Interview

大友啓史監督が『カエル男』のこだわり、小栗旬&妻夫木聡のキャスティングを語る

大友啓史監督が『カエル男』のこだわり、小栗旬&妻夫木聡のキャスティングを語る

殺人をアートと称する猟奇殺人鬼〈カエル男〉と、彼を追う刑事〈沢村久志〉との壮絶な攻防を描いた戦慄のコミック『ミュージアム』がついに実写映画化。メガホンをとったのは映画『るろうに剣心』シリーズを大ヒットに導いた大友啓史監督。〈沢村刑事〉小栗旬VS 〈カエル男〉妻夫木聡という同年代の実力派2人のキャスティングや、本作での脚色でのこだわり、さらに『るろうに剣心』から来年公開の『3月のライオン』まで、コミックを映画化する際に大切にしていることについてなど、監督に様々な話を聞いた。

取材・文 / 熊谷真由子


二枚目の穏やかな役が多い妻夫木くんがこういう狂気に満ちた役にどうアプローチしてくるだろうかと

まず、本作を映画化しようと思ったきっかけをお聞かせください。

ワーナー・ブラザース映画さんから「興味ありますか?」と打診があったので原作を読んで、そうしたらかなりエグい内容だったので引き受けるかどうか正直迷ったんですが。最終的には「小栗(旬)くん主演ならやります」と条件を出させてもらって。以前からずっと彼と仕事をしてみたいと思っていましたし、原作を読んだときに直感的に浮かんだのが“小栗旬”でしたから。その直感を押し通したほうがいいかなと。
こういう陰鬱な話は、力も華もある演者じゃないとエンターテインメントとして成立しない。エグさだけが強調されてしまったら、物語としてバランスが悪い作品になってしまう。主人公の沢村刑事がマインドゲームのように心を弄ばれ、大事な家族を人質に取られるという究極の絶望的な状況まで追い込まれていくストーリーですから。地力のある俳優がやらないとシチュエーションに負けちゃうんですね。

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では、小栗さんに対するカエル男に妻夫木聡さんをキャスティングされた理由は?

妻夫木くんのキャスティングはプロデューサーから出たアイデアだったんですが、すぐに「いいですね」と。端正な顔立ちで、二枚目の穏やかな役が多い妻夫木くんがこういう狂気に満ちた役にどうアプローチしてくるだろうかと。映画としてのイメージが、一挙に膨らみましたね。本人も快諾してくれたので良かったです。

実はエンドロールを観るまで妻夫木さんだと気づかないくらいだったのですが、どんな演出をされたのでしょうか?

いえいえ、顔をぐちゃぐちゃにしただけですよ、しっかりスキンヘッドや肌の荒れを作り込んでね(笑)。妻夫木くんの近作でいうと、『怒り』(16)の同性愛者役は、しっかり地に足がついた役ですよね。相手役となる綾野(剛)くんと実際に同棲して役作りしたと聞いていますが。
どんな役でも、他者の人生を生きることは大変だと思いますが、とりわけこのカエル男は一筋縄ではいきませんよね。“殺人アーティスト”を名乗る男の価値観を内に蓄え、体現化していかなければいけない。彼の中には、個々の被害者たちに対する特別な感情はありませんから。いわばある種ゲームのような思考で殺人を犯していく。それを問い詰めていくと、結局“なぜ人は人を殺すのか”という倫理的・哲学的な、根源的な問題に辿り着きます。
『秘密 THE TOP SECRET』でもいろいろと取材を重ねましたが、それは本当に人類共有の課題であり、なかなか紐解けるものではない。考えすぎると、とんでもない袋小路に陥ります。だから「こういう役はあまり深く考えて真面目にやるよりは、一線ギリギリを楽しむしかない」と僕自身もある部分で踏ん切りをつけ、妻夫木くんにもそういう話をしました。造形も含めて、これまで自分でも見たことがないような有り様を思いっきり楽しんでもらおうと。スキンヘッドもそうだし、身体を鍛えてもらうのもそう。脚本には沢村をやり込めるシーンがあるので、もしかしたら彼は地下室でムエタイとか格闘技を習得していたかもしれないとか、お父さんが芸術家だからきっとアートのセンスや技術があるんじゃないか、など、原作や脚本には描かれていない背景を考えながら、カエル男のキャラクターひとつひとつを作り上げていきましたね。
現場では声のトーンについてちょっと言ったくらいですが、それもマスクをしていてくぐもっているから、普通の妻夫木くんの声には聞こえない。さらに鍛えてマッチョになっているので、身体のシルエットもいつもと違う。後ろから見るとまるで別人のような身体になっていたし、皮膚や歯もメイクしているので、トータルのルックスとして妻夫木くんとはわからなかったかもしれませんね。ちなみにですけど、妻夫木くんは頭の形も端正。まるで一休さんのようでしたね(笑)。

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劇中のほとんどで雨が降っていましたが、雨降らしのシーンでの苦労などはありましたか?

雨降らしは僕の苦労と言うよりも、実際に準備するスタッフが大変だったと思います。つねに大がかりなスタンバイが必要ですし、せっかく準備しても、陽射しが強ければさすがに雨を降らせることはできない。雨のシーンは空模様のコンディションが限られます。日本は(撮影した)11~12月は全国的にあまり雨が降らない季節なので、最も降雨確率が高いという新潟をロケ地にしました。その判断もあって撮影は至極順調に進んだんですが、快晴で撮休という、映画の現場としては非常に珍しいことが起きました。スタッフはみんな喜んでましたけど(笑)。

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そのほかにはどんな点に重きを置いていましたか?

カエル男の造形ですね。最初は、お店なんかでも売っているようなハロウィン用のマスクに近いものを作ったんですが、フードを被せると頭でっかちに成り過ぎちゃってどうも見栄えのいいものにならない。そこで、まずはキャラクターデザインと造形チーム、演出部が世界中のカエルを調べて、どういうデザインにしたらこの映画にふさわしいかという、原点の部分から話し合いましたね。実際のカエルを見に行って、カエルはエラが動くからその部分をタプタプさせようとか、目が動くと面白いということで、黒目のところは揺れるように作ったり、原作ではまっすぐの口を、ちょっと笑っているようにしたり。どうすれば表情が出て、さらに怖いかということを試行錯誤しました。彼が着ているコートも、普通の雨合羽ではなく特殊なゴム素材でできています。表面に凹凸があるので、雨に濡れるとグラデーションのような模様が出るんです。

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