Interview

Kがセルフプロデュースによる新作『Curiosity』を「“ながら聴き”してほしい」と言う理由

Kがセルフプロデュースによる新作『Curiosity』を「“ながら聴き”してほしい」と言う理由

前作『Storyteller』以来、約1年半ぶりとなるオリジナルアルバム『Curiosity』が到着。笑福亭鶴瓶の主演映画『閉鎖病棟 ―それぞれの朝―』主題歌「光るソラ蒼く」、デビュー当初のKの音楽を支えた名プロデューサー松尾潔が作詞した「Curious」など全11曲を収めた本作は、“好奇心”を意味するタイトル通り、彼自身の音楽的な興味とビジョンが全編に渡って反映されている。身体を揺らしたくなるダンサブルな楽曲を軸にしたこのアルバムによってKは、自らのルーツを改めて示すと同時に、新たな表現を切り開いたと言っていいだろう。

取材・文 / 森朋之 撮影 / 荻原大志


今回のアルバムを作るうえで、いくつかルールがあって。その一つが「すべて自分の部屋で完結させる」ということ

K エンタメステーションインタビュー

約1年半ぶりとなるオリジナルアルバム『Curiosity』がリリースされました。前作『Storyteller』はプロデューサーに寺岡呼人さんを迎え、歌詞に重きを置いたアルバムでしたが、今回はどんなテーマがあったんですか?

呼人さんと一緒に制作したときにおもしろいと思ったこと、ときめきを感じたことをもとにしながら、それをもっと伸ばしていけたらなと。枠を決めないで、好奇心に従って、「こういう感じでやりたい」と思ったことを形にしていったんです。テンポや曲全体の雰囲気、「こんなテイストのリズムが耳に残る曲にしたい」とか、イメージをしっかり持ったうえで制作することが多かったですね。あと、今回のアルバムを作るうえで、いくつかルールがあって。その一つが「すべて自分の部屋で完結させる」ということだったんです。

プライベートスタジオで完成させるということですか?

そうですね。いままでは80%くらいを部屋で作って、それをスタジオに持っていて100%にするという感じだったんですが、今回は基本的に、すべて部屋で作ろうと思って。そのうえで、「ここは生の楽器にしたい」という部分だけを差し替えたんです。

ボーカルも部屋で録ったんですか?

はい。メインボーカルもコーラスも部屋で録って、どれくらいリバーブをかけるかも決めて。それをそのまま活かすことも多かったです。もう一つのルールは、グルーヴが途切れないアルバムにしたくて。いままでの僕のアルバムは、しっかり聴き込むイメージだったと思うんです。

じっくり向き合って聴くというより、“ながら聴き”できるアルバムというか。ドライブ中とか家事をしてるときに聴いてほしいんですよ

K エンタメステーションインタビュー

バラードの名曲も多いですからね。

そういう曲も好きなんですけど、今回は自然に身体が揺れるような曲を入れたかったんですよね。じっくり向き合って聴くというより、“ながら聴き”できるアルバムというか。ドライブ中とか家事をしてるときに聴いてほしいんですよ。僕もふだんはそうやって音楽を聴くことが多いし、そのなかで「この曲いいな」とか、いろんなインスパイアをもらっていて。気軽に聴いてもらえるアルバムにしたかったし、「どうやったらもっとグルーヴが出るかな?」と試しながら作るのも楽しかったですね。サウンドやアレンジに関しては、自分のルーツをもとにしながら、今っぽい音も意識していて。古き良き音楽もすごく好きなんだけど、そのままやると、やっぱり古く感じちゃうんです。そうじゃなくて、今のシーンで求められているサウンドにしたかったので。たとえばスネアやキックの音色を少し変えたり、グルーヴをちょっと変えるだけで、イメージがすごく新しくなることもあって。その研究も楽しかったですね。

