ』で見つけたいです。

菅田将暉 エンタメステーションインタビュー

戯曲を読まれた感想を聞かせてください。

戯曲というと難しくて複雑なイメージを抱かれる方がいらっしゃるかもしれませんが、戯曲に携わっていくと他人事ではなく、まるで目の前で起こっているような錯覚を覚えるようになります。今作は、“そんなことしなくていいはずなのに、しなければならない”という暴力的な衝動がテーマになっていると感じました。僕の演じるカリギュラは暴君として残虐な行為を繰り返し、人を傷つけ、最終的には自分も傷つけてしまう。それは、今の時代に通じている部分もあり、人にとって大切な“愛”を手にしたいという体温を感じさせる戯曲でもあって、読んでいて気持ち良かったです。

本作はカミュの中でも人間の“不条理”を描いた傑作舞台として名高いですね。

舞台は、つくりものの要素があるので、“不条理”さをつねに兼ね備えていると思っています。

なるほど。

お客様の前で演じている時点で条理がないと思っているので、それを踏まえてエンターテインメントとして提示していくことが大切だと考えています。現実でも“不条理”を感じることがたくさんありますよね。それを感じてしまうことが人間の可愛いらしいところだし、カミュは決してありえないお話を書いているわけではなくて、“不条理”を描くことで、人間が“生きている”ことを表現していたのかなと感じました。

読み物は書き手の意思が伝わる

脚本を読むときに気をつけていることはありますか。

読み物は書き手の意思が伝わると思っています。読み込んでいけばいくほど、書き手が何を描きたかったのか、この登場人物はどうしてそんな台詞を言っているのかという必然を理解することができるし、戯曲にはそれを感じさせる心に残るワードがあると思っています。今作で言えば、「不可能なものが欲しい」という言葉もそうですが、言葉から作者のぬくもりが伝わってくるので、それを感じることを心がけています。そこから、僕が演じる役として見た景色とあらかじめ決められた台詞がどうすれば繋がっていくのかを意識して読んでいきます。でも、初めのうちは自分の感覚を大事にしますが、栗山さんに指摘されれば、柔軟に対応したいです。

菅田将暉 エンタメステーションインタビュー

青年のカリギュラは暴君として描かれていますが、どんな役どころだと思いますか。

力を持つと思わず使いたくなる人間の“業”を感じます。カリギュラは妹が急死したことで人生の“不条理”を感じて暴君に変貌を遂げていくわけですが、当時の時代のシステムや、彼は王としての資格もあるけれど、それは規模の問題でしかなく、僕らにも多かれ少なかれ同じことがある。車を運転していたら赤信号が多くて会社に遅刻してしまうことも、単純に朝早く家を出発すれば良かっただけの自分自身の問題なのか、周りの環境が悪いのかわからないですよね。カリギュラはそういった“不条理”に真摯に向き合っているがために狂ってしまって、理不尽な力を使ってしまう。ただ闇雲に暴君として存在しているわけではなくて、しっかり物事を考える人で、起こっている出来事を肌で感じたい人物なんだと思います。彼の中にはつねに知りたい真実があって、それが抑えきれない衝動になっている。目の前にあるものを殴れば済むわけでも、腹が立つ人間を殺せば望んだ答えが手に入るわけでもないもどかしさと、王であるがゆえに孤独に己の道を突き進んでいくことを楽しんでいる刹那さも兼ね備えた人物だと思います。

幕が開いて本番になっても気づくことがたくさんある

これまで様々な役を演じてきたと思いますが、普段はどのように役づくりをされていますか。

なんとなくですね(笑)。最初の段階は、いつもフワフワしています。脚本や演出家、舞台のセット、周りの共演者に導かれて役をつくっていきます。「これが正解だろう」というお芝居を積み重ねて、演じる役のいらない要素を捨てて、次第に全速力で走ることができるようにします。今回もやはり稽古をしながら役をつくっていくことになると思いますが、舞台の面白いところは、幕が開いて本番になっても気づくことがたくさんあるんです。実際にお客様の前に立って理解できることがいろいろあるし、本番で演じてみないとわからないワクワクもある。本番でも役づくりは終わらないと思います。

特に舞台の場合に演じるうえで気をつけることはありますか。

自分の役の生き様を成立させることです。舞台は映画やテレビドラマと違って、お客様の目の前で演じないといけないので、観客をいつの間にか舞台の世界に連れていく度合いが強い。だから誰よりも自分を信じて演じようと思っています。舞台は映像のようにカット割りとかがないから、目の前で生きていると感じてもらうことがスタートだと思います。

