Interview

ゴスペラーズ 進化した“ケンカ・アカペラ”。デビュー当時からの彼らのアイデンティティを具現化した新作の凄さとは。

ゴスペラーズ 進化した“ケンカ・アカペラ”。デビュー当時からの彼らのアイデンティティを具現化した新作の凄さとは。

2019年12月21日にメジャーデビュー25周年を迎えるゴスぺラーズのニューシングルは、画期的なアカペラソングだ。パッと聴くとカッコいい。何度も聴くと各所に複雑精妙な仕掛けが施されている。5人の個性が妥協することなくぶつかり合い、それでいてひとつの音楽を奏でるというハナレワザ。彼らの開拓してきた“ケンカ・アカペラ”というスタイルを、驚くほどの完成度で進化させている。高い精度でハモれるメンバーだからこそ到達した“超アカペラ”の世界は、闘いと調和が両立するスリリングかつスピード感たっぷりの3分間だ。
25周年を迎えてもさらなる高みを目指すゴスペラーズに、今回の“冒険”について聞いてみた。このチャレンジングなシングルは、メンバーにとっても自分たちの新たな可能性を信じることのできる偉業だったのである。

取材・文 / 平山雄一


ハモってない。ハモらせないサビを作って、大乱戦の様相を呈してやりたいという企画なんです(酒井)

「VOXers」は、どんな風に制作が始まったんですか?

黒沢 今回はアカペラとかコーラスをフィーチャーしたものでシングルをやりたいねってことで、みんなで曲作りに入ったんですよ。ただその時点では、アップテンポのアカペラっていうこともあまり決まってなかった。ただアカペラ、あるいはアカペラに準じたものをやろうと。

それを25周年記念シングルとしてリリースしましょうと。

黒沢 そうそう。「令和」=ビューティフル・ハーモニーっていうのは、我々的になかなかいい追い風だなと。アカペラなら、バラードでもいいし、アップテンポでもいい。出来上がってきたものの中で「VOXers」が、「これは今まで聴いたことがないね。今、ゴスペラーズがやるのにふさわしいね」っていうことになって、決まっていったんですよ。

複数のフレーズが並行して主張しているっていうところが、今までになかった。

酒井 そうです、そうです。

黒沢 サビの中でポリリズム的なフレーズが交錯する。これはちょっと僕の発想になかったんで、「やられた〜! その手があったか」って思って、めっちゃ悔しかったんですけど(笑)。ビートの感じも、僕はもうちょっと今っぽいものを考えて作ってたんですけど、「VOXers」はドーンっとストレートな8ビートで来たので、「おお〜! こっちのほうがインパクトあるな」って。で、サビが、字ハモでもない、リズミックなフレーズを揃えていくわけでもない。だから正直言うと、一聴してもよくわからない。「なんかやってるぞ?」っていうような不思議な感じ(笑)。何回か聴いてると、「あ、これはポリリズムだ」ってわかる。衝撃でしたね。やられたと思いました。

この曲を書いた酒井さんは、そもそも25周年を意識して作った曲なんですか?

酒井 「侍ゴスペラーズ」という曲がゴスペラーズにはあって、アルバム『二枚目』(1996年)に入っている。村上から見たメンバー紹介ソングなんですよね。たとえば北山が、♪ドキッとする低音波 インターネット・ベースマン♪なんていうフレーズで紹介されている。