ルーツミュージックを現代的なポップスとして表現しているアーティスト、海外では目立ってますよね。トム・ミッシュとか。

そうですね。トム・ミッシュ、チャーリー・プースあたりはめちゃくちゃ好きで。打ち込みなんだけど生音っぽくて、そのテイストはかなり参考にしてます。たとえばトラックは打ち込だけど、ハイハットやキック、スネアのゴーストノートだけは自分で演奏した音を入れたり。そうすることで人間っぽさが出るし、サウンドが立体的になるんですよね。あと、ギターとベースは生に差し替えていて。バンドで録音した「光るソラ蒼く」「Close to me」以外、全曲同じ人に弾いてもらってるんですよ。

ベースのYuki“Lin”Hayashiさん、ギターの江部和幸さんですね。

はい。ギタリストとベーシストを固定することで、曲のグルーヴがしっかり決まって。そうすることでボーカルやコーラスの新しいニュアンスも試せるし、僕にとってはすごくいいやり方だなと。ふたりともフレキシブルで、「このトラックをやめて、こっちにしたいと思うんだけど」というときも、「おもしろいね」と対応してくれるのも良くて。

ストーリーや美しい表現はまったく考えてなくて、リズムやグルーヴを大事にしたかったんです

K エンタメステーションインタビュー

歌詞はKさんだけではなく、複数の作詞家が参加しています。「Curious」の歌詞は名プロデューサーの松尾潔さんですね。

ストーリーや美しい表現はまったく考えてなくて、リズムやグルーヴを大事にしたかったんですよね。松尾さんにお願いするときも、「こういう主人公で、こういう気持ちを歌詞にしたいです」だけではなくて、「ここのライムを合わせてください」と細かく注文させてもらって。いい感じにグルーヴしていれば、ストーリーは聴き手のなかで勝手に生まれると思うんですよ。呼人さんにプロデュースしてもらった前作は詞先だったので、短編映画みたいな感じというか、ストーリーもはっきりしていて。今回はまったく逆からのアプローチですね。

その他の作詞家の方(青木千春、相馬絵梨子など)に関しては?

曲が出来たときに、「これは自分では書けないな」と思ったものは作詞家の方にお願いしました。わがままを言って、コンペをやらせてもらったんですよ。「この曲に対して、歌詞を書いてみてください」と何人かに投げて、曲のイメージをいちばん理解してくれている方にお願いして。実際に歌ってみて、「ここを直してもらえますか?」というやり取りもさせてもらって、すごくいい環境でしたね。今回の制作で出会えた作詞家のみなさんは財産だし、これからも一緒に作っていきたいです。

「光るソラ蒼く」は、映画(「閉鎖病棟 ―それぞれの朝―」)の世界観に近づけながら、アルバムにつながるものを探しながら制作しました

K エンタメステーションインタビュー

「光るソラ蒼く」「Close to me」は凄腕のミュージシャンたちによる生バンドでレコーディング。この2曲は少し手触りが違いますね。

そうなんですけど、やり方自体は他の曲と一緒で。まずは自分で作り込んで、それを差し替えてもらったんです。「光るソラ蒼く」は、映画(「閉鎖病棟 ―それぞれの朝―」)の世界観に近づけながら、アルバムにつながるものを探しながら制作しました。原作と企画書を読ませてもらってから曲を書き始めて、撮影現場を何度も見させてもらいながら固めていって。監督(平山秀幸)からは「映画の中の誰かの立場ではなく、観終わった人たちを気持ちよく映画館の外に運ぶような曲にしてほしい」と言われてたんです。25回くらい書き直しましたけど(笑)、楽しかったし、いい経験になりましたね。「Close to me」は、前作に入っている「GATE11」とつながる曲にしたくて。『Storyteller』のなかでも特に好きな曲なので。

セルフプロデュースによる制作の精度も上がってきたのでは?

そうですね。これまではプロデューサーの方だったり、いろんなミュージシャンの方々と一緒に作ることが多くて。それもすごくおもしろいし、刺激的なんですけど、自分ひとりで作りながら、「これもやってみたい」「こういうやり方もある」と見つけられるのも楽しくて。

完全に防音されているわけではないので、子供の声とか、サイレンの音が入ることもあるんですけどね

K エンタメステーションインタビュー

プライベートスタジオで制作しているときは、完全に一人でやってるんですか?

