LIVE SHUTTLE  vol. 72

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GLIM SPANKYが「Next One TOUR 2016」ファイナルで魅せた圧倒的存在感

GLIM SPANKYが「Next One TOUR 2016」ファイナルで魅せた圧倒的存在感

 この夏にリリースしたセカンド・アルバム『Next One』を受けての“Next One TOUR 2016”も、この日がファイナル。7月に東京キネマ倶楽部(キャパ:600人)でのワンマンを成功させてからたった4カ月弱で、スタジオ・コースト(キャパ:2402人)をソールドアウトする成長力には目を見張る。入場を待つファンがあふれかえる中を、コーストの入り口に向かった。

 独特の雰囲気を持つスタジオ・コーストのフロアは、すでにほとんどがオーディエンスで埋まっている。BGMのザ・ローリング・ストーンズの「MISS YOU」のボリュームが上がると、あちこちで指笛が鳴ったり、歓声が上がる。セットリストは当然、『Next One』の曲が中心になる。指笛や歓声は、最新アルバムを聴き込んで来たファンの期待の表われと受け取っていいだろう。GLIM SPANKYの松尾レミと亀本寛貴の二人と同じく、オーディエンスも『Next One』の“完結編”となるライブを待ち望んでいる。
   照明が暗くなって、いつもGLIM SPANKYのライブ開演前に流されるスティーライ・スパンの曲がかかると、歓声とざわめきが急速に大きくなる。いよいよ開演だ。

 登場したのは5人。松尾、亀本の他にサポートはベースとドラムなのだが、今回はキーボードが加わっている。1曲目はアルバム・タイトルであり、オープニング曲の「NEXT ONE」だ。まずはドラムが、スケールの大きなリズムを刻み始める。そこに松尾のリズムギターが入る。松尾の抱えるギターは、おなじみのリッケンバッカーではなく、ギブソンのSGモデルだ。松尾はボーカリストらしいしなやかなリズムギターが得意だが、彼女がSGのギザギザした刺激的な音でリズムを刻むのも悪くない。ますますサウンドの“ロック度”が上がる。そこへ亀本のリードギターが絡んでくる。
 松尾がへヴィーなタッチで歌い始める。そのザラついた声は、SGギターの音と非常に相性がいい。そんな狙いもあってのギター・セレクションなのかもしれない。狙いは見事にハマっていた。そしてそれ以上に、これまでで最大規模のライブにも関わらず、松尾も亀本も落ち着きはらってステージに立っている。集まったオーディエンスの顔を一人一人確かめるように、会場の隅々にまで目を配っているのが分かる。そんな堂々たるスタートに応えて、オーディエンスは「NEXT ONE」のコーラス・パートを歌い始めたのだった。

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 ブラインド・サッカー日本代表の公式ソングである「NEXT ONE」は、サッカー・フリークの亀本にとって強い思い入れのある曲だ。だからというわけではないだろうが、ギター・ソロで亀本はステージの前に出てくる。ミディアム・テンポの曲なのに、非常にスピード感のあるソロを取る。それは彼のギタープレイの最大の特長で、僕の知る限り、亀本の世代のギタリストの中でナンバーワンと言っていい。スピード感があるから、ミディアム・テンポでも華麗さが前面に出る。松尾の歌と肩を並べて主張する亀本のギターは、明らかにGLIM SPANKYの魅力の中核を成している。

 「NEXT ONE」が終わって、松尾が軽く挨拶する。すかさず松尾が自分でギターを掻き鳴らしながら、メジャー・デビュー曲の「焦燥」を歌い始めた。この曲はファースト・アルバム『SUNRISE JOURNEY』のオープニング曲だ。2枚のフルアルバムの1曲目を立て続けに演奏するセットリストに、このライブに賭けるGLIM SPANKYの気迫を感じる。松尾が高校生の時に書いた♪2秒前の自分でさえ もう過去のものとなっている♪というフレーズが、耳に突き刺さる。
 はやる気持ちと裏腹に、何の戦略も持たないで世の中に打ってでる不安。今、満員のコーストの舞台に立っていても、その“焦燥”は高校生の時と何も変わらずに松尾の心を揺さぶる。大きな夢を抱くGLIM SPANKYだからこそ、この歌は永遠にリアルであり続けるのだろう。