♪インターネット・ベースマン♪って、時代だねえ(笑)。

酒井 そうですよね(笑)。インターネットがまだ流行る前夜ぐらいのころ、北山は研究室にいたので♪インターネット・ベースマン♪だって村上は言うわけですよ。それから月日は流れて、25周年になったので、ちょっとここらでもう一度、そんな趣向の曲を作ろうということで。
歌詞は、各メンバーが五角形のリングで戦ってるっていうイメージ。ゴスペラーズがハモるっていうと、静かに、美しく、バラードでというイメージが先行するんですけど、それぞれが一本立ちした選手のような状態で、5つの頂点にいる。ボクシング的な言い方をすれば王座ですよね。だからそれぞれの声は、いずれも譲らぬようなカタチで、揃えないで、バラバラであるような企画意図なんですよ。サビは、ウーアーでハモらすようなことはしないで、ガチャガチャした噛み合わせ。あいつのフレーズが聴こえると思えば、こいつのフレーズが聴こえてくるといったような。そういう意味では、ハモってない。ハモらせないサビを作って、大乱戦の様相を呈してやりたいという企画なんですね。

あのとき何かをやろうとしてたっていうことが、僕らが25年間続けてこられたことと関係してるとは思うんです(村上)

その企画は、ゴスぺラーズの歴史を踏まえてのこと?

村上 まあ、歴史の部分もあるし、酒井の曲の構成力の話でもあるし。

酒井 ただ、ゴスペラーズがインディー・デビューしたときに、「Gospellers’Theme」っていう曲があって。これは5人がひとりずつ現れて、♪you can join us join us. you make me so happy〜♪って違うメロディーを歌って、5声で組み上げて“ゴスペラーズ登場”の感じを演出するっていう曲だった。それが原点としてあるんです。

村上 形式としてはある。

酒井 5人がバラバラなことをやっているっていうのが、実はゴスペラーズのアイデンティティなのかもしれないというのがあったんですよ。「ハモるって、合わせることでしょ」っていう常識に対するアンチテーゼを、ゴスペラーズは最初から唱えてた。声質も違って、うるさいグループで、なんていうかな、きれいじゃないというか。

村上 TAKE6っていうグループが、かなり高度な感じで、そのコンセプトでメンバー紹介ソングをやっていた。それを、俺たちがそのときのスキルでできる範囲内で挑戦してみた(笑)。

黒沢 そのころのゴスペラーズに、落とし込んだ。

村上 っていうものだったんです。あのとき、最初のアイデアをどこまで具現化できたかはさておいて、僕らの本質であることには間違いない。そのあと身に付けたスキルはもちろん大事なんだけど、あのとき何かをやろうとしてたっていうことが、僕らが25年間続けてこられたことと関係してるとは思うんです。それが25年間で結実したっていうことじゃないけど、25年間積み重ねてる中で、このタイミングで、ちゃんとインパクトのあるカタチで作れた。酒井の中から出てきたのかなっていうのはありますね。

実際に歌ってみて、どうだったんですか?

黒沢 バラバラだから簡単かと思ったら、酒井がすごく細かいところまで指定してきて、ビックリした。アドリブっぽいスキャットにしても、「そこは♪ダラリー♪じゃなくて、♪ダリリー♪です」とかって(笑)。

適当にと思ってたら。

黒沢 適当にやって、なんかいいやつを探すのかなと思ったら、「え? そこ、決め込みだったんだ」っていうのには、びっくりしましたね。

酒井 慣れないことをやるっていう、チャレンジ球なんですよ(笑)。

北山 「星空の5人」っていう曲では、その人の解釈に任されてる部分があったんですけど、今回は完全にクラシックみたいなもんで、「この音を、この口のカタチでお願いします」ってなってるから。

酒井 たまにふたつのスキャットがシンクロしたり、かと思うとバラけていったりっていう。

村上 そのへんは、酒井がスピード感とか感性でチョイスしてたんじゃないかと思うんですけどね。

酒井 もっと簡単にも出来たと思うんだけど。

黒沢 デビューしたときから、ハモるのは当たり前なんですけど、「やっぱり歌い手が5人集まってやってるからいいんだ」みたいなところってのは、その当時出来たかどうはわからないですけど、チャレンジしてましたね。

安岡 それを具現化してる楽曲が目の前にあれば、広く伝えられたんですけどね。デビューしたころから一応そういうコンセプトはあって、そのコンセプトを具現化するための25年間があったのかなというのはありますね。

