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“ノイタミナ初のBL原作アニメ”全11話を見終えて─いい意味で期待を裏切ってくれた『ギヴン』の繊細な魅力

“ノイタミナ初のBL原作アニメ”全11話を見終えて─いい意味で期待を裏切ってくれた『ギヴン』の繊細な魅力

2019年夏クール、オンエアを終えたTVアニメの中から、アニメ担当ライターが「ぜひ観ておいて欲しい!」というオススメの作品をピックアップ。リアルタイムでの放送を見逃した方は、ぜひDVDやBlu-ray、サブスクリプションサービスでその魅力を味わってください。今回は、恋愛要素はもちろん、ディテールを丁寧に描いたバンドものアニメとしても秀逸な『ギヴン』をご紹介!

文 / 阿部美香


実はそれほど強くないBL色。ナイーブな青春ドラマ+バンドもの作品の醍醐味が詰まった作品に

『ギヴン』は、高校生離れした腕を持つが、音楽にも趣味にも情熱を抱けなくなっていたギタリスト・上ノ山立夏(CV:内田雄馬)と、ある思い出が込められたギターを通じて知り合い、惹かれ合っていく天才的な歌唱力の持ち主・佐藤真冬(CV:矢野奨吾)を軸に繰り広げられる物語だ。原作は「シェリプラス」(新書館)にて連載中のキヅナツキ作のボーイズラブ(BL)コミック。丁寧で美しい絵柄と、詩的な言葉で紡がれる繊細な心理描写で人気を博している作品だ。

あの「ノイタミナ」が初めてBL原作を扱うことでも話題となった本作だが、そう声高に謳うほどBL色は強くないというのが正直な感想だ。むしろ、そこに期待してチャンネルを合わせた人には、物足りなささえ感じるかもしれない。だが『ギヴン』はそこがいい。それだけ、一瞬、一瞬の心の揺れ動きを鮮明に描き出すナイーブな青春人間ドラマとしての魅力と、バンドもの音楽アニメとしての醍醐味が前面に押し出され、地に足のついた詰め込まれ方をしているからだ。

物語の始まりは、立夏が学校外れの階段の踊り場で真っ赤なエレキギターを抱えて眠っていた真冬と、初めて会話するシーンから始まる。真冬のギターの弦が錆びて切れているのを(楽器を大切にするギタリストらしい)怒りで指摘する立夏に、意気消沈する真冬。見かねた立夏は、自分が持っていた弦を怒りにまかせて張り替えてやり、チューニングをしようとあるコードを鳴らした瞬間、真冬は立夏に必死で「俺に、それの弾き方を教えてください!」と食い下がる――。弾き方すら知らないギターを、なぜ真冬は大切に抱えて持っているのか? 

鮮烈なスタートダッシュから、物語がバンドストーリーへとシフトしていくのも、BL要素をナチュラルに感じさせる展開の妙がある。物語が進むうちに、真冬の重たい過去が関係していることが分かり、彼らがそこから組むことになる「ギヴン」というバンドの他のメンバー達にも、ワケありな過去があることが明らかになっていく。

だが、男同士の恋愛要素が前面に出てくるまで、きちんとバンドやライブを取り巻く描写のリアルさが丁寧に積み重ねられているのも、『ギヴン』の面白さだ。だからこそ、彼らが音楽に込めた想いと、音楽を通じての男同士の心の交流、相手を想う心の内と想いが通じないもどかしさが、リアリティを持ってしっかりと観る者に伝わってくる。

惚れた腫れただけを軸にしていない、音楽アニメとしての見どころは多い(それは原作のこだわりでもある)。カッコいい男子を描く要素として音楽やバンドをモチーフにする作品が多い中、その音楽やバンドが雰囲気作りの小道具として扱われているのを観ると、どうにもガッカリしてしまう筆者。だが、『ギヴン』はいちいち「おお~っ」と思わせられるポイントがあって、それだけでも楽しいのだ。

実在メーカーの楽器やアンプ、練習スタジオの風景、演奏シーンの運指やアクション(立夏くんのタッピング!)、ライブハウスの対バンとのやりとりの描写も“あるある”だ。立夏が練習スタジオでフェンダーのテレキャスをマーシャルのJCM 2000で鳴らしているのを見て「お、いい街スタ使ってるな、立夏はけっこうクランチ使いなのかな?」と想像したり、立夏がエフェクターが欲しいという真冬にすすめるオーバードライブが(劇中ではメーカー名は書かれてないが)「お、チューブスクリーマー系かな、MXRの形してるよな?」とニヤニヤしたり、真冬にギブソンのホロウ・ボディ(ES-339説あり?)を持たせているのも「あえてかな?」と思えたり。映像化される時に忘れられがちな、ドラムセットの下にちゃんとドラムマットが敷かれている描写もニヤリとする。

実際に劇中で奏でられたバンド「ギヴン」の楽曲が、けっこうイマドキなフェスバンドを彷彿とさせるギターロックだったのは意外だったが、真冬がライブで初めて自作詞でボーカルを披露することになるまでのバンドの行く末にもやきもきさせられる。もともと天才的な歌唱力を持つ設定の真冬を、実際に歌で演じた矢野奨吾のプレッシャーたるや、相当だったのではないか(その時のヒリヒリとした歌唱は、真冬の心情とリンクして、感動的だった!)。恋愛ストーリーとしては、ギヴンの残り2人のメンバー、ベースの中山春樹(CV:中澤まさとも)とドラムの梶秋彦(CV:江口拓也)の切ない関係性も注目してほしいポイントのひとつだ。

そんな『ギヴン』、『映画 ギヴン』というタイトルで2020年の劇場公開も発表された。バンドマン達の愛情の行方と彼らの音楽が、どう進化・変化していくのかが楽しみだ。

TVアニメ『ギヴン』

FODにて独占配信中

【STAFF】
原作:「ギヴン」キヅナツキ(新書館「シェリプラス」連載中)
監督:山口ひかる
シリーズ構成:綾奈ゆにこ
キャラクターデザイン/総作画監督:大沢美奈 
美術設定:綱頭瑛子
美術監督:本田光平
色彩設計:加口大朗
撮影監督:芹澤直樹
撮影監督補佐:中川せな
CG監督:水野朋也
編集:伊藤利恵
音響監督:菊田浩巳
音楽:未知瑠
アニメーションプロデューサー:比嘉勇二/秋田信人
アニメーション制作:Lerche
オープニング・テーマ :「キヅアト」 センチミリメンタル
エンディング・テーマ :「まるつけ」 ギヴン

【CAST】
佐藤真冬:矢野奨吾/上ノ山立夏:内田雄馬/中山春樹:中澤まさとも/梶 秋彦:江口拓也
村田雨月:浅沼晋太郎/鹿島 柊:今井文也

『映画 ギヴン』

2020年公開決定!

©キヅナツキ・新書館/ギヴン製作委員会