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 キーボードが加わることでより魅力的になった「ダミーロックとブルース」が終わると、5曲目から『Next One』からの曲が続く。このシークエンスが、ツアーのメインテーマとなる。
 松尾がアカペラで歌い出した「闇に目を凝らせば」は、いつもライブ前に流れるスティーライ・スパンのブリティッシュ・トラッド・フォークの流れをくむ幻想的なナンバーだ。続く「NIGHT LAN DOT」は高校時代から歌っているという、これもフォーキーな曲。この2曲は「月」や「闇」や「星」など共通のキーワードを持ち、孤独や自分の存在について歌っている。松尾はインタビューで「NIGHT LAN DOT」について、「大好きなあがた森魚(注:70年代初頭から活躍するカルトなシンガーソングライター)さんとの、隠れコラボ曲です」と語っていたが、ある種のアンダーグラウンド感がGLIM SPANKYの音楽の重要な構成要素になっている。
 初めの4曲でガツンと盛り上げた後、『Next One』の内省的な歌が並ぶこのパートは、僕にとって少々意外だった。コーストという大きな会場だからこそ、ロック全開の怒涛の“力勝負”に出るのかと予想していたが、ライブの前半はじっくり歌を聴かせる。松尾はほとんど動かずに、歌うことに集中する。オーディエンスもまた、集中して聴いている。身体を動かしたり、拳を上げる代わりに、1曲が終わるごとに丁寧な拍手が起こっていたのが印象的だった。つまりGLIM SPANKYは最大規模のワンマンで、大胆にも自分たちが“聴かせるバンド”であることを証明してみせたのだ。

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 「ツアーで13カ所、ワンマンをやってきました。初めて行くところなのにワンマンって、大丈夫なの? GLIM SPANKYを知ってる人がいるの? セットリストは大丈夫? って、いろいろ心配してたんですけど、始まったら何の心配もなかった。ライブに来てくれるみんなが私たちの背中を押してくれたし、私たちもみんなの背中を押せたらいいなって思ったし。それにしても、ここから見えるのはいい眺めですね。みんなが笑ったり、身体を揺らしたりしてるのが、全部見えます。次は、このツアーでみんなと一緒に歌うことを想像しながら作った曲です」と松尾。
 「風に唄えば」はカントリー・タッチの素直な曲。♪いつだって僕らは自由だから 風に唄えば良いのさ♪という歌詞を、松尾は高くてきれいな声で歌う。彼女の魅力は、歪んだ声だけではない。次の「話をしよう」も松尾のアコースティック・ギターが中心の明るいナンバーで、亀本のスライドギターがいい味を醸し出す。おそらく2人の育った長野の風景が、歌にもスライドにも共通して反映しているのだろう。同郷のユニットの良さがここにあった。この2曲で、コーストの雰囲気が、内省的なものから解放的なものへと変わった。

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 「ずっとコーストでライブをやりたかったんですよ。一度だけイベントでやらせてもらって、気持ちよかったんで、自分たちもここでできたらいいなって思ってたんです。床が木でできてて、横に張り出してる席があって、外国のライブハウスみたい。・・・あれ? ギターのカメが早くしゃべらせろって言ってます」と松尾が亀本にマイクを振る。
 「次の曲の話をする担当なんです。“トランスフォーマービーストウォーズ”を知ってる人? 僕が大好きなアニメで、僕らがそのアニメの生誕20周年記念イベントのテーマソングをやりました」。すると松尾が割り込んできた。「私たちと同じで、世界をひっくり返してやるって、攻め続けてるアニメ。きっとみんなもキッズの精神を持っているはず、みんな主役になろう!」。
 亀本のギターが、ハードなブギーのリズムを刻み出す。「BOYS&GIRLS」だ。ここからライブは終盤の盛り上がりに突入する。
 GLIM SPANKYは一貫して“反骨精神”を貫く。「風に唄えば」では♪ルールに沿って生きているんじゃ 何も学べない♪と歌っているし、この「BOYS&GIRLS」でも♪真面目にいい子なフリで 革命の時を待ってるのさ♪とアオる。  コーストに詰めかけたオーディエンスには、突飛なファッションの人や、パンキッシュな人はいない。しかし、だからこそGLIM SPANKYのメッセージを必要としているのかもしれない。
 「怒りをくれよ」で会場はどんどんヒートアップしていく。「Gypsy」では亀本が攻撃的なギター・カッティングで会場の火に油を注ぐ。熱く熱くなっていく。観客から「カッコいい!」と声が上がると、松尾が「みんな、声が枯れてるよ」と突っ込む。
 「なんていい景色だろう!」と松尾。「この前、Gypsyを歌ってる時、バレないように写真撮ってる人がいた。別に隠さなくてもいいのに。どーぞ、撮ってください(笑)。みんなのこと、よーく見えてるよ。目をつむって聴いてくれてたり、みんなの仕草の一つ一つが届いてます。私が音楽をやるって決めた時に、バカにした大人たちがいたけど、そういう人たちを敵に回さずに、心をこじ開けてやろうと思った。そうしたら、同世代のみんなの背中を押すことができる。そうなればいいなと思って作った曲です」。
 「大人になったら」は、今、GLIM SPANKYの中で最も重要な曲になっている。上手に世間を渡っていくことと、真実の世界を知ることのどちらが大事なのかを真っ直ぐに問う歌だ。青臭いと言ってしまえばそれまでだが、♪この世の全ては 大人になったら解るのかい♪というシンプルな問いかけが松尾の声で歌われると、目をそらすことはできない。ライブでなら、なおさらだ。この夜も「大人になったら」の松尾の歌は凄かった。反応して、亀本のギターソロも凄かった。曲の途中で二人は真正面から向かい合って火花を散らした。その後、この日、いちばんの大きな拍手が二人に贈られたのだった。