「自分たちに圧をかけてるな」っていう感じが面白いですよね(笑)。(黒沢)

一方では歌のスキルがないとダメだし、一方ではソングライティングのスキルがないと出来ない。

黒沢 両方ないと表せないから。

北山 自分たちが歌うために曲を書くんですけど、「本当に歌えるかな」っていうところを大きく逸脱したらダメで。そういう意味でいうと、どんどんハードルが上がっていくほうがグループとしては健全なんです。今回は「ジャンプしたら届くかな?」(笑)ぐらいなところに、酒井さんがうまいことハードルを設定してくれたなっていう感じはしてます。 

黒沢 そういうものを25周年で出してくる。「自分たちに圧をかけてるな」っていう感じが面白いですよね(笑)。

北山 僕はこの曲を、すごくエンジョイできてます。

何か、すごくスポーツっぽいね。アスリートみたい。

安岡 そうそう。すごくスポーツ的。

黒沢 今回は特にそうですね。

北山 フォーメーションの中に入って、しっかりディフェンスして、オフェンスするときはひとりで好きに行ってきなさいっていう。

ラグビーみたい(笑)。

安岡 そう、まさにチームスポーツです。

酒井 他にもこだわりがあって。この曲の最初と最後に、どうしてもゴングを鳴らしたかったんですよ。ボクシングの試合と同じで、“ゴングtoゴング”が3分っていう企画もあって。

ボクシングの1ラウンドの長さと同じなんだ。

安岡 そう、きっちり3分。

酒井 ゴングの音は自分たちの口ではできないから、これは仕込んでおかざるを得ない。いろんなゴングを借りてきまして、レコーディング・スタジオで♪カーン♪、いや、もう一回♪カーン♪って録音して。そのときの素材を、ルーパーに入れてあるって感じです。

村上 あるスタッフの実家がキックボクシング・スタジオで、そこから本物を持ってきたり(笑)。

酒井 激シブの年季の入ったやつなんですけど、ネジが緩んでて、叩くとビーンって振動しちゃうんですよ。

村上 オーディオ的に、リアリティーはすっごいあったんですけど、結局、NGでしたね(笑)。

凝ってるね。“3分”は最初から狙ってたの?

酒井 ところがそうじゃないんですよ。逆算してテンポを設定したものではないというのが、この曲の怖いところで。だいたい3分ぐらいの短い曲にしたいなって思って作り始めたんですけど、スタッフやメンバーから間奏を入れたいという意見が出て、それを足していったら、ジャスト3分になっちゃったっていう。

村上 最初のデモをちょっと進めたところで、「あ、3分間ぐらいで作れそうだね」って気づいたんだよね。

酒井 調整したわけじゃないんですよ。完成が近づいて、スタジオのエンジニアに「ゴングからゴングで今、これで何分?」って聞いたら、「3分ちょうどです」って言われて、ゾゾゾゾッてなったって話です。

それにしても25周年を祝うのに、ピッタリの曲だね。

安岡 自分たちは25年目にして、また…。

北山 新しいものを追いかけてる。

安岡 新しいというか、「ものすごく高い山に登ろうとしてるんだね、僕たちは」っていう気持ちでレコーディングに入ったっていうのはありましたね。

でもパッと聴いただけでは、そんなに難しいことをやってるように聞こえない。そこがいいよね(笑)。

安岡 シンプルに、エネルギーが伝わってくる。

黒沢 それがいいんですよ。

村上 それでいいじゃないですか(笑)。

安岡 エネルギーとジョイが伝えられれば、十分なんだと思ってます。

黒沢 この曲は、推進力がすごい。

安岡 シンプルにカッコいいっていうのが最初にくるってことが、この曲のいちばんの魅力だと思ってます。

黒沢 そして今回のタイミングで、シングルコレクション『G25 -Beautiful Harmony-』を出します。

安岡 初めてのシングルコレクション。全58曲。そのうえ、CDは5枚組。きれいに縁起のいい数字が並びます。

ゴスぺラーズで、五角形で、メンバー5人で。

村上 さすがに4枚とか6枚には出来なかったですね(笑)。

改めてシングルを年代順に並べたので、自分たちでも「ああ、こういう感じで俺たちはやってきたんだな」って、曲順を見るだけでも感慨深いものがある(安岡)