菅田将暉 エンタメステーションインタビュー

演出の栗山民也さんとご一緒される気持ちを聞かせてください。栗山さんが演出された井上ひさしさんの『夢の裂け目』をご覧になったそうですね。

演劇的な嘘を巧みに使っていて、観ていて心地よかったです。お客様を飽きさせず、見せたいシーンはお客様もまっすぐ観ることできるし、演じるほうも照れることなくまっすぐ演じることができると思いました。なにより舞台への“愛”が詰まっていました。『夢の裂け目』は題材がシビアで、ナーバスな問題を扱っていますが、エンターテインメントとして届けながら、家に帰ったときにボディーにくるような(笑)、気持ちが凹みそうな重さも持っていて感動しました。

舞台では演出家が役者として大切な部分を引っ張ってくれる

演出家という点では、菅田さんはこれまでに、NINAGAWA×SHAKESPEARE LEGEND I『ロミオとジュリエット』(2014)で蜷川幸雄さん、『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』(2017)では小川絵梨子さんという錚々たる方とご一緒しています。役者として引っ張ってくれたところはありますか。

舞台では演出家が役者として大切な部分を引っ張り出してくれると思います。蜷川さんには今の時代に生きる大切さ、そして自分が俳優であるという自覚を教えてもらいました。僕はロミオ 役でしたが、生きることをあれほど考えた時間はなかった。しかも、“オールメール”だったので、ジュリエットも男性ですし、性別やどんな人間かといったことは関係なく、ただ目の前の真理を探していく濃厚な経験でした。そのあとすぐにお亡くなりになってしまったので、まだまだ引き継げるものがあると思うと、もっと多くのことを話したかったです。そこから小川さんとご一緒して、小川さんは蜷川さんと似た芸事へのリスペクトを感じさせながら、演劇に対してどんなものにも縛られない自由な発想がある方だなと思いました。そして、僕らが当たり前のように使っている日本語の面白さをあらためて教えてもらったし、言葉によるコミュニケーションを考えさせられるきっかけになって、演じていて楽しくて飽きなかったですね。

役者として感じた面白さがあったんですね。

たくさんあります。小川さんであれば、『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』は言葉遊びの舞台で、台詞の裏の意味を考える高次元の遊びをして、謎解きのようにみんなで台詞の意味を解明していきました。「あなたのことが好きです」と言わずに、どうやって自分のアイデンティティから生み出された言葉で相手に意味を伝えていくかを考えていく。そこで俳優は豊かで贅沢な仕事だと思い知らされました。

ちなみに、蜷川さんの場合はどうでしたか。

蜷川さんはずっと見届けてくださいました。稽古場で違うことにチャレンジし続ける日々で、お芝居を固めないようにして、前日にプランを決めて行っていました。僕としては、ロミオは“1週間で死んでしまうセミ”と思っていたので(笑)、“ロミジュリ”だからといって神格化せずに演じたいという想いがありましたね。丁寧で美しい『ロミオとジュリエット』はたくさんあるので、土くさいロミオを演じたくてお芝居をしていましたが、蜷川さんはそれをただ見届けてくれて、僕の表現を受け入れてくれているようで、役者として有意義な現場でした。

僕の職業はあくまで役者

菅田さんのすごいところは、俳優としてだけでなく、音楽活動も熱心に取り組んでいることで、役者とミュージシャンの違いはありますか。

僕にとって俳優とミュージシャンは別物で、僕の職業は、あくまで役者なんです。一時期、俳優だけをしていると自分が壊れてしまうと感じていた時期がありました。そこでいろいろ考えて、誰かを演じるためには自分のベースをしっかりつくる必要があるし、ベース確認のためには音楽とラジオが必要だと思うようになって。プライベートで音楽を括ってしまう方法もありましたが、それだと違うと違和感を覚えて、表舞台で感じるストレスは表舞台で発散しないとダメだと感じるようになりました。俳優を続けていると生じる無理を正そうとする方法が僕にとっては音楽やラジオであるという位置付けです。

菅田将暉 エンタメステーションインタビュー

今作を通して役者としてどのようになっていきたいですか。

“菅田将暉”という人物はとても充実しているし、幸せな人間だと思います(笑)。周りからやらされるのではなくて、やりたいことを言えるようになってきました。しかも自分の好きなことが実現できるようになったわけですから、これほど幸せなことはないです。でもそうなると、カリギュラのように強欲なのか、つまらなくなる自分もいて(笑)、決して課題がないわけではないので、周りに支えられている想いもありますし、この10年ですべてを手に入れたような気持ちになってはいけない自戒の気持ちがあります。ポジティブな言葉をいただけるのは嬉しいのですが、ポジティブな言葉をもらうほど不安にもなる。これからも向上していきたいから、前を見据えて淡々と俳優を続けていきたいと思います。そのタイミングで栗山さん演出の『カリギュラ』のお話をいただいて、自分なりの役者としての未来を確認しながら、僕が何をしたいのか、今作で見つかるような気がしています。