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 ラストはGLIM SPANKYのテーマソングというべき「ワイルド・サイドを行け」。♪進んで行こうぜ 今日だって道は分岐点ばかり 好奇心辿って 悪い予感のする方へ♪と歌う。悪い予感へ踏み込む生き方が、何とも痛快だ。ここでも松尾と亀本は、歌とギターで対等に張り合う。だから亀本が♪ワイルド・サイドを行け♪の部分でハモを付けると、説得力は倍増する。ラストにふさわしい盛り上がりで本編が終了した。

 

 さて、アンコールに何をやるのか。すでに『Next One』の曲はすべて演奏してしまっている。内省的な中盤に合わせるならロマンティックな「ロルカ」、あるいはちょっと不良な「踊りに行こうぜ」あたりか。が、GLIM SPANKYが選んだのは、攻撃的な「リアル鬼ごっこ」だった。
 「リアル鬼ごっこ」は、デビューしてからGLIM SPANKYが得たものが詰め込まれている楽曲だ。サウンドでいえばキャッチ―なハンドクラップのループが入っていたり、歌詞で言えば♪生き急ぐとき 誰もがいま美しい♪というラフな言い切りは、もともとのGLIM SPANKYにはなかったものだと思われる。それを彼らはアンコールに選んだ。
  曲が始まると、なんと亀本が両手を頭上に上げてハンドクラップをオーディエンスにうながす。歌い始めた松尾のボーカルが吹っ切れていて素晴らしい。GLIM SPANKYの持っている明るさ、激しさ、暗さ、切なさ、孤独、怒り、温かさなどの全部がこの歌で表現されていた。僕にとっては嬉しい“予想外”だった。“自分たちになかったもの”を確実に吸収し、新たなGLIM SPANKYを作り上げようという意志にあふれたアンコールだった。
 “聴かせるGLIM SPANKY”を中心に据え、新しい歴史を作る気迫に満ちたこのファイナルは、彼らのさらなるジャンプアップを約束している。

取材・文/平山雄一  写真/KAMIIISAKA HAJIME

Next One TOUR 2016
2016.10.30@新木場STUDIO COAST <セットリスト>

01.NEXT ONE
02.焦燥
03.褒めろよ
04.ダミーロックとブルース
05.闇に目を凝らせば
06.NIGHT LAN DOT
07.grand port
08.時代のヒーロー
09.いざメキシコへ
10.風に唄えば
11.話をしよう
12.BOYS & GIRLS
13.怒りをくれよ
14.Gypsy
15.大人になったら
16.ワイルド・サイドを行け
<アンコール>
17.リアル鬼ごっこ

https://youtu.be/r4B5RtiotLE

プロフィール

本物のロックを鳴らす“オーセンティック・ロック”の旗手
Vocal, Guitar :松尾レミ(24歳)
Guitar :亀本寛貴(25歳)

60~70年代のロックとブルースを基調にしながらも、新しい時代を感じさせるサウンドを鳴らす、松尾レミ(Vo/Gt)&亀本寛貴(Gt)からなる男女二人組新世代ロックユニット。2014年に1st ミニアルバム『焦燥』でユニバーサルミュージックよりメジャーデビュー。松尾レミの日本人離れしたハスキーな歌声が、多くのクリエイターを夢中にさせ、既に9つものCMで歌唱を担当。5月13日に配信リリースEP『話をしよう/時代のヒーロー』は iTunesロックアルバムランキング1位を獲得し、各所から注目を集めている。
昨年10月赤坂BLITZにて行ったワンマンライブはソールドアウト。昨年の夏は、JOIN ALIVE、FUJI ROCK FESTIVAL、SWEET LOVE SHOWERに、年末はRADIO CRAZY、COUNTDOWN JAPAN等の大型フェスを総ナメにし、沢山のロックファンを沸かせた。メンバーの野望は「日本語の楽曲で世界に打って出ること」。そして、今夏公開される映画『ONE PIECE FILM GOLD』の主題歌に抜擢。その主題歌が収録された、2ndアルバムを7月20日にリリース。

GLIM SPANKY 公式サイト http://www.glimspanky.com/

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