5×5=25は一回しか使えない。

村上 そうそうそう。

安岡 改めてシングルを年代順に並べたので、自分たちでも「ああ、こういう感じで俺たちはやってきたんだな」って、曲順を見るだけでも感慨深いものがある。

北山 のちにライブでやったりすると、つながりがいいものがセットになっていくじゃないですか。メドレー的な感じにとらえたりとか。でも、「あ、こっちの曲のほうが先だったか」とか、「これとこれの間にこれが入ってたか」みたいなことっていうのは、なるほどねっていう感じがある。

安岡 思ってもみないものが両A面シングルだったりとか。

黒沢 そうね(笑)。

安岡 このときは、まったく違うことを2つやってたのかみたいな。

ここまでちゃんとやってれば、「25周年なんですね」って言ってくれる人たちの気持ちを追い風にできる(北山)

酒井 配信ですべての年代のシングルが並べて聴ける時代でも、マスタリングがまちまちだったりする。

村上 なので、今回、まとめてリマスターしたんですよね。特に昔の曲は、ボリューム的に凸凹がないようにするっていうところを頑張って。

酒井 そういう作業をしましたね。

安岡 あと5年経ったら、マスターテープが再生できないかもしれない。そういう意味では、ここしかないというタイミングだったっていうのはありますね。

酒井 今後そうポンポンやる企画ではないと思う。

北山 そのうちサブスクリプションも、AIによるマスターエンジニアが全部やるようになる。

黒沢 そうだよね。だからこそ今、俺たちが自分でコツコツやっていくっていうのは意味がある。

北山 ここまでちゃんとやってれば、「25周年なんですね」って言ってくれる人たちの気持ちを追い風にできる。

黒沢 「そうです!」って胸を張って言えます(笑)。

酒井 そういう意味では、ガチガチに力、入ってますよ、今回は。ツアーもすごいスケジュールです。

黒沢 ツアーは、全都道府県やります。

酒井 ガチガチですよ。

黒沢 ドキドキですね。

安岡 全部で56公演かな。

全都道府県は何年ぶりになるの?

安岡 5年ぶりですよ。G20以来。

酒井 全都道府県ツアーとしては、4回目。

全員 ぜひライブで「VOXers」を聴きに来てください!!

ありがとうございました。

その他のゴスペラーズの作品はこちらへ。

ライブ情報

ゴスペラーズ メジャーデビュー25周年を記念した、全都道府県ツアーの開催が決定!
デビュー記念日の12月21日よりスタート!

*詳細はオフィシャルサイトにて

ゴスペラーズ

北山陽一、黒沢薫、酒井雄二、村上てつや、安岡優からなるヴォーカルグループ。
1994年12月21日、キューンミュージックよりシングル「Promise」でメジャーデビュー。
以降、「永遠(とわ)に」「ひとり」「星屑の街」「ミモザ」など多数のヒット曲を送り出す。
他アーティストへの楽曲提供、プロデュースをはじめ、ソロ活動など多才な活動を展開。
日本のヴォーカル・グループのパイオニアとして、アジア各国でも作品がリリースされている。
メジャーデビュー25周年を迎えるにあたり、デビュー記念日の12月21日からは全都道府県ツアー「ゴスペラーズ坂ツアー2019〜2020 “G25”」をスタートさせる。

オフィシャルサイト
https://www.sonymusic.co.jp/artist/Gospellers/