はい(笑)。五畳半くらいの部屋に機材を置いてるんですよ。Mac、キーボード、楽器が並んでいて、マイクに向かって歌って、自分で編集して。完全に防音されているわけではないので、子供の声とか、サイレンの音が入ることもあるんですけどね。あと、お義父さん(関根勤)の声とか(笑)。それも楽しいんですよね。「いつ出来るの?」って待ってる人もいないし、伸び伸びやれるので。ここ何年かは時間に追われながら作品作りをしていたので、それを変えたかったんですよね。

ちなみに制作中の1日のスケジュールってどんな感じなんですか?

子供がいるので、僕のゴールデンタイムは早朝なんですよ。子供が起きてくる前、5時から7時くらいがいちばん集中できるので。頭も回転するし、ミスタッチも少なくて。夜中の4時間よりも、朝の2時間のほうが圧倒的に効率がいいですね。クリエイティブな作業、何かを生み出すことは朝やって、午後はアレンジをまとめたり、データの打ち込みや音色を選んだり。お酒を飲むのも好きなんですけど(笑)、朝早く起きてるから、すぐ眠くなるんですよ。とても健康的な生活です。

お子さん、「お父さんは部屋で何をやってるんだろう?」って言いません?

制作はよく見せてますよ。曲ができたらすぐに聴かせますし。彼女が踊れば、「これはいい曲かも」って(笑)。「LIFE」とか「Curious」が好きみたいですね。歌詞を聴き取れるわけではないので、音だけで乗れる曲がいいらしくて。

来年にはアルバムのツアーもやってみたいですね。ライブは生バンドなんですけど、同期の音(打ち込みの音)も使おうと思っていて

アルバムのリリース後は、ビルボードライブ東京(11月18日、21日)、ビルボードライブ大阪(12月7日、8日)で「K Premium Live 2019」を開催。『Curiosity』の楽曲を聴けるのも楽しみです。

ビルボードでも何曲かやりたいし、来年にはアルバムのツアーもやってみたいですね。ライブは生バンドなんですけど、同期の音(打ち込みの音)も使おうと思っていて。さっき話に出ていたトム・ミッシュ、チャーリー・プース、あとはブルーノ・マーズなどもそうですけど、生音と同期の音のバランスがすごくよくて、ぜんぜん違和感がないんです。以前は生音にこだわっていたけど、最近は「音が良ければいい」という感じだし、お客さんにも純粋に音を楽しんでもらえたらなと。まずは『Curiosity』を“ながら聴き”してほしいですね。

その他のKの作品はこちらへ。

ライブ情報

K Premium Live 2019

11月18日(月) ビルボードライブ東京
11月21日(木) ビルボードライブ東京
12月7日(土) ビルボードライブ大阪
12月8日(日) ビルボードライブ大阪

K

小さい頃からゴスペルやR&B といったブラックミュージックが常に流れている環境で育つ。
地元ソウルの教会でピアノ演奏と歌を歌っているところ、音楽プロデューサーの目に留まり、2004 年に韓国で歌手デビュー。そして2005 年にシングル『over…』で日本デビュー。デビューするやいなや韓国男性アーティストでは異例の2 作連続オリコンTOP10 入りの記録を達成。その後も快進撃を続け、沢尻エリカ主演のCX ドラマ『1 リットルの涙』の主題歌になった『Only Human』は、20 万枚のヒット。さらに、翌年リリースした1st アルバム『Beyond the Sea』は30 万枚の大ヒットを記録。また、日本武道館や47 都道府県ツアーを成功させ、一躍トップアーティストの仲間入りを果たす。アーティストが嫉妬する程の歌唱力を持ち、誰からも愛されるキャラクターからマネージャーも驚愕する程の交友関係の広さの持ち主。30 歳の節目には結婚をし、今では一児のパパに。(妻: 関根麻里、義理の父: 関根勤)
2017年ビクターに移籍して、テレビ朝日系「科捜研の女」主題歌『シャイン』をリリース。翌年には6枚目のフルアルバム『Storyteller』をリリース。
アーティスト活動以外にも、MCやラジオDJ、ナレーターなど幅広く活動している。

オフィシャルサイト
http://www.club-k.cc

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