お話を伺っていると菅田さんは役者を究めようとする求道者だと思いました。

えっ、求道者!?(笑)ありがとうございます。

『カリギュラ』は決して人を傷つけないエンターテインメント作品

それでは、最後に意気込みを聞かせてください。

僕は残虐な人物を演じるわけですが、今の時代に、そんな人物を見ていただくことに価値があると思っています。彼の持つ残虐性が、いつか誰かへの“愛”に変わると信じて僕らは演じる、決して人を傷つけないエンターテインメント作品ですので、目の前で何が起きようと目を背けないでいただければ嬉しいです。チラシに“カリギュラは独裁者かそれとも革命家か”というキャッチコピーがありますが、その答えはカリギュラが出してくれると思いますので、ぜひ劇場で彼の行く末を見届けてください。


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舞台『カリギュラ』

東京公演:2019年11月9日(土)~11月24日(日)新国立劇場 中劇場
福岡公演:2019年11月29日(金)~12月1日(日)久留米シティプラザ ザ・グランドホール
兵庫公演:2019年12月5日(木)~12月8日(日)神戸国際会館こくさいホール
宮城公演:2019年12月13日(金)~12月15日(日)仙台銀行ホールイズミティ21 大ホール

STORY
ローマ帝国の若き皇帝カリギュラ(菅田将暉)は、愛し合った妹が急死した日に宮殿から姿を消し、その3日後に戻ってきた。その日を境にそれまで非の打ち所のなかった皇帝は豹変し、貴族平民問わず、何らかの財産を持つものを区別なく殺しその財産を没収する、という驚くべき宣言を出す。
しかし、それはほんの序章でしかなかった。
それから3年後、カリギュラは、彼を深く愛している年上の女性セゾニア(秋山菜津子)、忠臣のエリコン(谷田 歩)を従い、残虐非道な行為の数々を繰り広げていた。やがて貴族たちの怒りと怖れはカリギュラを殺害することへと向かっていき、カリギュラに父を殺された若き詩人シピオン(高杉真宙)も、彼を殺したいほど憎んでいる。だが、カリギュラの思想の危険さをいち早く感じていたケレア(橋本 淳)だけは、今は時期尚早だと“その時”が来るのを待つように貴族たちを諌めるのだった。
カリギュラは自らの命の危険を知ってもなお、止まることなく、さらに暴走を続ける。
彼は革命をもたらす王か、それともただの殺人者か。カリギュラが探し求めた「不可能なもの」とは……?

作:アルベール・カミュ
翻訳:岩切正一郎
演出:栗山民也

出演:
菅田将暉 高杉真宙 谷田 歩 橋本 淳 秋山菜津子

原 康義 石田圭祐 世古陽丸 櫻井章喜 俵 和也 野坂 弘 坂川慶成
石井 淳 石井英明 稲葉俊一 川澄透子 小谷真一 小比類巻諒介 西原やすあき 髙草量平 原 一登 平野 亙 峰﨑亮介 吉澤恒多

主催・企画制作:ホリプロ

オフィシャルサイト
オフィシャルTwitter(@horipro_stage)

菅田将暉(すだ・まさき)

1993年2月21日生まれ、大阪府出身。2009年『仮面ライダーW』でデビュー。『共喰い』で第37回日本アカデミー賞新人俳優賞、『あゝ、荒野』で第41回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞、第68回芸術選奨映画部門文部科学大臣新人賞など受賞歴多数。2017年から音楽活動を開始し、シングル「見たこともない景色」でデビュー後、「さよならエレジー」はLINE MUSICで2018年年間ランキング1位を獲得。2018年3月にリリースしたデビューアルバム『PLAY』はオリコン初登場2位にランクイン。音楽アーティストとしても大きな注目を集めている。主な出演作品には【舞台】『タンブリング』、『ロミオとジュリエット』、NINAGAWA×SHAKESPEARE LEGEND I『ロミオとジュリエット』、『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』【映画】『共喰い』、『セトウツミ』、『溺れるナイフ』、『銀魂』、『あゝ、荒野』、『アルキメデスの大戦』【テレビドラマ】連続テレビ小説『ごちそうさん』、『おんな城主 直虎』、『dele』、『3年A組-今から皆さんは、人質です-』などがある。出演待機作には『糸』(2020年公開予定)を控えている。

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関連音楽:菅田将暉
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